事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

河野外務大臣「輸出管理と徴用工大法院判決・朝鮮人戦時労働者問題は無関係」は矛盾しているのか?

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河野太郎外務大臣が「輸出管理と徴用工大法院判決・朝鮮人戦時労働者問題は無関係」と回答していることについて、日韓のメディアが「矛盾している」と言いがかりをつけています。

そうではないということを改めて示します。

「信頼関係」は国家としての全体の話

韓国をホワイト国排除する日本の説明が不適切?信頼関係・徴用工問題を持ち出した意味

経済産業省や安倍総理・菅官房長官・世耕経産大臣らの発言の詳細と整合性については上記で論じているので、ぜひ最初に読んで頂きたい。

まとめると

  1. 日本政府は輸出管理の優遇廃止を日本に裁量のある国内問題として論じ、韓国はWTOルールの話にして世界に被害者アピールをしたいので、そもそも言及対象の次元がずれている
  2. 「信頼関係」は判断に至った動機・背景であって、根拠・理由ではない
  3. 「信頼関係」は国家間の全体のものであって輸出管理上のものに限らない
  4. 「世耕・菅・安倍らが徴用工問題と絡めて論じたのは不適切だった」という論調は一理あるが、それは韓国の土俵に乗っかった話である

特に2番について、ここでも再度例を挙げて次項で説明します。

「信頼関係」は判断に至った動機・背景であり根拠・理由ではない

私が相手の過失で交通事故の被害者になった際を例に挙げます。

事故の時点で不法行為の損害賠償請求権が発生していますが、赤の他人であっても事故時とその後の対応などから人間としての信頼関係があったので、訴訟提起はしませんでした。

しかし、元から加害者が知り合いで事故対応とは無関係の所から既に信用ならない相手だと思っていたら、信頼関係など無いのですぐさま訴訟提起したかもしれません。

そうでなくとも途中で音信不通になったとすれば、信頼関係が崩れるでしょう。その場合に損害賠償請求をする際には、きっかけとして「信頼関係の崩壊」と言うでしょう。

その時に「なぜ訴訟提起したのですか?」と問われた際に、決して、不法行為の損害賠償請求の法的主張としての要件事実(故意or過失+不法行為+損害+因果関係)を言うわけがないでしょう?

「信頼関係」という当たり前のことが無くなり、状況の改善が見込めないから措置に踏み切ったと説明することは何もおかしくありません。

 

はい、話を日韓の輸出管理における主張に戻しましょう。

韓国側の言っていることは、私の交通事故の例で言えば『不法行為に基づく損害賠償請求の要件事実に「信頼関係の破壊」は無い!言ってることがおかしい!』と難癖をつけているのと同じです。同様に、メディアが日本政府が矛盾しているのでは?と言ってるのも同じことです。

訴訟外の話・訴訟に至った経緯の話(動機・背景)を、訴訟上の法的主張(根拠・理由)と混同させているのが韓国の戦略なのです。それに日本のメディアや出演している識者らが韓国側にアシストしているのです。識者らの言動は韓国メディアに都合よく使われていますからね。

はい、それではこの認識で河野外務大臣の発言を見ていきましょう。

河野太郎外務大臣の会見:輸出管理と徴用工大法院判決は無関係

河野外務大臣臨時会見記録 | 外務省 7月19日

【記者】関係のない問題を混同されているというお話がありましたが,日本側の輸出管理の規制の話でしょうか。また,日本としては別問題だという説明ですけど,完全に韓国としては混同されて関係が悪化しているんですが,この現状をどうごらんになりますでしょうか。

【河野外務大臣】輸出管理の問題は日本の国内法令に,いわば任されているものですので,日本として必要な見直しをやるというのはこれは当然のことであります。これは大法院判決とは何ら関係なく行われているものでございます。そこを混同して説明されるようなことがないように我々としては注意喚起をしていきたいと思います。

【記者】会談の場で,日本が到底受け入れられない解決案について韓国側がこれまで提案してきたけれども,とあえて言ったこと,あの場面についてはどのように受け止められましたでしょうか。

【河野外務大臣】韓国側から提案をいただいているわけですが,それは問題の解決に資することがない,国際法違反の状況を是正しないものですので,これは日本として受け入れられないということはその場で申し上げたものでございます。

【記者】先ほど来,輸出管理の問題は大法院判決とは何ら関係がないと仰ってますけども,当初日本側が輸出管理の問題を発表したときに,日韓の信頼関係が損なわれている要因としてですね,この問題を世耕大臣とか経産省の方も仰ってたわけですけども,何ら関係ないというのは言い過ぎなのではないでしょうか。直接関係ないかもしれないですけども,間接的には少なくとも関係があるんじゃないでしょうか。

【河野外務大臣】関係ありません。

【記者】では当初の説明は何だったんですか。

【河野外務大臣】経産省にお聞きください。

【記者】官房長官もそのようなことを仰っていましたけれども,背景として,1つとして,労働者の問題があると仰っていますけれども,その点の矛盾についてはどうご説明されるんですか。

【河野外務大臣】輸出管理はきちんと輸出管理当局間で対話が行われている前提で,その対話が行われていなかった,というふうに承知をしておりますが,今,外交当局で問題解決に当たっている大法院判決に関するものとは全く関係がありません

【記者】そうすると外務省と経産省で言っていることが違うということにはならないですか。

【河野外務大臣】違うことにはならないと思います。

河野大臣から輸出管理と韓国の戦時応募工の大法院判決は無関係だと説明しています。

これに対して記者がしつこく食い下がっているように聞こえます。

外務大臣としては外務省として朝鮮人戦時労働者問題についての判断を示せば足りるわけで、いちいち国家全体の信頼関係を持ち出す意義が無いのでこのような説明になるのでしょう。

記者が徴用工訴訟大法院判決と絡めて質問したから河野大臣が言及したに過ぎません。

河野大臣の認識は個人ブログでも輸出管理の問題と併せて示されています。

河野太郎のブログ:「信頼関係」は日韓関係の話

日韓関係 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト 7月20日 後半部分

今回の輸出管理の運用の見直しは、日本の輸出管理当局が安全保障の観点から実施しているものであり、旧朝鮮半島出身労働者問題とは全く関係がありません。

今回の見直し対象となっている物資・技術等は、軍用品への転用が可能な機微なものであり、各国当局はこれらの輸出を適切に管理する責任があります。

韓国の輸出管理制度が必ずしも十分でないにもかかわらず、2004年以来日本は韓国を「ホワイト国」と位置付けて手続を通常より簡素化してきました。

これは、当局間の対話が継続的に行われ、簡素化された手続での管理を適用するに足る日韓当局間の信頼関係が前提でした。

ところが、この3年間その対話が日本側が申し入れても開かれず、韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案も発生しました。

そのため、これ以上通常より簡素化された手続を維持することは困難と判断せざるを得ず、今回、韓国に対する手続について必要な見直しを行うことにしました。

いずれにせよ、今回の見直しは、あくまで輸出管理上の懸念に基づき行なっているものですので、あたかも旧朝鮮半島出身労働者問題に関する「対抗措置」であるかのような誤解をしないようにしていただきたいと思います。

ここでも「信頼関係」はいわゆる徴用工訴訟判決とは無関係であると書いています。

こちらは個人のブログであり、外務大臣の立場を離れて国家全体について論じているのですから、まったくおかしなことではありません。

矛盾では?と執拗に質問は毎日新聞記者と朝鮮日報で露呈

信頼関係が損なわれたと報復しておいて大法院判決とは無関係? 河野外相の詭弁に日本記者も「矛盾」-Chosun online 朝鮮日報魚拓

 河野外相は記者らに、「韓国側から、大法院判決の問題とは関係ない問題(輸出規制強化)をそれぞれ混同するかのような発言があった」として「輸出管理問題は日本の国内法令に基づくもので、大法院の判決とは関係なく行われているもの」と発言した。

 すると毎日新聞の記者が「(輸出規制強化発表の背景として)当初、日本側が『両国の信頼関係の毀損(きそん)』に言及した。世耕弘成・経済産業相も(同じ内容を)言った。無関係ではなく、間接的に関係があるのではないか」と尋ねた。河野外相が「経済産業省に尋ねてみろ」と即答を避けると、その記者は「菅義偉官房長官も(外相のように)同じことを言っているが、矛盾している」「外務省と経済産業省の言っていることが違うようだ」と再び質問した。これに対し河野外相は「輸出管理問題と大法院判決は全く関係ない」「違うことは言っていない」とだけ答え、細かな答弁は避けた。舌戦に近い問答だった

朝鮮日報も経産省の発表と矛盾しているという指摘をしていますが、その実態は再掲しますが以下で詳述している通り、全く矛盾していません。

韓国をホワイト国排除する日本の説明が不適切?信頼関係・徴用工問題を持ち出した意味

河野大臣が「無関係」と言い切っているのは、まったく間違いではありません。

「関係がある」というのは、どういう次元で・どういう意味で関係があるというのか?によって、受け手の認識が異なってきます。ですから、毎日新聞記者の質問に正面から答えてしまうと都合よく解釈されてしまうので、河野大臣は「無関係」と説明したのでしょう。

まとめ:経済産業省や安倍総理・菅官房長官・世耕経産大臣らとも矛盾していない

  1. 日本政府は輸出管理の優遇廃止を日本に裁量のある国内問題として論じ、韓国はWTOルールの話にして世界に被害者アピールをしたいので、そもそも言及対象の次元がずれている
  2. 「信頼関係」は判断に至った動機・背景であって、根拠・理由ではない
  3. 「信頼関係」は国家間の全体のものであって輸出管理上のものに限らない
  4. 「世耕・菅・安倍らが徴用工問題と絡めて論じたのは不適切だった」という論調は一理あるが、それは韓国の土俵に乗っかった話である
  5. 経済産業省や安倍総理・菅官房長官・世耕経産大臣らとも矛盾していない

日本のメディアが日本政府の立場を正確に論じず、なぜか韓国側の土俵の上で議論をしようとしていることは、非常に不可思議な状況です。

TVに出演している識者と言われる人も、その構造に気付いているのか知りませんが、韓国側にアシストしていることは先述の通りです。

私が見たところ、専門家としては元国連北朝鮮制裁委員の古川勝久氏が最も日本の国益に適った発信をしていると思いますので、彼の発言を追うと良いと思います。

以上