事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

日本国紀:関東大震災における朝鮮人被殺者数233人について

日本国紀で関東大震災の朝鮮人被殺者数に関する記述があります。

日本国紀 349頁

司法省の記録には、自警団に殺された朝鮮人犠牲者は二百三十三人とある

否定的見解がありますが、この記述の意義について触れます。

詳細は以下の記事で書き尽くしていますが、ここでは抜粋したものを提示します。

233人の根拠:司法省の「刑事事犯調査書」

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現代史資料(6)関東大震災と朝鮮人 みすず書房

朝鮮人被殺者数については、司法省刑事局が『震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書』(以下、刑事事犯調査書)でまとめています。

現代史資料(6)の中に掲載されています。

233人という数字は、「起訴事件になったものの中で、殺人の被害者となった朝鮮人の数」です。

この資料自体の信憑性が疑問視されているということがありますが、とにかく233人という数字がベースとなるものであるという事実は重要です。

関東大震災6000人虐殺説の嘘

数千人以上の報告をする調査は複数ありますが、以下が指摘できます。

  • 「屍体を発見できなかった同胞」数を算入しているが、本来行方不明者として扱うべきものである
  • 「屍体を発見した」とされる人数も、殺害されたのか震災による死体なのかの判断は極めて困難
  • 最後の遺体処理が行われた後に追加で被殺者数が増えており、なぜこれらが「殺害」と判断できたのか非常に疑わしい
  • 数え方が「500人」、「100人」など大雑把なものや、「87人または320人」など、まともに調査した跡が伺えない報告がある
  • 人口動態から、数千人が殺害されたと仮定すると「全滅」となり現実と矛盾する
  • 司法省の刑事事犯調査書の信用性に対する学者の評価が的外れ

詳細は前掲:関東大震災時の朝鮮人殺傷人数:6000人虐殺説の嘘 - 事実を整える

曖昧な「証言」を絶対的根拠にする愚

中には住民の「証言」の中に何百人も殺害されたというものがあるから、もっと朝鮮人被殺者数は多いはずだ、という見解があります。

たしかに、住民の証言でそのようなものはたくさんあります。

しかし、その人数は正確なのでしょうか?

そもそも、その証言は実在の事件を言っているのでしょうか?

正確さを確かめることができるのが遺体調査であるはずです。

当時の混乱の中で、「朝鮮人」と特定した上で被殺者数を正確に数えられたという前提に立つと、おかしなことになります。

証言の存在を持って何千人も殺害されたと結論づける者は、同様に「朝鮮人によるテロ行為」も大量の証言があるという事実を無視しています。

朝鮮人被殺者数においては証言を絶対的な根拠にし、朝鮮人による犯罪者数においてはただちに証言は信用できないとするダブルスタンダード。

関東大震災の研究者においても(しかもアカデミックな論文の体裁のものの文中でも)同じようなダブルスタンダードの姿勢のものが多数存在しています。

そのような証言をもって「証拠」と断定する者は、誘導以外の何物でもありません。

朝日新聞調査では432人、朝鮮総督府は832人

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朝日新聞社史

当時、朝鮮人被害者の民間調査は複数行われていました。

しかし、なぜか「朝日新聞調査」が挙げられることはありません。

朝日新聞調査によれば「刑事事件になったかは関係なく殺された者」が432人であるとしています。

また、朝鮮総督府は【震災によって死亡した者+何者かに殺害された者+行方不明者であって、それぞれ身元(遺族の所在)が明らかになった者】が832名としています。そして、朝鮮総督官房外事課は、この中で殺害された者は3割を超えることはないと推定しています。

こちらも詳細は前掲記事に書いてあります。

日本国紀における朝鮮人被殺者数233人の提示の意義

多くの書籍では何らの断りもなく「6000人虐殺説」が記述されています。

その一方で、ベースとなるべき233人の提示がなされることはほぼ無いと言っていいでしょう。

それはフェアな言論状況ではないと思います。

百田尚樹氏も、日本国紀の中で提示した233人の数字がそのまま被殺者数であるとは言い切っていません。

あくまでも6000人説に対して合理的疑問を差し挟むことを促しているに過ぎません。

そういう意味で、百田氏が日本国紀の中で233人を提示したこと自体をあげつらって非難している者は、いったい何が言いたいのだろうか?と思います。

また、「虐殺があったのかなかったのか」という議論は、「虐殺」の定義が日本語においても英語の”genocide”や”massacre”においても意味内容が様々なので、不毛です。

日本国紀をきっかけに、通説に疑問が出た人が、いろいろと調べていけばいいと思います。

以上