事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

即位恩赦で「犯罪者55万人が野に放たれる」という勘違いが広まる⇒復権のみ

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天皇陛下の即位に伴い実施予定の政令恩赦に関し、復権の対象が55万人になるという報道がありました。

これを受けてなぜか「犯罪者が55万人も野に放たれる」という勘違いが生まれています。

即位恩赦で55万人が対象⇒復権のみ

政府、55万人を恩赦へ=即位合わせ、18日閣議決定:時事ドットコム

即位恩赦、対象は約55万人 18日決定、政府が報告 | 共同通信

政府は15日の自民党総務会で、天皇陛下の即位に伴う22日の「即位礼正殿の儀」に合わせて実施予定の政令恩赦に関し、対象者数が約55万人に上るとの見通しを報告した。18日の閣議で正式決定する。鈴木俊一総務会長が記者会見で明らかにした。

 総務会に先立つ党政調審議会でも説明があり、出席者によると今回の恩赦では、有罪判決を無効とする大赦や、刑を軽くする減刑は実施せず、制限されている資格を回復させる復権にとどめる。

「復権」のみが今回適用されるということが書いてあります。

時事通信の報道ではこの点が書いてないため「55万人の犯罪者が野に放たれる」と勘違いしている人が出ました。

「55万人の犯罪者が野に放たれる」「刑が軽くなる」という勘違い

読んでいる記事によっては、こういう勘違いが起きかねない報道もありました。 

憲法と恩赦法の定め:大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権

日本国憲法

第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。

恩赦」には、「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除、復権」があります。

恩赦法

第一条 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権については、この法律の定めるところによる。
省略
第九条 復権は、有罪の言渡を受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し、又は停止された者に対して政令で要件を定めてこれを行い、又は特定の者に対してこれを行う。但し、刑の執行を終らない者又は執行の免除を得ない者に対しては、これを行わない。
第十条 復権は、資格を回復する。
○2 復権は、特定の資格についてこれを行うことができる。

政令で定めるものは「政令恩赦」、そうではないものは「個別恩赦」とされます。

個別恩赦ははさらに、内閣が閣議決定で定める基準により一定の期間を限って行われる「特別基準恩赦」と、常時行われている「常時恩赦」に区別されます。今回は政令恩赦の話ですので関係ありません。

なお、復権は「有罪の言渡を受けたため」資格を喪失停止した者に対して行われるため、例えば「ブルー卿」に司法試験憲法の問題の論点を教えてもらった女学生が司法試験の受験資格を喪失したものについては復権は適用されません。

さらに、復権は「刑の執行を終らない者又は執行の免除を得ない者に対しては、これを行わない」とあるので、罰金刑などは支払い済みの者が対象になるのでしょう。

過去の復権の事例

国⽴国会図書館 調査と情報―ISSUE BRIEF―第1027号 No. 1027(2018.12. 6)恩赦制度の概要 を見ると、「昭和天皇御大喪恩赦」では約 1014 万人、今上天皇御即位恩赦では約 250 万人が復権の対象となっています。

また、恩赦とは別に「国家公務員の懲戒処分の免除」も同時に行われた例があります。

昭和天皇の崩御に伴う職員の懲戒免除等について:文部科学省

ただ、今回は行わないようです。

「国家公務員の懲戒処分の免除」と毎日新聞がフェイク:菅官房長官が全否定

 

まとめ:詳しくは政令が閣議決定されるのを待つべき

この報道は「自民党総務会」で話された方針が元になっています。

ですから、政府とは別主体での話なので、正式な決定ではありません。

18日に閣議決定する予定なので、そちらが正式決定です。

関連:恩赦の対象:天皇の譲位・改元に伴う即位礼正殿の儀に際して

以上