事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

森ゆうこ議員「原英史は公務員だったらあっせん利得収賄罪相当」⇒免責特権の対象外か

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今年6月から毎日新聞だけが「特区ビジネス・特区審査隠し」問題として記事を書いているものに関して、森ゆうこ議員が国会で再度質問しました。

その内容が名誉毀損・侮辱に当たるものなのでもう一度この問題を整理します。

各者のツイッター上の発信や国会動画は以下参考:「毎日新聞を資料として質問し不正行為をしたと断定」 原英史さんが森ゆうこ議員に抗議 | 以下略ちゃんの逆襲 ツイッターGOGO

森ゆうこ議員の主張「原英史は公務員だったらあっせん利得収賄罪相当」


 動画の1時間23分頃からです。

国民民主党・森ゆうこ「誰が事業者の選定をしたのか?例えば加計学園」

安倍総理「分科会、区域会議、最終的には諮問会議で決める」

森「WGは決めてない、でも分科会メンバー見ると原英史。原さんが決めてる利益相反。国家公務員だったらあっせん利得、収賄で刑罰受ける」

なお、この資料の図を見れば分かりますが、原氏の顔写真が用いられているものは、毎日新聞の6月11日朝刊の紙面のものです。情報源は毎日新聞だということです。

毎日新聞「特区ワーキンググループが審査選定をしているのは不適切」「特区のコンサル会社が200万円受取り」

毎日新聞の記事の内容は以下でした。

国家戦略特区 政府ワーキンググループ委員関連会社 提案者から指導料200万円、会食も - 毎日新聞

政府の国家戦略特区を巡り、規制改革案を最初に審査するワーキンググループ(WG)の原英史座長代理と協力関係にあるコンサルタント会社が、2015年、提案を検討していた福岡市の学校法人から約200万円のコンサルタント料を受け取っていた。原氏は規制緩和の提案を審査・選定する民間委員だが、コンサル会社の依頼で、提案する側の法人を直接指導したり会食したりしていた。

原氏とWG座長の八田達夫氏は、毎日新聞に対して何度となく抗議をし、原氏と毎日新聞との間で名誉毀損の損害賠償訴訟が行われています。

【毎日新聞の捏造】原英史国家戦略特区ワーキンググループ委員と特区ビズの関係

「特区ビジネス社の経営とは無関係」「提案者への情報提供・助言はWGの本来業務」「WGは審査・選定はしない」

森ゆうこ議員の国家戦略特区に関する質問通告に関して – アゴラ

毎日新聞社とは訴訟係属中だが、訴訟で同社は、私が直接ないし間接に実質的に金銭を受け取ったことを報じたわけではないと主張。表向き記事訂正はしていないものの、報道内容の根幹部分を事実上はすでに撤回したとも受け取れる状態だ。

ところが、その後も、一部の国会議員の方々は「国家戦略特区利権隠ぺい疑惑 野党合同ヒアリング」を開催し、私が収賄罪相当の行為をしたなどと、事実無根の誹謗中傷発言を続けている。こうした発言をした議員には順次、訴訟を提起ないし準備中だ。

中略

1)特区ビジネス社の当時の経営者と面識があるが、それだけだ。私は、特区ビジネス社の経営に携わったことも、同社から一円ももらったこともない。知人の中に会社経営している人は数えきれないほど存在し、そうした数多くの会社の一つに過ぎない。

2)次に、国家戦略特区のプロセスで、提案者に情報提供・助言することは、特区WG委員の務めだ。知人だろうがなかろうが、私は、依頼があれば可能な範囲で最大限対応している。当たり前だが、それで報酬を受け取ることなどない。

特区ビジネス社やその顧客に対しても、情報提供・助言を行ったことがある。本来任務だから当然だ。それと、特区ビジネス社とその顧客との取引は、何も関係がない。いかなる観点でも、私が不適切な行為をしたと指摘されるいわれがない。

・特区ワーキンググループは特区諮問会議とは別の組織であって【提案者側

・特区ビジネス社の社長は原氏と別組織で一緒だが、特区ビジネス社の経営・運営とは何ら関係が無い。

関係図としては以下です。

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参考:原英史はコンサル会社との特区ビジネスで「収賄罪相当」「公平性の逸脱」なのか

毎日新聞は特区諮問会議が発足する前のワーキンググループの議事概要の配布資料の中で「WGにおいて選定する」という文言があることから、「ワーキンググループが事業者を選んでいた」「選定する側が助言をするのは利害関係人による利益供与だ」と言っています。

しかし、令和元年10月15日の参議院での答弁によれば、実態は「特区で扱う改革項目を選定する」という意味でした。

つまり、特定の「事業者」を選定するのではなく「規制改革項目を選定するという意味のようです。

実際上も、ワーキンググループで何らかの「事業者選定」をするという役割にはなっていません。

また、森ゆうこ議員は『「分科会」に原英史氏が居るから利益相反』と言っていますが、少なくとも広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の今治市 分科会の議事要旨等を見る限り、事業者選定に関して原英史氏は関与してるとは認められません。

情報源の毎日新聞は訴訟で「原氏が200万円を受け取ってはいない」

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毎日新聞令和元年6月11日朝刊1面

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このような図を提示しておいて訴訟では「原氏は200万円を受け取っていない」と主張する毎日新聞

にもかかわらず、毎日新聞を情報源としている森裕子議員は「原氏は公務員だったらあっせん利得・収賄で刑事罰」と言っているのですから、何らの根拠も無く言っているに等しいです。

つまり、名誉毀損・侮辱に相当する行為を国会議員が国会の場で行っているということです。

森裕子議員は国会議員の免責特権の対象外か 

森裕子議員は国会議員の免責特権で守られるのでしょうか?

憲法51条の免責特権

憲法51条

両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない

したがって、今回の件では、国会議員である森裕子は名誉毀損の法的責任を問われないということが原則となります。 

先例となる最高裁判例では国の損害賠償責任が認められる余地がある

最高裁判所第3小法廷 平成6年(オ)第1287号 平成9年9月9日判決(判例の規範部分を抜粋)

国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。

つまり、国会議員による名誉毀損行為については議員個人の責任は認められないが、国家賠償請求は認められる余地がある、ということです。

このような事案について最近の事例としては高須院長が大西健介議員に対してCMが揶揄された事に対する名誉棄損訴訟がありますが、違法不当な目的が認められずに高須院長が敗訴しています。

今回の森ゆうこ議員は情報源である毎日新聞が否定しているにもかかわらず原氏個人の問題であるとして主張しているので、「違法不当な目的」或いは「虚偽であることを知りながら」事実を摘示していると言えるのではないでしょうか?

国=私たちの血税から支出されるだけか

しかし、それでも国家賠償責任が認められるだけであって、森ゆうこ個人には請求できません。つまり、私たちの血税からお金が出ていくだけであり、ダメージを受けるのは森ゆうこ議員ではなく国民です。

そのため、原英史氏は森裕子議員が除名になることを各方面に求めるようです。

なお、森ゆうこ議員を含め、何名かの野党議員は「野党合同ヒアリング」の場でも同趣旨のことを発言しているのですが、これが免責特権の対象になるのかは未検討です。

ただ、憲法51条の「議院」は場所的概念ではなく機能的概念とされるので、正規の手続ではない野党合同ヒアリングが「議院」における発言等とされるかは疑問です。

まとめ

森ゆうこ議員が情報源としている毎日新聞が訴訟の場で「原氏が金銭を受け取ったわけではない」と主張している上に、特区WGが「事業者の選定」を行ったという事実が示されたことはありません。「規制改革項目の選定」という意味です。

この話で国会の貴重な時間を奪うのは本当に血税の無駄でしかありません。

以上