事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

立憲民主党が安定的な皇位継承に関する論点整理:「女性宮家」への強い執着

立憲はこんなもんだろう、というものと、面白い発見。

立憲民主党が安定的な皇位継承に関する論点整理

【常任幹事会】第96回「安定的な皇位継承に関する検討委員会論点整理」了承、 衆院埼玉県第2区に新人の松浦玄嗣さん・参院埼玉県選挙区に現職の熊谷裕人議員が公認内定 - 立憲民主党

3月12日、立憲民主党が安定的な皇位継承に関する検討委員会の論点整理を了承しました。

今後、国会での議論においては以下の4 つの視点からの議論が必要としています。

  1. 「退位特例法成立時の附帯決議」上の文言である、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」に対して「真正面から応える形」が国会で必要
  2. 憲法適合性の検討
  3. 国会としての主体的な議論の提示と合意が必要
  4. 制度を議論するにあたっては、長い歴史と伝統を尊重すること

立憲民主党が執着する「女性宮家の創設等」というワード

立憲民主党は「女性宮家の創設等」というワードに強いこだわりを見せています。

それは退位特例法の附帯決議にある文言ではあるのですが、政府の有識者会議報告書では附帯決議を引用する以外はそのワードは使われず、「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること」という一般化された表現でした。

「女性宮家」と言えば、皇族の血筋ではない男性との婚姻を想起させる用語法ですが、例えば【旧皇族の男系男子の皇籍復帰をする+その者と女性皇族との婚姻】という場合には、女性皇族は婚姻後も皇族の身分を維持するということになります。

近代までは男性皇族を婚姻相手に選ぶ事も多く、その場合は婚姻後も女性皇族が皇室に残りました。現行の皇室典範でもその場合を想定した規定があります。

ただ、果たして立憲民主党が想定しているケースはどうなのかは不明です。

直近だと、2月28日に立憲民主党の馬淵澄夫議員が衆議院予算委員会第一分科会にて「女性宮家」という呼称を用いるよう政府に執拗に迫った質疑がありますが…

婚姻後も女性皇族の皇族の身分保持可能とし、配偶者と子に皇族の身分付与に賛成

立憲民主党は「女性宮家の創設等」の検討枠組みに関しては、「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とする案」に賛成し、この場合における「配偶者及び子に皇族としての身分を付与する案」と「配偶者及び子に皇族としての身分を付与しない案」を比較検討すべきと整理しました。

党としては「配偶者及び子に皇族としての身分を付与する案」に賛成である雰囲気が読み取れる記述となっています。

旧11宮家男系男子から養子を迎える案は対象者の意思確認と憲法上の諸課題のクリアを議論すべきとした

いわゆる旧皇族と言われている旧11宮家男系男子から養子を迎える案に関して、立憲民主党は「やはり」と思わせる記述を入れてきました。

(1)対象者の調査と意思確認
 この案については、まず、現実的に養子の対象となり得る方がおられるのかを、その方の意思とともに、慎重に確認した上で、制度設計の議論に移らなければならないと考える。対象者の存在が不明なまま、具体的な制度を設計することはできないからである。その上で、具体的な養子制度をどのように設計するのかを、憲法上の規定と整合性を持つかどうかを含めて検討すべきである。

立憲民主党は「対象者の存在が不明なまま、具体的な制度を設計すること」を問題視していますが、制度とは本来、そういうものです。皇統に属する男系男子のみを天皇とすると決めた明治の旧皇室典範の時代に現在の天皇陛下はお生まれになっていません。

本来は国が制度を決めた上で具体的な対象者にアプローチして「お願いしに行く」のが、旧皇族が皇籍離脱した経緯からして筋。

具体的な対象者は明示しないが、『ある程度の幅を持つ対象者の範囲』を決めた上での検討なら、OK。単なる一例ですが、「旧11宮家の血筋の者で、且つ、明治天皇や昭和天皇の血筋の者」といった限定をすればよい。それでその時点で対象者が出なかったならば、後代に再度お伺いすれば良い。

旧11宮家の男系男子に限定して養子を選ぶことは皇統に属する男系男子間で平等原則に反しないか?⇒皇別摂家?

旧皇族の養子縁組に関して、これまでに無い新しい問いが立憲民主党の論点整理には見られました。それが、「旧11宮家の男系男子に限定して養子を選ぶことは皇統に属する男系男子間で平等原則に反しないか」という疑問です。この問いは政府の有識者会議や日本維新の会・NHK党の意見書などでは触れられていないものです。

他の一般国民との関係に関しては内閣法制局が令和5年11月に「旧皇族男系男子の養子制度は法律で養子の範囲を適切に定める限り憲法14条違反ではない」と答弁していました。

今回は、「他の(皇統に属する)男系男子」が比較対象。これはどういうことか?

「(皇統に属する)男系男子」とは父親を辿れば神武天皇に繋がる血筋を指し、旧皇族もこれに含まれますが、実は「皇別摂家」という血筋が別に存在しこれも含まれるのではないか?という考え方があります。

皇別摂家とは、一般的に五摂家のうち江戸時代に皇族が養子に入って相続した後の近衛家・一条家・鷹司家およびその男系子孫を指します。ただし、これらは臣下の身分であって、皇族であったわけではありません。

したがって、平等原則違反にはなりません。ただ、ひと言答弁があった方が良い。

おそらく、立憲民主党は「その先の議論」を仕掛けたいのでしょう。

悠仁親王殿下がご健勝であられれば良いのですが、後世にいよいよ、という状況になり、旧皇族に対象者が見つからなかった場合にどうするのか?という、仮定的な状況。要するに、「父親を辿れば神武天皇に繋がる血筋であれば誰でも良いのか?」という問いです。この問いに現時点で確定的に答えるべきかどうか、どう答えるべきか…

国会での論戦と政府の対応からは目が離せません。

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