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高市総務大臣時代の政治的公平性判断は論理破綻?政府統一見解「番組全体を見る中でも一つ一つの番組を見て判断」・山形テレビが自民党一党の広報番組放送で行政指導

自民党広報番組が「一つの番組」で判断されてるやんけ

高市総務大臣時代の「一つの番組」での政治的公平性判断は論理破綻?

令和5年3月3日の参議院予算委員会において、小西洋之議員が総務省の内部文書とされる文書の内容に基づいて放送法4条の政治的公平性の解釈に関する答弁の経緯を質疑した際、高市早苗議員が「捏造文書でなければ辞職」という旨の発言をした件の関連。

「そもそも高市総務大臣時代の「一つの番組」での政治的公平性判断は論理破綻である」という主張があります。

放送法の規定は以下(全面改正前は44条)

放送法

(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

こうした論調について検討していきます。

2015年高市総務大臣答弁と昭和39年政府答弁と2016年の安倍総理答弁

高市総務大臣時代の答弁とは以下です。

第189回国会 参議院 総務委員会 第8号 平成27年5月12日

○国務大臣(高市早苗君) 放送法第四条第一項第二号の政治的に公平であることに関する政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げましたら、一つの番組のみでも、選挙期間中又はそれに近接する期間において殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては、一般論として政治的に公平であることを確保しているとは認められないと考えます。

これは昭和39年の答弁を下敷きにしています。

第46回国会参議院逓信委員会昭和39年4月28日

○政府委員(宮川岸雄君) 公安及び善良な風俗を害しないとか、政治的に公平である、こういうような、あるいは、意見が対立している云々というようなことにつきましての、個々の番組に対する判断というものは非常にむずかしい問題でございまして、人によっては、この程度が公平であるが、人によっては、多少これは公平を欠いているというような判断が、人によって相当違うものであろうかと考えるわけでございます。したがいまして、先ほどの御説明をもう少しふえんさしていただくならば、ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、これが直ちに公安及び善良な風俗を害する、あるいは、これが政治的に不公平なんである、こういうことを判断する——一つの事例につきましてこれを判断するということは、相当慎重にやらなければもちろんいけませんし、また、慎重にやりましても、一つのものにつきまして、客観的に正しいという結論を与えることはなかなかむずかしい問題であろうと思うのであります。

「極端な場合を除い」た場合であっても一つの番組について公平性の欠缺と判断することについては「相当慎重に」であり、完全に排除されていない表現ではありますが、これが「極端な場合を除いて一つの番組のみで政治的公平性判断をすることはない」という政府見解のもとになっています。

高市大臣答弁後、安倍総理が同じ内容について問われた際に以下の経緯がありました。

第190回国会 衆議院 予算委員会 第11号 平成28年2月10日

○安倍内閣総理大臣 放送法第四条の政治的に公平であることとは、従来から、政治的な問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体としてのバランスのとれたものであることと解釈してきたものと承知をしています。
 その適合性の判断に当たっては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するものであり、従来の解釈を変えるものではないと理解をしております。

○大串(博)委員 明確に答えてください。
 これは安倍政権になって出された紙ですよ。その紙で、これまでは、一つの番組というよりは、放送事業者の番組全体を見て判断するという考えを示してきましたと確認しつつ、他方、一つの番組のみでもということで、一、二、特に二は、国論を二分するような政治課題についても、ある放送の内容によっては政治的公平性をチェックするとつけ加えているじゃないですか。これは安倍政権になってつけ加わったチェック項目ですよ。
 新たに放送法に定めるチェック項目を加えた理由は何ですか。必要性は何ですか。

○安倍内閣総理大臣 それは高市大臣の回答でございますから、総務大臣の名前で出しておられる回答書でありますから、それは総務大臣に聞いていただければいいのではないかと思いますよ。

○大串(博)委員 とすると、聞きますけれども、安倍総理はこれと異なる見解をお持ちだということですか。お答えください。

○安倍内閣総理大臣 その趣旨を聞きたいのであれば、総務大臣をここに呼んでいただければ答えるはずでありますが、総務大臣が総務大臣の名前で出した回答書の趣旨について、その趣旨は何だと聞かれても、私は答えようがないわけでありまして、まさに今初めて私は御質問をいただいたわけでございますが、総務大臣にその趣旨については聞いていただきたい。
 例えば、安倍晋三名で出したのであれば別ですよ。あるいはまた、閣議決定して出したものであれば、私がここで答えますよ。しかし、総務大臣名で出したものを今ここで私に聞かれても、お答えのしようがないということでございまして、これは私は常識ではないのかな、このように思うところでございます。
 そこで、御質問のようなことを聞きたいのであれば、ぜひ前もって総務大臣をと指定していただければ、これは直ちに総務大臣が出てくるものでございます。

○大串(博)委員 二つ申し上げます。
 この件については、実は、きのうまで二回にわたって高市総務大臣の見解を求めてまいりました。高市総務大臣の見解を求めて、この国の最高の立場にいらっしゃる総理に対して確認しなければならないと思い、きょう総理に聞いているわけでございます。そのために、きのう質問通告も綿密に行っています。
 さらには、この見解は、去年の五月の段階で高市大臣が国会でも述べていらっしゃいます。国務大臣が国会で述べていることに関して、安倍総理が同じ考えかどうか確認するのは、ある意味当然じゃないですか。
 同じ考えなら同じ考え、違うなら違うとはっきり述べてくださいよ。

○安倍内閣総理大臣 これは、同じ考えとか同じ考えではないということではなくて、繰り返させていただきますと、放送法第四条の政治的に公平であることとは、従来から、政治的な問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体としてのバランスのとれたものであることと解釈してきたものと承知をしております。
 その適合性の判断に当たっては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するものであり、従来の解釈を変えるものではないと理解をしているわけであります。
 そこで、総務大臣の回答の趣旨については、まさにこれは総務大臣に聞いていただかなければならない、こう思う次第でございます。

今年3月3日の小西議員に対する高市大臣の答弁で「もし安倍総理と私が放送法の解釈についてなにか相談をしてたとしましょう、それをしてなかったからこそ、平成27年5月藤川委員からのご質問に私が答えた答弁と、28年の2月ですか、安倍総理がなさった答弁の内容が食い違ってるとして、当時野党の方から政府統一見解を出せと、それもペーパーにして出せと言われた。そのような食い違いが起こったくらいですから」と言われていたのはこの場面のことです。

総務省の政府統一見解「番組全体を見る中でも一つ一つの番組を見て判断」

そうして平成28年2月の安倍総理答弁後に出て来たのが総務省の政府統一見解です。

朝日新聞は以下などで報じていますが、「新解釈」や「解釈追加」などとは書いておらず、「高市答弁を踏襲」としていました。

「番組見て全体を判断」 電波停止発言で政府統一見解 相原亮 2016年2月13日02時10分

それが2023年の今回の話では朝日新聞は「新解釈」や「解釈追加」と、取材対象者の用語法を掲載しつつも独自の用語法を交えて報じています。

安倍総理「山形テレビが自民党一党だけの広報番組を放送で行政指導の例」

これを受けて、安倍総理も以下答弁していました。

第190回国会 衆議院 予算委員会 第17号 平成28年2月29日

○安倍内閣総理大臣 政府の統一見解で説明したとおり、総務大臣の見解は、番組全体を見て判断するという従来の解釈を変更するものではなく、これを補充的に説明し、より明確にしたものであります。御指摘のような問題はなく、これは撤回する必要はないと考えておりますが、政府統一見解で説明したとおり、番組全体は一つ一つの番組の集合体でありまして、番組全体を見て判断する際に、一つ一つの番組を見て全体を判断することになるのは当然のことであろう、こう思います。むしろ、一つ一つの番組を見ずにどうやって全体を判断するんですか、そうお伺いをしたいところであります。
 つまり、その点を、今、すごいねといういつものやじがございましたが、一つ一つの番組を見なくてそれを判断できるということで言っているのであれば、大変私は理解ができないと言わざるを得ないわけでございます。
 そして、今まで停波をしたことはないのでございますが、厳重注意したことが二回あります。放送事業者に対し、放送法第四条第一項第二号の政治的に公平であることに違反したとして行政指導が行われた事例はございませんが、同号の規定との関係において、放送番組の編集上の重大な過失があったこと等について地上波のテレビ局に行政指導が行われた例はあるわけであります。
 これは、例えば平成十六年の三月二十日であります。小泉政権時代、私は官房長官だったかと思いますが、山形テレビが自民党一党だけの広報番組を放送したんですね。山形、地方の時代の危機という番組、八十五分の番組、自民党一党だけの番組を放送したわけでございます。自民党政権でございましたが、それにはかかわりなく、この番組は行政指導が行われているわけでございます。やはり、一つ一つの番組を見なければ行政指導ができないのは当然のことではないでしょうか。
 例えば、行政指導をしたにもかかわらず、これは、八十五分のものを選挙中に毎日やったらどうなるんでしょうか。それはやはり問題ですよね。それも問題がないとお考えなんでしょうか。八十五分、自民党だけの宣伝番組をずっと何回もやったら、それはやはり問題なんだろうな、こう思いますね。

安倍総理は「平成16年に山形テレビが選挙期間中に自民党一党だけの広報番組を放送をした」ことを受けて行政指導をした例を出し、「一つの番組」での判断についてあり得ると説明しています。

政治的公平が問題になった二回の例としては他に「TVタックル」の事案があります。

(参考) 過去に問題となった主な事例 魚拓

平成16年6月22日 総務省 株式会社山形テレビのいわゆる「政党広報番組」の放送に関する問題への対応

そこでは以下の説明がありました。

1      本件放送番組のように、特定の政党が企画制作し放送局に持ち込まれるいわゆる「政党広報番組」については、一般の報道番組等と異なり、その性格上、その一つの番組の中で、他の政治的主張や意見を取り入れる余地がないものであることから、放送事業者は、その放送に当たり、一党一派に偏ることがないよう相当程度厳格な注意を払う義務がある。

ここでは「他の番組の放送ではどうだったのか?」ということは考慮されていません。

この種の番組を選挙期間中に放送することが一発で「アウト」判定となり得るということが伺えるだけです。

高市総務大臣時代の答弁、その後の政府統一見解も、この枠を超えていないということが分かります。

麻生太郎総務大臣の答弁を引き合いに出してる者が居ますが、この総務省の指導以前に「最終判断に至っていない」中で出て来た答弁です。

この話は現在の喧騒の中では隠蔽されていますが、やはり本件に関する細かい認識がスピンされた報道なり主張が散見されていることと無関係ではないでしょう。

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