事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

Seth Morris=森摂「処理水の希釈海洋放出がOKなら有機水銀など何でもアリ」:武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授

倫理どころかただの事実誤認

Seth Morris「処理水の希釈海洋放出がOKなら有機水銀等何でもあり」

https://archive.is/waWhe https://archive.is/J2guB

Seth Morris(@setsumori)というアカウントが「希釈海洋放出がOKなら有機水銀・カドミウムなど何でもアリ」などと発言しており突っ込みを食らっています。

ところで中の人の属性を考えると、きちんと批判されて然るべきだと思います。

武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授の森摂 オルタナ編集長

武蔵野大学|環境/サステナビリティ|トピックス(アーカイブ)森摂客員教授が聖火ランナーとして疾走しました!2021年6月18日

Seth Morris(@setsumori)というアカウントの「中身」は、武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授の森摂であることが分かっています。オルタナという媒体の編集長でもあります。

https://archive.is/83ziO

森 摂(オルタナ編集長), Author at オルタナ

意味不明且つダブルスタンダードな「環境倫理」論

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/463216.pdf

https://twitter.com/setsumori/status/1700356176146506193

処理水放出は、突き詰めると
モラル問題(環境倫理)です。
もし仮に、台湾の原発でメルトダウンが起き、何年か後にデブリに触れた水を放出となったら、日本は快く受け入れるか。隣人の気持ちを慮ることが倫理です。
ましてや、太平洋は公(おおやけ)の海。皆のものです。
処理水はいわば産業廃棄物で、その大量処理に公海を使うべきではありません。

森氏は「太平洋は公海・公の海」だから産業廃棄に使うな、台湾など隣人の気持ちを慮ることが倫理だ、と主張しています。

しかし、そもそも排出しているのは日本国の領海であり、国際法上の「公海」に直接投棄しているのではありません。最終的には排他的な利用が認められていない海に流れ込む、という意味なら、世界中の海が関係するはずです。

しかも、台湾も含めて原発の液体廃棄物として排水が為されており、放出先は日本海や東シナ海や太平洋であり、他国の原発が排出している放射性物質の量は福島第一原発以上の所ばかりです。トリチウム以外の物質も同様です。

「デブリに触れた水」という言い回しも風評加害の常套句ですが、世界の他の再処理施設から排水される放射性核種も、福島第一原発と変わりありません。

化合物の組成は不明だから未知の核物質だ」と言い放つ人が居ましたが、炉心周辺の物質は分かっている上に、これまでの検査で全く性質が異なる毒性を持つ化合物の存在が示されたことはありません。

科学に基づいて決定された国際的な基準に適合しているものについて「倫理問題だ」と言うのは、そういう立場を採るのは結構でしょう。そういうカテゴリなんだというだけの話。

しかし、他国と比較して日本についてだけ排出を咎める態度というのは、非対称な要求でありダブルスタンダードであって、「環境倫理」というカテゴリを採用したからといって正当化できるものでは無い。

一般工場からも水銀・カドミウム・六価クロムは排水・海水中に既に存在

https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj1965/51/5/51_302/_pdf/-char/ja

森氏は「薄めれば海に流すのがOKなら、有機水銀やカドミウムも、六価クロムも何でもアリですね」などと皮肉として語っていますが、この文章は「薄めれば」とあるので処理水中に含まれるトリチウムを希釈して基準値以下にすることを少なくとも主な対象にしていると言えます。

さらに、前提として「有機水銀・カドミウム・六価クロム」とトリチウムを同列の物として扱っていることになります。どういう意味で同列なのかはこの一文の文面上では定かではありませんが、この種の話では「生体濃縮」以外に考えられないでしょう。

が、これらは事実誤認です。

トリチウムは普通の水道水の中にも存在しているものであり、生体濃縮しません

次に、トリチウム以外の放射性核種についても、一般の工場などからも、排水が基準値以下の濃度になるよう処理されていますが、排水基準は全くゼロということではありません。

一般排水基準 | 水・土壌・地盤・海洋環境の保全 | 環境省

  • カドミウム及びその化合物    0.03mg Cd/L 
  • 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物    0.005 mg Hg/L
  • 六価クロム化合物    0.5 mg Cr(VI)/L

これらの排水基準が掲げられています。

なお、場面によっては「検出されないこと」が求められる物質もありますが、その意味は定量限界(ある分析方法で検知できる最小の濃度)です。

【No.14】 検出されないこと|よろず相談室|ミヤマ株式会社 環境分析測定&リサーチ

アルキル水銀の場合、公定法として“昭和46年12月環境庁告示59号付表2”及び“昭和49年9月環境庁告示64号付表3”が定められていますが、その定量限界は“0.0005mg/L”と示されています。

さらに、海水中に含まれる物質として、水銀は0.14ng/kg、カドミウムも70ng/kgが存在しているという結果が報告されています(上掲図)。1996年時点での白鳳丸航海の結果も含めた報告なので、原発事故は関係ありません。

魚介類中のメチル水銀は、自然界に存在する水銀が微生物の作用によって有機水銀化することで存在します

まとめ:環境倫理・哲学ですらないディスカウントジャパンの風評加害

科学的な安全性が示されており、現実に世界中で放出されているのに何ら問題が無いものについて難癖を付けるために倫理や哲学を持ち出す人が居ます。

そういう領域独自のロジックがあってその上で立論しているだけなら良いが、既にみたように森摂氏のような主張は単なるダブルスタンダードであり、日本にだけ非対称な行動を求めるものになっています。

よって、ディスカウントジャパンの風評加害行為だと言う他ありません。

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