議事録(発言者が明示され時系列毎に記録されたもの)が作成されていないことが問題視されていることに関して(議事概要は公開)、6月1日の決算行政監視委員会で菅官房長官から驚きの発言が飛び出ました。
- 加藤厚労大臣「発言者が特定されないことを前提に参加いただいている」
- 菅官房長官「専門家会議から求められれば議事録作成も検討」
- 専門家会議の提言を判断するのが政権の責任だろう
- 宮本議員の質疑の巧妙なカラクリ
- 平時の審議会・懇談会は議事録作成し、歴史的緊急事態では作成しないとされているガイドラインで良いのか?
加藤厚労大臣「発言者が特定されないことを前提に参加いただいている」
宮本議員の質疑に対して加藤厚生労働大臣は、「発言者が特定されない形の議事概要を作成することを前提に委員の方に了承を頂いて参加いただいている」と明言しました。
その上で、「専門家会議は、行政文書の管理に関するガイドラインでは、政策の決定を行わない会議に該当し、議事録作成までは求められていないが、ホームページ上で議事概要は内容がかなり丁寧に作成されている。ただ、先月29日の会議で構成員の方々から『議事概要の在り方を検討してもいいのではないか』というご意見もあり、脇田座長らと西村経済再生担当大臣が調整している」と答弁しました。
菅官房長官「専門家会議から求められれば議事録作成も検討」
加藤厚労大臣の後に菅官房長官が以下答弁しました。
(動画1時間10分過ぎ)
宮本徹(日本共産党)議員 前段省略
止めてるのは政府の側じゃないですか。ちゃんと公開する、その方向で検討すると指示してください
菅 今ご承知の上でそういう発言をされているんだろうと思いますが、いずれにしろ、専門家会議の今日までの経緯については加藤大臣が申しあげた通りでありますし、29日の専門家会議では、構成員の方から議事概要の在り方を一度点検してもいいのではないかという発言があり、それについて脇田座長の考え方も先ほど厚生労働大臣から話がありました。政府とすれば、決めたことに対してしっかり、自由闊達にできるという形で当初は理解して外したわけでありますけど、また委員会で違う方向になってたとえばそれに従うというのはこれは政府側の考え方でありますし、別段止めるとかそういうことは申し上げる立場にないと思います。
何だ?これは?
専門家会議の提言を判断するのが政権の責任だろう
菅官房長官の答弁の仕方では、まるで議事録作成の判断は専門家会議に丸投げしているように聞こえますよね?
政府は専門家会議の提言を踏まえて新型コロナウイルス感染症対策本部会議で政策決定をするのだから、専門家の見解に「従う」とか、専門分野の話ですらそういう立場ではないでしょう。
それを議事録作成の実施の有無についてまで専門家の判断にまかせるというのは、政権としての責任を取る気が無いんだろうと思わざるを得ません。
ガイドラインは内閣が作成してるんですから当然です。
宮本議員の質疑の巧妙なカラクリ
質疑は宮本徹(日本共産党)議員だけど、平時の審議会・懇談会の規定で議事録を作成することになってる・あらゆる記録を残す、その基本が議事録だ、という目的部分を示したのはいいのだけど、「歴史的緊急事態」におけるガイドラインの該当部分は隠しつつそれ以上突っ込まないのでマスコミ向けだなと。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2020年6月1日
宮本議員の質疑を聞いてると、「歴史的緊急事態」に当たるという指摘がなく、この質疑だけを見た人は勘違いするようになっています。
行政文書の管理に関するガイドラインでは、平時の扱いとは別建てに「歴史的緊急事態」の場合の公文書の扱いについて定められています。
政策の決定を行わない会議というのはそこにおける分類方法であり、新型コロナウイルス感染症対策本部会議は政策の決定を行う会議だから議事録を作成し、そうではない専門家会議は議事録作成の義務はなく(作成することは妨げられて居ない)、今回は議事概要を作っている(速記録は2回と4回以降は作成)としています。
しかし、宮本議員は「平時の審議会・懇談会の規定で議事録を作成することになってる」とだけ指摘しているのがわかります。それはその通りなのですが、この言い方をしておきながらそれ以上政府に見解を問わないということは、これはマスコミ向けのパフォーマンスなのだなと思います。
12ページ
<別表第1の業務に係る文書作成>
○ なお、審議会等や懇談会等については、法第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする。
81ページ
2 審議会等文書 審議会その他の合議制の機関又は専門的知識を有する者等を構成員とする懇談会その他の会合(この表において「審議会等」という。)に検討のための資料として提出された文書及び審議会等の議事、答申、建議、報告若しくは意見が記録された文書その他審議会等における決定若しくは了解又はこれらに至る過程が記録された文書
平時の審議会・懇談会は議事録作成し、歴史的緊急事態では作成しないとされているガイドラインで良いのか?
上記記事でも私自身が問題提起してますが、宮本議員の言う通り、平時の場合において規定している項目では専門家が出席する会議では「発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする。」と義務化が明記されているのに、それが歴史的緊急事態になると議事録が必須ではなくなるというのはなぜなのか?というバランス論が可能です。
このアンバランスさがなぜ存在しているのか?
単に「自由闊達な議論をさせるため」だけでは正当化不能と思われるため、ガイドラインを見直すべきだろうと思います。
もっとも、私自身は議事録作成不要派です。
それは以下で指摘してますが、目的上不要だし、メディアによる個人に対するリンチ、コンテンツ消費の危険などが念頭にあります。
以上