事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

『「賭け麻雀は賭博罪」安倍政権が閣議決定していた』記事の不毛さ

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「賭け麻雀は賭博罪」安倍政権が閣議決定していた』

という事を記事にしている所がありますが、この意味を勘違いしてる所があるので整理します。

「賭け麻雀は賭博罪」安倍政権が閣議決定していた

平成十八年十二月八日提出 質問第二二五号 外務省職員による賭博に関する質問主意書提出者 鈴木宗男

三 賭博の定義如何。
四 賭け麻雀は賭博に該当するか。
五 賭けルーレットは賭博に該当するか。

 関係する部分とその答弁部分を引用します。

答弁第二二五号 内閣衆質一六五第二二五号 平成十八年十二月十九日

三について
 刑法(明治四十年法律第四十五号)において、「賭博」とは、偶然の事実によって財物の得喪を争うことをいう。
四及び五について
 一時の娯楽に供する物を賭けた場合を除き、財物を賭けて麻雀又はいわゆるルーレット・ゲームを行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる。

上記部分をもって「第一次安倍政権時にマージャンは賭博罪だと閣議決定していた!」「過去に内閣が答弁してるのに答弁を法務省に丸投げして逃げている!」という記事があり、まぁ情弱を煽動するのに熱心ですねと。

質問主意書と答弁書の閣議決定の性質

質問主意書:国会キーワード:参議院

上記リンクでは質問主意書という国会法上認められた制度の説明が為されています。

  • 国会の本会議や委員会で行われる質疑は議題の制約を受けるところ、質問主意書はそれに拘束されずタイムリーな話題についても問いかけることが可能
  • 質疑時間は会派の人数等によって分配されるため少数会派が不利だが質問主意書はそうした制約が無い
  • 答弁書は、各府省等で案文を作成し、内閣法制局の審査を経て閣議決定された後、議長に提出される

質問主意書と答弁書の閣議決定の性質は、こういうものなのです。

したがって、たとえ所管が各省庁のものであったとしても内閣の名前で閣議決定するものですが、実際の調査は各省庁で行われるものも含む場合もあるということです。

この話をするのは法務省が最も適しているというのは論を待たないわけです。

刑法上の解釈をそのまま言っているだけ

『「賭博」とは、偶然の事実によって財物の得喪を争うことをいう』

一時の娯楽に供する物を賭けた場合を除き、財物を賭けて麻雀又はいわゆるルーレット・ゲームを行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる。』

これは刑法185条本文と但書の説明をしているに過ぎません。

刑法(賭博)
第百八十五条  賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

「賭け麻雀は即賭博罪」と言っているわけでは無い

通常の国語の読解力を有していれば、「賭け麻雀は即賭博罪」と言っているわけでは無いということくらいは分かると思います。

賭け麻雀をしていても、「賭ける物」がその場で費消するような飲食物であれば賭博罪には当たりません。金銭を賭けた場合はたとえ少額でも「一時の娯楽に供する物」には当たらないと言うのが判例ですが。

そして過去の答弁書でも「成立し得る」としか言っていないわけです。

正直、この質問主意書と答弁書の閣議決定を持ち出して政権を論難しているのは頭がおかしいとしか言えません。もっとまじめに政権批判しろよ、と思います。

以上