事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

トウモロコシ輸入:安倍「民間セクターが買う」トランプ「日本の民間セクターは政府の言うことを聞く」

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日本によるアメリカの余剰トウモロコシの輸入について、安倍総理が「民間セクターが買う」と言った事に対して、なんとなくメディアが取り上げて非難してきそうなので解説します。

安倍「民間セクターが買う」トランプ「日本の民間セクターは政府の言うことを聞く」

冒頭のツイートですが、安倍総理は『政府がトウモロコシを買うのではなく、民間セクターが買う。』とやんわり訂正したが、それを受けてトランプ大統領は『日本の民間セクターは日本政府の言うことを聞く。米国とは違う。』と発言したと伝えられています。 

Trump Says U.S. and Japan Have Reached Trade Deal in Principle - WSJ

The prime minister said Japan’s private sector would buy U.S. corn because of pest issues. “The Japanese private sector listens to the Japanese public sector,” Mr. Trump quipped. “It’s a little different.”

重要なのは「害虫問題があるので」という部分。 

日本ではとうもろこしの害虫問題があって需要がある

  • 日本は元々アメリカからとうもろこしを大量輸入していた
  • 日本では8月にツマジロクサヨトウという害虫によってトウモロコシが被害を受けていた
  • アメリカは中国との貿易摩擦によって、中国へ輸出するはずだったトウモロコシが余剰になってしまった
  • 日本は半ばトウモロコシ輸入競争を中国としていた関係にあった

上記記事で日本のトウモロコシ事情についてはまとめていますが、ざっとこのような事情があるのです。

日本政府が民間企業に購入を強制するということではない

以上の事情があるため、安倍総理は「トウモロコシの追加輸入は日本国としての利益もあるが、日本の民間企業に需要があるため自動的に購入するだろう」という意味で「民間セクターが買う」と言ったのでしょう。

追記:ロイターの記事(日米首脳、通商交渉で原則合意 9月下旬に署名へ - ロイター魚拓)によれば、日本側においてアメリカのトウモロコシを追加輸入することが促進されるような措置を講ずる約束をした、というところでしょうか。

それに対してトランプはおそらく自国の産業に対して牽制する意味合いを込めて「日本の民間企業は日本政府の話を聞くのか」と言ったのか、それともちょっとした誤解をしているのか…

世界のとうもろこし(生産量、消費量、輸出量、輸入量、価格の推移)

2018/19年度の世界のトウモロコシ貿易量は前年度比8.6%増|農畜産業振興機構

中国が輸入するはずだったが余剰になってしまった分は、日本のこれまでの輸入分に比べれば随分と小さなものです。2018/2019年度は中国輸入量は500万トンと予想されているなど従来よりも大幅に増えているのは確かですが、それでも日本の輸入量は1600万トンもありますし、中国輸入分の全てを日本側が購入するわけではありません。

「数億ドル」という文言からは何やら「大量に購入させられた」と思う人が居ますが、実際には害虫被害によって必要になった追加分として購入する規模として適切なんじゃないでしょうか。

以上