事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

枝野幸男の2時間43分演説全文が国会議事録にUPされる:第196回国会衆議院本会議7月20日

 

枝野幸男衆議院議員による2018年7月20日の衆議院本会議における2時間43分の演説が衆議院や国立国会図書館のHPで公開されました。

この演説をまとめた本が扶桑社から700円以上で8月10日に発売されるようですが、果たして買う意味はあるのでしょうか?(解説が付くみたいですが)

以下は会議録へのリンクと注意点についてまとめています。

衆議院の国会会議録全文

第196回国会 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))

国立国会図書館の国会会議録全文

衆議院会議録情報 第196回国会 本会議 第45号

枝野幸男の2時間43分演説の一部について

問題と思われた一部については書き起こして検討しています。

国会議事録のUPについて

現時点で議事録がUPされていない分がいくつかあります。

上記はそれについて中身を確認しつつ、その原因について整理しています。

国会演説の著作権、扶桑社出版本とOCRについて

国会会議録検索システム -FAQ-

発言内容の著作権は発言者本人に帰属します。

しかし、国会演説のほとんどは「政治上の演説」として許諾不要で利用可能です。

また、そうでなくとも「時事の事件の報道」としての利用や「引用」の要件にあたるなど、著作権法上の例外にあたる場合には許諾不要で利用可能です。

ただし、枝野演説をまとめた扶桑社が出版する本については解説もついているため、その解説も含めた著作権がおそらく扶桑社側にあることになるでしょうから、それをOCRで電子化して頒布した場合には著作権法違反の可能性が高いと考えられます。

著作権に配慮した利用を行いましょう。

以上

「国家公務員の懲戒処分の免除」と毎日新聞がフェイク:菅官房長官が全否定

菅官房長官国家公務員の懲戒処分の恩赦免除を全否定

毎日新聞が「政府は国家公務員の懲戒処分の免除を政府が検討している」とのフェイクニュースを流しました。

これに対して菅官房長官は全否定しました。

報道の整理と関係法令についてまとめていきます。

※一部に誤りがありましたので訂正しています。

毎日新聞「国家公務員の懲戒処分の免除を政府が検討」

そもそも「皇位継承」ではなく「天皇代替わり」という言葉を使っている時点で不敬であり、正式名称でなく、ふざけていますね。

政府は2019年の天皇陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位に伴う代替わりに合わせ、国家公務員が過去に受けた懲戒処分の免除を行う検討を始めた。複数の政府関係者が明らかにした。1989年2月の昭和天皇の「大喪の礼」の際に行われ、退職後でも「名誉回復」の意味合いで適用された。同じ基準を踏襲すると、財務省の決裁文書改ざんを巡る佐川宣寿前国税庁長官らの減給処分も免除される可能性があり、政府は基準を慎重に検討する。

ここにはいくつものフェイクがあるのですが、まずは政府の見解のソースを提示します。

菅官房長官「懲戒処分の恩赦を検討している事実は無い」

平成30年8月7日(火)午前-内閣官房長官記者会見

読売新聞「天皇陛下の退位の関係でお伺いいたします。天皇陛下の代替わりに合わせてですね、国家公務員の過去に受けた懲戒処分の免除を行う検討を始めたという報道が一部ありますが事実関係についてお願いします。」

菅「まず、そのような報道があったことは承知しておりませんが、懲戒処分の免除を検討する事実というものはありません。明快に否定しておきます。

読売新聞が「国家公務員の過去に受けた懲戒処分の免除」という話題に対して菅官房長官が明確に否定しているということです。

ここで、恩赦すべてを否定しているわけではないことに注意です。

ただ、この時点で毎日新聞の「政府が検討している」という部分はフェイクだということがわかります。

さて、そうすると、それ以外の部分もフェイクがあったということになりますが、これは恩赦法等の知識が必要です。

恩赦法について

「恩赦」とは「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権」を意味します。

恩赦法」に規定されているので関連規定を確認しましょう。

第一条 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権については、この法律の定めるところによる。
第二条 大赦は、政令で罪の種類を定めてこれを行う。
第三条 大赦は、前条の政令に特別の定のある場合を除いては、大赦のあつた罪について、左の効力を有する。
一 有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。
二 まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する
第四条 特赦は、有罪の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。
第六条 減刑は、刑の言渡を受けた者に対して政令で罪若しくは刑の種類を定めてこれを行い、又は刑の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。
第八条 刑の執行の免除は、刑の言渡しを受けた特定の者に対してこれを行う。省略
第九条 復権は、有罪の言渡を受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し、又は停止された者に対して政令で要件を定めてこれを行い、又は特定の者に対してこれを行う。省略
第十条 復権は、資格を回復する。
○2 復権は、特定の資格についてこれを行うことができる。

「刑の言渡を受けた者に対して」「有罪の言渡を受けた特定の者に対して」「まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する」

公務員の懲戒免除等については別の法律があります。

※追記:恩赦法と公務員等の懲戒免除等に関する法律は無関係であることについて

公務員等の懲戒免除等に関する法律の審議経過を確認しました。

衆議院/人事委員会 8 昭27.4.11

第二に、本案におきましては、大赦または一般的な復権が行われます場合において、これと並行して行われる懲戒の免除、弁償責任の免除につき、その基本的な事項を規定するのでありまして、実施についての具体的な必要な事項は、政令または地方公共団体の條例で定め得ることといたしました。

衆議院/人事委員会 9号 昭27.4.15

○菅野政府委員 今議題になつておりまする法律は、第一條の目的にもございますように、大赦とか一般的の復権が恩赦法によつて行われる場合における懲戒の免除とか、弁償責任の債務の減免でございまして、これはあくまでも恩赦法に基く大赦あるいは一般的復権を行います場合から考えますると同一の取扱いにしたい、こういうふうに考えております。従いまして、かりに大赦とか一般の復権というものに伴わない懲戒の免除とか、あるいは債務の減免というものがあり得るといたしましても、これは別の法律をつくらなければ、この法律では適用にならない、こういうことになるわけでございます。それから恩赦法に基く大赦、特赦というようなものは、別に法律によつて行うのでございまして、今までの実例から申しますると国家的の慶弔事に行つておるやに記憶いたしております。

公務員等の懲戒免除等に関する法律

公務員等の懲戒免除等に関する法律では以下のように規定されています。

第一条 この法律は、大赦又は復権(特定の者に対する復権を除く。以下同じ。)が行われる場合における公務員等に対する懲戒の免除及び公務員等の弁償責任に基く債務の減免について定めることを目的とする。

大赦又は復権(特定の者に対する復権を除く。以下同じ。)が行われる場合

訂正:これは、特定の人に対して大赦や復権が行われた場合に限らず、一般に大赦又は復権が行われる「タイミングで」適用されるものだということでした。

毎日新聞は「1989年2月の昭和天皇の「大喪の礼」の際と同じ基準を踏襲すると」と言っていますが、それがおかしいのです。

昭和天皇の崩御に伴う職員の懲戒免除等(大喪の礼)

文科省:昭和天皇の崩御に伴う職員の懲戒免除

昭和天皇の崩御に伴う職員の懲戒免除等について:文部科学省

こちらによれば、『「公務員等の懲戒免除等に関する法律」(昭和二七年法律第一一七号)に基づき』とありますが…刑の言渡しを受けていなくとも適用対象となります。

念のため、改正が無いか検索しましたが、これ以後の改正は【平成18年6月7日号外法律第53号〔地方自治法の一部を改正する法律附則三四条による改正〕】、【平成26年6月13日号外法律第69号〔行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律五条による改正〕】しかありません。

この改正の内容は、上記の判断に影響をするものではありませんでした。

なお、大喪の礼による免除は、より具体的には「昭和天皇の崩御に伴う国家公務員等の懲戒免除に関する政令」(平成元年政令第二九号)及び「昭和天皇の崩御に伴う予算執行職員等の弁償責任に基づく債務の免除に関する政令」に基づいて行われましたが、上記見解に影響しません。

追記:そうすると、公務員等の懲戒免除等に関する法律2条では「政令で定めるところにより」とあるので、別途新たに政令を定めなければ公務員等の懲戒処分の免除をすることはできないということになります。この「政令」に該当するのが上記の「昭和天皇の崩御に伴う…」になります。「政令」を定めるのは内閣ですから、今回、政府が現時点で検討していないということは、公務員の懲戒免除は出来ないと言うことになります。

過去の恩赦を検討との報道と菅官房長官の言葉

さて、そうするとこちらの報道とはどう整合性がつけられるでしょうか?

今回の報道は、最初に確認したように「国家公務員の懲戒処分の免除」についてです。

過去に報道されたのはそれに限らない「恩赦」であって「懲戒処分の免除」ではありません。

菅官房長官は、こちらについてまで否定したということではありません。

まとめ:毎日新聞だけじゃないフェイク

どうも最近「政府が検討」「政府関係者によると」「自民党の保守系議員によると」という文言を用いてフェイクを垂れ流す傾向が目に余ります。

「サマータイム」についても政府は検討しておらず、安倍総理が超党派の議員で検討するように言ったというだけで菅官房長官が「政府が検討」を否定したばかりです。

第一報でだまされて政府与党を非難する輩が大量に発生しているというのは悲しいことです。

こういう卑怯な手段による印象操作によって世の中の認識が支配されるということはあってはなりません。

以上

NHKがTVerに参加検討:常時同時配信(ネット配信)と受信料支払い義務

f:id:Nathannate:20180804185807j:plain

http://archive.is/LK7TP

在京民放キー局5社が共同運営するテレビ番組のインターネット配信サイト「TVer(ティーバー)」に参加する検討に入った。

「民放だけを見る自由」「NHKを見ない自由」が脅かされています。

NHKTVer(ティーバー)に参加した場合、TVerアプリを入れているスマホやTVを持っているだけでNHK受信契約締結義務が発生することになります。

これは従前から懸念されていたことですが、改めて仕組みを整理していきます。

NHKの常時同時配信(ネット配信)と受信料

【NHK受信料制度等検討委員会 諮問第1号「常時同時配信における負担のあり方」答申】には次のように書かれています。魚拓:

https://web.archive.org/web/20180804092802/http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/shared/pdf/01toushin.pdf

受信料型の場合の費用負担者としては、PCやスマートフォン、タブレット等はさまざまな用途を持つ汎用端末であることを考慮すると、PC等のインターネット接続端末を所持・設置したうえで、常時同時配信を利用するために何らかのアクション若しくは手続きをとり視聴可能な環境をつくった者(視聴環境設定者)を費用負担者とすることが適当である(先述のように、放送受信契約者を除く。)

有料対価型の費用負担者としては、一般の取引と同様に常時同時配信を利用する契約を結んだ者とすることが適当である。

「常時同時配信」とは、要するに【TV放送+同じ内容のインターネット配信】です。

「視聴環境設定者」が受信料を支払う義務があるという制度設計が目指されています。

「視聴環境設定者」とは?

上記答申では以下述べられています。

なお、ここでいう「視聴可能な環境の設定」としては、たとえば常時同時配信を視聴しうるアプリケーションのダウンロードやIDの取得等が現時点では考えられるが、その具体的な方法については、今後さらに検討していくことが必要である。

TVerと関係するのはアプリケーションのダウンロードでしょう。

つまり、もしも将来的にNHKがTVerに参加すれば、TVerアプリをスマホ等にダウンロードすれば受信契約締結義務が発生し、受信料の支払い義務が発生するということになってしまうということです。

「有償対価型」とは?

「有料対価型」というのは、利用者とNHKが契約を結んだ場合にのみ費用を負担するという方式です。これとの対比で「受信料型」というのは、契約(ある人とNHKが明示的に費用負担の合意をすること)を結ばずとも、一定の条件を満たす場合には自動的に費用負担が発生するというものです。現在のTV受信料もこの「受信料型」です。

「ネット端末所持だけで受信料支払い義務が生じる」という懸念は「受信料型」の場合の話です。

しかし、昨年12月のNHK受信料制度最高裁判決を思い出してみましょう。

判決文:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87281

判決の要点は以下です。

  1. 事案は、受信機を設置した「未契約者」に対する請求
    ※受信機を設置していることに争いがなく、契約の承諾がない消費者
  2. 契約の申込ではなく、NHKの請求認容の判決確定で契約が成立する
  3. 受信設備設置時からの支払い義務が生じる
  4. 消滅時効は判決確定から進行する
  5. 「受信機設置」と認定されれば、本人がNHKを見ていまいがNHKの放送が偏向報道だろうが問答無用で契約義務が発生する。
  6. 消滅時効は不払い分には働かないため、受信機設置月まで何十年でも遡って請求されてしまう

「受信機設置」と認定されれば契約締結義務が発生するということです。

TVer(ティーバー)アプリダウンロードで受信契約義務発生

つまり、仮にNHKがTVerに参加した場合、TVerアプリをダウンロードしただけで「受信機設置」とみなされ、契約締結義務が発生します。

この場合、任意に契約をしなければNHKが訴訟を提起することになりますが、まず間違いなく国民の側は負けるでしょう。

NHKが勝訴すると契約が成立することになりますが、過去の不払い分はいくらでも遡って(TVerダウンロード時点まで)請求されます。

TVerの側のアプリケーション開発はどうなる?

毎日新聞の報道では、NHKのTVer参加は日本民間放送連盟からの呼びかけがあったとのことです。

しかし、NHKが参加をしたとしても、TVerアプリケーションのダウンロード時に個人情報の提供を促さない、ダウンロードの時点を証明できるような記録をしないようプログラミングするといったものが考えられます。

ただ、そうするとNHKが参加する「旨味」は無いので、NHKは必ずTVer側にダウンロード時点が分かるような仕組みの導入を要請すると思われます。TVer側には跳ね除けていただきたいのですが、TVer側が呼びかけたというのが事実ならそれもどうでしょうか。

まとめ:NHKの公共性と受信料

NHKは社内に今理織というしばき隊とつるんでいる者が居ます。

彼が沖縄支局に居たときには基地反対活動が盛んでしたが、人事異動後は沈静化しました。また、今は"nos"というアカウントをツイッターに持っており、そこで様々な問題発言をしていました。

番組構成も、日本国を貶める内容のものが多く観られます。

そして、そのような番組ばかりを積極的に宣伝・放送しています。 

さらに、NHKの窓口によって回答が異なっており、嘘を言って死後の受信料を支払わせようとしていることがNHKの各種窓口への電話取材で明らかになりました。 

そうしたNHKの放送を必ず見なければならないというのは苦痛でしかありません。

NHKが法的には公共放送と規定されていても実態は公共性を喪失している(部分がある)という点からは、NHKの放送を見るか見ないかの選択の自由が認められるべきです。

以上

国会会議録(議事録)が検索できない理由:国立国会図書館に聞いてみた

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国会会議録が見れない場合があります。

「あの質疑から時間が経っているのになぜ議事録が見れないんだろう?」

「しかも、同じ日の別の委員会は見れるのに、この委員会だけがUPされてない」

こういう思いをした経験がある人もいるのではないでしょうか?

現時点でも複数の会議録がUPされていないものがあるので、その原因や傾向について国立国会図書館に聞いてみたので整理していきます。

国立国会図書館の国会会議録検索システム

国会の議事録は国立国会図書館が提供している国会会議録検索システムで衆参すべて過去分をさかのぼって見ることができます。

こちらにUPされていない場合でも、衆議院には委員会ニュースというページがあり、ここで質問者がどういう内容について質疑したのかの概要が分かります(政府答弁の内容は無し)。

会議録がUPされるのは通常、約2~3週間とされていますが、簡略なものについては数日でUPされることもあるようです。

また、3週間以上経っても会議録がUPされない場合も極一部でありますが存在します。それは国立国会図書館がサボっているということではなく、衆議院、参議院の側でタスク未処理となっているからです。そちらから国立国会図書館の事務の方に会議録が送られないといけません。

衆議院、参議院での議事録処理

本会議や委員会が開かれると速記が行われます。

「速記を止めて」と議長が発言するのを聞いたことがある人も多いと思います。

細かいことは分かりませんが、閉会後、衆参の議院の事務方が速記等から議事録を起こすようです。「あー」とか「うー」とかは省き、途中の言い間違いも必要があれば排除して意味が通るようにします。

その上で、発言の内容が正しいか、同音異義語の表記はこれで良いかなどを確認するために発言者に確認するという流れになります。

発言者が必ず中身を見るのかは分かりませんが、議事録の元となる紙は発言者が属する会派に渡されるようです。

したがって、議事録がなかなか出来上がらないという場合は、ここで止まっているということです。ちなみに、誰のせいで止まっているかは教えてくれませんでした。

早く質疑の内容を把握したい場合には衆議院、参議院のインターネット審議中継では日を置くことなくすべてが視聴可能なので、そちらで見るしかありません。

なお、衆議院の場合は第151回国会(平成13年1月31日召集)以降の衆議院の会議録の議事部分を掲載しています。

参議院の場合は30日以内に開催された会議・委員会は各議院のWEBページから閲覧可能です。

中には国会の会期を挟んだり1年以上かかる例も

国立国会図書館や各議院の事務方に聞くと、1年以上経っても議事録が発言者から来ないという例も過去にはあったと言います。

選挙や解散があった場合に発言者が国会議員ではなくなったりする場合もあります。このときは流石にペンディングにはせず、公開に踏み切るそうです。最悪の場合でも選挙・解散があった後のタイミングで議事録は公開されるそうです。

いずれにしても、議事録が隠蔽される、公開されない、ということは在り得ません。

最近で止められている国会会議録の例

いくつか興味深い例があるので挙げてみます

第196回国会衆議院内閣委員会第2号平成30年3月9日

国会議事録杉田水脈パチンコ

2018年7月31日時点魚拓:

https://web.archive.org/web/20180731071844/http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/0002_l.htm

この日は杉田水脈議員が質問に立ち、韓国ソウル市で捏造フィルムが上映されたことに西早稲田2-3-18を拠点とするWAMが関与していることや、ヒューマンライツナウなどが関与しているAV強要問題、ギャンブル依存症の主要因としてパチンコが原因であるという答弁を引き出した回です。

委員会ニュースで質疑内容はわかります。

具体的には、まずWAMで日本を断罪する裁判の真似事が行われた際に検事役を務めたのが今のソウル市長であるということが杉田議員の発言で述べられています。

次に、毎年3月にニューヨークの国連で女性の地位向上委員会が開催されるところ、400のNGOがパラレルイベントを開催しているようですが、2015年は「慰安婦問題の真実と正義 日本軍慰安婦」というものをWAMの代表のわたなべみな氏が作成し、主催者はヒューマンライツナウでその事務局長が伊藤和子であることが指摘されています。

そしてアダルトビデオ出演強要問題について、実際は強要ではない例もあるということが指摘されています。この問題を取り上げたのがイ・ミカという挺対協の代表だということにも触れています。

日付を見るとわかるように、3月のものが7月末になっても未だに議事録がUPされていないということで、いったいどこが止めているのか、それはなぜなのかが気になるところです。

動画から関係部分を文字起こししたものはこちら

第196回国会参議院内閣委員会平成30年7月17日

和田政宗国会参議院IRカジノATM

2018年7月31日時点魚拓:http://archive.is/t3lI4

この日は和田正宗議員がIRカジノ規制について詳細に質問をくわえている回です。

IRの中にカジノがあるという位置づけの必要性、重要性、IRカジノにおけるギャンブル依存症対策に関してATM設置規制(預貯金の引き出しも含む)の提案をするなど、内容が詰まったものだと思います。

実は、ATM設置禁止については競艇、競馬など公営ギャンブル施設内では禁止する方向で議論が進んでいます。しかし、なぜかパチンコだけがATM設置禁止の議論がなされている形跡がありません。

これはギャンブル等依存症対策関係閣僚会議の資料からうかがえます。

和田政宗議員をはじめとしてATM規制については各議員が質問しており、ギャンブル等依存症対策基本法も成立しましたので、今後、パチンコ敷地内のATM完全禁止の議論がなされるのでしょうか?

第196回国会衆議院本会議平成30年7月20日

2018年7月31日時点魚拓:https://web.archive.org/web/20180731071635/http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/0001_l.htm

この日は枝野幸男議員が2時間43分の演説をし、それが書籍化されたという事実があります。

他方、この日は他になんと45もの会議・委員会が開かれてるのですが、それらの会議録は既にすべて国立国会図書館で公開されています。なぜ衆議院本会議のみが公開されていないのでしょうか?

邪推ですが、議事録が直ぐに公開されたら枝野氏の演説を書き起こした書籍は「商売にならない」わけです。そのため、そこで止まっているのではないか?と思ってしまいます。

8月10日に店頭に並ぶとのことですが、通常はその頃までには議事録は公開されるのであり、それでも公開されないとなると、ビジネスを疑ってしまいます。

発言内容の著作権は発言者本人にあるため、事後的なビジネスは何ら問題はありません。しかし、枝野発言の書籍ビジネスを有効かするために国会会議録の公開が遅れているのであれば、他の発言者の発言内容の公表が妨げられていることになります。一部のビジネスを優先することで情報公開が損なわているとすればこれは正当性に欠ける行為であると思います。

まとめ

上記の例は、いずれもパチンコ・ギャンブル関係の質疑や発言がある場合だということに気付いたでしょうか?

なぜかこのような話題のときだけ議事録の公開が遅い、ということは類型的に言えるのでしょうか?

サンプル数が少なすぎてなんとも言えず断定は避けるべきですが、議員が議事録のチェックを止めているのは何かしらの理由があるはずです。ましてや(何の議題があったかは不明ですが)過去1年以上も止めている例があるというのは、当該議員(或いは支援組織、業界)にとって都合が悪い内容の質疑が行われていると考えざるを得ません。

議事録の公表が遅いという事案を発見したらSNSで共有していただきたいです。発言者の党に問い合わせるなりしてどこが止めているのか絞り込みをかけるということも可能でしょう。そして、データが蓄積すればどういう話題のときに公表が遅れるのかということが分かるはずです。

それを分析すれば、何かおもしろいことがわかるのではないか?そう予想しています。

以上

「パチンコ業界が北朝鮮の資金源として送金」という武藤嘉文外務大臣発言その他のソース

f:id:Nathannate:20180730223930j:plain

「パチンコ収益が北朝鮮の資金源になっている」

この情報の発信源はどこでしょうか?

実はこの情報は錯綜していて整理がされていないので、改めてここにまとめようと思いました。IRカジノの正当性やパチスロへの影響を考える上で重要です。

武藤嘉文外務大臣の国会答弁ではなく記者懇談会

当時の外務大臣である武藤嘉文(むとう かぶん)氏の発言が「国会答弁」と伝えられることがありますが、実は国会答弁というのは間違いであり、記者懇談会の場で発言されたということです。

新聞報道は1993年7月29日付読売新聞朝刊で確認できます。

国会議事録を検索しても出てこないのは当然です。

丸山穂高(まるやま ほだか)氏の国会質疑

上記で指摘した事実は「第193回衆議院予算委員会3号平成29年01月27日」における維新の丸山穂高(まるやま ほだか)氏の質疑でも触れられています。

○丸山委員 冒頭省略
 パチンコの件でもう一つ、お話を聞いていかなければならないのがこの観点です。パチンコのお金、我が国にミサイルの問題でいろいろある、そして我が国の国民を拉致している、その北朝鮮に対してお金が流れているんじゃないかという話がたびたび出てきます。
 それで、いろいろ調べていると、特に例えばインターネットなんかだと、当時、九三年に、武藤外務大臣の時代に国会答弁で、今このフリップを上げさせていただいています、朝鮮総連の北朝鮮への送金について、パチンコのお金が大分北朝鮮に行っているようだ、何千億円と行っているという発言があるんじゃないかという情報がいろいろあるんですけれども、実はこれは調べましたら国会答弁ではなくて、当時、九三年、シンガポールに行ったときに武藤外務大臣が記者懇で述べているということでした。これは国会答弁ではなく、正式な答弁ではないという、記者懇ですからね、それが記事になっているので、では、改めて正式な答弁を聞きたいというふうに思います。
 外務省はパチンコ業界等から北朝鮮にお金の流れがあるとお考えかどうか、外務大臣、答弁いただけますでしょうか。

つまり、当時の武藤外務大臣の発言は正式答弁ではなかったということです。

この質問については当時の外務大臣である岸田文雄氏が以下述べています。

○岸田国務大臣 北朝鮮への資金の流れ等については、さまざまな観点から実態を把握するべく努力をし、そして我が国独自の措置を講じているわけですが、今御指摘のような点について、具体的な情報については、私自身、ちょっと承知はしておりません。
 引き続き、さまざまな情報については強い関心を持って、情報収集には努めたいと考えます。

このように、パチンコ収益がパチンコ業界から北朝鮮に送金されているかどうかについては具体的な認識がオフィシャルに示されているとはいえないという現状があります。

それにしても、岸田大臣の答え方が「私自身」と言っているのが気になりますね…

万景峰号(マンギョンボンゴウ):で現金を北朝鮮へ

「パチンコ収益が業界からそのまま」ということとは異なりますが、別ルートでの送金手段が複数存在していました。こちらについては元朝鮮総連の中央本部の幹部であった韓光熙が「わが朝鮮総連の罪と罰」という著作の中で暴露しているものがあります。

そこでは全国各地のパチンコ業界や商工関係者から集めた数十億円を朝鮮総連中央本部の新潟出張所に集め、目立たないように2~3千万円を紙袋に小分けしたとあります。その上で親族訪問などの名目のもと、万景峰号という船で北朝鮮に渡航する同胞に持たせたとあります。

これは届出が必要な金額なので、要するに密出国していたということです。

韓光熙は別の場面でも北朝鮮への送金情報を話していました。

なお、北朝鮮への送金ルートとしてはかつて足利銀行もあり、国会でも数回質疑がなされています。

パチンコ協同組合が外務省の認可団体を通して北朝鮮へ食糧援助

155 衆議院 安全保障委員会 7号 平成14年12月05日
○渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。
 それでは、早速でございますが、広い意味での安全保障の中で大変重要な問題であります今回の社団法人日本外交協会の米支援、この点につきましてお尋ねをいたします。
 この日本外交協会が、ある団体の要請によって、人道支援の名のもとに東京都の非常食を北朝鮮に送っていたということが明るみに出ました。この問題をぜひただしたいわけでございますけれども、この点につきまして、まず、この社団法人日本外交協会というのはホームページもございまして、見ました。
 これは一体どういう団体なんですかね。これは外務省の委託事業を受けている団体、しかも、この会の会長は衆議院議長綿貫民輔さんが務めていらっしゃった。その点をかんがみますと、これは大変重大な問題なんですが、この日本外交協会というのはどういう団体なのか、外務省、お答えいただけますか。

ここで言及しているのは、熊谷遊技業協同組合(パチンコ店の協同組合)が「社団法人日本外交協会」という民間NGO団体に対して北朝鮮支援物資を供給したいと申し出た結果、外交協会が45万トンの食糧援助をしたと言う事案についてです。

これは小泉内閣時代に拉致問題が取り上げられていた時期に万景峰号を利用してなされたのですが、外務省が認可した団体であるため問題視されました。読売新聞も大きく取り上げました。

この質疑は神回と言ってよい政治・法制度の不手際をよく炙り出したものだと思います。同日に複数、この件に関して質疑がありましたが、渡辺(周)議員の質疑がもっとも強力です。

○高島政府参考人 お答え申し上げます。
 日本外交協会は、今委員御指摘のとおり、外務省の認可を受けた公益法人、社団法人でございまして、定款では、世界平和と民主主義を基調とする国民外交の実現を図ることを目的とする団体だというふうにうたっております。
 会長は、今御指摘がありましたとおり綿貫衆議院議長が務めておられましたけれども、十二月三日付で、今回の北朝鮮への食糧支援問題の責任をとって辞任届を提出されております。
 定款の定めによって、会長のもとに副会長、理事長、副理事長、専務理事などが置かれておりまして、ことしの三月末現在で、個人会員が二百三十六人、また法人会員が六十三団体となっております。
 この協会でございますけれども、外務省からの委託を受けた事業を含めて、いろいろな事業を行っております。
 主なものを挙げてみますとー省略ー

外務省の認可を受けたというだけではなく、外務省と関係の深い団体であるということがこの後の質疑でも明らかにされます。

○渡辺(周)委員 そうしますと、これは外務省の委託を受けて、そして歴代の会長を見ますと、歴代の外務大臣が会長を務めていらっしゃる、あるいは経済団体のトップを務められた方が会長を務めていらっしゃる。これは大変な公益団体であります。
 この団体が四十万食分、これを北朝鮮に送った。ある意味では、我が国の政府がかかわっている、外務省がかかわっている団体が、このような状況下にもかかわらず向こうに寄附をしていた、その点について弁明をホームページ上で載せているわけであります。
 このホームページを見ますと、今回の件について十二月二日に、「北朝鮮向け食糧援助について 日本外交協会の見解」ということで、その見解を載せておりますけれども、この中に書いてあることは、例えば、後にちょっと説明をいたしますけれども、「政府間交渉とは全く別次元の「人道援助」に徹した行為であり、このささやかな支援行為が現在進行中の日朝交渉に何らかの影響を及ぼすとは考えられません。」というふうに言っているんです。
 それで、日本外交協会というのは、今お話がありましたように外務省の事業を委託してやっている団体でありながら、政府間交渉とは全く別次元だ、こんなことを言っていますけれども、この点についてはどういう御見解を持っていらっしゃいますか。外務大臣、いかがですか。

歴代の外務大臣が会長を務めておきながら、政府の方針(物資供給ストップ)と異なる行動を取っているということがありました。

○川口国務大臣 これは別な委員会の場でも私が申し上げたことですけれども、細かい話は後で説明があると思いますけれども、もう少し違う対応があったのではないかというふうに私としては思っております。
○渡辺(周)委員 違う判断があったのではないか、当然そうですね。
 これはまたここに書いてあるんですけれども、「外務省の意向を代弁する立場でもありませんし、外交政策に影響を及ぼす活動もしておりません。」というふうに言っているんです。しかしここに、この団体の事業の中身を見てみますと、この日本外交協会の概要をホームページより見ますと、この団体の「当面の重点活動」の中には、「真に国益に合致した内外政策を研究し、国の外交政策に反映させるため、」これが当面の重点活動だと書いてあるわけなんです、日本外交協会の概要について。
 ところが、ここの現在の見解では、いやこれは外交政策に影響を及ぼす活動もしておりません、外務省の意向を代弁する立場でもないと。ということは、何をしてもいいということになるんですか。こういうことを言わせておいていいんですか、どうなんですか。この御見解をお尋ねします。
○茂木副大臣 まず、今回の日本外交協会の支援の問題でありますけれども、支援を実施するに当たりまして、事前に外務省の方にも連絡がございました。
 そのときに外務省から協会に申し上げましたのは、北朝鮮に対する食糧支援に関する政府としての基本的な立場を説明申し上げました。今政府としては北朝鮮に対して食糧支援等々を全く検討していない、こういう立場であります。それから、たとえ民間が行う支援であっても当面実施を見合わせる等慎重に対応してほしい、その旨は申し入れをさせていただいております。
 公益法人といいましても民間の団体でありまして、政府として個々の活動について許可するとかしないとか、そういう立場にはありませんが、先ほど大臣の方からもございましたように、同協会としてはもう少し配慮があればよかった、このように考えております。

こうした経緯があったことから、2008年には人道目的(食糧支援等)の北朝鮮船舶の入港禁止措置が為され、その解除も相当限定的にしか認めないという方針が決定されています。 その後の日本外交協会がどうかはわかりませんが、現在も存続・活動しています。

パチンコ業界の脱税割合について

第116回衆議院予算委員会5号平成01年10月17日

○浜田(幸)委員 それでは、余り同じ質問をして苦しめては気の毒ですから次の質問に入らせていただきますが、パチンコ業界は常に脱税のワーストの上位に入っているということですけれども、というのはどういうことかというと、とにかく日本の国の企業の中で一番脱税を的確にしているのはパチンコ業界である、こう言われておりますが、その点いかがでしょうか。

パチンコ業界の脱税についておそらく国会で初めて詳細を明らかにした質疑がこれでしょう。政府答弁もつづきます。

○岡本政府委員 最近の我々の調査の結果から見ましたパチンコ業界の状況について一言申し上げさせていただきますと、例えば法人税関係で申し上げますと、昭和六十三年度におきまして六百八十四件の調査を実施したところでございますけれども、その結果、百五十九億の申告漏れの把握をしております。
 その中で不正申告のあった一件当たりをとってみますと、その不正の金額といいますのは一件当たりで三千八百七十四万円ということで、他の業種に比べますと非常に多額な不正脱漏所得になっております。ちなみに、その同年度の次の業種を見ますと二千八百七十万でございますので、一件当たりで見ますと約一千万円程度の差があるわけでございます。それから六十二年度、今のは六十三年度でございますが、六十二年度の調査実績で見ましても、パチンコ業界が不正一件当たり三千四百十二万円、その一年前の六十一年度を見ますと三千百二十六万円と、いずれも六十三年度と同様に多額の不正が把握されているわけでございます。今のは法人税でございます。
 それから、所得税につきましても、例えば六十三年度におきまして百七十四件調査しておりますけれども、その結果約六十六億円の申告漏れの所得を把握しているわけでございます。これも、一件当たりの漏れ所得で見てみますと三千七百八十一万円ということになっておりまして、これは他の業種に比べますと多額の漏れになっております。ちなみに、次の業種を見てみますと一件当たり千六百十二万円ということでございますので、倍以上の漏れになっているわけでございます。ちなみに、この三千七百八十一万円、これを六十二年度で見てみますと三千三百七十三万円、その一年前の六十一年度では二千百七万円と、まあ六十三年度に比べまして、やはり他の業種に比べますと多額の漏れが出ているということでございます。
 なお、我々の調査の中で、特に強制調査の査察をやってございます。その査察の対象になりましたのが、例えば六十一年から六十三年の三カ年で見てみますと六十二件、これは検察庁の方に告発させていただいております。これは一件当たりで見ますと二億八千万の所得の漏れになっております。この漏れ額につきましては、企業規模とかとの関連もございますけれども、またすべてのパチンコの業者の方が漏らしているわけでもございませんのも御案内のとおりでございますけれども、まあ調査結果から見ますと、平均的には、現実的にはこういう姿になっている、こういうことでございます。

これは平成元年の話なのですが、最近でもパチンコという業種は法人税の脱税の割合が多い業種として毎年のように上位10位以内にランクインしています。

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こちらは国税庁平成28事務年度法人税等の調査事績の概要の引用です。

平成元年当時から約3000万円という脱税額はそれほど変化がないのが分かります。

なお、所得税についてはパチンコ業界が特段多く脱税が発見されているというわけではないようです。

パチンコ業界の経営者の国籍割合は?

 

経営者の国籍比率が北朝鮮、韓国、日本で3:3:3であると言われていたりしますが、こちらは国会議員が国会質疑の場で発言することはあっても、政府がそのような情報を認める答弁も存在せず、信頼に足るソースが見当たりません。

ただし、参考となるものとして2008年1月10日のハンギョレ新聞の記事においては以下のような記述があります。

재일동포들의 단체나 각종 활동에 드는 자금의 상당 부분이 파친코 수익에서 조달된다는 점에서, 파친코 불황은 동포사회의 위축으로 이어지고 있다. 현재 동포들이 운영하는 파친코 업소는 전체의 60%에 이른다.

在日同胞の団体や各種活動に要する資金の相当部分がパチンコ収入の調達という点では、パチンコ不況は同胞社会の萎縮につながっている。現在の同胞が運営するパチンコ店は、全体の60%にのぼる。

こうすると、少なくとも「朝鮮半島系」が少なくとも60%であるというのはそれなりに信憑性のある数字なのだろうと思われます。

なお、Wikipediaソースではありますが【『AERA』(2006年2月13日号)では「全国のパチンコ店オーナーの出自の内訳は、韓国籍が50%、朝鮮籍が30〜40%、日本国籍、華僑が各5%】という記述があり、中央日報では「在日韓国人と朝鮮総連系がパチンコ業界の90%ほどを掌握している」と書かれてします。

しかし、これらはおそらくその手の者達の性癖を考えると「力を誇示」するために話を盛っているものと思われます。

以上を考えれば、パチンコ業界が北朝鮮に利益を送金しているということは、その背景を考えれば在り得ないことではないということが分かります。

追記:金融庁が北朝鮮合弁企業に対して報告命令

記事の魚拓:http://archive.is/29vXq

産経新聞平成30年6月22日

金融庁が北朝鮮との間で不正送金やマネーロンダリング(資金洗浄)行った疑いのある企業10社との取引について、国内すべての銀行、信用金庫、信用組合に対し、取引の確認と報告を求める命令を出したことが22日、分かった。命令は18日付。10社の口座情報や平成28年3月以降の取引記録の提出を命じた。

パチンコ店がダイレクトに北朝鮮に送金するよりは、金融機関を通して行うと考えるのが現実的です。この点について金融庁も本腰を入れ出したので、今後の報道に注意すべきでしょう。

まとめ:パチンコを資金源として送金という公的認定はぼやかされているが

パチンコ業界から北朝鮮に資金が流れている、ということについて公的な証明はなされていません。しかし、ここで示したような事件の数々や営業主の属性などを考えれば、そのおそれは高いを言わざるを得ないでしょう。

その上で、IRカジノに反対する勢力からは信じられないようなデマが流されており、いったいどこがIRカジノが設置されると困るのだろうか、という事例には枚挙に暇がありません。

IRカジノができることでパチンコ業界にどのような影響があるのか。このエントリはその前段として北朝鮮との関係について簡単に整理しました。今後、少し踏み込んだ考察を書く予定です。

以上

IR政策の基本:IRカジノとパチンコ・スロットに関するデマ

カジノIR

2018年7月20、特定複合観光施設区域整備法=IR整備法(IR設置法とも)が成立しました。

この法律が「カジノ法案」として専らカジノに焦点が当てられ、ギャンブル依存症との関係でしかほとんど報道されていない状況は、はっきり言って異常です。

IR=総合型リゾート施設という政策の主要な一部としてのカジノという立ち位置が重要であること、その理解によって何が変わるのか、既存のギャンブル等に与える影響などを簡単に整理していきます。

関連法規や資料については以下の記事でまとめたリンク先が重要です。

本エントリでは特に特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光立国」の実現に向けて~を参考にしています。

IR=総合型リゾート施設政策の基本構造

世界のIRとカジノ、日本におけるIRとカジノの関係を確認しましょう。

この項で図示するものは全て特定複合観光施設区域整備推進会議の取りまとめからのものです。

諸外国におけるIR・カジノ

特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光立国」の実現に向けて~では以下のようにまとめられています。

シンガポールやアメリカ、オーストラリア等の諸外国では、民間事業者が統合型リゾート、いわゆるIR(Integrated Resort)と呼ばれる、「観光振興に寄与する諸施設」と「カジノ施設」が一体となった施設群を設置・運営している。ー中略ー

このIR を公共政策として位置付けるコンセプトは、2005 年のシンガポールにおいて登場する。ー中略ー

同国においてIR とは、国際的に魅力ある観光資源として、「レジャーやエンターテイメント、ビジネスの場」であり、「ホテル、レストラン、ショッピング、コンベンション施設、劇場、美術館、テーマパークといったありとあらゆる施設が立地」するものと概念づけられている。
その中で、カジノについては、あくまで「プロジェクト全体の経済的継続
性を支える」相対的に「小規模な施設」として位置付けられ、「カジノの導入について検討しているのではなく、IR の導入について検討している“Not a Casino,but an IR”」と明言されている。このように、カジノの導入そのものを目的としているものではない旨が明確に示されている

報道では殊更に「カジノ」と「ギャンブル依存症」がクローズアップされていますが、カジノはあくまでも「IRの一部」であるという位置づけが無視されています。

施設群については「MICE施設」と呼ばれ、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Insentive Travel)、国際機関・団体、学校等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)などのビジネスイベントの総称が意識されています。

日本におけるIR・カジノと諸外国との違い

上記のようなIRの構造は日本においても目指されています。

他方、諸外国のIRと日本のIRの違いとして以下述べられています。

諸外国のIR は、カジノ以外の施設が併設されている場合であっても、カジノのライセンス制度を含むカジノ規制法に依っており、カジノ以外の施設は法制度により管理されているものではない。他方、我が国のIR 制度は、MICE 施設や宿泊施設、レクリエーション施設等の集客施設にカジノを加えた統合型リゾート施設を一体として、その設置・運営等を法制度の中に位置付ける世界初の取組である。

IR法制度の中にカジノを法的に位置づけるというのは世界初みたいです。

この仕組みがあることで、カジノ収益の再配分・徴収においてメリットがあります。

IRは民間事業者が設置運営、都道府県等が選定、国(国交省)が許認可

IR事業開始までの手続、プロセス

現時点からIR運営に至るまでのプロセスの概要は以下の通りです。

  1. 国土交通大臣が区域整備の基本方針を策定
  2. 都道府県等が上記基本方針に即して実施方針を策定
  3. 民間事業者がIR事業計画を都道府県等(政令市含む)に提案
  4. 都道府県等(政令市含む)がIR事業者を公募
  5. 都道府県等(政令市含む)が関連地域や組織と協議
  6. 都道府県等(政令市含む)がIR事業者を選定
  7. 都道府県等とIR事業者が区域整備計画を策定
  8. 都道府県等が国に対してIR区域の申請
  9. 国(国土交通省)がIR区域の認定
  10. 都道府県等とIR事業者が実施協定を策定、締結
  11. IR事業者が施設等を設置運営

IR整備法の5条~14条を読むと、この流れはわかります。 

その後のIR事業全体の実施状況については、国土交通大臣が都道府県等から報告を受け、内閣総理大臣が本部長であるIR推進本部からの意見を聞いて評価をしていきます。IR事業全体については、国土交通省が所轄であると言えます。

都道府県(政令市含む)がその領域内の特定の区域をIR区域に指定するので、例えば「船の上のカジノ」などは認められません。

IR事業者の単一性・一体性と収益の還元の仕組み

IR事業者の一体性

一つの「IR区域」の中(地理的一体性がある場所)に「IR施設」がなければならず、そこにおいて管理運営をする「IR事業者」は単一でなければならないという規制がかけられています。カジノ事業を行う者は、IR事業者と同じでなければならないとされています。
(ただし、一定の業務については第三者への委託を認める余地がある)

土地や施設の所有者はIR事業者と別の主体となる場合も認められていますが、その場合にはカジノ事業免許とは異なる許認可を受けることとなっています。

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こうした一体性を確保するようにしているのは、主な収益源と考えられているカジノ収益をIR事業内に還元し、IR事業全体の相乗効果を発揮させるためです。

要するに、カジノ事業による収益が専らカジノ事業に投資されたり、「外部」に流出することがないようにする仕組みが担保されることになっています。

この仕組みは、実は他の点においても効果を発揮することになるので後述します。

カジノについては、カジノ管理委員会(内閣府)が許可・監督する

カジノ管理委員会はIR整備法213条により、内閣府設置法49条3項に基づいて内閣総理大臣の所轄に属します。

IR区域認定が国交省という省庁であったのに対し、これは内閣府の外局に設置される独立した行政委員会です。
政府系機関では「内閣府設置法に規定された機関としての三条委員会」と言われる。「三条委員会」とは国家行政組織法3条に基づく機関という意味が主だが、名称と実態にズレがある。実質的な意味での「三条委員会」とは、その権限行使について上級機関(例えば,設置される府省の大臣)からの指揮監督を受けず,独立して権限を行使することが保障されている合議制の機関と言われる(実態は多少の揺らぎがある)。IR整備法216条には「カジノ管理委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う」とあり、職務執行に際して内閣総理大臣に建議することなどは求められていないため、カジノ管理委員会は三条委員会であると言えるだろう。IR推進法の附帯決議13項では「独立した強い権限を持ついわゆる三条委員会としてカジノ管理委員会を設置」することとされている。このようにして「三条委員会」とは、単に国家行政組織法3条を根拠法令とする機関を指すにとどまらず、上級機関からの独立性が制度として確保されている或いはそのように運営されている国家機関を指す用語として使用されているのが実態である。)

納付金・入場料制度

IRカジノギャンブル

IR整備法ではカジノ利用者に対して入場料を徴収する事となっています。

国に3000円、都道府県等に3000円の計6000円という名目です。

入場から24時間以内の再入場には更に3000円が徴収されることになっています。

そして、「カジノ行為粗収益」の15%ずつを国庫納付金として国と都道府県等に納付する形になります(一次的には国が徴収し、国が都道府県等に払い込む)。

国は納付金を一般財源として扱えるため、IRとは無関係の政策に対しても利用できることになります。都道府県等に払い込まれた納付金の一部は、都道府県等がIR区域の自治体に対して交付できるような制度設計が推奨されています。

「カジノよりも学校にエアコンを」などという横断幕を掲げて反対していた野党議員がいましたが、これがどれだけ無意味なことかが分かるでしょう。

ギャンブル依存症対策

ギャンブル等依存症対策基本法が2018年7月13日に成立しています。

ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議で議論が重ねられてきました。

これをベースとして、IR整備法では以下のような項目が義務とされています。

  1. 入場料の徴収
  2. 入場回数制限
  3. コンプ禁止
  4. クレジットカードによるチップ購入制限
  5. チップの譲渡・持ち出し禁止
  6. 入退場時のマイナンバーによる本人確認
  7. 広告規制

入場回数制限は、週に3回、月に10回までという制限です。

クレジットカードによるチップ購入は日本人や日本在住の外国人は利用不可能です。

細かい決まりはカジノ管理委員会規則で決められることになりますが、大枠としてはこのような規制がかけられているということです。

小括:IRと一体のカジノと言う位置づけが大切

IR制度の基本中の基本の理解を整理しました。

「カジノは一般国民とは関係がない」という意見が散見されますが、カジノという木しか見ずにIR政策全体という森を見ていないがために起こる理解不足が原因でしょう。

ここの理解があるだけで、以下に指摘するデマ、誤解、誤魔化し、印象操作を見抜くことが容易になります。

IR、カジノに関する誤解とデマ

IR制度に関する正確な報道が欠けていることに加えて、ネット上で誤解されている点や意図的に誤解させ、不安を煽る者がいます。

一つ一つ確認していきましょう

1:「カジノ法はトランプ法ダー!」というデマ

7月21日、TBSの「新・情報7days」の中でIR整備法を「トランプ法」と紹介。

「成立を急いだのはトランプ政権への配慮ダー」と言っていました。

IR整備法ができたのは「IR推進法」でIRについて整備する法律を早く作りなさいと規定されたからです。IR推進法は2015年4月28日に提出されました。

トランプ大統領就任は2016年11月。時系列からしておかしいですよね。

如何に【テレビ界隈がカジノが成立しては困る】かというのが理解できるでしょう。

2:カジノ議連(IR議連)に小沢一郎が居りパチンコ換金合法化が目的?

「カジノ議連の最高顧問は小沢一郎だからカジノを推進するのは危険だー!」
「カジノ議連はパチンコの換金合法化を狙っているからカジノは危険だー!」

これらの意見が2018年7月現在もありますが、これは誤解に基づいています。

IR議連=国際観光産業振興議員連盟と特定複合観光施設区域整備推進会議

カジノ議連とは国際観光産業振興議員連盟(略称:IR議連)のマスメディア上の呼称です。

元民主党の小沢一郎が最高顧問を務めていた時期は確かにあります。

しかし、最高顧問は4人いた時期があり、小沢一郎の他に安倍晋三、麻生太郎、石原信太郎が名を連ねていました。途中、最高顧問の数には変遷があります。

また、平成27年3月27日の時点での最高顧問は維新の会の片山虎之助です。

IR推進法が国会に提出されたのが平成27年4月28日(同12月15日成立)ですが、この法律にはIR整備についての議論は内閣の特定複合観光施設区域整備推進本部で行う(1条、14条)と規定されましたので、それ以降の議論は特定複合観光施設区域整備推進会議で行われ公開されています。IR議連の議論は一定程度こちらに持ち越されています。

したがって、現在のIR議連の最高顧問がどうであるかはあまり意味のない話というわけです。むしろ、これから設置されるカジノ管理委員会の構成員がカジノ管理委員会規則を決めるのですから、そちらの委員の構成がどうなるかがより重要です。

IR議連はパチンコ換金合法化を目的として設立されたからヤバい?

パチンコスロットの三店方式の仕組み構造

IR議連はパチンコ合法化を目的としているというのは、2010年4月14日の産経新聞の報道が確認できます。

しかし、実は既にパチンコの換金は実質的に合法であるという公的な意見が出ています。平成28年11月18日、緒方林太郎の質問主意書に対する答弁書、同月29日の再質問主意書に対する答弁書において、政府から以下のように回答されています。

客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。

風営法の規制の範囲内で行われるぱちんこ屋については、関係法令の規定に基づいて適切に行われるものであって、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。

ぱちんこ屋の営業者以外の第三者が、ぱちんこ屋の営業者がその営業に関し客に提供した賞品を買い取ることは、直ちに風営法第二十三条第一項第二号違反となるものではないと考えている。もっとも、当該第三者が当該営業者と実質的に同一であると認められる場合には、同号違反となるほか、刑法第百八十五条に規定する罪に当たることがあると考えている。

要するに、いわゆる三店方式(「パチンコ店」「景品換金所」「問屋」の三店)と呼ばれる換金方法が行われていることについて政府は認識しているということ、それは直ちに違法になるのではなくパチンコ事業者と換金業者が実質的に同一である場合には風営法違反であり、刑法で禁止する賭博罪に当たる場合があるということです。

こうして既にIR議連とは無関係なところでパチンコ換金が実質的に合法化であるという認識が示されています。しかも、緒方林太郎はIR議連に居ません。

それに、IR議連の役職者の推移を見ればわかるように、当初は民主党が力を持っていましたが、最終的には自民と維新などが議連内部での地位を確立していたという力関係の変遷が分かります。

さらに、「PCSA(Pachinko Chain Store Association)の政治分野アドバイザーにIR議連のメンバーが居るからパチンコ業界の利益を誘導しようとしている」という人がいますが、アドバイザーに就任しているからといってパチンコ業界の利益をIRカジノに持ち込もうとしているかは不明です。そういう議員は一部は居るでしょうがIRカジノの法制度に影響を与えることができるのはどの程度居るかはかなり怪しいです。

ちなみに、元民主党の議員らは結局IRカジノ推進法、IRカジノ整備法案に反対しました。

したがって、IR議連についての古い情報に基づいて「カジノは危険」と思うのは勘違いに過ぎません。 

3:「カジノはパチンコ業界によって推進されている」というデマ

IR議連の項でも触れましたが、IRカジノを推進している議員がパチンコ業界に一定の関係を持っていることは確かです。しかし、それがパチンコ業界の意向を受けて利益誘導しているというには無理があるということは示しました。

運営企業とソフト開発、機器製造会社、カジノ運営企業を混同させる

他の手法でカジノはパチンコ業界によって推進されていると印象操作する者が居ます。

出井康博デマ

プレジデントオンライン:出井康博:http://president.jp/articles/-/24677?page=3

ここで行われているのは【パチンコ運営企業とパチスロ機器製造・ソフト開発企業の混同】です。

「セガサミーホールディングス」 はパチンコ業界の企業ではありますが、エンターテイメント会社のセガと経営統合した企業です。事業内容はパチンコ・パチスロのソフト開発、機器製造、販売であり、パチスロ店の営業は行っていません。

将来的にカジノ機器の開発製造は、現時点でパチスロ機器の開発製造をしている企業が多くを担います。これらの企業はパチンコ・スロットを行わせるという営業形態で収益を得ているのではなく、機器の提供・販売によって収益を得ているだけです。要するにソフトウェア会社、製造業であって、いわゆるパチンコチェーンではありません。先に引用したPCSAにはセガサミーは入っていません

したがって、パチスロ店が廃止されたとしても、代替的な仕事が存在していれば全く痛くもかゆくもないわけです。セガサミーは海外でカジノ運営も行っていますが、ということは他のパチスロ運営企業の意向を受ける必要が全く無いわけです。自社でやれるのですから。

既存のパチンコ・スロット機器はカジノに使われるのか

パチスロをやったことがある人は分かると思いますが、現在のパチスロは単に球が打ち出されたりスロットが回ったりするだけではなく、アニメーションなどの凝った演出が施されています。ソフトウェアが入っているということです。利用者が勝つ確率が変動する「設定変更」が行われることもあります。

こうしたパチスロ機器は、カジノにおいて使われません。

特定複合観光施設区域整備推進会議では、公正なカジノ運営の確保のためにカジノ行為の結果に影響を及ぼす不正な行為を禁止するべきだとされ、パチスロのような風俗営業適正化法(風営法)の「遊技」として認められているものをカジノ施設内で導入するのは適切ではないという方針が示されています。

パチスロ機器がカジノに導入されないということは、パチスロ機器設計製造の業界の利益誘導もIRカジノにおいてはできないということになります。

もちろん、パチスロ機器の設計製造で得た技術をカジノ機器に転用することは在り得るでしょうから、カジノが出来ることでそうした企業に需要が生まれ、利益になるでしょう。しかしそれは健全な市場競争なのであって、殊更問題視するのはおかしな話です。

パチスロ業界が食い込もうとしているかもしれないが…

もちろんパチスロ業界もカジノ利権に食い込もうとしているかもしれません。それは否定しきれないでしょう。しかし、パチスロ業界が先導して推進してる、などという事実はありません。

そこまでしてカジノを成立させたくない勢力って何なんでしょうね?

4:「外資に乗っ取られる」という妄想

IRカジノ

新制度が検討されると「外資に乗っ取られるぅー!」と叫ばれるのは良くある話(笑) 

「日本国内にカジノを単独運営できる企業は無い」はその通りでしょうが、日本国外でカジノ経営をしている日本企業も居る上に、 現存の日本企業がノウハウを寄り添ってジョイントベンチャーを作ることもできるわけですから、まず外資が必ずIRカジノをやるという前提がおかしい

その上で、外資がIRカジノ事業者になったとしても、その利益は国内に残るわけです。しかも、そこで働く人は現地の方が相当数いるでしょうから、外資だろうが雇用は創出されるわけです。

カジノ収益がIR事業に再配分されるという仕組みはすでに説明しましたし、納付金30%が国と都道府県に納められるということも説明しましたから、こういうところで「利益が外部流出するうぅー!」といったような不安を感じることは無いでしょう。

「外資ガー!」はもっとも頭の悪い陰謀論でしょう。

マネーロンダリングに関して外資の危険が言われることがありますが、それはまた別の話。

5:「カジノ収益の試算が無い」「収益は低い」というデマと印象操作

カジノはパチンコとの比較で論じられることが多いですが、市場規模と収益、税収に関するデマが横行しています。

「カジノ収益の試算が無い」という印象操作

IRカジノ政策を行った場合にどの程度の収益が見込まれるのかというのは、IRカジノ政策の議論の当初はシティグループなどがパチンコ業界の収益から試算を報告しています。

これに対して、「カジノ収益の試算が無く、いいかげんな計画だ」という主張がなされることがあります。これはIR制度の理解不足から来る誤解を元に政策を批判するレトリックです。

思い出しましょう、IR区域は都道府県等が決定します。そして、区域整備計画も出します。ということは、地域によって収益の予想が異なるのであり、将来的な施設拡充によっても変動するのです。よって、正確な試算がIRカジノ政策の議論の当初でできるハズもなく、それを求めるのは筋違いということになります。

シンガポールのような狭い地域に国家のファシリティが全て揃っている場合には試算は可能でしょうが、日本のIRではパチンコを参考にするのが最も適切でしょう。

カジノ専門家の木曽崇もブログで以下のように述べています。

私自身、カジノの市場性調査を己の主たる業務の一つとしているワケですが、特定地域における市場規模予測を行うにあたっては、最低限の前提要件として1)カジノ税率、2)域内競合施設数、3)各競合施設の立地の3つが確定していなければ数値が弾けません。

こうした試算は条件が決まってくるごとに何度か行われ、複数調査を参考にすることになるので、過去の一つの調査結果だけを取り上げて「精度が低い」と言うことには何も意味が無いどころか有害な言説です。

「カジノの市場規模はパチンコよりもかなり低くて税収が見込めない」というデマ

そして、「日本のパチンコ市場は世界のカジノ市場と同等」「同等なので、カジノを1つ2つ作った程度では大して税収に貢献しない」というデマも酷いものがあります。

日本のパチンコ市場の規模の算出に使われている会計基準は「顧客が賭けた額=貸玉料」で計算されるグロス方式。

一方、世界のカジノ市場は「顧客の負けた額=カジノ事業者が勝った額」で計算されるネット方式です。詳しくはこちらをどうぞ。

国内産業における規模として約20兆円という数字を持ち出すことはまだいいですが、会計基準の異なるものと比較するのはデマ拡散の目的以外に考えられません。

カジノの会計基準に引き直すと、日本のパチンコの規模は2~3兆円です。

対して、IR整備法の大枠が固まった後に3地域における市場規模を試算した一例としては、7850億円というものがあります。

パチンコはパチンコ税などというものは現時点では存在せず、法人税等のみが企業に課されているだけなのに対して、カジノは「カジノ行為粗収益」に対して30%の税収(国は15%)が発生しますから、「税収が見込めない」という批判はもはや通用しないということになります。

6:ギャンブル依存症に関する誤解

IRカジノ

カジノの運営方針について、ギャンブル依存症との関連で誤解が広められているケースがあります。

特定金融業務で「貸金業法が無適用で貸付上限が無いから依存症になる」というデマ

これらは全てデマや間違った考えです。IR整備法が成立した後なのにこれ。

IR整備法85条以下に、特定資金貸付業務の規制について規定されています。

  1. 本法内に住居を有しない外国人
  2. カジノ管理委員会規則で定める金額以上の金銭をカジノ事業者の管理する口座に預け入れている者

1番又は2番に該当する者にしか貸付はできないようになっています。

では、2番の金額はいくらになるか?整備推進会議のとりまとめでは、シンガポールの例では日本円にして約800万円とされており、この金額を参考に日本のGDP等に照らして決定するのが良いのではないか?という議論がされていました。

貸金業法で年収の3分の1以上の貸付制限がありますが、それが適用されないということは確かです。しかし、IR整備法86条では貸付にあたって返済能力に関する調査等をすることとされています。

利息については85条3項で無利息とされています。返済期限を超えても支払いがない場合の遅延損害金が14.6%と規定されているだけです。 

上記の妄言がデマや間違いであるということが明らかというのが分かるでしょう。

カジノ敷地内に消費者金融機能を持つATMが並ぶというデマ

カジノ施設内でのATM設置は禁止され、カジノ周辺施設でも貸付機能が無いATMのみの設置が認められるとされています。 

細則の制定過程が不透明だ!IR整備法はザル法だ!331項目ガ―!

これはあながち間違いではない可能性も十分にあるのが注意です。

というのは、IR整備法で規制をかけるとされている項目の詳細については、カジノ管理委員会規則に委ねるなど、未だ内容が確定していないからです。しかも、政令を制定するのは国会ではなく内閣における閣議決定で行われます。

閣議決定は事後的に公開されますが、議論の様子は国会中継のように逐一公開されるわけではありません。ですから、手続が(相対的に)不透明であると言われたりします。

ただ、「331項目も政令に委任している」という批判は意味不明で、政令に細目をゆだねている法律はいくらでも存在しています。むしろ法律レベルで全てを規定することに無理があります。

たとえば憲法で選挙制度の全てが規定されていませんが、それが問題だと主張する者はいません。

規定の抽象レベルを合わせることや改正の難易など、様々な要素を考慮して立法は為されるのですから、批判する者が法律に盛り込む必然性を説明しなければなりません。しかしそうした議論は国会でほとんど行われませんでした。

実質週6回ダー

週3回という規制を、2週間でみるとそういう期間ができるという話に過ぎません。

金土日で区切るとして次週の月火水もカジノに行けるだろうということです。

しかし、その場合は当該月で残っているカジノ入場可能日数は4日のみです。

こうやって目先の数字で騙そうとしているのは何が目的なんでしょうか?

魚拓:http://archive.is/MrFNu

7:「持統天皇が双六を禁止したからカジノはダメ」という無知

IRカジノ

2018年7月20日の内閣不信任案趣旨説明における枝野幸男の演説内で出てきた主張です。7世紀末に持統天皇は双六禁止令を出したからカジノはダメだという意見です。※追記:それ以前の質疑においても別の議員や参考人から同じ話が持ち出されたことがありました。

しかし、天皇のお言葉を重視するというのならば、歴代天皇のお言葉をもまた重視しなければなりません。

11世紀の白河法皇は「双六は思うようにならない」と言っているように、天皇が双六をプレーしていたということです。また、元禄時代(17世紀終盤から18世紀初等)に朝廷が寺社における富くじを解禁したという記録もあります。これは幕府の財政不足によって寺社の修繕ができない状況を改善するために、規制がかけられた上で許可されたものです。

ここで、賭博がなぜ違法とされているのか?という基本的な理解が重要です。 

「射幸心を煽る」よく使われる表現ですが、これが賭博が禁止される根本的な理由です。これによってギャンブル依存になり、仕事をしなくなる、お金を使い果たす、生活が荒れる、種々の弊害が生じるという因果関係にあります。

つまり、逆に言えば射幸心を煽る程度に比例して適切なギャンブル依存対策を講じた上であれば賭博の悪性は払しょくされるのであり、だからこそ競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルが存在しているのです。

基本的な考え方も知らず、スポット的な知識としてだけ天皇のお言葉を引用して自己の主張の正当化を図るというのは不敬極まりない行いです。

未来予想:マスコミカケキャンペーンと同じ構図に?

「カジノ事業者は内閣総理大臣のトモダチだー!だから利益誘導ダー!」
(おそらくIRカジノが運営される頃には安倍晋三は総理大臣ではないでしょう)

カジノ管理委員会が内閣の外局であり内閣総理大臣が所轄であることからこのようなマスコミのキャンペーンが貼られる未来が見えるのですが、今から言っておきましょう。頭狂ってますよ。

IR事業者を選定するのは都道府県や政令指定都市なのですから、内閣総理大臣が選べるという仕組みではないのです。

なんだか国家戦略特区の「マスコミカケキャンペーン」に似てますよね?

まとめ

元々この記事でIRカジノの設置がパチスロ業界やオンラインカジノ業界に与える影響まで書きたかったのですが、あまりにもデマが膨大過ぎて1記事で扱うのは適切ではないと判断しました。

そちらについては別稿を書く予定です。
※追記:書きました。

それにしても、ここまでデマが横行するのは、いったい誰にとってIRカジノの設置は都合が悪いのでしょうね?(すっとぼけ) 

この行為もカジノ法案の採決にあたって行われましたし。

以上