事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

ツイートがフォロワーに見られていない・反応が無いと思ったらリツイート

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自分のツイートがフォロワーに届いていない気がする

こう思ったことはありませんか?

機能制限等がかかっているとそうなる場合があり、それに気づく方法があります。

しかし、まったく機能制限等は関係ないと思われるのにツイートが見られていない気がする、という人も多いと思います。その原因と対処法を示します。

ツイートがフォロワーに見られていない・反応が無い例

引用元ツイートは以下ですが

私が同じ内容のツイートをしてみます。

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カンタンに反応がなされました。

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リツイートをしてくださったおかげで、多くの人に見てもらっています。

  1. ケントさんは「他人のツイートに対するリプライだった」
  2. 私はツイートを直接行った

この違いが原因です。また、ケントさんは自分のツイートにリプライ(返信)をつけた他人のツイートに対してリプライをしています。しかも、相手がケントさんの意見と異なる意見を持っているようなので、ケントさんのリプライに対していいねもリツイートもしていなかったことが、拡散されなかった理由です。

なお、自分のツイートにリプライとして自分のツイートをしてもタイムラインに表示されるので大丈夫です。

リツイートによってタイムラインで確認可能

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私のこの時点でのタイムラインです。

【固定されたツイート】の下に最新のツイートがあるのがわかります。

これに対して、他人のツイートにリプライをした場合は「ツイートと返信」欄を見ないと出てきません。

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同じ時間に「ツイートと返信」欄を見るとこのようになっています。

この欄は「固定されたツイート」は無いので、最新のツイート・リプライが一番上に来ます。

他人のツイートに対してリプライをすると、ここにしか表示されません。このようなツイートの場合、他人の「ホーム」などのタイムラインには、リツイートされない限り表示されません。

今度はこの最新のツイートをリツイートしてみます。

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このように、単なる「ツイート」欄でも表示されるようになりました。

これでフォロワーに自分の主張に気付いてもらえるということになります。

まとめ:返信したらリツイートを

相手との個人的なやりとりならともかく、リプライとしてツイートした内容を拡散して多くの人に読んでもらいたいという場合には、返信したらリツイート、或いは引用リツイートをすることで、多くの人の自分の当該ツイートに気付いてもらえます。

ツイッターの仕様を知る事で、発信力を高めることができます。

以上

日本共産党が破壊活動防止法上の調査対象団体であるソース:太白区選出の仙台市議わたなべ拓の勝利

 

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「日本共産党が破壊活動防止法上の調査対象団体である」ということのソースをまとめます。これに関連して仙台市議会でひと悶着があったので、その事案も合わせて紹介します。

これは少し前の時期の話ですが、仙台市議のわたなべ拓(ひろし)議員が仙台市議会で水道公社などの外郭団体の職員採用に際し、破防法に基づく調査対象団体であるかは一つの要素ではないか、という質疑を行いました。これに関連し、共産党市議の花木則彰によって懲罰動議が提案された、という事案です。

自民党選出の仙台市議のわたなべ拓とは

渡辺拓=わたなべ拓(ひろし)議員は、太白区選出の議員です。

実は渡辺博(わたなべひろし)という宮城野区選出の議員が別人としていらっしゃいます。

彼らは羽生結弦選手の凱旋パレードで仙台市が日の丸を配布することやパレードの終点である市役所での半旗掲揚を議会で要請した方々です。この提案は杜人の会などの市民団体が主導していました。実際にも市によって日の丸が配布されました。

仙台市議会での渡辺拓議員の質疑:外郭団体の背景調査

平成30年第1回定例会2月27日予算等審査特別委員会における質疑が問題だとされたので確認していきます。

地方公務員法上の任用基準

質問は市の外郭団体の職員採用試験において「日本国憲法施行の日以後において日本国憲法またはそのもとに成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、またはこれに加入した者」は認めない旨の条項欠格条項が設けられているが、その判断方法を設けていない外郭団体は問題ではないかという質疑が行われました。

市の回答は、外郭団体も地方公務員の欠格要件に該当していればダメだということで、欠格要件に加えていない団体については加えるように協議を進めること、確認方法は、採用の際の署名によって申告してもらうこと、年3回の評価を行っていると回答しました。外郭団体の職員は公務員ではないですが、同等の扱いがなされており、公務員について定めた規定が準用されていることが多いです。

地方公務員法では公務員の任用基準が定められています。

第十五条 職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならない。

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 成年被後見人又は被保佐人
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
三 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
四 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
五 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

16条5号が今回と関係があるということです。

日本共産党が破壊活動防止法上の調査対象団体であるという指摘

市の回答を受けて、次の質疑がなされました。

◯わたなべ拓委員 ー省略ー政府は平成28年3月22日に閣議において日本共産党について現在においても破壊活動防止法に基づく調査対象団体であるとの答弁書を決定しております。
 ー中略ー公安調査庁におきます正式な文書におきましても、共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁の見解としてこう述べております。日本共産党は第5回全国協議会、昭和26年、1951年に採択した51年綱領と我々は武装の準備と行動を開始しなければならないという軍事方針に基づいて、武装闘争の戦術を採用し、各地で殺人事件や騒擾事件などを引き起こしました。
 ちなみに殺人事件は白鳥事件、これは警察官を共産党員が撲殺した事件です。また、騒擾事件に関しましては阪神教育事件、これは在日朝鮮人と共同して暴動、騒乱状態を惹起し、大阪府庁を占拠したという事件です。
 その後、共産党は武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが、革命の形態が平和的になるか、非平和的になるかは敵の出方によるとする、いわゆる敵の出方論を採用し、暴力革命の可能性を否定することなく現在に至っていると。
 ー中略ーここで先ほど課された反社会的属性チェックに関連する団体ですけれども、例えばオウム真理教や日本共産党は公安調査庁の調査対象団体でありますけれども、こうした点にしっかり留意して本市の外郭団体の職員の採用についても重々御注意いただきたいと存じます。

この歴史はあまり語られないので知っておくべきです。戦後の日本において、テロは多数行われてきました。あさま山荘事件や日航機ハイジャック事件も、こういう事件の延長線上にあります。破防法に基づく調査対象団体は、他に朝鮮総連などがあります。

要するに、外郭団体は地方公務員法の縛りを直接は受けないので、地方公務員法上の規定にない理由であっても欠格条項ではないにしろ斟酌するべきではないか、というのがわたなべ拓議員の狙いです。

上記の認識に基づくこの後の市長に対する質疑が日本共産党への誹謗中傷だとして、共産党市議の花木則彰議員によってわたなべ拓議員の懲罰動議が出されました。

同時に、このときの花木則彰議員の行為が議事進行の妨害行為であると問題視され、こちらも懲罰動議が出されました。

ところで、日本共産党は16条5号にあたらないのか?と思いますが、現実に共産党市議が居るということは、当たらないのでしょう。国会議事録でもそうなっています。公務員の場合は地方公務員法上の規定に基づかなければ欠格事由にはできません。

それにしても、なぜそう解釈されているのかは改めて考えると不思議です。

日本共産党が破壊活動防止法上の調査対象団体であることのソース

鈴木貴子衆議院議員提出の【日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書】に対する平成二十八年三月二十二日回答の答弁書で以下述べられています。

御指摘の昭和五十七年四月一日の参議院法務委員会において、鎌田好夫公安調査庁長官(当時)が、破壊活動防止法に基づく当時の調査対象団体の数について「いわゆる左翼系統といたしまして七団体、右翼系統といたしまして八団体程度」と答弁し、当該調査対象団体の名称について「左翼関係としましては日本共産党・・・等でございます」と答弁している。
 日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である。

公安調査庁もこの答弁書を引用しています。

この見解に対して共産党側は撤回をもとめましたが、撤回はなされていません。

なお、「日本共産党に破壊活動防止法が適用された」わけではないので注意。

あくまでも調査対象団体であるということに留まります。

調査対象団体になると、公安調査庁が毎年発行している【内外情勢の回顧と展望】にて報告がなされます。

共産党市議の花木則彰による懲罰動議の提出理由

共産党市議の花木則彰氏によってわたなべ議員への懲罰動議が出されましたが、理由は【共産党は暴力主義革命の方針を持っていない】【したがって、共産党が暴力主義革命の方針を持っているという政府の答弁は事実に反するため、それをベースに為された質疑は共産党に対する誹謗中傷である】というものです。

花木則彰委員

この答弁書は、日本共産党は破壊活動防止法に基づく調査対象団体であるというふうに書かれています。しかし、先ほども話をしたように、破壊活動防止法には調査対象団体という規定はないわけです。ですから、基づくこの調査対象団体という表現自体がそもそも事実に反していると思います。

公安による「調査」の根拠として破防法があるので間違いではないですよ。

日本共産党は、暴力の革命の方針などは持っていません。日本共産党は綱領でも明らかにしているとおり、言論と選挙を通じて議会で多数を占めて、国民有権者とともに一歩一歩政治と社会を進歩前進させるという立場に立っています。もし、委員の皆さんの中に、日本共産党の綱領を見たことがないという方があれば、いつでも私たち提供いたしますので、ぜひ見ていただいて、そして審査をしていただきたいと思います。破壊活動防止法の対象となる政党ではありません。

日本共産党の綱領はこちらです。

しかし、公安調査庁による【共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解】では、以下の記述があります。

(注2) 共産党は,「『議会の多数を得て社会変革を進める』-これが日本共産党の一貫した方針であり,『暴力革命』など縁もゆかりもない」(3月24日付け「しんぶん赤旗」)などと主張していますが,同党が,日本社会党の「議会を通じての平和革命」路線を否定してきたことは,不破前議長の以下の論文でも明らかです。
 ○ 「『暴力革命唯一論』者の議論は,民主主義を擁護する人民の力を無視した受動的な敗北主義の議論である。しかし,反対に『平和革命』の道を唯一のものとして絶対化する『平和革命必然論』もまた,米日支配層の反動的な攻撃にたいする労働者階級と人民の警戒心を失わせる日和見主義的『楽観主義』の議論であり,解放闘争の方法を誤まらせるものなのである」(不破哲三著「日本社会党の綱領的路線の問題点」)

要するに暴力革命の可能性を完全には捨てていないと考えられるということです。

たとえばIS(イスラミックステート)やアルカイダが「我々はテロの可能性を捨てた」などと言っても信用できますか?という話です。 

共産党市議の花木則彰は陳謝の懲罰が宣告

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結局、わたなべ拓議員については懲罰は無し。花木則彰議員はこのときの議事進行の妨害が原因で懲罰動議の継続審査が3月に決定し、第二回定例会6月13日の本会議によって、陳謝の懲罰が花木議員に下りました。

まとめ:破防法上の調査対象団体の扱いについて

公安による調査対象団体であるという属性が外郭団体の職員採用の際に不採用となる欠格条項となるべきか。この問題は、現在もグレーゾーンとして残っています。

欠格条項としない場合でも、外郭団体の側が公安による調査対象団体であるという属性を不採用と判断する際の考慮要素として斟酌しても、何ら問題はありません。そこは契約締結の自由があるため、雇用の際の思想調査が直ちに違法となるわけではないということは三菱樹脂事件の最高裁判決で示されています。
※今回は市の外郭団体である公益財団法人仙台市水道サービス公社が引き合いに出されましたが、これは単なる公益法人たる私人であるため、三菱樹脂事件が先例となります。
※仙台市においては外郭団体の職員の採用は各団体の判断によることを基本としているという答弁があるため、地方公務員法15条を準用していません。
※契約締結の自由の根拠として三菱樹脂事件の最高裁判決では憲法22条の経済活動の自由や29条の財産権の保障から導いていますが、必ずしもそれらに限らない場合がありその場合には憲法13条が根拠とする見解があります。

地方公務員法16条5号に該当しないとしても、破防法上の調査対象団体である場合にはそれに準じた評価がなされるべきだという価値判断は正当だと思います。

以上

『「野党は反対ばかりしている」は多い』のか?:立憲民主党の中谷一馬の主張

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立憲民主党の中谷一馬氏が【「野党は反対ばかりしている?」を客観的にデータ検証してみた。】というタイトルで寄稿しています。
※選挙ドットコムからの記事みたいですが当該HPや本人のブログ上では確認できず、yahooの記事から引用します。

2ページにも渡って「野党は反対ばかりしている?」について反証を行っていますが、その論述に突っ込みどころが満載なのでここで見ていきましょう。

立憲民主党の中谷一馬氏の主張の概要

  1. 「野党は与党に反対ばかり」ではない⇒約8割が賛成
  2. 反対した法案には理由がある
  3. 与党が審議拒否している:たとえばギャンブル依存症対策基本法等、経済産業委員会での審議など

これらの主張に対して確認していきましょう。

1:「野党は反対ばかりしている」は多いのか?

中谷氏の寄稿文の目的は「野党は反対ばかりしている」ということへの反証です。

しかし、議論のつかみのためなのか知りませんが『「野党は与党に反対ばかりしている」と言う人が多い』或いは『多くの人が野党の良くない面として「野党は与党に反対ばかりしている」を理由にしている』ということを前提としています。

国民の皆さんが野党に持つイメージは様々だと思いますが、その中でも多く耳にするのが上記のような「野党は与党の意見に反対ばかりしている」という意見です。

これって本当ですかね?

  • 31%:建設的な対案を出さない
  • 10%:与党に反対ばかりしている
  • 21%:国会質疑の時間を無駄にしている
  • 38%:有力な証拠もなく疑惑をかけている

468票のサンプルですが、上記のような結果となりました。

「全部」というリプライや引用リツイートが多くつきましたが、「反対ばかりしている」というのは本質的な理由と考えている人はそれほど多くなくて、理由の一つとして捉えているという人が多かったですね。

中谷氏は「野党は反対ばかりしているという意見を多く耳にする」というところから「野党は反対ばかりしている」を否定することで自党の行為を正当化しています。

「多数意見の論拠を崩すことでの自党の評価の回復」を狙っていたのでしょう。

しかし、そもそも「反対ばかりしている」が野党の評価が低い主要因ではないので、このような反論はあまり有効ではないと言わざるを得ません。

そんなところより、もっと法案の中身を主張したらどうですかね?

反対している=戦っているという絵を見せるよう野党も動いているし、それをマスメディアが殊更に映しているという側面があるでしょう。自分でやっておいて何を今更、という話です。

2:「反対には理由がある」だけ?

反対している法律案には、明らかに反対すべきおかしなポイントが存在しているのです。

例を挙げれば、
「党利党略で自民党国会議員の身分保障を優先した参議院議員定数6議席を増やす法案」
「成長戦略、依存症対策などあらゆる面で疑問だらけなのに、賭博ギャンブルを解禁して実行するカジノ法案」
「捏造データをもとに審議を続けてきた、働き方改革関連法案」

など、世論調査を見ても国民の多くが疑問を持ち、反対している方々が多数派を占める法案ばかりです。

えっ!?これだけですか?これらの法案について、何がどうおかしいのでしょう?

おそらく自発的に書いたものでしょうしウェブの記事に「紙幅の関係」 なんてものは無いので書けばいいじゃないですか。たとえば「カジノ法案」は「疑問だらけ」って、自分で「おかしなポイントが存在している」と問題設定しておいてこれじゃあ論述文章としても成立してません。

国民に「勝手にググって問題点を探せよ」って丸投げしているのと同じですよ。

ちなみに「カジノ法案」とはIR整備法案=特定複合観光施設区域整備法ですが、依存症対策は法案に記述がありますし、 特定複合観光施設区域整備推進会議でも議論されており、ギャンブル等依存症対策法という別途成立している法律に基づく部分もあります。

ギャンブル依存症(法律ではギャンブル「等」依存症だが)の9割はパチンコなので、IRカジノを作る事が「ギャンブル依存症問題を放置する」ということにはなり得ません。

また、政局で反対しているだけであるということを示す者もいます。

つまり、自分たちが死ぬほど騒いで反対した自衛隊法であるにもかかわらず、いざ政権を担う段になると、三年三ケ月、何事もなかったかのように、そのまま自衛隊法を運用し続けたわけだ。

「逆襲本」とは、足立無双の逆襲~永田町アホばか列伝IIのようです。

立憲民主党は旧民主党系ですから、現時点でも当てはまるということになります。

3:対案は出しているが:ギャンブル依存症対策基本法

今国会で立憲民主党は、

「原発ゼロ基本法案」「公文書管理法案」「ギャンブル依存症対策基本法案」「共謀罪廃止法案」「子どもの生活底上げ法案」「農業者戸別所得補償法案」「性暴力被害者支援法案」「介護士処遇改善法案」「保育士処遇改善法案」

など他党との合同提出も含め44本の議員立法法案を国会に提出しました。

「対案を出さない」じゃなくて「建設的な対案を出さない」という事が問題です。

まず、「対案を出すことがすべて良いということではない」という認識は必要でしょう。『共謀罪(テロ等準備罪)廃止法案』などはまさにその一例です。FATAの勧告の要請にようやく答えた立法なのに、これがなければ日本人の貿易や渡航に制限がかかってしまいます。

反対方向の対案ではなく、同じ方向の対案というものも、場合によっては有害であるという認識も必要だと思います。たとえば「ギャンブル依存症対策基本法案」についてみていきましょう。

同法は平成28年12月15日成立のIR推進法(上述のIR整備法案とは別の法律)を契機に同年12月22日に内閣に設置されたギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議で立法のための議論がなされてきました。

この議論を受けてギャンブル「等」依存症対策基本法は自民党の中谷元らによって提出されましたが、同時期に初鹿昭博ら野党議員によってギャンブル依存症対策基本法が提出されています。

法律の中身を見ると、構成はとても似通っています(平成20年頃からの超党派IR議連での議論の蓄積もあったためだろうが)。

具体的な違いで目についたのは以下です

  1. 「依存症」の定義が与党提出法案ではあるが、野党提出法案では無い
  2. パチンコを「ギャンブル」に含めている
  3. ギャンブル依存症対策推進本部の副部長は与党は国務大臣だが野党は厚生労働大臣

野党案は定義することに問題があるという考えと思われますが、法律の根本的な部分で定義がないというのは疑問です。

パチンコは現時点では法的に直ちにギャンブル=賭博となるものではないという扱いです。だからこそ成立法律はギャンブル「等」となっています。野党案は法律案の名称からして現行法体系を無視したものになっているので、成立してしまったら大混乱が起こります。

ギャンブル依存症対策基本法には内閣にギャンブル依存症対策推進本部を設置すると書いてありますが、副部長に厚生労働大臣という特定省庁の利権を生みかねない組織はどうなのかと思います。与党案、野党案いずれも委員に各省庁の大臣が記述されていますが、ギャンブル依存症対策は多方面に渡るものですから、特定省庁が「上役」になるような組織は好ましくないと思います。
※公営ギャンブルは別々の省庁が所管となっており、厚生労働省は所管を持っていないのでバランスを取るつもりだったのでしょうが、ギャンブル依存症対策は全分野に影響力を行使しますから厚生労働省に副部長席を独占させるのは「権力」を与え過ぎだと思います。

結局のところ、野党提出のギャンブル依存症基本法案は邪魔でしかなかったと思います。

4:経済産業委員会は政府提出の案件がないから審議すべき?

立憲民主党枝野代表の発言の引用

「政府提出法案を優先してやりたい。与党のみなさんがそういう立場であることは認めるわけではありませんが、理解します。そうであるならば、経済産業委員会はどうなんでしょう。
政府提出の審議案件がとっくの昔になくなっています。われわれはいわゆる原発ゼロ法案を提出をして審議を求めています。
政府提出法案がまだまだたくさん残っていて、そちらの審議をやらざるを得ないので野党提出の議員立法の審議ができない、のではなくて、政府提出の案件がなくなって空っぽスカスカでやることがないのに、野党の議員立法の審議にすら応じない。誰が審議拒否をしているんですか?」

国会は経済産業委員会だけあるのではありません。

各委員会を独立して議題を選定するべきという要請も無いはずです。政策に基づいて国会で審議するべき立法案に優先順位をつけ、不要なものは審議しないというのが当たり前の姿だと思います。

そもそも自分たちが要求した質疑すらボイコットした挙句に18連休をして国会期日を無駄にした党の言っていることとは思えません。

まとめ:報道や情報を鵜呑みにせずファクトチェックすべき

その判断は客観的であり根拠はあるのか?

これらの数値や実態を客観的にみて、野党は与党に反対ばかりしていると言う人はいないのではないでしょうか。
様々な場所で、「野党は反対ばかりしている」という人々は、どのような根拠をもとにそのような発言をしているのか分かりませんが、客観的な事実に基づいた意見でないことだけは間違いありません。

「野党は反対ばかりしている」は表面的な反対理由でしかなく、本質的には政局で反対している、建設的な対案を出していない、国会質疑の時間を無駄にしている、有力な証拠もなく疑惑をかけている、といったものが理由であるということは最初に示しました。

中谷氏の論を真に受けて「野党はまともな仕事をしているんだなぁ」などと思わないよう、ファクトチェックして良かったです。

以上

秋篠宮殿下の立皇嗣の礼に反対するキャンペーンという偽装保守

 

現在、以下のようなキャンペーンが貼られています。
※キャンペーンが終了しても、残り臭がSNS上に残ると思われます。

内容は、「秋篠宮の立皇嗣に反対です。」というタイトルからして不敬なもの。

このキャンペーンはフェイクの塊なので、騙されないようにしましょう。

なお、ここで取り上げたところで広告収入は向こうは無いですし、キャンペーンが目標数に達したところで何か変わるわけでもありません。賛同者が目標数に達したら政府宮内庁に送るみたいですが、こんないい加減なものを元にしても政府機関は動きません。

皇嗣とは

皇嗣(こうし)とは、天皇の跡継ぎのことです。

皇位継承順位1位の者とも言い換えられます。

皇室典範

第一章 皇位継承
第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第二条 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
一 皇長子
二 皇長孫
三 その他の皇長子の子孫
四 皇次子及びその子孫
五 その他の皇子孫
六 皇兄弟及びその子孫
七 皇伯叔父及びその子孫
○2 前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。
○3 前二項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。
第三条 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる。
第四条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。

省略

第八条 皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という。

譲位が行われ皇太子徳仁親王殿下が天皇に即位されると、秋篠宮文仁親王殿下は「天皇の弟」なので、皇室典範2条1項6号に該当します。

ところで、敬宮愛子内親王殿下は「皇統に属する男系の男子」ではないので、皇位継承権はありません。皇室典範2条1項1号~5号は誰もいないことになります。

したがって、秋篠宮殿下が皇位継承順位1位となられます。つまり、皇嗣になられます。逆に、秋篠宮殿下は徳仁親王殿下の子ではないので、皇太子とはなりません。

以上より、秋篠宮殿下が皇嗣となられることは皇室典範の規定から自動的に決まっていることなのです。ネットを見ていると、この辺りの勘違いが多い気がします。

立太子の礼、立皇嗣の礼とは

立皇嗣の礼閣議決定

「立太子の礼」、「立皇嗣の礼」、いずれも皇室典範上には記述の無い言葉です。

しかし、立太子の礼は国事行為としてその都度行われてきました。明治には大正天皇が10歳のときに立太子の礼が行われましたが、今上陛下の際は昭和27年に18歳、皇太子徳仁殿下の際は平成3年に31歳で立太子の礼が執り行われました。

立太子の礼は、後継指名としての性質がありますが、近年では広く国民にお立場を認識してもらう儀式という意味合いがあると思われています。

立皇嗣の礼も、立太子の礼と同じ意味合いであり、儀式は徳仁親王殿下の立太子の礼を参考に執り行われることになります。

これは閣議決定もされているところです。報道も各社によってなされています。

さて、以上の理解を前提として冒頭のキャンペーンを見ると、フェイクの塊であるということが明確に分かります。

「秋篠宮の立皇嗣に反対です」というフェイクキャンペーン

「秋篠宮の立皇嗣に反対です。」というキャンペーンですが、いきなり事実誤認があります。

「皇嗣は法律上の地位ではない」というフェイク

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はい、皇室典範4条に「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」とあるので、完全に間違いです。これは書いた本人も他人の指摘によって気づき、『「秋篠宮立皇嗣反対」の署名本文を変更しました。』という別ページを作っていますが、その部分以外の主張内容は前のもののコピペであり、まったく反省していません。

「国民に見えない形で行政文書1枚で皇嗣を法律上の身分にした」というフェイク

このキャンペーンは続いて、政府の文書を持ち出して「この文書で皇嗣の身分が法律上変更されるようになった」ということを述べていますが、上述の通り、皇嗣の身分は皇室典範で決まっているので、そんな理解は成り立ちません。

ここで彼らが狙っているのは「国民に見えないようにしている」という部分です。

「政府が法律に基づかず、国民に見えないところで秋篠宮殿下の身分を変更しようとしている」という趣旨の主張をしている部分があるのです。

しかしおかしな話です。皇嗣は法律上の地位ではないなどと勘違いする程度に皇室典範もろくに読み込んでいない輩は、この件について何ら興味も無かったはずです。なのに、なぜか政府と宮内庁が「隠蔽」しているかのように喧伝しています。

もしも「国民に見えないようにしている」のであれば、こうした文書も一切出さないはずなのですが、何を言っているのでしょうか?この部分以外にも、すべてを国会生中継しろといわんばかりの言説がありますが、能力が不足している者に検討させても無意味ですし、時間の無駄です。

このキャンペーンが、単なる情報のかく乱、政府に悪感情を持つように印象操作する目的であるということがこれで明らかです。

儀式の執り行いの手続については、天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会において議論されています。

「立皇嗣の礼は法律の拡大解釈である」という嘘

「立皇嗣の礼は皇室典範に記載の無いものだから拡大解釈だ」という記述も間違いです。

先に示したように、立太子の礼も立皇嗣の礼も皇室典範に記載はありません。しかし、立太子の礼は伝統的に行われてきました。これの何が問題なのでしょうか?

皇室典範上、そのような行為を禁止する規定はありませんし、何より皇室典範に書いていない行為はやってはいけないという解釈はどう読んでもできません。皇室典範は必要最低限のことを記述したものです。そこに書いていない行為はできないという理解だとすれば、天皇皇后両陛下の巡幸はどう説明するつもりなのでしょうか?

キャンペーンの主張は皇室という御存在を軽視しているし、法解釈上も明確に誤りです。

結局、女性天皇、女系天皇を推進したいだけ

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譲位が行われた場合、秋篠宮親王殿下が皇位継承順位第一位になるのは憲法2条を受けた皇室典範の定めで自動的に決まっているということは既に示しました。

このキャンペーンは「立憲主義」を持ち出していますが、そうすると皇位継承権を持っていない愛子内親王殿下を皇位継承順位1位であると主張しているのは矛盾していることになります。

ツイッター上の工作

「立皇嗣の礼」でツイッター検索をかけると、工作アカウントによる誤解が撒き散らされています。一例を抜粋。

皇室典範をろくに読まない層に向けてこういう工作を行っているということがわかります。こういう、あまりにもバカバカしいのは立場のある者や党、マスメディアから発信するのは憚られるので、こうやって無名アカウントらを使って誤解をまき散らそうとしているのでしょう。

ネットは嘘ばかりですね。 

まとめ:皇室典範をちゃんと読もう

今回の件、皇室典範の規定を読めばフェイクであるとすぐに理解できるものです。

しかし、それすらやらない者は一定数おり、そうした層に対して狙った工作が仕掛けられているのだと思います。

特に、何らかの法の条文を根拠にしているかのような文章は、なんとなく説得力がありそうに思う人は多いので厄介です。また、間違いを指摘する者も少ないので余計に工作がしやすいという状況になっています。

そうした工作に認識を歪められないようにするには、法律の条文を自ら検索して確認するしかありません。中には重要部分を省いて引用する者もいますからね。

これを機会に、天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会などで議論状況を見たり、天皇、皇室に関連する書物を読むのもいいのではないでしょうか。

以上

 

戦史叢書等にみる神風特攻隊の戦果

 

神風特攻隊の戦果はどうだったのか?

死者数に比してあまりにも少なかったのではないか?

その非道な作戦に比して戦果が乏しかったのではないか?

こうした見解をたびたび目にしますが、実際に沈没、損傷させた艦船はどれほどだったのでしょうか?

私は靖国神社偕行文庫にある戦史叢書を読んできましたが、戦果を意図的に過小評価しようとする者の「仕掛け」「トリック」への気づきを頂いてきました。

この記事では沖縄方面海軍作戦 (1968年) (戦史叢書)の中にある記述を中心に紹介していきます。

戦史叢書について

戦史叢書という書物の性格についてウィキから抜粋します。

記述の元となったのは、戦中に占領軍の接収から秘匿されて残された大本営内部の文書(大本営陸軍部戦争指導班『機密戦争日誌』など)と、引き揚げてきた部隊の関係者が執筆を求められて執筆した準公式の報告書、及び、自発的に執筆された私的な回想録、米国より返還された戦闘詳報などの日本軍作成文書が主であり、「対抗戦史」として外国の文献も参照して執筆されている。

【一次資料をベースに複数の観点からの資料を元に戦後の研究によって書かれた物】

このように言えると思います。

神風特攻隊:航空特攻の戦果の理解の仕方について

このエントリでは航空特攻の全てを網羅できません。「特攻の戦果」と言うとき、「特攻」の定義、「戦果」の定義によって内容が様々であるということは最初に指摘していきます。

あくまでも戦史叢書沖縄方面海軍作戦に記述のある戦果について書いていきます。

航空特攻が行われたのは大きく分けて「比島(フィリピン)特攻作戦」と「沖縄方面における特別攻撃隊」があります。また、海軍と陸軍双方が航空機を持っていたため、それぞれの戦果が別々に記載されています。

こうした点を意識して資料を読むと、戦史叢書編纂者による戦果を正確に理解できると思います。

比島(フィリピン)特攻作戦での神風特攻隊設立経緯

神風特攻隊はレイテ湾上陸の米攻略軍を撃滅するための捷一合作戦において、大西瀧治郎海軍中将によって初めて編成されました。

当時の状況の詳細は割愛しますが、有馬正文少将の日誌によると、哨戒機は敵発見の報告前に米軍に捕捉されて悉く撃墜されてしまい、攻撃に向かっても被害のみが大きくなるという状況であり、「司令官以下、全員体当たりでいかねば駄目である」と語っていた有馬少将自らが決然搭乗して出撃したこともありました。

これを知った陸軍第二飛行師団は「これに大きなショック(戦史叢書の記載)を感じ、その後特攻に踏み切る動機になった」と伝えています。

大西中将は特攻作戦は最初の13機をもって米機動部隊封止の作戦を終了すれば打ち切る考えであったと伝えられていますが、この後規模を広げて長期継続することになりました。 

フィリピン特攻作戦での戦果

ここは引用します。

707頁

十九年十月二十一日、大和隊の久納好爪孚中尉に始まり、二十五日の關行男大尉の敷島隊五機による護衛空母セント・ローの撃沈のほか、空母六隻の撃破を皮切りとして、比島における航空特攻は大きな戦果をあげた。資料不分で概略のものであるが海軍の特攻出撃約四百三十六機、直掩機(※ブログ主注:味方の航空機を掩護 (えんご) する戦闘空中哨戒を行う航空機)約二百四十九機、特攻実施約二百九十九機、未帰還百四十六機、命中艦船数約七〇隻で、この中には一艦に多数機が突入したものがあり、命中延隻数百二十二隻余となっている。

この中には空母損傷十八隻、沈没二隻を含んでいる。このほか陸軍でも、先に述べた萬朶隊以下約二百四十三機が特攻として出撃した。陸海軍合わせて成功率は約二十七パーセントとなっている。

「撃沈」「撃破」「損傷」「沈没」などの用語法については調べてません。

ここで、「神風特攻隊の戦果」と呼ばれているものについて、「撃沈」「沈没」のみを挙げている文章があることを思い出しました。そういう論法をもって「特攻は戦果が乏しかった」と論評している文章は、神風特攻隊の戦果を意図的に過小評価しようとする目的が疑われます。

沖縄方面における特別攻撃隊

f:id:Nathannate:20180815114029j:plain

上図の表は戦時中当時の上奏書から抄録したものです。

これとは別に710頁以下でも戦果についての注釈があります。

沖縄方面作戦における航空特攻の概要

沖縄作戦における特攻については第六章に詳しく述べたところである。その集計は第十一章(※注:上記図)に記載した。陸海軍合計特攻機数一、九〇〇機余りで安延多計夫大佐の戦後の研究によれば命中及び至近弾となったもの約二五〇機を算し被害艦船延隻数二三九隻、命中率約一三パーセントとなっている。ただこの被害艦船は海軍在籍船のみで、従来しばしば述べているように商船等の民間徴傭船舶の被害が明らかになると、相当増加するものと思われる。このほか、英艦隊でも空母延六隻、駆逐艦一隻が損害を被っている。

軍隊内での報告数は「盛っているのでは?」という疑念が浮かぶと思います。しかし、戦史叢書の文を引用した部分を合わせて考えれば、穏当な理解が得られると思われます。

「記載されている被害艦船が海軍在籍船のみで、商船等も含めると多い」

これは日本軍の艦船の「船籍」を調べると分かりますが、当時は軍隊が所有している艦船のみならず、民間が所有している船が徴傭されたものも含まれていたということで、他国でもそういったことがありました。

日本の場合、川崎汽船や日本郵船、日本海運、大阪商船、東洋汽船など、多くの民間造船企業が関係していることが確認できますたとえばこちら

民間船舶だからといって大きくないとか重要ではないということは言えないということがわかるでしょう。こういった民間船舶に対する攻撃は「戦果」に含まれていない場合も多く、神風特攻隊の戦果が過小評価されている原因の一端でもあると思います。

なお、当然ですが民間船籍には軍人が乗っており、民間の船舶に対する攻撃だからといって「戦争法違反だ!」とはなりません。日本の民間船舶も魚雷によって多数撃沈されています。

神風特攻隊の戦果を記述しているネット上の論評

「神風特別攻撃隊」の本当の戦果をご存じか?(栗原 俊雄) | 現代ビジネス | 講談社(3/3)

例として毎日新聞記者の栗原俊雄氏による上記記事の論評を引用します。

敗戦まで、航空特攻の戦死者は海軍が2431人、陸軍が1417人で計3830人であった(人数には諸説がある)。一方で敵艦の撃沈、つまり沈めた戦果は以下の通りである(『戦史叢書』などによる)

正規空母=0/護衛空母=3/戦艦0/巡洋艦=0/駆逐艦=撃沈13/その他(輸送船、上陸艇など)撃沈=31

撃沈の合計は47隻である。1隻沈めるために81人もの兵士が死ななければならなかった、ということだ。しかも戦果のほとんどが、米軍にとって沈んでも大勢に影響のない小艦艇だった

この論評は「戦果」を「撃沈」でしか算定していないという叙述上のトリックがあるということに気づきます。 また、被害を「米軍」に限っています。

ただし、特攻が空母を目的にしたものであるということはその通りで、特攻が戦争全体の大勢に影響を与えたかどうかという点は、確かに疑問です。また、予想された戦果に比して小さかったこともまた事実です。

しかし、次の項のように外国人による日本軍の戦果の調査結果も参考に値します。

ウォーナー夫妻による太平洋戦線の調査

オーストラリアの戦記作家であるウォーナー夫妻らが特攻隊の戦果についてまとめており、ドキュメント神風―特攻作戦の全貌 (1982年)という書籍もあります。

ウォーナー夫妻が太平洋戦線で日本機から体当たりを受けたアメリカ、オーストラリア、イギリスの全艦船について調査した結果は以下です。

空母「セント・ロー」「オマニー・ベイ」「ビスマーク・シー」の3隻を含む少なくとも57隻が撃沈された

正規空母「タイコンデロガ」「バンカー・ヒル」「エンタープライズ」「フランクリン」、護衛空母「サンガモン」、英空母「フォーミダブル」、水上機母艦「カーチス」、豪重巡「オーストラリア」を含む108隻は、特攻攻撃で受けた損傷のため、終戦まで戦線に復帰できなかった

空母「レキシントン」「イントレピッド」「ランドルフ」「サラトガ」「ワスプ」「ハンコック」、軽空母「カボット」、護衛空母「キトカン・ベイ」「カダシャン・ベイ」「ウェーク・アイランド」「サラマウア」、戦艦「ニュー・メキシコ」「メリーランド」「ネヴァダ」を含む84隻が船体に重大な損傷を受けるか、多数の死傷者を出すか、それとも物的人的両面において大損害を受けた。

さらに少なくとも221隻が軽損害を負った。

これらがいわゆる「神風特攻隊」の予め発令された作戦による被害なのかどうか、フィリピンや沖縄方面での話なのかどうか、被害船には民間船舶も含まれているのかどうかは確認していません。

しかし、相手国(オーストラリアは連合国側)の方による日本軍の戦果ということで信憑性が高いものと言えるでしょう。当たり前ですが、日本は太平洋で連合国と戦っていたのであり、米国との戦果のみを想念するのは片手落ちであると言えるでしょう。

まとめ:特攻攻撃の戦果を過小評価するトリックがある

  1. 撃沈、沈没数のみで戦果を評価する論評があるが、撃沈に至らなかったものの損害を与えた戦果についても考慮するべきである
  2. 民間船籍の敵国艦に対する戦果が無視されている場合がある
  3. アメリカ一国の被害のみが特攻攻撃の戦果とされている可能性がある

神風特攻隊をはじめとして、回天などの各種特攻攻撃による戦果は、上記のようなトリックによって過小評価されていないでしょうか?そのような視点で一度他の論評に目を通してみると、その意図が見え隠れするかもしれません。

もちろん、特攻攻撃は非道の作戦です。それを20歳前後の青年に行わせた当時の上層部は非難されるべきですし、作戦を美化してはいけないと思います。

しかし、特攻に散った青年たちの精神は後世に受け継がれなければなりません。同時に戦果を過小評価することもあってはならないと思います。

以上

サマータイム賛成論者が全員ヤバ過ぎる件:森喜朗は過去にサマータイムで苦労していたと国会答弁

サマータイム賛成ヤバ過ぎ

日本各地で過去最高気温を更新している2018年の夏ですが、この暑さで頭の中枢をやられてしまった方々が続出しているようです。

「サマータイム賛成論者」の主張を見ていると、今夏の威力のすさまじさを思い知ります。その支離滅裂さはこれまでに見たことが無いくらいのもので、ネット上では政治思想の左右を問わずに反対しており、両陣営に結束力を生み出すまでに至っています。

この記事では数少ないサマータイム賛成論者の主張をまとめ、このような論拠で政治が動いたらどうしようかとうすら寒い思いをしていただき、納涼とさせていただきたいと思います。

サマータイム賛成論者が全員ヤバ過ぎる

サマータイム賛成論者の主張を調べると、ニュースサイトに記事を寄稿したり自身のブログに掲載している文章に当たる以外は、経済的効果の試算のソースや各社のアンケート結果にたどり着きます。

経済的効果の試算やアンケートの方法については下記記事でも問題点を指摘しているので、ここではそれ以外のものについて確認していきます。

松谷創一郎

サマータイム議論の論点──70年代以降5度目の提案は実現するのか?

yahoo上で過去のデータを紹介しつつ、論理展開しています。

おそらく、サマータイム賛成論者で最もデータに基づいて論じているのがこの方。

だが今回、政府と自民党が念頭に置いているのは、2年後の夏に開催されるオリンピックの暑さ対策だ。これは過去には見られなかった新しいメリットの主張だ

まず政府自民党ではなく、五輪組織委員会です。重大な事実誤認。「新しいメリット」どころか、それが主目的なんですが何を言ってるんでしょうか?(今は揺らいでるようですが)

次に目を引くのが「世界的にも日の出が早い東京」という項

そんな彼らの意見で気になるのは、日本の日の出が早いという指摘だ。実際はどうなのだろうか。そこで、世界各地の今日8月10日の日の出と日の入時刻を調べてみた。

サマータイムを行っていないこともあって日本の日の出は世界的に見てもかなり早いほうだと言える。導入議論が何度も繰り返されるのは、日の出が国際的にも早い状況があるからだ。

緯度という概念はどこかに飛んで行って、サマータイムを行っている国の日の出時刻と行っていない日本の時刻を比較して「東京は日の出が早い」と指摘しています。その比較、意味ありますかね?

なぜなら、欧米のサマータイムは「人間の活動時間帯の日照時間の増大」であるのに対して、今回は「暑さ回避」を目的としているのですから(その目的は成り立たないが)、どこか論点がずれています。日の出と日の入りの時間は調べたのに、気温と湿度は調べてなかったようで、一暴十寒ですね。

しかも、「東京は日の出が早い」と「サマータイムを導入するべき」との間をつなぐロジックが全く無い。なぜ日の出が早いと問題なのか?日の出を時計操作で変更することでの積極的なメリットが全く語られていないのがなんともモヤモヤする文章です。

最後の項「ひとまず試してみては?」でも事実誤認があります。

今回のサマータイム導入議論は、オリンピックの暑さ対策として安倍首相が持ち出した経緯がある

サマータイムは公益法人である五輪組織委員会の森喜朗会長が、組織委員会の会長として政府に要請したという事実はどこに行ったのでしょうか?

安倍総理は内閣で検討する前にまずは自民党など議員のレベルで議論するように言っただけです。内閣と党は別ですし、ましてや公益法人は全くの別組織であり、民間組織です。「安倍総理が持ち出した」は完全にフェイクです。

極め付けはこれ

最後に個人的な体験を付記しておくと、まだ13歳だった1987年の夏に韓国旅行をした際、ソウルでサマータイムを経験したことがある。先にも触れたが、オリンピックのとき2年間だけ韓国はサマータイムを実施したのだ。
 強く記憶しているのは、20時半頃まで外が明るかったことだ。当時中学生になったばかりだったが、夜でもひとりで出歩けそうな雰囲気にワクワクしたことを覚えている。また、朝はじゃっかん薄暗くて涼しい。早起きしなくても、一日が長く感じられる印象があった。
 こうした体験も踏まえると、個人的にはひとまずやってみればいいのではないか、と思わなくもない。

サマータイムが実施下でも青少年が夜出歩いていれば補導されます。

韓国はサマータイムをそれ以降実施していない点についてはなぜかノータッチ。

最終的に「個人的な体験からくる感想に基づく政策提言」という小学生の夏の読書感想文でも書かないような内容になっています。yahooはこれに寄稿料を払っているということでしょうか?

この人、NHKラジオ第一にレギュラー出演中なのですが、NHKは人材が豊富ですね。

自称ITジャーナリストの宮脇睦

自称ITジャーナリストの宮脇睦氏が無料メルマガで主張した内容が複数メディアで転載されています。

どこかの瞬間、サマータイムにより2時間ないし、何時間と時間がずれても、そのまま処理するだけで影響は軽微です。目覚まし時計の時間がずれたら直すように「サマータイム」となったとき、コンピュータの時計を合わせ直せば良いだけのことです。

ホストコンピュータなどと接続していて、連続した情報をやりとりしているシステムなら、バチっと電源を落として、その後の立ち上げで日時の変更をすればよいだけのこと。

4月1日に配信された文章かと思いきや違うようです。

パーソナルコンピューターを念頭に置いていると思われる主張で、それ以外の機器はどうするんだろうと思っていたら、各所から突っ込みの嵐でした。

極めつけは文末の3段落。

こうした日本人の性向、習性からサマータイムは難しいのですが、反面、本来的な日本人が兼ね備えている「不便を楽しむ」ことができればサマータイムなど難なく乗り切れることでしょう。

つまり、アスリートファーストなどの詭弁では無く「不便なのは開始と終了の二日だけ。あとは慣れようよ」と、開き直ったアナウンスを政府がしてしまえば、勤勉でいてイベント好きな日本人なら、勝手に盛り上げてアジャストすることでしょう。

さらに、月替わりではなく「週末」や、やたらと増えた「三連休」をサマータイムの切り換え日に当てれば、寝不足や時間調整のイベント化だってできます。

ITジャーナリストが「人力で頑張れ!」と言っていることに背筋が凍りつきます。

学習院大学教授の伊藤元重

8月8日のniftyニュースでは突っ込み付きで主張が紹介されています。

番組コメンテーターで学習院大学の伊藤元重教授は、「前からやるべきだと思っていたんです」と、サマータイム導入に賛成であることを明かし次のように述べた。

「いろいろ理由はあるんですが、とにかく夏は朝早くから日が昇っているわけですから、 簡単にいえば『夏は早寝早起きしましょう』と。(中略)いろんな国がやったり止めたりしていると思いますが、結果的に見ると世界の先進国のほとんどがやってるんですよ」

中略

大江麻里子アナが「長時間労働になってしまうだけという懸念がありますよね」と質問すると、伊藤教授は

「でも海外ではそうなってないですよね」

と、さらりと回答。大江さんは小さな声で「うーん?」と唸り、一瞬疑問の表情を浮かべていた。

いろいろ理由があるうちの一つが「早寝早起き」 

先進国のほとんどがやっているからという理由にならない後付けの理由らしきものを持ち出しても、いまどきのアナウンサーは疑問を当然にして感じます。

伊藤元重氏のサマータイム導入論の根拠を探し回っても、「先進国が導入してるから」というものしか見つかりません。

そんなハズは無い。これは情報が隠されている。アベの陰謀だ!

自民党の船田元

魚拓:http://archive.is/j4AzL

コンピュータなどの時間設定の変更は、律儀で真面目な国民ならば十分乗り切れるはずだ。余暇時間の過ごし方が、エネルギー消費の削減につながるような工夫も必要だ。一方、睡眠不足などによる健康障害問題は、むしろ個人の心構えにより、多くは解消されるはずだ。

明らかに地球温暖化を原因とする異常気象が、世界を震撼させている。

この記事は8月6日にサマータイム導入論議が湧き起った後、いろんな問題点の指摘が各所からなされた後の8月13日にUPされているというのが驚きです。

明らかに根拠不明、支離滅裂なサマータイム賛成論が日本を震撼させています。

長谷川豊

2018年8月11日懐かしいサマータイム。僕はけっこう好きですし導入すればいいのにって感じます

でも、僕は嫌いじゃなかったです。
そこそこ経済的なメリットもあると聞きましたし、実感としては「日本も導入すればいいのにな~」と感じたことを思い出します。

ま。
日本人ですしね。
変化嫌いだし。
どうせ導入しないでしょうけれど、体験した僕はけっこう好きです。
そこまで大きな問題なわけじゃないし、どっちでもいいです。

この人はいつもこんな感じの文体なので、非難はご法度。

この文章で面白いのはサマータイムで時差ボケになったりしたことはあっても、良い面については「好き」「おもしろい」「結構よかった」という個人の感情を伝えるのみで、その理由すら言うわけでもないというところ。

ましてや「サマータイム導入のメリット」を論じることに期待可能性がありません。

いったい何のために文章を書いているのかが分かりません。

この文章を書くために起動させているPCなりスマホの電源がもったいない、ブログサーバーを用意しているのがもったいないので、省電力にご協力願います。

森喜朗・東京五輪・パラリンピック組織委員会会長

日経新聞電子版2018年7月27日

「来年、再来年に今のような状況になっているとスポーツを進めるのは非常に難しい」 

招致段階で分かっていたことでしょう。

これはしっかりと国会議員の偉い方に反論してもらわないといけませんね。

参議院予算委員会13号昭和59年03月28

○国務大臣(森喜朗君)ー冒頭省略ー
例えば僕たちの子どものころに非常に困ったのは、右側通行が左側になったり右側になったり、何でもかんでもアメリカ流にしていって、我々はそれこそ右往左往、うろちょろしたことを今でも思い出しているわけですし、あるいはサマータイムなんていうようなものもたしかアメリカからそのまま取り入れて、日本に合わないということで急にやめられて、学校教育では随分現場では苦労したということを記憶をいたしておるわけでございます。

森会長、ぜひとも昔の記憶を思い出していただきたい!

まとめ

サマータイム論議は10年おきくらいに議論されてきましたが、暑さ寒さも彼岸まで。

国会議事録を読んでも特に説得的な主張がなされることも無く、毎回スルーされてきました。

今回の記事は、まぁいわゆる【disり】の類になってしまいましたが、物言えば唇寒し秋の風。このままサマータイムなんて忘れて涼しい秋を迎えたいです。

以上