事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

関東大震災における朝鮮人暴動デマの東京日日新聞(毎日新聞)の記事が隠蔽されていた件

東京日日新聞大正12年9月3日関東大震災

東京日日新聞大正12年9月3日上半分

関東大震災時に「朝鮮人の暴動」という流言蜚語(デマ)を煽った原因として、住民の口伝や官憲(政府)の方針があったと言われていますが、それだけではありません。

実は新聞社が流言の拡散に寄与した役割は非常に大きいのですが、それについてはあまり論じられることがありません。特に、「朝鮮人暴動」については地方紙がクローズアップされることが多く、なぜかある新聞社はあまり登場していないということに気づきます。

それが東京日日新聞(現:毎日新聞)です。ネット上でも上記画像はまったく目にしません。

ここでは東京日日新聞が震災当時にどのように発行されたのか、その内容と現在の扱いについてまとめていきます。

東京日日新聞等の在京メディアの報道状況

震災後、新聞社の復旧に時間がかかったとは言われていますが、まったく出版・配布・掲示が無かったわけではありません。関東大震災について記述している書籍のいくつかにおいても、東京日日新聞は9月5日から再度発行された、という言説がありますが、証拠収集が困難だった時代に調査から漏れてしまったのが原因でしょう。

実際は、東京日日新聞については毎日新聞百年史でこう書かれています。

大震災で焼け残った新聞社は、東日(東京日日新聞)、報知、都の三社だけであった。そして九月一日に号外を発行したのは、東日と時事新報だけであった。-中略ー 社屋は焼け残ったが、電力、ガスなど動力源が止まったので印刷ができない。そこで東日は高崎の売捌店・根岸慶三郎のあっせんで、前橋の上毛新聞社と交渉し、二日午前二時ごろからの本紙の印刷をはじめ、半ページ大の新聞約十万枚を前橋で印刷、このうち半分を各地の主要売捌店へ送り、あとの半分を東京、千葉などに配布した。これが二日付の東京における唯一の新聞となった。三日、四日、五日は浦和で編集印刷したが、五日には東日社屋の動力が復旧したので、六日付の新聞から東日本社での製作が可能となった。

東京日日新聞は、震災があった9月1日にも新聞を発行しており、その後も途切れることなく毎日新聞を刷り、配布していたということです。

特に9月3日に出版されていた冒頭画像のような内容は衝撃的です。「不逞鮮人各所に放火し帝都に戒厳令を布く」「鮮人いたる所めった斬り働く」「日本人男女十数名をころす」という表現は、当時の流言をそのまま伝えるものであり、事実に反するということは確定しています。

関東大震災時の東京日日新聞(現:毎日新聞)の報道

冒頭の9月3日朝刊の画像では、「朝鮮人暴動」をこれでもかというくらい強調して伝えていましたが、2日夜には官憲も「朝鮮人暴動」が流言であるということに気付いており、新聞社に伝えています。

現に、既に3日の号外では「鮮人をむやみに迫害するな」という警視庁の告示が掲載されています。

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これは、政府の側も当初は「朝鮮人暴動」が事実であると認識していたが、2日午後にはそれは間違いであると気づいたという内務官僚の正力松太郎(後の読売新聞社主)の証言があります。

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正力松太郎:「悪戦苦闘」(早川書房)

そこでは2日午後には「虚報は震災の衝撃と通信電信途絶による人心の疑心錯覚から生じたもので、それに翻弄された当時の警視庁は事態への対応に失敗した」という認識に至ったということが述べられています。

しかし、それにもかかわらず、9月4日の朝刊や号外では再度「朝鮮人の暴動」を肯定する記述が登場しています。

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実際に朝鮮人による放火があったのか、投毒未遂の事実はあったのかはかなり懐疑的に見られていますが、少なくとも「雨と火と鮮人の三方攻」などという実態は存在していないと結論づけられています。

また、号外では「軍隊や警察によって治安を取り戻した」という表現があり、そのような力が無いと鎮圧できないほどの暴動があったと読者が思うのが自然である表現をしています。

東京日日新聞が、官憲側の朝鮮人犯罪についての自粛要請があった後も、ありもしない「朝鮮人暴動」を喧伝していたということになります。

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毎日新聞百年史

当時の活動について、毎日新聞百年史では「関東大震災で東日躍進」と評価しており、実際にも関東大震災後に東京日日新聞は発行部数を伸ばしていきます。

内閣府中央防災会議の関東大震災の報告書

内閣府中央防災会議のページに「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書1923 関東大震災【第2編】」があります。この報告書は流言蜚語について整理してあります。

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一番上、富士山が大爆発などといったトンデモから始まっているように、当時かなりの情報の混乱がありました。上記はほんの一例ですが、朝鮮人が「震災に乗じて数千人数百人単位で暴動を起こした」、『毒薬を井戸に入れた』といったものは事実ではない流言だったと判断されています。

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「関東大震災時に朝鮮人の暴動があったというのはデマだった」という根拠が、これら政府も認定する流言の存在です。先述の正力松太郎の証言とも一致します。

朝鮮人暴動デマは官憲が情報を新聞社に流したせい?

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大阪朝日新聞大正12年9月4日朝刊

こうした新聞社の報道は『官憲が「公表した」情報を報じているだけである』という言説がありますが、非常に疑わしいです。よく引き合いに出されるのは以下の2つの『電報』ですが、なぜかこれらの電報が「公表」されたと表現される書籍が多いです。

警保局から各地方長官に対する電報

「東京付近の震災を利用し、朝鮮人は各地に放火し、不逞の目的を遂行せんとし、現に東京市内に於て爆弾を所持し、石油を注ぎて放火するものあり。既に東京府下には一部戒厳令を施行したるが故に、各地に於て充分周密なる視察を加え、朝鮮人の行動に対しては厳密なる取締を加えられたし」

警視庁から戒厳司令部への電報

「鮮人中不逞の挙について放火その他凶暴なる行為に出(いず)る者ありて、現に淀橋・大塚等に於て検挙したる向きあり。この際これら鮮人に対する取締りを厳にして警戒上違算無きを期せられたし」

これらは正力松太郎の証言にあるように、すぐに事実がないということが分かったのですが、政府内の情報共有のための電信に過ぎません

中には正力松太郎の上記証言が「政府が公表した」ことの根拠として言及されることがありますが、まったく異なるということが分かるでしょう。そのために全文を載せました。

なぜこの内容を新聞社が知っていたのでしょうか?

一つは政府内の者が個別に新聞社に「この情報を流せ」と触れ回っていたのではないかというものです。そうした現実を完全には否定できないものの、もう一つ無視できない事実として【新聞社が軍の電信を盗聴していた】というものが考えられます。

新聞社が軍や警視庁の電信を傍受・盗聴?

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毎日新聞百年史

ここでは新聞社が他社に情報漏れするのを防ぐために暗号電信を行っていたと書かれています。つまり、電信は傍受し放題だったため、重要部分は暗号化していたということです。

電信については大東亜戦争時においてもアメリカ軍のものを傍受していたくらいですから、新聞社が日本政府の電信を傍受し、その内容を把握(軍がすべて暗号化していたかは調べてませんが)していたという予想は十分あり得るものです。現に、先に示した大阪朝日新聞の大正12年9月4日朝刊には明確に「傍受したところによると」と書いてあります。

よって、警保局や警視庁の電報が新聞社にダダ漏れだったということは十分あり得る推測だと思います。

しかし、関東大震災の流言について研究した書籍・論文で、この点について触れているものは見当たりませんでした。多くは『官憲が「公表した」情報をそのまま流した』と書いており、新聞社が一定の責任回避ができるような記述ばかりです。

比較的多く東京日日新聞の9月3日の紙面を紹介しているものとしては 関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実(工藤美代子)がありますが、その他の書籍や論文ではほとんど目にしません。

当時は、ラジオが一般的に無かった時代です。NHKラジオは2年後の1925年に始まります。国民の情報源は新聞と口伝がメインであり、補助的に電報があったのみでしたから、新聞の与える影響はすさまじかったものでしょう。

研究論文:朝鮮人暴動流言の「主犯」は新聞紙メディア

関東大震災朝鮮人暴動デマ東京日日新聞

大畑裕司/三上俊治「関東大震災下の『朝鮮人』報道と論調」(下)『東京大学新聞研究所紀要』第36号,1987年

大畑裕司/三上俊治「関東大震災下の『朝鮮人』報道と論調」(上)(下)『東京大学新聞研究所紀要』第35号・第36号,1986・87年では、東京日日新聞をはじめとする在京紙や地方紙が流言蜚語の「主犯」であると結論づけています。

このような視点での分析はネット上ですらほとんど垣間見ることがありません。

この論文中でも先行研究として【山田(1979)「関東大震災期朝鮮人暴動流言をめぐる地方新聞と民衆」『在日朝鮮人史研究5号』】が挙げられていますが、これは地方紙に焦点を当てたものなので、在京紙についてはあまり触れられていません。

毎年、関東大震災が発生した日が近づくと、政府や一般人に対してデマ拡散についての教訓を示し、反省を促すかのような論調がマスメディアから垂れ流されますが、メディアの側が自省すべきという論調が全く無いのはどういうことでしょうか?

この視点があまりにも蔑ろにされていると思います。

しかも、30年前に書かれたこの論文では明らかに「東京日日新聞」が流言拡散に寄与した程度が大きいという認識で書かれています。毎日新聞がこのような歴史を直視せず、専ら政府や一般国民に対してのみ「反省」を求める風景には違和感しかありません。

この論文では宮城県の新聞社である「河北新報」が最も流言を報道したということで取り上げ、集中的に分析していますが、確かに震災から日にちが経った後も継続して「朝鮮人暴動」という流言を報道していたのは地方紙です。

しかし、実際に朝鮮人を殺傷した事案の多くは9月3日に集中しており、司法省刑事局の「刑事事犯調査書」でも、関東圏で朝鮮人を殺傷して起訴・起訴猶予となった事案は9月6日までのものとなっています。

つまり、在京メディアが9月3日、4日に報道した内容が朝鮮人殺傷に寄与した役割は無視できないにもかかわらず、この点について言及されることが全く無いのです。特に東京日日新聞の報道については、「隠蔽されている」と言ってよい現実があります。

宮城県図書館の毎日新聞マイクロフィルムが欠損

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実は最近宮城県図書館に行ってきたのですが、そこでは毎日新聞の明治時代の記事もマイクロフィルムで見ることができます。しかし、なぜか大正年代から昭和20年までのものが欠損して見ることができません。

これが意図的なものであるという断定はできませんが、非常に不可解です。こうなっているのは宮城県図書館のみでしょうか?

現在、公的機関ならば国立国会図書館ならマイクロフィルムに所蔵があるようです。

ちなみに私は別の場所で大正12年9月2~5日の東京日日新聞のマイクロフィルムを見ることができました。

大空社「関東大震災」上下にも東日記事の欠損がある

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当時の新聞記事を頑強な材料に印字して保存している大空社の「関東大震災」。

ここに収録されている新聞社は在京紙・地方紙の朝刊・号外を網羅しており、一部については震災のあった9月1日から戒厳令が解かれる75日後のものまで揃っています。

しかし

何故か東京日日新聞の9月2日から5日の朝刊と号外が掲載されていません。

下巻は東京日日新聞が本格復旧した9月6日以降から戒厳令が解かれるまでのものを収録していますが、そこまでの熱量を持ってまとめているにもかかわらず、9月2日から5日の紙面が欠損しているというのは謎です。

しかも、この書籍の冒頭には各新聞社の出版状況についてまとめており、東京日日新聞が9月2日~5日も出版していたということは把握していたはずなのに、なぜ収録していないのか?についての言及はありませんでした。

大正時代の新聞記事、関東大震災時の新聞記事をまとめている出版物は他にもありましたが、やはり東京日日新聞の9月2日~5日の記事は収録されていませんでした。

まとめ:現状の言論状況は「隠蔽」と言い得る

  1. メディア自身が関東大震災時の反省をする論調がほとんどない
  2. 新聞社の報道が朝鮮人殺傷事件に大きく寄与したという認識が広まっていない
  3. 新聞社が電信傍受した可能性が無視され、官憲の責任が強調される傾向がある
  4. 関東大震災関係の書籍では東京日日新聞(毎日新聞)の一部記事が無視されている例が多く、東京日日新聞の一部記事は見つからないようになっている
  5. ネット上でも東京日日新聞の9月3日・4日の紙面はUPされてなかった

私がこの記事を書いたのは、朝鮮人殺傷における東京日日新聞の寄与度は決定的に大きなものであるはずなのに、そのような論調が無いどころか資料もまともに見つからないという状況に違和感を感じたからです。特定主体による意図的な「隠蔽」であるとは言いませんが、情況としては隠ぺいされていると言ってよいのではないでしょうか?

今回は関東大震災を取り上げましたが、マスメディアが作り出した一方的な世界認識が他にもあるハズです。そうした事実はこれまでは公になりませんでしたが、SNSが発達したことで我々一般人が発掘し検証できるようになりました。

今年は大阪地震や台風21号、北海道地震など、自然災害が多発しました。そこでは一般人によるデマがSNSで拡散されたことがニュースになりますが、原発や行政に対する論評においてマスメディアがデマと言ってよい論調を報じているものもあります。

そうしたメディアのフェイクや煽動に騙されないように日々チェックしていきたいと思います。

以上:はてなブックマークをして頂けると助かります。

仙台市の交番で警察官が刺殺され、容疑者も発砲され死亡した事件は正当防衛?警察官職務執行法7条について

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仙台市の交番で巡査長が刺殺され、駆け付けた巡査部長が容疑者に発砲して射殺するという事件が起きました。

これについて「発砲した警察官には正当防衛が成立するべき」という意見がみられますが、法的には正当防衛は検討されない可能性もあります。

警察官の発砲事案における判例と判断過程について整理していきます。

刑法195条:特別公務員暴行陵虐致死罪

(特別公務員暴行陵虐)
第百九十五条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。
2 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。

警察官による発砲を受けて死亡者が出た場合、発砲した警察官は特別公務員暴行陵虐罪や刑法199条の殺人罪に問われることになります。

警察官側は、刑法35条等に該当するとして罪の不成立を争う事になります。

刑法35条と36条の正当防衛

第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

正当防衛について定めているのは刑法36条です。

しかし、その前に刑法35条があり、そこでは

  1. 法令に定められている行為
  2. 正当な業務による行為

これらの場合には「罰しない」とあります。

では、警察官の発砲はというと、1番の「法令による行為」と扱われています。

正当防衛と警察官職務執行法7条各号

警察官職務執行法

第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
一 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。
二 逮捕状により逮捕する際又は勾引状若しくは勾留状を執行する際その本人がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。

警察官が発砲を許されるのは刑法35条の法令による行為として、警察官職務執行法7条本文に「武器を使用することが出来る」とあるからです。 

ただし、但書では「人に危害を与える」には、以下のいずれかの場合に当たらなければはならないとなっています。

  1. 正当防衛(刑法36条)に当たる場合
  2. 緊急避難(刑法37条)に当たる場合
  3. 警察官職務執行法7条1号に当たる場合
  4. 警察官職務執行法7条2号に当たる場合

では、警察官の発砲事案では、どれを検討するべきなのでしょうか?

警察官が発砲して死亡者が出た事件

警察官が発砲して死亡者が出た事件としては以下があります。

  1. 三菱銀行人質事件
  2. 瀬戸内シージャック事件
  3. 奈良県大和郡山市警察官発砲致死事件
  4. 栃木県中国人研修生死亡事件
  5. 河瀬駅前交番警察官射殺事件

その他発砲事件については以下サイトがまとめています。

警察官の拳銃・ピストル発砲事件と暴発事故の一覧 - いちらん屋(一覧屋)

ここでは、最近の奈良と栃木の事案について確認しました。

発砲事件の判例の判断

奈良地方裁判所平成24年2月28日判決平成22年(わ)第81号では、窃盗犯人が車で逃亡しており、途中で公務執行妨害罪にあたる兇悪な態様の行為をしていたので、さらなる逃亡を阻止するために車に対して発砲し、犯人が死亡したというケースでした。

ここでは最初に警察官職務執行法7条1号該当性を検討し、同条に当たる事を認定した上で正当防衛についても検討して成立すると裁判所は判断しています。

警察官職務執行法7条1号と刑法36条の正当防衛のいずれが成立しやすいのかは分かりませんが(警職法は「兇悪犯」という縛りがあり、必ずしも正当防衛と単純比較できない)、刑法35条の方が条文として先に来ているので、そちらを先に検討したというだけなのかもしれません。

一方、栃木県中国人研修生死亡事件の控訴審である東京高等裁判所 平成23年12月27日判決平成23年(う)第587号では、拳銃を奪おうとした公務執行妨害の現行犯に対して発砲した事案ですが、正当防衛に当たるとして警察官は無罪となりました。

これは、公務執行妨害罪が「三年以下の懲役若しくは禁錮」の罪であるところ、この事案では警察官職務執行法7条1号の「長期三年以上の…兇悪な罪」に当たらず、正当防衛の主張しかできなかったのでこのような判示になったということだと思われます。

警察官等けん銃使用及び取扱い規範

なお、拳銃の使用と取扱いについては、【警察官等けん銃使用及び取扱い規範】及び【警察官等けん銃使用及び取扱い規範の解釈及び運用について】という規則が定められています。

判例はこの規範については触れていません。

仙台市の交番で警察官刺殺犯人に対する発砲事件の扱い

再掲

巡査部長が別の部屋に移動したところ、怒鳴り声と争うような音が聞こえたため戻ると、清野巡査長が血を流して倒れていたという。

 清野巡査長のそばに男も倒れていたが、男は刃物とモデルガンのようなものを持って立ち上がった。巡査部長は警告したが、襲いかかってきたため発砲した。

これだけを見ると(そしてこの記事の通りの事実関係があったとすると)、本件の警察官については警察官職務執行法7条1号、正当防衛の両方が成立すると思われます。ただ、詳細な事実関係を確定しないとどうなるかが分からないということは言っておきます。

また、産経新聞の記事ではこのように警察官の行為の「正当性」が推しはかることができる記事になっていますが、他の媒体では巡査部長が警告した事実や男が刃物とモデルガンのようなものを持っていたという事実が書いていないものもあります。

このような記事の「つくり」は取材能力のせいなのか、国家権力側を悪人に仕立てたい意図があるのか分かりませんが、ざっと見た感じでは産経新聞の記事の方が発砲時の状況を詳細に書いているというのが特徴です。

まとめ:警察官発砲事件では正当防衛が認められる傾向

  1. 刑法35条に法令による行為は罰しないと規定されている
  2. 警察官職務執行法7条に武器使用(発砲)が認められる条件がある
  3. 警職法7条では正当防衛と同条1号の該当性が本件では問題になる
  4. 判例はいずれも認める傾向にある
  5. 本件は正当防衛も警職法7条1号も認められそう

法的には正当防衛は検討されない可能性がある、と冒頭に書きましたが、実際には警職法7条に「正当防衛に当たる場合」も含まれているため、警察官の発砲事例では正当防衛が関係してくるので、「正当防衛か否か」と考えることは何らおかしなものではありません。

以上

2011年の「大学院、来年度から修士論文不要に」という日経新聞の記事が再々拡散

来年度から大学院で修士論文不要
2018年9月18日、ツイッター上で「修士論文不要」がトレンド入りをしました。

これは「大学院、来年度から修士論文不要に」という日経新聞の記事が元なのですが、この記事、【2011年10月26日付】なんですよね。

どうしてこうなるのか?現在はどうなっているのか?を調べました。

実は数年置きに何回も拡散されている「修士論文不要」

2011年の記事がなぜか2015年、2017年にも拡散されていたというのは興味深い現象です。

この件でツイートしている人を見ると、50%は見出しだけ見てリンク先に飛んでいないと思われるものが占めます。

日経新聞のサイトのつくりが誤解のもと?

来年度から大学院で修士論文不要

日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG26049_W1A021C1CR8000/

魚拓:http://archive.is/317Lr

archive.isでは昨年、WaybackMachineでは魚拓は何回も取られています。おそらくツイッター上だけでなく色んなところで再拡散されているのでしょう。この件でアフィリエイトがはかどるわけもなく、この話をネタにしているサイトも見当たりません。

では、なぜこうなるのか?

一つには、日経新聞WEBの「つくり」が、読み手が誤解するところがあるからと思われます。

上図を見るとわかりますが、記事本文の日付はしっかりと2011年のものですが、「日本経済新聞」のタイトル下に本日の日付がついています。また、右側の株価表記の欄も、本日の日付です。

これが悪いということではなく、こういう表記によって、誤解する人が多いのではないかと思います。

それにしても、なぜこの記事だけが拡散されるのかは不明です。

現在の大学院の修士論文は?

修士論文不要博士論文研究基礎力審査

文部科学省:http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakuin/detail/1318971.htm

平成24年から、博士課程履修者に向けた博士論文研究基礎力審査を実施することが可能な制度が導入されているようです。

これはかねてから存在していた「修士論文に代わる特定課題の研究成果の審査」とも別個のものです。「修士論文不要」はこの記事がリリースされる2011年の以前からも存在していたということです。

いずれにしても、すべての修士課程修了予定者が対象ではないということは注意が必要です。

まとめ:博士論文研究基礎力審査を平成24年から実施しているところもある

  1. タイトルだけで反応していないか
  2. 記事の日付を確認しているか
  3. 現行制度を確認しているか

ネット上をみると、「この制度は廃案になったのだろう」というものもあって気になって調べたらこの通りということです。

この記事に脊髄反射しているようではメディアや煽動者が行う【時系列詐欺】に騙されてしまうので、気を付けていきたいと思います。

以上

総務省URLがTwitterでスパム認定されていた理由の一つが分かった件

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先日、総務省のURL"soumu.go.jp"がツイッター上でスパム認定されているということについて、その挙動等を調べた結果を記事にしました。

本日になって、スパム認定されている間接的な原因の一つが分かりましたので報告いたします。

スパムリンクデータベースに総務省のURLが登録

ブログのURLがTwitterでスパム扱いされてから解決まで - EspLogというブログでは、TwitterはSpamhausのリストデータをもとにリンクの安全性を確かめているようでであるということを指摘しています。ここに登録されていると、「ブラックリスト」となってしまうようです。

その上で、URLVOIDというページでのスパムリスト確認を行っていました。こちらでは"soumu.go.jp"はスパムリスト登録されていません。

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しかし、このブログでも紹介されているThe Spamhausというリストには登録されていることを発見しました。

f:id:Nathannate:20180916140703j:plain

The Spamhaus:https://www.spamhaus.org/query/domain/Soumu.go.jp

おそらく、ここに総務省のドメイン"soumu.go.jp"が登録されていることが、ツイッター上で総務省のリンクがスパム扱いされている原因の少なくとも一つではあると思います。

総務省にはTwitter等複数チャネルから解消するよう連絡

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データベースに登録されている場合、そのドメインの所有者からの連絡であれば解消要請をする連絡フォームがあります。自分が被害を受けたらここから連絡すればいいのでしょう。

こういうことはたまにあるのか知りませんが、とりあえずe-GovやTwitterアカウントからsoumu.go.jpがThe Spamhausに登録されていること、解消方法について連絡しました。

ブラックリストデータベース

どうやらブラックリストを扱っているサイトはSpamhausに限られないようです。

なぜ総務省のURLがSpamhausに登録されたのか?

正直、そこまで調べることはできませんし、そんな意欲は無いのですが、フォロワーさんが興味深い推理を行っています。

 

これはもう推測の域を出ないのですが、 迷惑メールは普段から公共機関のメールアドレスには大量に送られているでしょうし、何とも雲をつかむような話です。

以上

追記:リストからは削除、しかし削除扱いの現象は残っている

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16日夜7時に確認したら、リストから削除されました。総務省が対応したのでしょうか?よって、「総務省のURLに飛ぶと警告が表示される」現象については解決されました。

しかし、もう一つの問題である「政治資金収支報告書のURLの内、特定のURLを含むツイートが削除扱いになっている」現象については未だ解決していません。

@chairtochairさんが投稿したツイート:https://twitter.com/chairtochair/status/958085103770456064が本人以外の者にとっては削除扱い(存在していない)という現象です。

このツイートに含まれているURLは、http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20161125/3198500018.pdfです。

f:id:Nathannate:20180915100416j:plain

この【再掲】ツイートは、http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20161125/3198500018.pdfのURLを含んで投稿したものを、URLを削除しただけのものです。

【再掲】ツイートは問題なく表示される、soumu.go.jpは問題ない。他の政治資金収支報告書のURLも問題ない。

ということは、このURLあたりがピンポイントで狙われている可能性を考えてしまいますが、慎重になるべきでしょう。

 

 

総務省のURLがツイッターでスパム認定されていた件

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2018年9月15日現在、なぜかツイッター上から総務省のURLに飛ぼうとすると、警告されるようになっています。

この件についてフォロワーさんとあーだこーだ確認した結果を報告いたします。

総務省のsoumu.go.jpすべてが対象

最初は、総務省の政治資金収支報告書のリンクを貼ったツイートを投稿していた方が気づいたので狙い撃ちかと思いきや、soumu.go.jpのドメイン全体がダメな判定を受けるということです。

とはいえ、「無視して続ける」を押せばリンク先に飛べるのですが、なんとも不思議です。

soumu.go.jpを含むツイートができない

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現在、soumu.go.jpをハイパーリンクとなる形で含むツイートは、投稿自体ができません。これはスマホアプリ、ブラウザ、PCからでも同じです。

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若干、表示が異なる場合もありますが、表示が異なる条件はよくわかりません。

ツイッター上の話なので、URLを直打ちしたり、ネット検索からたどれば当該ページはふつうに見れます。

既存のsoumu.go.jpを含むツイートは見れたり見れなかったりする

こちらの場合、短縮URLになっているからでしょうか?問題なくツイートは表示されます。リンク先に遷移しようとすると警告画面になりますが、警告を無視して続けるをクリックすれば大丈夫です。

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また、中にはツイートの表示はsoumu.go.jpであるが、一端"t.co"に遷移した後に警告画面が出るものがあります。この場合のツイートは表示されています。
※追記:ツイッター上にハイパーリンクしたURLは、一度t.coなどに遷移しているようです。参照:Twitterのリンクサービス(http://t.co)について

しかし

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当該ツイートのURL:https://twitter.com/chairtochair/status/958085103770456064

特定のsoumu.go.jpを含むツイートは、ツイッター上では存在しないのと同じ扱いになっています。ちなみに、このブログを書いているときに上記ツイートを貼り付けた際も、ツイートの内容は表示されず、URLの形式でしか貼り付けできませんでした。

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魚拓を採ろうとしても存在していないことになっています。

消された扱いになるツイートをsoumu.go.jpのリンクを消しただけのツイートは、まったく問題なく見れます。

本人であれば閲覧可能

 

どうやら他人ではなく、当該ツイートをした本人であれば、ツイートは存在しているように見えるとのことでした。第三者的には存在していないということに、謎です。

 

他の政府系サイトは大丈夫

 

なぜ総務省だけ?

Facebookからは問題なくリンク先に遷移

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フェイスブックからは何らの警告も無しに遷移できました。

ただ、フェイスブック⇒ツイッター連携をしていても、この投稿はツイッター側には反映されませんでした。

対処方法:短縮URLか、ハイパーリンクにならない形で

たとえば"h"を抜いた形でURLをハイパーリンクにならないように投稿すれば、soumu.go.jpを含んでいてもツイートが削除扱いにはなりません。

それから、総務省のツイートからは、短縮URLで遷移するようにすれば、削除扱いにならないと思われます。

まとめ:原因不明!

同様の現象は、前々から一部存在していたようです。

この挙動も人によって異なる模様。

時間が経てば解決する類の話なのか、総務省のドメインがもはやツイッターからスパム認定されているからなのか。

結局のところよく分かりませんが、「誰かが通報している」という可能性は一旦頭から消した方がいい気がしています。

以上

※追記:警告の問題とツイート削除の問題は別?

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これは9月15日午後1時以降のツイートですが、総務省のツイートで政治資金収支報告書のものを貼っているのに、普通に見れます。元のツイートは未だ見れません。

こうした状況からは

  1. 総務省のURLリンクに遷移すると警告が表示される現象
  2. 総務省の特定のURLリンクを含むツイートが他人からは削除扱いになる現象

この二つの問題が発生しており、特に2番目の状況になるのはかなり限定された条件だということが分かります。

そうすると、「特定の内容のツイートだから」が原因の候補に再浮上してきます。

ただ、それも断定はできません。

謎は深まるばかりです。

朝日新聞鮫島浩が北海道地震でも捏造:「電力供給が脆弱なのは原発に固執してたから」

朝日新聞鮫島浩 

 

朝日新聞の鮫島浩がまたデマを吐いています。

朝日新聞鮫島浩のツイート

魚拓:http://archive.is/1BRP6

「電力供給体制が脆弱なのは原発を停止しているからではなく原発に固執しているから」

これは完全なるデマです。

「電力供給が脆弱なのは原発に固執してたから」という嘘

魚拓:https://web.archive.org/web/20180909031623/http://www.hepco.co.jp/energy/fire_power/ishikari_ps/index.html

石狩湾新港発電所1号機は、2014年8月から土地造成工事や地盤改良工事などの準備工事を開始し、2015年8月に電気事業法に基づく工事計画の届出を行い着工いたしました。2018年度下期の試運転を経て、2019年2月の営業運転開始を目指します。

原発に固執していたなら、なぜ火力発電所を建設していたんですかね?

発電所を作るのにどれだけ年数を要するか分かってるんですかね?

だから朝日新聞は読まれなくなってるんですよ。

泊原発の地点の震度は2。アエラ「電源喪失の危険」

泊原発が「外部電源」喪失したのは火力発電その他の電力供給が無くなったからであって、原発による発電供給が絶たれたからでも、設備の脆弱性が問題だったのではありません。泊原発は現在、3号機の新規制基準適合性審査中であり、稼働していません。

稼働中の場合、原子炉の冷却には原子力発電による電力供給によって行われるのであって、今回の地震による外部電力喪失とは関係ありません。北海道地震によって外部電力喪失したときの原子炉の冷却には、予め用意されていた非常用電源によって電力供給されていました。

AERAは朝日新聞が女性向けに発行している週刊誌ですが、朝日新聞社全体でこのようなデマを災害に乗じて流していることは許し難い行為です。

以上