事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

朝鮮騒擾(三・一運動)平安南道孟山の「住民54名銃殺」の実際

 

朝鮮騒擾経過概要、平安南道孟山

JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A04017275800単行書・八年陸乙七一・朝鮮騒擾経過概要(国立公文書館)

朝鮮騒擾(三・一運動)に関連している平安南道の孟山の憲兵分遣所内での「殺傷事件」について調べました。韓国側の主張には矛盾が多すぎます。

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榎木丸真子さんと山本あすかさんによる署名運動とは何だったのか

f:id:Nathannate:20190304230734j:plain

https://www.change.org/p/望月記者のほか特定の記者の質問を妨害したり制限しないで下さい-報道の自由を守りましょう?recruiter=673331903&utm_source=share_petition&utm_medium=copylink&utm_campaign=share_petition&utm_term=psf_combo_share_initial.pacific_post_sap_share_gmail_abi.gmail_abi

魚拓:http://archive.is/1ZP9c

東京新聞記者の望月衣塑子(もちづきいそこ)氏が菅官房長官記者会見で妨害を受けていると一部で言われている件について。

中学2年生女子を名乗る「山本あすか(仮名)」さんがチェンジオルグで望月記者への「いじめ」をやめるよう政府に嘆願する署名運動を行ったことをハフィントンポストが報じました。

ハフィントンポストの報道ぶりに焦点をあててみます。

山本あすかさんは母親の榎木丸真子さんの助けを借りてチェンジオルグで署名を行った

東京新聞の望月衣塑子記者を助けたい。中2の女子生徒がたった1人で署名活動に取り組んだ理由とは | ハフポスト

かつての自分と望月記者が重なり、いてもたってもいられなくなった。Change.orgはネットで探し当て、母親の助けを借りて署名を募った。

まず、チェンジオルグ16歳未満の利用が規約で禁止されています

同時に、16歳未満であっても親等の関与があれば許される余地が規約にあります。

山本あすかさんが14歳だから規約違反であると咎める人が居ますが、ハフィントンの記事によれば母親の助けを借りて署名を募ったとあります。

現実に存在する名前や顔を出すことで署名を集めるというような場合ならともかく、偽名を使って内容のみで署名を集める行為に対して規約違反とは判断されないでしょう。

山本あすかさんの母親がなぜ榎木丸真子さんなのかは以下を参照してください。

望月記者のみの妨害・制限を問題視してたのではない

Pétition · 望月記者のほか特定の記者の質問を妨害したり制限しないで下さい。報道の自由を守りましょう。 · Change.org

すでに1万超の賛同を頂きましたが、さらに賛同したかったという方のお知らせをいただきましたので、継続します。
また、フリーの記者さんたちの活動も制限しないでということを含めて、報道の自由を守って下さい。
#質問できる国へ

当初は望月記者に焦点を当てた活動であったのは間違いありません。

ただ、目標としていた署名1万筆が集まったあとは、2月末まで期限を延長しました。

そして、「フリーの記者の活動も制限するな」という文言を追記していました。

この追記は遅くとも2月初旬には追加されています。

ハフィントンポストはフリーの記者の制限を報道せず

関根和弘記者が2月27日に取材申し込みをしていました。

魚拓:http://archive.is/sbBJR

このときには山本あすかさんの署名ページには、「フリーの記者」についての言及が追記されていました。

にもかかわらず、報道されたハフィントンポストの記事は、専ら望月衣塑子記者についての話のみが書かれ、フリーの記者についての問題はまったく触れられていませんでした。

山本あすかさんの思いを一部無視しているのではないでしょうか?

なぜ、こういう構成になってしまったのでしょうか?

フリーの記者の質問の妨害・制限とは?

まず、官房長官記者会見は、内閣記者クラブが主催しています。

なので、政府が義務として行っているのではなく、単にサービスで行っているのです。

理屈上は、内閣記者クラブ主催のものとして会見を開くべき必然性はありません。

自前で開いても良いのです。

さて、大手メディアの記者は内閣記者クラブ所属なので毎日会見場に入れます。

しかし、フリーランスの記者は金曜日のみ参加が許されているという現状があります。

しかも、官房副長官に代打になった場合には、フリーランスが参加できたはずが参加できなくなるというのが実態です。

これは政府・内閣に問題があるのではなく、主催者の内閣記者クラブの側に問題があります。本来国民に開かれているハズの場を独占しているのです。

ハフィントンポストの記者も制限を受けているのに

 魚拓:http://archive.is/7bz2T

政府の会見とは異なりますが、ハフィントンポストの記者が会見場に入れないということも過去にはありました。錦光山さんは朝日新聞からハフィントンに出向中だったのに。

つまり、マスメディア界隈において、大手メディアだけが縄張り意識を持っており、それ以外の記者に対しては非常に冷たい構造になっているという問題があるということが言えます。

関根和弘記者は、こういう現状を知っていてなお山本あすかさんの「フリーの記者も」という部分を無視したのでしょうか?そうでないなら、専ら望月記者についての話を書きたかったのでしょうか?それはなぜでしょうか?

記者会見動画へのリンクと望月衣塑子記者の振る舞い

東京新聞の望月衣塑子記者を助けたい。中2の女子生徒がたった1人で署名活動に取り組んだ理由とは | ハフポスト

2月26日。菅官房長官は記者会見で、望月記者から「この会見はいったい何のための場だと思っていらっしゃるんでしょうか」などと会見の意義について問われ、「あなたに答える必要はありません」と突っぱねた(リンク先の動画8分36秒ごろのやり取り)。

実はこの記事、見方によっては望月記者擁護であると言い切るのは留保すべきではないかと思うのです。

なぜなら、記者会見のリンクを貼って、しかも動画の該当時間も丁寧に指定しているところ、そのやりとりを見れば誰に問題があるのか、という印象が記事だけを見ている場合に比べて変化する可能性があるからです。

該当部分の書き起こしはこちらです。

特定の記者(メディアの)の質問制限とは何だったのか?

山本あすかさんの言う特定の記者の質問制限とは、会見場に入った記者の質問は制限するな、という意味にとどまっていたのでしょうか?

それとも、大手メディアが会見場をほぼ独占している状態をも含んでいたのでしょうか?

現在の官房長官記者会見が、大手メディアの記者ばかりに質問の機会が与えられているということからは、その記者は会見場に入れなかった記者の分も背負って質問するべきではないでしょうか?

そうであるなら、その「質問」は可能な限り質の高いものにするべきではないでしょうか?

ハフィントンポストは山本あすかさんの署名運動の記事から、そういう論点は見いだせなかったのでしょうか?それとも、それを知りながら取り上げなかったのでしょうか?

いずれにしても、ハフィントンの記事は「匿名の人がネット署名を行った」ということだけ言及しており、とても寂しいものだと思います。

以上

共産党小池さんが『破防法の調査対象団体はデマ、暴力革命方針など一度もとっていない』と強弁

共産党、破防法、公安調査庁

日本維新の会の足立康史議員が3月2日の衆院本会議で共産党が破防法に基づく調査対象団体であり、そこと連携する正当がまっとうな正当を標ぼうするのはおかしいと指摘しました。

これに対して共産党関係者が発狂してます。

その様子と調査対象団体であるソース、共産党による騒擾事件の例を紹介します。

足立康史議員の指摘

維新・足立氏が野党共闘巡り「破防法」言及 議場は騒然(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

日本維新の会の足立康史氏が2日未明の衆院本会議で「破防法(破壊活動防止法)の監視対象と連携する政党がまっとうな政党を標榜(ひょうぼう)するのはおかしいと考えているし、そう思う国民は少なくない」と発言した。共産党と立憲民主党など野党の共闘を批判する文脈の中での発言で、一時、場内が騒然となった。

共産党が破防法の調査対象団体であるというのは政府が閣議決定しており、公安調査庁もその認識でいるという事実があります。

公安調査庁の【内外情勢の回顧と展望】の資料の中で必ず共産党が出てきます。

破防法上の調査対象団体である閣議決定

衆議院議員鈴木貴子君提出日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問に対する答弁書

御指摘の昭和五十七年四月一日の参議院法務委員会において、鎌田好夫公安調査庁長官(当時)が、破壊活動防止法に基づく当時の調査対象団体の数について「いわゆる左翼系統といたしまして七団体、右翼系統といたしまして八団体程度」と答弁し、当該調査対象団体の名称について「左翼関係としましては日本共産党・・・等でございます」と答弁している。
 日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である。

昭和57年と平成28年の両時点で、日本共産党は破防法に基づく調査対象団体です。

共産党小池晃氏の足立康史議員に対する反論

「わが党は党の正規の機関で「暴力革命の方針」など一度もとっていない」 

 共産党は常々こう言ってますが、本当ですかね?

だったら何で公安に調査対象にされているのか?

公安調査庁による完全論破

上記の赤い小池さんの主張は、公安調査庁が完全論破しています。

共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解

 共産党は,第5回全国協議会(昭和26年〈1951年〉)で採択した「51年綱領」と「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」とする「軍事方針」に基づいて武装闘争の戦術を採用し,各地で殺人事件や騒擾(騒乱)事件などを引き起こしました(注1)。
 その後,共産党は,武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが,革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し,暴力革命の可能性を否定することなく(注2),現在に至っています。
 こうしたことに鑑み,当庁は,共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体としています。

(注1) 共産党は,「(武装闘争は)党が分裂した時期の一方の側の行動であって,党の正規の方針として『暴力革命の方針』をとったことは一度もない」(3月24日付け「しんぶん赤旗」)などとしていますが,共産党自身が5全協を「ともかくも一本化された党の会議であった」と認めています(第7回党大会中央委員会報告,昭和33年)。
  また,不破哲三前議長と上田耕一郎元副委員長の共著「マルクス主義と現代イデオロギー」 では,当時の武装闘争について,次のように述べています。 「たんに常識はずれの『一場の悪夢』としてすまされることのできない,一国の共産党が全組織をあげ,約2年間にわたって国民にさし示した責任のある歴史的行動であった」

(注2) 共産党は,「『議会の多数を得て社会変革を進める』-これが日本共産党の一貫した方針であり,『暴力革命』など縁もゆかりもない」(3月24日付け「しんぶん赤旗」)などと主張していますが,同党が,日本社会党の「議会を通じての平和革命」路線を否定してきたことは,不破前議長の以下の論文でも明らかです。
 ○ 「『暴力革命唯一論』者の議論は,民主主義を擁護する人民の力を無視した受動的な敗北主義の議論である。しかし,反対に『平和革命』の道を唯一のものとして絶対化する『平和革命必然論』もまた,米日支配層の反動的な攻撃にたいする労働者階級と人民の警戒心を失わせる日和見主義的『楽観主義』の議論であり,解放闘争の方法を誤まらせるものなのである」(不破哲三著「日本社会党の綱領的路線の問題点」)

「騒擾事件」 とは何かと思ったら【阪神教育事件】でググってみてください。

『「破防法上の調査対象団体」というのは根拠がない』、『党の正規の方針として『暴力革命の方針』をとったことは一度もない』というのは、共産党員の常套句です。

地方議会でもそういう「反論」が度々なされています。

阪神教育事件

生々しい事件です。

※追記:ツイートやリンク先のYoutube動画が削除されてしまったので代替

敵の出方論とは

衆議院議員鈴木貴子君提出日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問に対する答弁書

御指摘の平成元年二月十八日の衆議院予算委員会において、石山陽公安調査庁長官(当時)が、御指摘の不破哲三委員の発言を踏まえて、「昭和三十六年のいわゆる綱領発表以降、共産党は議会制民主主義のもとで党勢の拡大を図るという方向で着々と党勢拡大を遂げられつつあることはお示しのとおりでございます。 

ただ問題は、それは政治的な最終目標であるのかあるいは戦略または戦術の手段であるのかということの問題でございます。私どもはそれらに対しまして、今冷静な立場でもって敵の出方論何かにつきましても調査研究を進めておる段階でございまして、今のところその結果として直ちに公党である共産党に対し規制請求すべき段階に立ち入っているとは思わないから請求もしていないということであります。なお、敵の出方論について今御教示を賜りましたが、一つだけ私からも申し上げておきたいことがございます。御存じのとおり、政権確立した後に不穏分子が反乱的な行動に出て、これを鎮圧するというのは、たとえどなたの政権であろうとも当然に行われるべき治安維持活動でございます。ところが敵の出方論という中には、党の文献等を拝見しておりますると、簡単に申しますと、三つの出方がございます。一つは、民主主義の政権ができる前にこれを抑えようという形で、不穏分子をたたきつけてやろうという問題であります。それから第二には、民主主義政権は一応確立された後に、その不満分子が反乱を起こす場合。三番目は、委員御指摘のような事態であります。ですから、それらにつきまして一部をおっしゃっておりますけれども、その全部について敵の出方論があり得る」と答弁しているとおりである。

委員御指摘のような事態とは、平成元年二月十八日、第百十四回国会、衆議院予算委員会において、不破委員が「政権についたときにその共産党の入った政権なるがゆえに従わないという勢力が出た場合、そういう勢力がさまざまな暴挙に出た場合、それに対して黙っているわけにはいかない、そういうのは力をもってでも取り締まるのが当たり前だ、これは憲法に基づく政府の当然の権利でしょう。そういうことについて我々は綱領に明記しているわけです。」 と発言したような方針のことでしょう。

何もしてないから破防法対象はおかしい、という詭弁

共産党は「何もしてないのだから監視するのはおかしい」と言います。

まず、60年間だろうが連続性のある団体が過去には暴力活動をしていたのです。

「監視しているから下手な動きができない」ということに過ぎません。

アルカイダやオウムが「兵器を持ちません」と言って信じられますか?という話です。

民主党政権下でも政府方針は変更されなかった

共産党が破防法に基づく調査対象団体であるという閣議決定は、内閣の方針です。

なので、民主党政権時にその方針を変更することは可能だったわけです。

なのにそれをしなかった。

そのような調査対象団体と連携する立憲民主党などの野党。

本当に危険ですね。

本当のことを言われて発狂する赤い小池晃さん

議会で誰かが「共産党が破防法に基づく~」と言うと、必ずと言っていいほど共産党議員が発狂します。仙台市議会では共産党議員が懲罰動議を出して、逆に懲罰を受けました。

世界的には共産党は、その存在自体が許されない国が多いのです。

日本に共産党があると言うと驚く人ばかりです。

伝統的・古典的な共産主義を今でも彼らが目指しているとは思いませんが、根底にある「革命思想」は未だに顕在です。

現在の支那共産党みたいになりたいのであれば、日本共産党に一票を。

以上

朝鮮騒擾:三・一独立運動ムンジェイン大統領演説全文「7500人殺害」フェイク

  

朝鮮騒擾経過概要

JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A04017275800単行書・八年陸乙七一・朝鮮騒擾経過概要(国立公文書館)

三・一独立運動(朝鮮騒擾)100周年に際して韓国のムンジェイン大統領が演説を行いました。

その内容がフェイクだらけなので指摘します。

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特別監察委員会:厚労省毎月勤労統計調査不正の追加報告書と虚偽申述・組織的隠蔽

特別監察委員会:厚労省毎月勤労統計調査不正の追加報告書

毎月勤労統計調査不等に関する特別監察委員会が追加報告書を公表しました。

虚偽申述と組織的隠蔽についてはどう判断されたのか?

「統計不正問題」とは何か?に混乱があるので、その点も含めて整理します。

毎月勤労統計調査不等に関する特別監察委員会の報告書

平成31年1月22日に最初の報告書が公表されました。

しかし、その報告書を作成する過程で、聴取する者の第三者性=中立性に疑義が呈されたことから、改めて中立性を確保した上で追加調査がされました。

統計不正問題「官僚叩き」よりも先にやるべき抜本的解決策を示そう(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(2/4)

この「毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会」の委員長になったのは樋口美雄氏。この方は慶大出身の学者だが、いまは厚労省所管の労働政策研究・研修機構理事長も務めている。

これでは、外形的に中立性を疑われてしまう。労働政策研究・研修機構は独立した行政法人であるが、そのトップは厚労大臣が任命する(独立行政法人通則法第20条)からだ。労働政策研究・研修機構は、厚労省からみれば、いわば子会社であるから、身内感覚で「特別監査」を行っているとみられても仕方ないだろう。

利害関係のない弁護士3名を追加した特別監察委員会が平成31年2月27日に追加報告書を提出しました。

さて、最初に統計不正問題の全体像を整理します。 

毎月勤労統計調査不正問題とは何か?

上記記事でも指摘してますが、厚労省が平成 31 年1月 11 日に出したプレスリリースにおいて、毎月勤労統計不正問題とは次のことを指しているとしています。

  1. 「500 人以上規模の事業所」(大規模事業所)は全数調査をするとしていたところを一部抽出調査で行っていたこと
  2. 「500 人以上規模の事業所」(大規模事業所)は統計的処理として復元すべきところを復元しなかったこと
  3. 調査対象事業所数が公表資料よりも概ね1割程度少なくなっていたこと

上記が問題の中核部分であり、統計法違反が問題になったものです。

報告書では、これに関連して、違法の問題ではないものの、不適切な行為があったことについて触れています。

アベノミクス偽装というフェイクは中規模事業所の話

アベノミクス偽装と呼ばれている事柄は、30人~499人の中規模事業所の話です。

中規模事業所の統計調査はサンプル調査です。全数調査ではありません。

その中で、数年毎にサンプルを入れ替えていました。

今までは【総入れ替え方式】だったのが、2018年に【部分入れ替え方式=ローテーションサンプル方式】に変わりました。

この変更について、『2015年に「官邸の圧力」であり、その結果、実質賃金指数が上振れした』と言っているのが維新以外の野党議員とマスメディアです。

しかし、追加報告書では入れ替え方式の変更に合理性が認められています。

毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書 13ページ

なお、ローテーション・サンプリング方式の採用に関しては、給与に係る数値を意図的に上昇させるためのものであったのではないかとの指摘がされているが、そもそも、ローテーション・サンプリング方式が採用されることとなったのは、サンプル入替えに伴うギャップをできるだけ少なくし、国民をはじめとする統計の利用者にとっての分かりにくさを解消するための措置であり、その採用については、統計学的にも十分な合理性が認められる

ローテーションサンプリングで数字を良く見せるのは不可能

統計を良く見せるようにするには、そのサンプルが「全体の中で良い」ということがわからないといけません。つまり、全数調査をしないと不可能です。

サンプル調査である中規模事業所について、このストーリーを描くのは無理筋です。

「首相官邸の圧力」については厚生労働省の毎月勤労統計不正問題とは何か:「安倍総理・首相官邸の関与の問題」というフェイク において詳細に触れているので、ここでは扱いません。

さて、統計法違反と虚偽申述・組織的隠蔽について、追加報告書はどう判断したのか?

虚偽申述はあったが組織的隠ぺいは無い

毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書 18ページ

⑴ 虚偽申述について
毎月勤労統計に関して、少なくとも、平成27 年検討会において全数調査である旨の事実と異なる説明をしたこと、平成28 年のローテーション・サンプリング方式導入の際の調査計画の変更申請においても事実と異なる全数調査であることを記載したことなど、公的な場で、課(室)の長の判断の下に、真実に反することを認識しながら、事実と異なる虚偽の申述を行った。
毎月勤労統計の調査方法に関するこれらの虚偽の申述は、それぞれ、毎月勤労統計を所管する担当課(室)の長レベルの判断の下、部下の協力を得ながら行われたもので、単にその申述をした担当者の個人の責任にとどめるべきものではなく、課(室)という組織としての独自の判断による行為と評価すべきものであり、厳しく非難されるべきである。

虚偽の申述」の対象は「500人以上規模=大規模事業所についてサンプル調査をしていたのに全数調査である旨の事実と異なる説明・記載をしたこと」であることです。

しかし、事実関係を積み重ねて総合検討しても、「隠蔽行為」があったとまでは認められないと判断されました。

ちょっと一瞬意味が分からないと思います。

これは「組織的隠蔽」をどうとらえているのかを知る必要があるのと、なぜ不適切な行為が行われたのかという原因とも深く結びついています。

「組織的隠蔽」の対象事実

毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書 18ページ

⑵ 「組織的隠蔽」問題について
そもそも「組織的隠蔽」の概念は多義的であり、確定的な定義や見解は見当たらないが、本委員会が今回の事案において「隠蔽」の有無として取り上げるべきだと考えたのは、平成26 年に事務取扱要領から抽出調査である旨の記載を削除したこと、及び、平成30 年1月から東京都の大規模事業所について復元処理を開始したことをはじめ、「隠蔽」する対象事実としては、全数で行うべき調査を抽出で行い、かつ、抽出調査の場合の統計処理として通常行うべき適切な復元処理をしていなかった等の法律違反又は極めて不適切な行為(以下「違法行為等」という。)であり、「隠蔽行為」とは、その事実を認識しながら意図的にこれを隠そうとする行為(故意行為)であることを前提とした。
この点、例えば、東京都の大規模事業所について抽出調査が行われるようになったことなどを知りながらこれを放置し、あるいは対外的に事実と異なる説明を行うなどの今般の不適切な取扱いに関与した統計部門の担当課(室)の職員らは、少なくとも主観的には統計数値上の問題はなく、あるいは、許容される範囲内であるなどといった程度にしか捉えておらず、当人や厚生労働省、担当課(室)にとって、極めて不都合な事実であるとか、深刻な不正であるなどと捉えていたとは認められなかった。担当課(室)の職員らにおいて、綿密な打ち合わせや周到な準備などがなされた形跡はなく、むしろ、随所でいずれ不適切な取扱いが露見するような、その場しのぎの事務処理をしていたことが認められる。
これらを踏まえると、担当課(室)の職員らにおいて、意図的に隠したとまでは認められず、「隠蔽行為」があったとはいえない。

  1. 全数で行うべき調査を抽出で行っている事実の認識
  2. 統計処理として適切な復元処理をしていなかった事実の認識
  3. 上記の事実を認識しながら意図的にこれを隠そうとする行為をしたこと

組織的隠蔽」とは、上記の3つを備えてはじめて成立すると、特別監察委員会は考えたことになります。

これらのうち、1番目の「全数で行うべき調査を抽出で行っている事実の認識」は認められています。

しかし、2番目の認識がなかったということが、闇の深い話です。

特別監察委員会の追加報告書によれば、これは今回の問題が発生した原因と深く結びついていることになります。

統計に関する知識や統計業務の経験がない者が多い厚労省職員

毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書 21ページ

併せて厚生労働省の幹部職員の多くには統計に対する無関心が伺われることも今回の調査を通じて判明した。厚生労働省の幹部職員には統計に関する知識や統計業務担当の経験がないものが多く、統計に係る業務を統括する立場にある幹部職員ですらも、部下職員から不適切な取扱いについて報告を受けながら、明確な指示を出すことなく、また、的確なフォローもせずに問題を解決しないまま放置するという事象は、統計に対する厚生労働省の組織全体の姿勢を象徴するものであり、国民生活に直結する統計を取り扱う省全体としての責任は極めて大きい。

厚労省の人材に統計に明るい職員が不足していたという問題があります。

追加報告書は明示していませんが、統計理解能力のある職員ではなかったからこそ、「統計処理として適切な復元処理をしていなかった事実の認識」が認められない、と判断されたのではないでしょうか?

これは本来的には統計を担当する職員としてはあってはならないことです。

もしも当たり前のように統計処理の知識がある組織であったならば、一部の職員が今回の件で「少なくとも主観的には統計数値上の問題はなく、あるいは、許容される範囲内である」と考えるのは無理筋でしょう

しかし、今回は管理職も含めて統計に関する意識が希薄な組織だったということからは、「そういう組織内の一職員としての認識」としては、故意があったとまでは認められないだろう、そのように判断されたのだと思います。

日本の役所は東大文系(中でも法学部)卒の人間ばかりであり、海外では統計職員は博士号持ちばかりということからは、日本の役所の統計人材不足は深刻なんだろうと思います。

統計法9条・11条違反認定も、「真実に反するものたらしめる行為」ではない

内規に即して処分者は出ているようですが、今回の違法は統計法9条、11条のものであると認定されています。

統計法違反の対象となった行為は、平成 23 年8月4日、厚生労働大臣から総務大臣宛てに、毎月勤労統計調査の調査計画に関する変更承認申請がなされた後も大規模事業所について抽出調査を継続したこととされています。

しかし、統計法の罰則規定には9条、11条違反は含まれていません

今回の件で唯一罰則規定で適用し得るのは60条2号です。

第六十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条に規定する基幹統計調査の報告を求められた者の報告を妨げた者
二 基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者

しかし、1月の報告書では以下のように判断しています。

毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書 27ページ

平成16(2004)年からシステムの改修が行われる直前の平成29(2017)年まで、抽出調査への変更に伴い必要となる復元処理が適切に行われなかったことについては、統計の精度に問題のある行為ではあるが、架空の調査票を捏造する行為、調査票に記載された報告内容を改ざんする行為、基幹統計調査の集計過程においてデータを改ざんする行為などではないことから明確に「真実に反するものたらしめる行為」に該当するとまでは認められず、また、当時の担当者からのヒアリングによれば、調査結果に大きな影響を与え得るとの認識まではなかったということであることから、意図的とまでは認められないものと考えられる。

たしかに全数調査がサンプル調査になったというのは「統計の精度」の話であって、実際に両者の数値にズレが生じたとしても「真実に反するようにした」とまで言えるかはかなり慎重になるべきであると言えます。

私は、2月の追加報告書でこの点の認定が無かったのが非常に不満ですが、この評価は妥当であると思います。

行政府の側の問題だけなのか?

なぜ、毎月勤労統計の不正は見過ごされてきたのか? | The Urban Folks

「統計人材の不足」は予算の問題なのか?

また、専ら行政府(官庁側の役人)の責任であり、立法府の責任は無いのか?

この点については扱える範囲を越えるので、渡瀬裕哉氏の記事が参考になるでしょう。

「法は不可能を要求せず」組織的隠蔽の有無の是非は?

法は不可能を要求せず」という法律の格言があります。

今回の統計不正は、能力的・環境的に統計不正と認識することが不可能だったと判断されたために、個人に帰責させることは避けられたのだろうと思います。

ただし、特別監察委員会が設定した「組織的隠蔽」の判断基準は妥当なのか?その基準であっても組織的隠蔽と評価してよいのか?ということは、議論としてあり得ます。

いずれにしても、統計人材の確保は今後必要な政治課題であると言えます。

それは追加報告書でリソースの拡充が再発防止策の一つとして挙げられている通りでしょう。

統計リソースがどのように変遷してきたのか、それに対して政府はどのような方針なのかは以下でまとめています。

以上