事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

あいちトリエンナーレの協賛・協力企業のページも消える

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あいちトリエンナーレの協賛・協力企業のページも消えていました。

8月10日には消えていたようです。

あいちトリエンナーレの協賛・協力企業のページも消える

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協賛・協力 | あいちトリエンナーレ2019 (8月2日時点)

魚拓を見れば一目瞭然ですが、「協賛・協力」という項目へのリンクがまるっと消されています。魚拓を見ればどの企業が居たのかが分かります。

現在は「ご寄付」というリンクになっています。元々「協賛・協力」のリンク先に含まれて居たものです。

「助成」として掲載されていた各種財団や文化庁のロゴの掲載も同一ページで行われていたので、それも消えたということになります。

実は徐々に減っていた協賛・協力企業の表示

協賛・協力 | あいちトリエンナーレ2019(8月7日時点)

実は、共産・協力企業のページでは、個別の企業が少しずつ表示が無くなっていました。たとえば「株式会社LIXIL 中部支社」は、8月7日時点で消されています。

今回は、ページ全体が消されたということで前代未聞だと思います。

ただ、「スポンサーから降りた」ことを意味するかは不明です。今のところは、単に表示をしなくなったというだけの意味に捉えるべきでしょう。

他方、愛知県文芸課などが掲載されている広報協力のページは残っています。

結局、このイベントが民間事業ではなく、公的機関による運営だということが浮き彫りになりました。

単に「民間事業に公金が出ている」ではなく「公的機関による運営」ということが法的な主張を左右することは、徐々に広まってきましたが、未だにマスメディアの報道ではまるでトリエンナーレが民間事業であるかのように伝えており、非常にミスリーディングな状況が続いています。

大村知事のツイートも消えていた

大村知事のツイートでトリエンナーレ開幕後のものが全て消されていました。

おそらく抗議の声が殺到しているからだと思われますが、こういった対応はどうなんでしょうか?削除の理由の説明も無いのは、それに対しても抗議が殺到するからでしょうか?それとも、トリエンナーレのHPにスポンサー名があることでブランド価値に傷がつくとされたのでしょうか?

下記の記事に対して主にツイッター経由からのアクセスが尋常でない規模であり、みなさん、表現の不自由展に関しては相当どころではない程度にお怒りのようです。

削除そのものは責める気がしませんが、個別の企業で非表示になっていた企業も居たことを考えると、削除するのであれば遅すぎると思いますね。

以上

大村知事、あいちトリエンナーレ後のツイートを削除

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愛知県の大村知事があいちトリエンナーレ開催以降のツイートを消して逃亡しました。

大村知事、あいちトリエンナーレ開催以後のツイートを消して逃亡

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大村秀章 (@ohmura_hideaki) | Twitter

現在表示される直近のツイートは8月1日のものになっています。

本来は8月5日頃まで、あいちトリエンナーレの今後の予定や、その他のイベントの発信などもしていましたが、それらを全て削除したことになります。

消されたツイートたち:津田大介とのツーショット、KPOPなど

大村知事のトリエンナーレツイート消し

大村知事のトリエンナーレツイート消し

大村知事のトリエンナーレツイート消し

大村知事のトリエンナーレツイート消し

消されたツイートの中には、トリエンナーレに関係するもの以外のツイートも含まれて居ました。

リプライ欄に大量の批判的ツイートが付けられていたものがあったため、それら共々削除したということでしょう。

まとめ:表現の不自由展に関するツイートは元々無い

大村知事のツイートには、表現の不自由展の事件に関するツイートは元々無かったハズです。トリエンナーレは今後も続きますし、それ以外の情報発信もしていたのに、それすら削除するというのはどういうことでしょうか?

最大限、善意解釈するとすれば「関係の無いツイートにまで表現の不自由展に関する批判的ツイートがついているため、本来の発信の趣旨と異なる効果になった。関係する企業等にも迷惑がかかる」ということでしょうか?

しかし、公的な立場の人が行為する以上、削除の理由もツイートするべきではないでしょうか?今の所、なんらの説明もありません。

「批判の声が無かったことにしたい」「批判は聞かない」

流石は実行委員会会長として「表現の自由」を叫んできただけのことはありますね()

以上

あいちトリエンナーレへの寄付金は政治活動が除外されているのか?

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愛知県の寄付金やあいちトリエンナーレの一部事業について、政治活動規制があることが分かりました。

愛知県文化振興基金

あいちトリエンナーレ及び文化芸術振興事業への寄附金を募集しています(文化振興基金) - 愛知県

文化活動事業費補助金(文化芸術すそ野づくり事業)

 県内に活動の本拠を置く文化活動団体の行う自発的な文化活動のうち、特に地域貢献の高い事業に対して助成を行います。

あいちトリエンナーレ開催経費

 3年ごとに開催する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の開催経費の財源となります。

愛知県文化振興基金は上記2つの用途が明示されています。

ただ、文化振興基金条例を見ても、政治目的などの場合に対象外にするような規定は見当たりません。

上記のうち、文化活動事業費補助金の対象制限を見てみます。

愛知文化活動事業費補助金は政治目的が禁止

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愛知県文化活動事業費補助金 募集案内を見ると「政治的又は宗教的意図を有する事業」については補助対象事業から除外されています。

過去の補助対象事業を見ると、トリエンナーレに参加する団体の一つに対して交付されている事例が見つかりますが、トリエンナーレ全体に対して交付されるようなものではありません

また、この制度は団体が申請して審査を経ないといけないのですが、今回の表現の不自由展は、この制度に申請していないと思われます。

あいちトリエンナーレのパートナーシップ事業

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あいちトリエンナーレの連携事業のうち、パートナーシップ事業のページを見てみると、「宗教活動や政治活動を目的とする事業でないこと。」という制限があります。

パートナーシップ事業はトリエンナーレ本体とは別個の展示やパフォーマンス等なので、表現の不自由展はこの除外ルールとは直接的には関係ありません。

しかし、パートナーシップ事業一覧を見ると、津田大介の講演会があります。

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8月28日に予定されている講演会で表現の不自由展の内容について触れたとすれば、上記のパートナーシップ事業対象要件に抵触すると言えるでしょう。

トリエンナーレ本体に政治活動目的を排するルールは無かったのか?

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トリエンナーレ本体について何らかの運営規則のようなものが無いか探したのですが、いくら探してもみつかりません。

トリエンナーレ2016の事業報告書には、あいちトリエンナーレ実行委員会規約がありましたが、そこにはトリエンナーレ実行委員会の設置根拠や対象事業・作品を絞り込む規定は書いてありませんでした。

8月2日に私が実際にトリエンナーレ事務局や愛知県美術館に電話して聞いた話では、展示作品を選ぶ基準は公安衛生法規に抵触していないものであればOKで、選考は芸術監督の津田大介の一任している、と言っていました。それ以外に審査基準は無いのかをたずねても上記回答でした。

表現の不自由展への寄付金420万円はどこから?

表現の不自由展の費用420万円分については民間からの寄附の申出によってまかなうことに決定されたそうですが、これはおそらく上記の寄付金とは別枠の任意のものでしょう。

申請を経て審査を受けたりする類のものではありません。

この辺りは混同しそうなので、注意が必要でしょう。

まとめ:なぜ本体は政治活動が除外されていないのか?

しかし、あらためてまとめてみると、トリエンナーレのパートナーシップ事業には政治活動規制があるにもかかわらず、本体のプログラムにはそのような規制が無いというのは不思議な感じがします。

また、同一の枠組みの寄付金から、一方では政治活動規制があるにもかかわらず、他方では政治活動規制が無いというのも、なんだかしっくりきません。こういう形のルール構造は、果たして適切なのでしょうか。

それから、「表現内容で作品を展示するしないを決めるのは表現の自由の侵害だ」と言ってる人たちは、政治的表現等で絞り込みをかけている寄付金交付や団体参加の条件についてはどう思っているのでしょうか?

既に表現内容で寄付金交付や団体参加に絞りをかけている官製イベントであるにもかかわらず、なぜ表現の不自由展だけ表現内容での取扱いが表現の自由の侵害になるのか、首を傾げてもげそうになります。

以上

CISTECが怒りのパワポ解説:韓国向け輸出管理、ホワイト国、リスト規制、キャッチオール規制の誤解

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CISTECが韓国向け輸出管理の運用見直しを受けて、関連制度の誤解を正すパワーポイント資料を公開していました。英語版もあります。

メディアに対する怒りがこもっている内容だと思います。

CISTECが怒りのパワポ解説

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韓国向け輸出管理の運用の見直しに関する解説資料

解説資料は全部で3つあります。

①パワーポイントで概要、②文章で詳細説明、③改正の概要、という内容です。

これらの資料を見ると、日本メディアが騒ぎ韓国側が発狂して誤解している内容を掴んで、それに対してクリティカルに反論していることが分かります。

私もメディアの記事を引用してこの問題を取り上げてきましたが、振り返ってみるとかなりの間違いが引用記事の中にありましたし、私自身の記述にも相当危うい表現がありました(自分で気づいた点は修正)。

リスト規制品3品目(フッ化水素・フッ化ポリイミド・レジスト)に関するものだけでも以下のような誤解があったようです。

  1. スペック問わず3品目に該当すれば個別許可?⇒限定されたものだけ
  2. 出荷ごと?⇒契約ごと
  3. 審査に90日かかる?⇒それは標準処理期間に過ぎず、大抵早く許可が下りる
  4. 第三国の現地工場に供給できる?⇒基本は韓国内に限り、第三国への供給が前提でなら別個の許可が必要

「安全保障輸出管理関係者にとっては一般常識。かかる誤解はあり得ない」

という文言に込められた強いメッセージを感じます。

ホワイト国、リスト規制、キャッチオール規制の誤解

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ホワイト国を除外されると全件が個別許可になるという誤解、キャッチオール規制は多くが個別許可になるという誤解があるが、それらは間違いということです。

ホワイト国は「一般包括許可」が可能だったが、そこから外れてグループBになるとそれが使えなくなるものの、「特別一般包括許可」は使えるということです。

これはここで「解説」なんてできないので、CISTECの解説資料を読んで欲しいと思います。

特にキャッチオール制度の根本的誤解について

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「キャッチオール」という言葉の響きから、全ての品目が個別審査になる印象を持つ人が居たのでしょう。

あくまで個別の輸出案件について、個別具体的な懸念情報がある場合に許可が必要、ということが強調されています。

これは経産省の以下資料でも読み取れますが、メディア等での説明が不足していたと思います。私も反省です。

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解説の例を一つ示します。

韓国向け輸出管理の運用の見直しに関連する日本の制度運用についての基礎的解説

(5)キャッチオール規制は、リスト規制対象でなくても、個別取引ごとに懸念が実際にあることが判れば許可対象になるものであり、懸念がないものまで一律に許可申請対象となるわけでは全くない。
○キャッチオール規制は、リスト規制と並ぶ安全保障輸出管理制度の基本。
○リスト規制以外の品目の個別の輸出の際に、①それが大量破壊兵器や通常兵器の開発等に使われる恐れがあることを輸出者が実際に知った場合、及び、②経産省当局から許可申請すべき旨のインフォームがあった場合に、許可対象となるもの。

○そのような懸念がある場合は限定的であり、食料品や木材等を除く全品目の輸出が一律に許可申請対象となるわけでは全くない。実際に個別許可を取得しなければならない案件はほとんどないと思われる。

まとめ

この一か月、テレビで細川さんらが解説を頑張っていましたが、相変わらず不正確な報道があるようです。 

私も報道を読んでいて思うのが、日韓のメディア双方が日韓の対立をエンタメのように扱って消費している構造があり、煽るような報道が常態化しているということです。

日本メディアの不正確な報道をそのまま韓国メディアが報道し、韓国の政府側の人間はその風潮をベースに理解するという流れがあったと思います。

そして、日本に対して偏見を持っている英語メディアの中の人が、誤解をそのまま世界に発信しているという構図がありました。

それに対して日本政府側、政治家も官僚も、メディアのつくりだす空気に乗っからず、公式HPやSNS等で発信し続けたのは救いだと思います。

以上

憲法学者の曽我部真裕教授の記事がデタラメ:トリエンナーレ表現の不自由展に関する言論

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弁護士ドットコムで京都大学大学院法学研究科の曽我部真裕教授(憲法)があいちトリエンナーレの表現の不自由展に関する言論について語る記事があるのですが、内容がかなりおかしいので指摘します。

弁護士ドットコム「公金支出はおかしい」が明確に不適切?

少女像展示中止、市長や官房長官の発言は「憲法違反」なのか?京大・曽我部教授に聞く - 弁護士ドットコム

●「明確に不適切だ」と考えられる意見
今回の中止騒動をめぐっては、さまざまな意見があり、それぞれもっともだと思うものも多くありますが、他方で、明確に不適切だと考えられる意見が散見されますので、今後のための教訓として、確認しておきたい。代表的なものとして、次の(1)〜(5)があります。

(1)「今回の展示によって、自治体がその内容に賛成したことになる」「反日的な展示に公金を投入するのはおかしい」

あいちトリエンナーレは、県や市が入った実行委員会が主催し、公立美術館等で開催される芸術祭ですが、一般に、このような展覧会であっても、専門家が芸術的な観点から企画したものであれば、国・自治体はそれを尊重すべきだというのが、表現の自由論の一般的な理解です。公立図書館で、どのような書籍を購入するのかが、専門家である司書に委ねられるのと同じ理屈です。

これはおかしい。

司書の決定は公的機関たる図書館としてのもの。

それとパラレルに論じるのであれば、津田の決定も実行委員会のものです。
津田大介はトリエンナーレ実行委員会から職務の委嘱を受け、実行委員会に属している事を公言している

曽我部教授の論だと、表現の自由を行使してるのは津田大介になるが、それは実行委員会であり、実質的に公的機関たる愛知県になってしまうんですが。

それは表現の自由だから尊重されるのではなく、単に機関としての手続を踏んだ判断だから尊重されるのですが。

トリエンナーレ表現の不自由展は表現の自由論の話なのか?

曽我部教授が美術館ではなく「公立図書館」を例に出したのは、船橋市立西図書館蔵書廃棄事件を念頭においてると思われますが、当該事件の最高裁は以下指摘しています。

最高裁判判決平成17年7月14日 平成16(受)930

公立図書館が,上記のとおり,住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは,そこで閲覧に供された図書の著作者にとって,その思想,意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる。したがって公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは,当該著作者が著作物によってその思想,意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。そして,著作者の思想の自由,表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると,公立図書館において,その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は,法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり,【要旨】公立図書館の図書館職員である公務員が,図書の廃棄につい
て,基本的な職務上の義務に反し,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは,当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。

これは「表現の自由にかんがみると」と言っているに過ぎず、認められたのは「著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益」が法的保護に値する人格的利益だということであって、表現の自由によって図書館に作為を請求できるとしたものではありません。

もっとも、憲法学界では本来防御権(公権力から制限を受けないという意味において保護される)に過ぎないとされた表現の自由という権利を、政府による給付(援助)の撤回の場面でも保障する道としてパブリックフォーラム論等の理論を介して実現しようと試みてきた流れがあります。

憲法学者である曽我部教授がこれを表現の自由の問題として論じることには違和感はないですが、曽我部教授が念頭に置いていると思われる判例は表現の自由の問題として扱ってはいないということです。

政治家による表現の自由は許されない?

少女像展示中止、市長や官房長官の発言は「憲法違反」なのか?京大・曽我部教授に聞く - 弁護士ドットコム

2)「政治家が批判するのも『表現の自由』だ」

今回、政治家が展示を批判しましたが、その批判そのものを「表現の自由」であるとして正当化する議論が見られました。しかし、これは不適切です。

もちろん、純粋に一私人としての発言であれば自由ですが、政治家には法令上の権限や事実上の大きな影響力があり、展示に対して大きな圧力となります。一私人としての発言と政治家としての発言を区別することは困難です。

「政治家」という漠然とした括りでものを語ってるが、一番意味不明。

本当に曽我部教授はこんなことを言っていたのでしょうか?

たとえば北海道夕張市の市議がこの問題について批判したら、「圧力」なんですか?

そんなわけないでしょう。

政治家が批判すれば表現の自由に対する侵害だ、なんてことを言っている憲法学者なんて存在しないはずです。弁護士ドットコムの記事担当者が情報を削ぎ落し過ぎた可能性を疑うんですが。

「法令上の権限や事実上の大きな影響力があり」ということを考えれば、この話で唯一当てはまるのが大村知事と河村市長でしょう。

河村市長は名古屋市長としてトリエンナーレ実行委員会の会長代行であり、政治家であっても実行委員会の内部の人間として、組織判断を仰ぐことができなければおかしい。

なお、菅官房長官が文化庁の補助金について語ったことが「圧力」だと言う向きがありますが、この補助金は事業実施後に報告書が提出され、その審査後に最終的に交付されることになっているので、菅官房長官の「事実関係を精査して適切に対応」というのは当たり前のことを言ってるに過ぎません。

これを「圧力」とするのは認知が歪んでいます。

定義のある「検閲」は拡大解釈、不確定の「ヘイト」はそれを許さないダブルスタンダード

少女像展示中止、市長や官房長官の発言は「憲法違反」なのか?京大・曽我部教授に聞く - 弁護士ドットコム

4)「(展示は)日本人に対するヘイトスピーチだ」

これは、ヘイトスピーチの概念をあまりにも拡大するものです。ヘイトスピーチという用語が独り歩きする危険が、以前より懸念されていましたが、まさにそれにあたると言えるでしょう。

この点は「日本人に対する」という所は私も同意です(規制を前提とする法的な用語とするには対象があまりにも広いということ。素朴な言葉として「日本人への侮蔑である」と言うべきとは思う)

しかし、その前段にこのような事を言っています。

「検閲」は善意解釈の拡大解釈・ヘイトスピーチはダメ、という理屈

少女像展示中止、市長や官房長官の発言は「憲法違反」なのか?京大・曽我部教授に聞く - 弁護士ドットコム

(3)「市長や官房長官の発言は『憲法21条2項』で禁止されている検閲だ」

河村市長や官房長官は中止させる権限を持っているわけではなく、実際にも中止の理由は、市民の抗議が度を越した状態になったということなので、決定的な理由となったわけではなく、憲法でいうところの「検閲」にはあたりません。

ただし、不当な介入だという程度の意味で「検閲」だというのであれば差し支えはありません。

おかしいですよね。だったら「ヘイトスピーチ」も、「著しく憎悪的・悪罵的な表現だ」という程度の意味だというのであれば差し支えないハズなんですが。

憲法21条2項の「検閲」は、判例でその定義が明確に示されています

その定義では対象が狭すぎるという批判があるのは確かですが、とにかく固まった意味が存在しています。

対して、「ヘイトスピーチ」は未だ公的・法的な定義が示されたことがありません。

いわゆる「ヘイト規制法」と言われる「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」でも「ヘイト」や「ヘイトスピーチ」を定義しているわけではありません。

直訳すれば「憎悪表現」であり、そもそも対象が非常に広い用語です。

「検閲」は拡大解釈をし、「ヘイトスピーチ」は拡大解釈を認めない、そんな態度はダブルスタンダードでしょう。

検閲を拡大解釈する不都合

ちなみに、「検閲」を拡大解釈していくと、以下のような例も「検閲」と言われてしまいます。「チェックする主体が国家権力じゃない」とか言うんでしょうけど。

「表現の不自由」あいちトリエンナーレが「記事検閲」 — オルタナ: ソーシャル・イノベーション・マガジン!「オルタナ」1

「あいちトリエンナーレ」のウェブサイトで「プレス向け」ページには下記の記述がある。
「企画内容によってはご要望に沿えない場合もございますので、あらかじめご了承ください」
「誌面掲載、番組放送前に原稿を確認させていただいております。必ず校正段階での原稿・映像等を事前に広報専用メールへご提出ください」
こうしたメディア側への要請は、「検閲」と取られても仕方ない。

しかし、これは通常の対応だと言います。

「表現の不自由」あいちトリエンナーレが「記事検閲」 — オルタナ: ソーシャル・イノベーション・マガジン!「オルタナ」2

芸術新潮編集部によると、「こうした要望はよくある。クレジットなど事実関係で不備があるといけないので、それは見せるが、内容に注文をつけられても応じない。事実関係の理解でこちらが間違っていれば直す」という。

著作権者は誰か?という点は非常に重要なので、そこにミスがあったら作者の不利益になります。紙媒体の文書とは異なり、展示品については作者が誰なのかが分かりにくいですから、その部分のチェックがあるというのは双方のリスクを下げる行為でしょう。

市民の抗議を自粛するよう求める表現の自由戦士()

少女像展示中止、市長や官房長官の発言は「憲法違反」なのか?京大・曽我部教授に聞く - 弁護士ドットコム

●「市民に節度を求めるほかはない」

ただし、SNSによって情報が広まる今日では、かつてよりも容易に抗議活動の輪が広がりやすくなっています。1つ1つは穏当な態様・内容のものであっても、多数あつまると大きな圧力になります。この点は、市民に節度を求めるほかはありません。少なくとも、積極的に煽るような行為は控えるべきでしょう。

「表現の萎縮効果」をもたらす言論なんじゃないでしょうか?

憲法学の大学教授という権威がこんな事を言うんですよ?これこそ市民に対する圧力なんじゃないですか?なーんてね。

そもそも、1人1人の言論では力がなくとも、意見が世の中に流通することで力を生むのが表現の自由が保障されていることの意義であって、民主主義社会の基本ではないですか?

なぜそれと逆行することを言うのでしょうか?理解に苦しみます。

まとめ:曽我部教授は表現の自由を守ろうとしてるのか?

曽我部教授は表現の自由を守ろうとしてるのか?

弁護士ドットコムの記事内容からは、非常に疑わしいと言わざるを得ません。

以上

「菅官房長官はトリエンナーレ表現の不自由展に圧力・文化庁の補助金交付見直しを示唆」という論の虚偽

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あいちトリエンナーレの表現の不自由展に文化庁の補助金が採択されている事について、「菅官房長官が圧力をかけた」などという言説がメディアや特定野党議員によって広がっているので事実関係を確認していきます。

菅官房長官「事実関係を確認・精査」

令和元年8月2日(金)午前 | 令和元年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ

産経新聞・中村 愛知県で昨日開幕した、あいちトリエンナーレで、慰安婦を表現した平和の少女像や、昭和天皇の御真影を焼く映像が展示され、波紋を広げています。愛知県などでつくる実行委員会が主催している国内最大規模の芸術祭ですけれども、政府として把握している 事実関係と今後の対応について教えてください。

菅 愛知県で開催されております、あいちトリエンナーレの企画の一つとして慰安婦を象徴とする少女像などが出品されていることは承知しております。あいちトリエンナーレは国が主催、後援しているものではありませんが、文化庁の補助事業として採択されていると報告を受けております。審査時点では具体の展示内容についての記載は無かったことから、補助金交付の決定にあたっては事実関係を確認・精査した上で適切に対応していきたいというふうに思います。

この発言が「公権力による弾圧」だと言われています。

たとえばこれ。

文化庁の助成金:事業審査をするのは当たり前

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日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業(文化資源活用推進事業)の募集 | 文化庁

募 集 案 内】を読むと分かる通り、文化庁からの補助金は愛知県を事業者としてあいちトリエンナーレの国際現代美術展に対して「採択」はされているものの、未だに執行・交付されているものではありません。

補助事業実施後、つまりトリエンナーレの開催時期の後に実績評価がなされて報告書が提出され、その中身を審査した上で最終的に補助金が交付される仕組みであるということが、予め示されています。

したがって、菅官房長官が「補助金交付の決定にあたっては事実関係を確認・精査した上で適切に対応していきたい」と言っているのは、当たり前の手続内容を言っているだけであって、何ら「圧力」をかけたという要素はありません。

朝日新聞文化財団はトリエンナーレの実行委員会:メディアスクラム

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朝日新聞文化財団はトリエンナーレの助成団体であり、中日新聞は代表取締役社長が実行委員会の委員に名を連ねていますが、メディア総出で河村市長や菅官房長官の発言を政治介入だと言っています。松井市長の発言もその文脈で切り取られています。

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河村市長の抗議文についてはトリエンナーレ実行委員会の会長代行たる名古屋市長としてのものである側面につき以下で論じています。

まとめ

令和元年8月6日(火)午前 | 令和元年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ

文化庁で適切に対応すると言っただけだということは、6日の会見でも言及しています。

そもそも菅官房長官から積極的に発言をしたわけではなく、記者から質問を受けたために言及したに過ぎません。

こういう細かい事実を落として、さも菅官房長官=国が圧力をかけているという印象操作をしている記事が朝日新聞を筆頭に雨後の竹の子のごとく乱立しているのが現状です。

以上