事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「中国人入店禁止」箱根の駄菓子屋ハウスベイダ―、誹謗中傷どころか脅迫されていた

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「中国人入店禁止」をした箱根の駄菓子屋ですが、誹謗中傷どころか脅迫されていたことが分かりました。こんな事はどのメディアも報じていなかったと思います。

箱根の駄菓子屋ハウスベイダ―、脅迫されていた

【日本復喝!】中国語マナー貼り紙でバッシングされ…箱根の駄菓子店主が激白! 「今からそっちに行くからな」片言の日本語で脅迫続き (1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

店主によると、ウイルス感染を防ぐ理由で貼り紙を出した後、それを撮影した中国人観光客がネットに載せ、中国国内で炎上したという。店のホームページには、日本語で「人種差別だ」「殺すぞ」「中国人をなめるな、死ね」といった書き込みが殺到した

携帯電話にも無言電話や、片言の日本語で「中国人全員に謝れ」「今からそっちに行くからな」と脅迫が続いたという。

箱根の駄菓子屋「ハウスベイダ―」が新型コロナウイルス感染拡大を受けて中国人の入店を禁止する張り紙をしたことについて、こんなことがあったようです。

これは誹謗中傷どころか脅迫ですよね。

これは1月下旬の話ですが、まったく話題になりませんでした。

むしろこの店舗を「差別的」と非難する論調がメディアではほとんどでした。

ヘイト・差別的だとした日本のメディア

【日本復喝!】中国語マナー貼り紙でバッシングされ…箱根の駄菓子店主が激白! 「今からそっちに行くからな」片言の日本語で脅迫続き (2/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

日本のメディアで、真っ先に報じたのは朝日新聞だ。1月21日付電子版で、「新型肺炎を理由に『中国人は入店禁止』箱根の駄菓子店」との見出しで報じた。

 これに民放テレビのワイドショーが飛びついた。司会者に話を振られた男性コメンテーターが「これは明らかなヘイトです」と、店主のことを厳しく非難した。

ヘイト・差別的だとした日本のメディアですが、その後は「中国からの入国禁止をするのが遅かった」と言うコメンテーターを平気で使うなど、二枚舌にも程がありました。

私は各種判例から「生活空間に近接している場合には業態も考慮して違法ではない場合もあり得る」と考えていました。

外国人の利用禁止は違法か適法か

1月の近い時期に、中国人の団体客の立入禁止(「参拝禁止」ではない)を表明した対馬の和多都美神社や、中国人は雇わないと表明したために解雇された東大准教授の事例、新型コロナウイルス関係で同様の立入禁止方針を打ち出した札幌のラーメン屋の事案などがありました。

細かい話は上記でまとめていますが、5月になって振り返ってみると、結論から言えば合法になり得ると思います。

  1. 当時(1月末)は未だ日本は中国の地域からの入国禁止をしてなかったが、既にアメリカ等各国が中国からの入国禁止・大使館員も全員引き上げをしていた、また少数の国は中国発行のパスポートを有する者の入国を禁止していた
  2. 新型コロナウイルスの病状として高齢者の致命率が10%を超えているという事が報道されていた
  3. 2月~3月の日本国内の流行は中国由来であるということは判明していた、また、中国人団体客と接触のある者の感染が報告されていた
  4. 「新型コロナウイルスは無症状者からも感染する」ということがこの時点でも言われており、実際に4月末には厚労省が濃厚接触者の調査を感染2日前の接触者も対象にすると変更した
  5. 1月末当時、日本政府は国内感染期ではなく水際対策で海外からの流入を防ぐフェーズと認識していた

日本全国で感染が拡大した後には特定の国籍者を限定して入店拒否する合理性はなくなったと言えますが、当時の情報と感染状況からすれば、無症状の者であっても入店を拒否することは、【居住空間と一体になっている店舗で生存に必須ではないサービスを提供している所に限って】は適法だと思います。

こうした考慮もなく雑に「差別的だ」「ヘイトだ」などと店舗に対して言うこと自体が誹謗中傷だと思います。

「ヘイト」を日本人バッシングに利用するメディア

チャイニーズや朝鮮半島系の人間にとって都合が悪い言説は「ヘイト」というレッテルを貼られる傾向にあります。

そういう言論空間にマスメディアが支配されているというのが、「箱根の駄菓子屋」ハウスベイダーをめぐる事案でも浮き彫りになったと言えるでしょう。

以上

 

山田正彦が種苗法改正に関して横田修一氏発言を真逆に捏造してハーバービジネスが記事を削除

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https://www.facebook.com/shuichi.yokota.9/posts/2909297419125672

ハーバービジネスオンラインに掲載されていた元農水大臣の山田正彦氏の記事で、有限会社横田農場の横田修一氏の種苗法に関する発言が真逆のものに捏造されていたため削除されました。

山田正彦は前科があるので彼については「またか」以外に感想はありません。

元農水大臣の山田正彦氏の種苗法改正関連の記事で捏造

このリンク先の記事は、現在は消されています。

ユーザーから指摘を受けて、ハーバー・ビジネス・オンラインも対応したようです。 

有限会社横田農場の横田修一氏の発言が真逆に捏造された

有限会社横田農場の横田修一氏のヒアリング時の発言

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/kentoukai/attach/pdf/5siryou-9.pdf

横田 修一 - 普段、Facebookでは難しい話はしないのですが、今回はそうもいかないので投稿します。... | Facebook http://archive.is/MZ3ZJ

そこで私は、私が行っている自家採種(自家増殖)について説明し、今後、種苗法が改正すれば「許諾をきちっと受けて増殖していくということが当然必要」と発言させていただき、今後は許諾に基づいて増殖を行いたいとお話しさせていただきました。

ところが、大変不本意なことに、元農水大臣の山田正彦氏は、私が全く逆のことを言っているかのように吹聴されているようです。

有限会社横田農場の横田修一氏のフェイスブックでこのような指摘がありました。

同じ内容が横田農場のHPにもUPされています。

お知らせ|おいしくて安全なお米の生産直売 横田農場

これは【第5回 優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会】の議事録からも確認できます。

私も、ですからこういうものは正直不勉強だったところもあって、今後こういう形で制度が変わっていくことであれば、当然僕らは、今は許諾を受けない形での増殖になっていますけれども、恐らく許諾をきちっと受けて増殖していくということが当然必要になってくるだろうなというふうに思います。

これは、登録品種を原則として自家採取禁止に変更する種苗法改正の内容に基本的には賛成をする趣旨の発言です。

ハーバービジネスオンライン上の山田正彦氏の発言

ハーバービジネスオンライン上で山田正彦氏の発言とされた部分はこちらです。

ハーバービジネスオンラインの山田元彦の捏造

山田:いま述べたように、今後農家は「企業の小作人」になりかねませんが、それ以外の農家は廃業を余儀なくされるでしょう。種苗法改正は農家に「隷属か、さもなくば廃業か」という踏み絵を突きつけているのです。

 まず種苗法改正によって生産コストが上がります。これまで自分たちで採ったり増やしたりしていたタネや苗を購入するようになれば、追加コストがかかるからです。生産コストが上がれば、経営が立ちいかなくなる農家が続出します。たとえば、コメの専業農家である茨城県の横田農場は8品種のコメの種子6700キロを自家採種していますが、これらをすべて購入しなければならなくなると、350~490万円の負担増になります。同社は農水省の検討会で「これでは経営がたちいかなくなる」と訴えていました。

さきほどの農水省の検討会議事録からは、横田氏は「(種苗法改正によって)登録品種について許諾を受けて増殖する必要がある」という趣旨の発言をしていたものが、ハーバービジネスオンラインの山田正彦氏の発言とされている部分では「(種苗法改正によって)全てのコメの種子を購入しなければならなくなり、これでは経営がたちいかなくなる(だから反対である)」と訴えていたということに捏造されていたことが分かります。

要するに、種苗法改正に反対する者が、改正に基本的に賛成する発言を、反対する発言をしたと事実を改変して記事化した、ということです。

謝罪と訂正記事は書かないのか?

現時点で謝罪と訂正記事はありません。

種苗法改正反対派はなぜ嘘と捏造と事実誤認が多いのか?

※ハーバービジネスオンラインが事実誤認があったとして謝罪文を掲載しました。しかし、山田正彦は新たに印象操作を開始しています。

種苗法改正に反対する者からは、嘘と捏造と事実誤認が非常に多いです。

私が取り上げただけでも上記記事で指摘したようなものがあります。

以上

『「賭け麻雀は賭博罪」安倍政権が閣議決定していた』記事の不毛さ

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「賭け麻雀は賭博罪」安倍政権が閣議決定していた』

という事を記事にしている所がありますが、この意味を勘違いしてる所があるので整理します。

「賭け麻雀は賭博罪」安倍政権が閣議決定していた

平成十八年十二月八日提出 質問第二二五号 外務省職員による賭博に関する質問主意書提出者 鈴木宗男

三 賭博の定義如何。
四 賭け麻雀は賭博に該当するか。
五 賭けルーレットは賭博に該当するか。

 関係する部分とその答弁部分を引用します。

答弁第二二五号 内閣衆質一六五第二二五号 平成十八年十二月十九日

三について
 刑法(明治四十年法律第四十五号)において、「賭博」とは、偶然の事実によって財物の得喪を争うことをいう。
四及び五について
 一時の娯楽に供する物を賭けた場合を除き、財物を賭けて麻雀又はいわゆるルーレット・ゲームを行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる。

上記部分をもって「第一次安倍政権時にマージャンは賭博罪だと閣議決定していた!」「過去に内閣が答弁してるのに答弁を法務省に丸投げして逃げている!」という記事があり、まぁ情弱を煽動するのに熱心ですねと。

質問主意書と答弁書の閣議決定の性質

質問主意書:国会キーワード:参議院

上記リンクでは質問主意書という国会法上認められた制度の説明が為されています。

  • 国会の本会議や委員会で行われる質疑は議題の制約を受けるところ、質問主意書はそれに拘束されずタイムリーな話題についても問いかけることが可能
  • 質疑時間は会派の人数等によって分配されるため少数会派が不利だが質問主意書はそうした制約が無い
  • 答弁書は、各府省等で案文を作成し、内閣法制局の審査を経て閣議決定された後、議長に提出される

質問主意書と答弁書の閣議決定の性質は、こういうものなのです。

したがって、たとえ所管が各省庁のものであったとしても内閣の名前で閣議決定するものですが、実際の調査は各省庁で行われるものも含む場合もあるということです。

この話をするのは法務省が最も適しているというのは論を待たないわけです。

刑法上の解釈をそのまま言っているだけ

『「賭博」とは、偶然の事実によって財物の得喪を争うことをいう』

一時の娯楽に供する物を賭けた場合を除き、財物を賭けて麻雀又はいわゆるルーレット・ゲームを行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる。』

これは刑法185条本文と但書の説明をしているに過ぎません。

刑法(賭博)
第百八十五条  賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

「賭け麻雀は即賭博罪」と言っているわけでは無い

通常の国語の読解力を有していれば、「賭け麻雀は即賭博罪」と言っているわけでは無いということくらいは分かると思います。

賭け麻雀をしていても、「賭ける物」がその場で費消するような飲食物であれば賭博罪には当たりません。金銭を賭けた場合はたとえ少額でも「一時の娯楽に供する物」には当たらないと言うのが判例ですが。

そして過去の答弁書でも「成立し得る」としか言っていないわけです。

正直、この質問主意書と答弁書の閣議決定を持ち出して政権を論難しているのは頭がおかしいとしか言えません。もっとまじめに政権批判しろよ、と思います。

以上

木村響子氏、木村花さんの遺書内容公開したメディアに「触れないでほしいと泣いて頼んだ結果がこれですか」

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とても悲しいことだと思います。

木村響子氏「触れないでほしいと泣いて頼んだ結果がこれですか」

5月25日に多くのメディアが遺書の存在とその内容を報じたことについて、木村響子氏はこう指摘しました。

連鎖を生まないために
花のプライバシーを守るために
触れないでほしいと
泣いて頼んだ結果がこれですか

誰も信用できない
弔う時間をください

なお、木村響子氏が引用リツイートしたツイートは、木村花氏の遺書の内容等を報じた記事について、それをシェアした一般ユーザーのものであり、木村響子氏のツイート後、削除され、シェアしたこと自体について反省の弁を述べています。

参考:マスコミによる遺書公表に木村花さんの母・響子さんが「花のプライバシーを守るために 触れないでほしいと 泣いて頼んだ結果がこれですか」(バトル・ニュース) - Yahoo!ニュース

スターダム「詳しい情報についてはご遺族の意向により公表を差し控えさせて頂きます」

木村花選手のご逝去につきまして – スターダム✪STARDOM

より詳しい死因等につきましては、ご遺族のご意向により公表を差し控えさせて頂きます。こちらの詳細については、今後も当社の会見、リリース等において、公表を行う予定はございません。マスコミの皆様、ファンの皆様におかれましては、何卒ご容赦、ご配慮くださいますようお願い申し上げます。

木村花選手が所属していたプロレス団体のスターダムでは「詳しい情報についてはご遺族の意向により公表を差し控えさせて頂きます」とリリースしています。

木村花の遺書について報じたマスメディアと漏洩した警察

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最初に報道した所は特定していませんが、遺書の存在とその内容について報じた媒体は、デイリースポーツ、日経新聞、読売新聞、テレビ朝日、産経新聞、スポニチ、サンスポ、毎日新聞など、挙げればキリがありません。中には自殺の手段も記述している媒体もありました。

※ここで記事のリンクを貼る行為自体が拡散に繋がるので控えます。画像中、時事通信、TBS、日刊スポーツについては「遺書とみられるメモ」とだけ報じ、中身は書いていません。

どの記事も「捜査関係者への取材で分かった。」としていることから、警察官の中に遺書の内容のリークをした人物がいるということです。

なおNHKなど「遺書のようなメモが見つかった」とだけ報じ、中身は触れていないメディアもいくつか存在しています。それ自体は問題ないと思います。

木村花さん SNS上の非難が1日に100件近く 自殺の可能性も | NHKニュース魚拓

自殺報道をするメディアに対する指針

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メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き(WHO)|自殺対策|厚生労働省

自殺報道をするメディアに対する指針が厚生労働省から出ています。

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上図はその指針のエッセンスを抽出したものです(指針自体はWHOの勧告を踏まえて作成されたPDFファイルがある)

やるべきこと

  • どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること
  • 自殺と自殺対策についての正しい情報を、自殺についての迷信を拡散しないようにしながら、人々への啓発を行うこと
  • 日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道すること
  • 有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること
  • 自殺により遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期すること
  • メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識すること

やってはいけないこと

  • 自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと
  • 自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと、自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと
  • 自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
  • 自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
  • センセーショナルな見出しを使わないこと
  • 写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと

マスメディアって、ここにある「やってはいけないこと」をやってますよね?

民放連盟の報道指針にも反している

よりよい放送のために | 一般社団法人 日本民間放送連盟

 3.人権の尊重

 取材・報道の自由は、あらゆる人々の基本的人権の実現に寄与すべきものであって、不当に基本的人権を侵すようなことがあってはならない。市民の知る権利に応えるわれわれの報道活動は、取材・報道される側の基本的人権を最大限に尊重する。

省略

 (4) 取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る。事件・事故・災害の被害者、家族、関係者に対し、節度をもった姿勢で接する。集団的過熱取材による被害の発生は避けなければならない。

 (5) 報道活動が、報道被害を生み出すことがあってはならないが、万一、報道により人権侵害があったことが確認された場合には、すみやかに被害救済の手段を講じる。

「取材対象者の苦悩に心を配る、集団的過熱取材による被害の発生は避けなければならない」

こうした民放連盟の報道指針にも反していますよね?

それとも、「この程度は被害じゃない」などと思っているのでしょうか?

テラスハウス事件は京アニ事件に続くメディアの自己矛盾と警察の腐敗

 今回の事案は、「京アニ事件」に続くメディアの自己矛盾と警察の腐敗が浮き彫りになった事案だと思います。警察もメディアとの関係が大事だからプライバシー情報をポンポン渡しているのでしょう?

この件でメディア各社は実名報道こそがジャーナリズムだ、という論調でした。

朝日新聞に至っては「事件報道は実名を原則とする」としながら、過去の犯罪報道では指名手配犯ですら通名だけ報道していましたし、毎日新聞は京アニ事件直後の指名手配犯の報道を通名のみ報道しました。 

以上

安倍政権「女性・女系天皇潰しプラン」と女性宮家、旧皇族の皇籍復帰・養子縁組の議論の経緯のまとめ

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宮内庁ホームページ:https://www.kunaicho.go.jp/activity/gokinkyo/newyear/r02-0101-mov.html

NEWSポストセブンが『安倍政権「女性・女系天皇潰しプラン」』と報じていますが、ちょうどいいころ合いなので、これまでの皇位継承問題の議論の経緯を整理します。

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日経の「新型コロナ超過死亡」記事で騒い出る人は感染研のQAとデータを読め

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国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/9627-jinsoku-qa.html

日経新聞で「新型コロナ超過死亡」記事が出ており、『新型コロナの死亡者報告は漏れている』さらには『感染研のデータが隠蔽・改竄されている!』などといった声が出ている始末ですが、感染研の超過死亡データの無理解から来てるので注意しましょう。

日経の「新型コロナ超過死亡」記事

新型コロナ:コロナ感染死、把握漏れも 「超過死亡」200人以上か :日本経済新聞魚拓

新型コロナウイルスの感染が拡大した2月中旬から3月までに肺炎などの死亡者が東京23区内で200人以上増えた可能性がある。同じ期間に感染確認された死亡数は都全体で計16人。PCR検査で感染を確認されていないケースが潜み、把握漏れの恐れがある。こうした「超過死亡」の分析に必要な政府月報の公表は2カ月遅れで、欧米の対応と差が出ている。

省略 (途中、2019後半~2020年のインフルの超過死亡のグラフがある)

超過死亡は19年後半も発生。インフルエンザの流行が早く、東京都で12月上旬に流行が拡大した影響とみられる。年明けには終息しており、再び超過死亡が発生した2月中旬以降は新型コロナが影響した可能性がある

日経の「新型コロナ超過死亡」記事で問題となる記述はこの部分でしょうか。

東京都のインフルエンザの超過死亡者数

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国立感染研:http://archive.is/pn6MD

日経新聞が使っているデータ、グラフはこの時点のものです。

日経はここから、「インフルエンザが収束したのに3月以降に跳ね上がっているということは、これは新型コロナの影響である」という推論を行っているのです。

ちょっと調べればこの時点で推論をすることすら憚られるというのは分かるので、これを記事化する日経の神経を疑います。

「超過死亡」の意味:インフルエンザの超過死亡を新型コロナに適用する愚

参考:インフルエンザ・肺炎死亡における超過死亡について

超過死亡とは、インフルエンザが流行したことによって、インフルエンザ・肺炎死亡がどの程度増加したかを示す、推定値である。この値は、直接および間接に、インフルエンザの流行によって生じた死亡であり、仮にインフルエンザワクチンの有効率が100%であるなら、ワクチン接種によって回避できたであろう死亡数を意味する。この、インフルエンザの流行によってもたらされた死亡の不測の増加を、インフルエンザの「社会的インパクト」の指標とする手法について多くの研究がなされ、現在の国際的なインフルエンザ研究のひとつの流れとなっている。

まとめると、超過死亡とは【インフルエンザ関連死の増加分の推計値であり、ワクチンの有効率が100%と仮定した場合にワクチン接種によって回避できたであろう死亡数】を意味します。

日本国内のインフルエンザ関連死の推計のために設計された国立感染研独自の概念なのであって、新型コロナに対して流用できるかどうかはまったくわからない、というか、流用できると考えるのはおかしいというのがここのページの説明だけでも理解できなければおかしい。

感染研のQAに基づく数値変動の理由・原因

 

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国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/9627-jinsoku-qa.html

インフルエンザ関連死亡迅速把握システムについてのQ&A

Q.毎週、「実際の死亡数」が変化しているように見えるのはなぜですか?

A.複数の保健所がある地域の場合、入力のタイミングがばらばらなので、入力された死亡数の平均値から地域全体での死亡数を推測して「実際の死亡数」として評価しています。そのため、時間の経過に伴い保健所からの入力が進むにつれ、「実際の死亡数」の値が増減することがあります。通常はシーズンが終わった5月以降に最終の数が確定します。

Q.このシステムで新型コロナウイルス感染症の影響を評価することはできますか?

A.新型コロナウイルス感染症の流行により、超過死亡が発生する可能性はあります。しかし本事業は毎年冬に流行するインフルエンザを想定して長年にわたって運用されているシステムです。本事業で新型コロナウイルス感染症による超過死亡への影響を評価することはできません

超過死亡についての説明はこのグラフを作成した当初からこちらでも行われています。

死亡数が変動するのは報告にタイムラグが出ることと、統計学の手法を用いた推計値であるため、というのが分かります。

東京都の過去の超過死亡の図を見れば、ずっと閾値を超えた数値なわけで、今年の数値だけが異常なものであるということではないわけです。

改竄・隠蔽が行われていると騒ぐ人へ

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こちらが最近のグラフですが、先述のグラフと比べると2020年の9週以降の死亡数が減っているのが分かります(同じ時期を見たグラフです)

これをもって「超過死亡が改竄・隠蔽された!」と騒ぐ人がSNSを見てると居るのですが、一般人がこう思ってしまうのはともかくそれなりの人たちも問題視しているので困ったものです。

このグラフの数字は推計手法+報告のタイムラグによって遡って変動する性質のものなので、こういうことは「いつも通り」なのです。

ためしに3月時点のグラフを見てみましょう。

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国立感染研:http://archive.is/xJV8a

3月11日の魚拓にあるグラフです。

こちらは逆に2020年第1週以降は数字が大幅に下がっているように見えている所が多いのが目立ちます。

私も新型コロナが話題になった1月中旬からこのグラフはずっと見てきたので、報告が進むにつれて数字が多くなったり少なくなったりすることはよくある話なのがわかります。それ自体は問題ではありません。

もっとも、『報告が集計されるのが遅い』という問題はあると思います。

大阪・北海道・愛知のグラフでは超過死亡は無し

そもそも感染研のグラフはインフルエンザに対応したモデルなのであって、新型コロナに流用することができないということは既に指摘しました。

仮に、流用するとしてもということで指摘したいのですが、東京以外にも新型コロナが流行した地域は大阪・北海道・愛知などがあるわけです。

そこのグラフは見ましたか?

閾値を下回っているのが分かります(魚拓を見てもずっと下回ってる)

日経新聞の記事は「東京都」に限定して論じているのですが、それは日経が煽りたい方向性に都合の良いグラフが東京都でしか見られないからです。

バカバカしいにもほどがあります。

まとめ:日経は煽動目的の記事をやめろ

  1. 国立感染研の「超過死亡」 のグラフは日本のインフルエンザのために独自に作られたモデルに基づく
  2. 感染研の超過死亡は統計的な推計値であり、ワクチン接種によって回避できたであろう死亡数を意味する
  3. よって、新型コロナの議論に直接当てはめるのは不適切
  4. この集計は報告のタイムラグによって計算結果も変わり、数字が変動する性質のもの
  5. よって、報告が集計しきっていない時期の数字をもって記事にしている日経は意味不明どころか煽動目的でしかない

「新型コロナの超過死亡」がまったくないとは思いません。

しかし、それがどの程度なのか、軽々に指摘できないでしょう。現時点ではそのためのモデルが作られていないため、専門家による議論を待つ必要があります。

グラフの隠蔽だとか改竄だとかいう話は単なる勘違いに過ぎません。

以上