事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

霊感商法対策弁護士の山口広「被害増加はメディアのせい」高島易断論文

山口広弁護士の論文でメディアが霊感商法の原因

犯人はマスメディア

霊感商法対策弁護士の山口広「被害増加はメディアのせい」高島易断論文

高島易断による霊感商法の実態―民事上の違法性と詐欺罪― 山口 広(弁護士)(魚拓)

霊感商法対策弁護士の山口広 氏が、「霊感商法の被害増加はメディアのせい」と仄めかす論文を書いていました。
※おそらく2008年10~12月頃のものと思われる

これは【高島易断】という一種の占いの手法をメインの対象にした論文ですが、「霊感商法」という点で共通しているので統一教会の関連事件についても書かれています。*1

「高島易断」とは、高島嘉右衛門という幕末から明治にかけて活動した者が居り、その者による占いがよく当たる、などと評価が高くかったため、その名声を利用して行われる占いを、彼の著作名にもなった『高島易断』と呼称されたものです。

それについて山口弁護士は以下指摘しています。

20年以上前から毎年10件足らずの高島易断についての相談はあった。しかし、いずれも単発的に100万円前後の金銭を支払わされたが納得いかないというものであり、比較的少額の被害で、弁護士費用を払ってまで被害回復したいという強い被害意識をもった相談ではなかったため、全国弁連でも敢えて取り上げて被害回復を図ることをしていなかった。

 ところが、2005(平成17)年頃から、相談件数も、被害金額も急に増えはじ
めた。
 おりから、テレビで江原啓之氏や細木数子氏らスピリチュアル・カウンセラーなどと称する有名人の番組が高視聴率を記録し、女性週刊誌でもこの種のカウンセラーの特集記事や宣伝が多くのページを占める事態となった。国民生活センターが集計した相談データでも、祈とうなどに関する相談が2002年度から2005年度までの4年間、429件、536件、751件、819件と急増する傾向にあった。

一時期、テレビで細木数子が「地獄に落ちるわよ」などのセリフによって相手方を不安にさせた上で「指導」する様子がバラエティー番組で垂れ流されていました。

その影響力がすさまじかったのでしょう。国民生活センターでの祈祷にかんする相談件数が倍近くになっています。

※弁護士連絡会への相談件数と国民生活センターへの相談件数を比較して「50倍」としていた部分を削除しました。

テレビ番組は動画なので記録に残りにくいこともあって因果関係の検証対象として取り上げられることは少ないですが、料理番組放送の後に、取り上げられた商品・食品がスーパーで売り切れになるなど、実生活でもその強大な影響力を実感するところです。

新聞だと以下のような論文化もされていることはありますが。

違法の司法判断が出た高島易断の行為の例

上掲の山口氏の論文から引用しますが、2007年12月25日の神戸地裁洲本支部判決では

「本件鑑定1に際しての被告の発言は、悩みを多く抱えていた原告に対し、今年中に死ぬとか、水子が足にすがって泣いているとか、子が未亡人になるなどの不吉な事実を告げて不安を煽った上で被告が供養すれば原告を治すことができるかのように装い、その旨信じさせる、社会通念上不相当なものといえる。」「本件鑑定2に際しての被告の発言は、3日間拝んだことを告げた上、もう3ヶ月もすれば原告の体調が良くなり、原告の悩みの1つであったAの将来に関しても、良い結果が出ると述べ、自らにそのような力があるかのように装い、本件鑑定1によって既に不安を煽られ、また、Aの将来を心配している原告の状況を利用して、その旨信じさせた、社会通念上不相当なものといえる。」

このような内容のものだと認定されたと書かれています。

控訴審判決(大阪高裁第13民事部2008(平成20)年6月5日判決)も、地裁の判断を維持したとあります。

このように、不安をあおった上で、ある商品や役務の提供を受ければその不利益を回避できる/受けなければ生活の維持が困難になる、ということを告げて契約に漕ぎつける主張は、現行の消費者契約法4条3項の行為類型としても把握されています。

五 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。
六 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。

経済産業省が特定商取引法の適用対象となる指定役務に易断の結果に基づくサービスを追加するレベル

経済産業省は、特定商取引法の適用対象となる指定役務に「易断の結果に基づき、助言、指導、その他の援助を扱うこと」(以下これを「占い後の祈とうサービスなど」という)を追加した。

易断についてのテレビ放送がどの程度の影響力だったのかというと、経済産業省が特定商取引法の適用対象となる指定役務に易断の結果に基づくサービスを追加するレベルだったというのがわかります。

法改正|特定商取引法ガイド

もっとも、平成19年(2007年)改正で「易断」について政令指定されましたが、平成20年(2008年)の政令【(平成二十一年四月三日政令第百十七号)(平成21年12月1日施行)】では、この項目が削除されています。

その理由は、特商法の規定の仕方に大きな変更が行われたためというのがわかります。

第169回国会 経済産業委員会 第15号(平成20年5月21日(水曜日))

○新藤副大臣 これまでの特定商取引法は、消費者被害の発生に応じて規制を行う、御案内のとおり、指定商品制でございます。それは、消費者被害の多い商品、役務について政令で指定をして規制をするということでございまして、現在は五十八品目、二十一役務が指定をされているということでございます。

 しかし、これも順次ふやしてきたわけでございまして、被害が多くなったものについては、通常の民法の規定で消費者の保護を図るためには時間もかかる、またいろいろ立証責任が困難だ、こういうことで、消費者の保護を行おう、また公正な取引を促進しようということで、順次ふやしてまいりました。

 しかし、ここのところで、非常に手口が巧妙化するだとか、それから指定対象の商品や役務を巧みに抜ける、例えば排水管の清掃を規制対象としたところ、今度は水道管の洗浄をめぐるトラブルが起きる、それから土地の測量を規制対象としましたならば、今度は土地の整地や除草がトラブルになるというように、非常にすり抜けたり裏をかくような商法が出てくる。

 また、それから、従来取引されていなかったような新種の商品、役務、こういう社会の変化によりましてそういったものがふえてきたということで、指定制の見直しではなくて、要するに規制の後追いという問題が発生してしまいますので、これを抜本的に解決しようということで、いわゆる指定商品制から原則適用方式ということで、個別法で保護されるものを除くすべての商品、役務を規制しようということで今回の法改正をお願いしているということでございます。

易断と呼ばれるものの一部の問題行為は「霊感商法」でもあると言われていたので、一部は消費者契約法の取り消し対象としても把握されることになっています。

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オウム真理教などマスメディアが主導してきた新興宗教の礼賛と霊感商法への加担、他の宗教への弾圧

テレビメディアがテロ殺人を起こしたオウム真理教を持ち上げ、放送していたことは周知の事実ですが、その後も霊感商法に加担していたということ。

さらにはその裏では別の宗教団体を弾圧する虚偽言説にも積極的に加担していたということがあります。

歴史は繰り返されている、と感じます。

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*1:この論文中、「統一教会が組織的に販売行為をさせて実績を追及させていたことが証拠上も明白になっている」とある部分は、実際には司法では認定されていない。信者が宗教法人とは別組織を作ってその組織において組織的に犯罪を行っているということが認定されたことはあるが。全国霊感商法対策弁護士連絡会が書くこの手の文章は、統一教会憎しのために司法判断についての正確な理解を阻害するものが多々あるので注意すべき