事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「そしてどうなるの? 2019池上彰が総まとめ」日韓関係の説明も間違い

「そしてどうなるの? 2019池上彰が総まとめ」での説明について、やっぱり懸念していた通りの内容でした。

 「そしてどうなるの? 2019池上彰が総まとめ」日韓関係の説明に違和感

「そしてどうなるの? 2019池上彰が総まとめ」日韓関係の説明には、間違いである説明と、間違いとは言い切れないものの、不足している説明であったり、非常に違和感のある説明があると思いました。

徴用工問題に関する間違い

「そしてどうなるの? 2019池上彰が総まとめ」徴用工の間違い

番組内では「動員された人たち」と説明されています。

これは朝鮮半島からやってきた労働者がおしなべて意思に反して連れてこられたと受け止められる説明であり、事実に反します。

韓国大法院の原告は「徴用工」ではなく「応募工・募集工」

彼らは「元朝鮮半島出身労働者」と呼ぶべきであり、就労のきっかけとしては「自由意志での渡航」と国家総動員法に基づく「募集」「官斡旋」「徴用」の4種類があります。「徴用」は内地出身者・大和民族も対象になりました。

韓国大法院の原告は「募集」に該当する立場でした。日本における訴訟でも「強制連行・強制動員」の事実は認められていません。
※なお、日本訴訟(旧日本製鉄大阪訴訟)でも過酷な労働環境である「強制労働」の事実は認定されているが、内地出身者・大和民族も同様の環境で働いていた。朝鮮半島出身者も当時は同じ日本人の扱いであり、大和民族が朝鮮半島に行けば半島の憲法下の法体系に従っていたし、朝鮮半島出身者が内地(今の日本国領土内)に行けば大日本国帝国憲法下の法体系に従うことになっていた。

※国家総動員法に基づく「徴用」は、1944 年 10 月頃から 「国民徴用令」に基づいて行われた。当然、内地出身者・大和民族も対象に含まれていた。

※韓国訴訟と日本訴訟では原告が一部変わっているようだが、それでも韓国訴訟では亡訴外人と原告2は「広告を見て応募」したと認定され、原告3と4も上記「徴用」制度の前の時期に「募集」の形式で就労した(朝鮮半島の行政府からの推薦や指示があったという事情が認定されている事は書いておく)。

朝鮮人労働者とされている写真が日本人であることが韓国で指摘されていることも紹介

番組内では、朝鮮人労働者とされている写真が日本人であることが韓国で指摘されていることも紹介されていました。

ここまで紹介しているのに、上記の基本的な事実関係の説明に重大な誤りがあるのはなぜなんでしょうか?

日本政府が求める「話し合い」も日韓請求権協定に基づく仲裁委員会でのものであることを伝えていませんでした。任意の話し合いではなく、協定に基づく話し合いを求めていたことが重要なのに。

輸出管理・ホワイト国除外に関する不十分な説明

輸出管理強化・ホワイト国除外の報道の誤解

CISTEC:http://www.cistec.or.jp/service/kankoku/191101-j.pdf

輸出管理強化・ホワイト国除外に関しては、夏の頃のいいかげんな報道そのままの紹介だったと思います。

韓国向け輸出管理の運用の見直しに関する解説資料| 安全保障貿易情報センター(CISTEC)を読めば、いかにメディアが実態と異なることを報じていたかが分かります。

池上彰の番組内の説明でも、CISTECが指摘している誤解は払拭されないどころか、誤解をベースに理解する人が出るようになっていました。

特に徴用工訴訟の流れで輸出管理強化を論じているところは、日韓のメディアが日韓両国の争いをエンタメ化して消費する延長線上のものといえると思います。

夏にCISTECが解説した資料を紹介した記事を置いておきます。

輸出管理強化後の韓国人旅行客に関する情報が片手落ち

「そしてどうなるの? 2019池上彰が総まとめ」の番組内では、輸出管理強化後に韓国人旅行客が減ったことが観光地の収入減になった、ということを説明していました。

しかし、特に韓国人旅行客が多い大分県のある地域でのロケしか放送されていません。

そして、実は全体で見れば韓国人旅行者が半減したのに旅行収支は黒字・増加になっているという重要な事実には触れられていませんでした。

韓国人旅行客が減っても旅行収支は黒字・増加

番組では韓国人客がピーク時の1割になり、売上が15%減った所もあると指摘していましたが、1割になった=90%減ったのに売上の減少は15%だったというのは、韓国人客の売上への貢献度はそんなに無いということの裏返しだと思います。

韓国人客半減でも旅行収支黒字は過去最高 8月国際収支 - 産経ニュース

記事の事実関係をまとめると以下

  1. 全体の観光客は2・3%減少
  2. 韓国人観光客は前年同月比48%減
  3. しかし旅行収支は8月過去最高の黒字
  4. 1人当たりの消費額が上がった

要するに、1人当たり消費額が低い=客単価が低い韓国からの観光客が減ったものの、それよりも客単価が高い観光客が増えた結果であると言えます。

韓国人旅行客の客単価は低いという事実の統計と分析

以下の記事で統計の整理をしています。

韓国人旅行客の客単価は低い】という事実が、統計から明らかだと言えます。

では、なぜ韓国人旅行客の客単価は低いのか?

確定的な結論を出すための統計が欠落しているのですが、日帰り客が圧倒的に多いからであって、日帰り客が客単価を下げてる要因の一つではないかとフェルミ推定も交えて推論したのが以下の記事です。

欧州シフトしている

韓国人観光客減でも影響限定的 現場はすでに欧米などにシフト - 産経ニュース

そして、12月の報道でも、韓国人観光客が減少しても全体しては影響は限定的であり、観光地の現場は欧米シフトで対応している所もあるということが報道されています。

全体的な印象操作?

番組の全体的に印象操作ではないか?と思われる演出がありました。

  • 日本が「反発」という表現
  • 安倍総理の絵は困り顔だがムンジェインは堂々とした振舞い
  • 安倍総理・日本政府は下側、ムンジェイン・韓国政府が画面上側の構図の絵
  • 韓国のおじいさんの「日本が謝れば…」の部分で音楽が融和的なものに
  • 「日本人ではなく日本政府が嫌いである」という韓国人の主張に?⇒民主国家では国民が選んだ政府が基本的には国民の代表なので、政権批判が国民批判にもなり得る。また、安倍政権以前にも反日をしているので説得力が無い。

まぁ、テレビ朝日らしいと言えばそれまでですね。

まとめ:そしてどうなった?⇒メディアの印象操作が原因で誤解が蔓延した

CISTEC:http://www.cistec.or.jp/service/kankoku/190805setumeishiryo.pdf

「そしてどうなるの? 2019池上彰が総まとめ」の日韓関係の説明は(他もそうですが)、メディアの印象操作が原因で誤解が蔓延したものを、そのまま放送したという意味で「総まとめ」だったと思います。

こうした誤解の影響を受けるのは現場のプロではなく、テレビ新聞を見ている一般人であることを考えると、本当に罪深いと思います。

以上