事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

森ゆうこ議員が原英史氏の住所をネットに漏洩:なぜダメなのか

森ゆうこ議員、住所をネットに漏洩

森ゆうこ議員が11月7日の参議院農林水産委員会の質疑・質疑の資料において個人情報を漏洩しました。

なぜこれがプライバシー侵害としてアウトなのかについて説明します。

森ゆうこ議員が原英史氏の個人住所をネットに漏洩

森ゆうこ議員の個人情報漏洩

森ゆうこ議員Facebook

森 ゆうこ - 農林水産委員会 森ゆうこ質問 令和元年11月7日... | Facebook

魚拓:http://archive.is/TAXIB

この資料の最後にあるページで原英史氏の個人住所が記載されている部分があり、原氏や足立康史議員による指摘によって、後日黒塗り対応がされました。

これは国民民主党を応援するアカウントなどによっても拡散されました。

魚拓はこちら

なお、いずれも現在はリンク先は黒塗り対応後のものに変わっているか、404エラーになっています。

登記簿上の住所なのにダメなのか?

森ゆうこ議員、個人の住所をネットに漏洩

森ゆうこ議員Facebookより

これは黒塗り対応後のものですが、森ゆうこ議員がネットに公開し、また参議院農林水産委員会でも資料として配布されたものです。

ここで、これは登記簿の情報であることに気づいた人も居ると思います。

そして、登記簿上の情報というのは、取引の安全等を図るために公開されているものであって、誰でも法務局に行けば(お金を払えば)閲覧可能です。

インターネットでも登記情報は閲覧できます。

ですから、人によっては「何が悪いのかわからない」と言う人も居ると思われます。

しかし、公開されたものだからといって、むやみやたらにネット上に掲載する行為はプライバシー侵害として不法行為を構成するのです。

判決文記載の住所のネット掲載がプライバシー侵害になった裁判例

【東京地裁 平成22(ワ)47931号 平成23年8月29日判決】

事案の概要 原告X1は全日本海員組合の組合長であり、被告が原告と被告との訴訟の判決文をインターネット上のブログに掲載した際に原告の住所が公開された(3ヶ月後に削除)ことをプライバシー侵害として訴えた。被告は、原告の住所は登記簿や電話帳にも記載されていることからプライバシーの利益として保護されないと主張した。しかし、裁判所は以下判断してプライバシー侵害の不法行為を認め被告に6万円余の支払いを命じた。

登記簿や電話帳への自宅住所の記載は、いずれも一定の目的の下に限定された媒体ないし方法で公開されるもので、同目的に照らし限定的に利用され、同目的と関係ない目的のために利用される危険は少ないものと考えられ、公開する者もそのように期待して公開に係る自宅住所情報の伝搬を上記範囲に制限しているというべきであるから、原告X1が自宅住所情報につきプライバシーの利益として保護されることまで放棄していると評価することはできない

プライバシー侵害として違法になることを回避するためには、公開する利益が公開されない法的利益を優越しないといけないのですが、この事案では原告X1の住所をネット上に公開する必要性がなく、公開する利益が優越するとは認められないと判断されたということです。

そして、インターネット上で閲覧可能な登記簿上の住所についても近年動きがありました。

法務省の会社法部会の附帯決議でネットでの登記簿上の住所閲覧が禁止に

法務省:法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会第19回会議(平成31年1月16日)開催

また、以下の内容の附帯決議がされた。

省略

2 省略

 (2) 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に基づく登記情報の提供においては,株式会社の代表者の住所に関する情報を提供しないものとする。

「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(案)」 では、電気通信回線(インターネット)での登記簿上の住所閲覧制限については法改正での対応はありませんので要綱案には記載されませんでしたが、運用の変更として行われることが決定されました。

これは法人の代表者の個人の住所がネット上で閲覧できてしまうことでみだりに利用される事案が発生したことから制限の必要性があり、実際上も法人の住所だけがあれば良い場合がほとんどであることから、ネット上での閲覧のみ規制がかけられた経緯があります。

法務局に直接足を運べば代表者の個人住所も見ることができます。そういう人が悪用するケースはほとんど無いと判断されたからです。

破産者マップ事件との類似

誰でも閲覧できる公開されているものだからインターネット上で拡散しても違法ではない

森ゆうこ議員らと同じようなこうした考えを持つ者によって、今年に入って「破産者マップ」なるものが作成された事件がありました。

これもやはり違法なものとして閉鎖されました。

破産法の官報公告の趣旨(条解破産法・弘文堂2010年による)は、破産手続の関係者に対する裁判の告知や書面の送付を速やかにかつ経済的に実施するためのものであって、事後的にネット上で拡散されることは予定されていないこと、相当過去の情報であっても破産者の「視覚的な住所地」が分かってしまう作りであるため、現在の情報であると誤認するようなつくりになっていて弊害が大きいことが指摘されたためです。

もう一つの情報漏洩:政策工房の住所も漏洩

参議院農林水産委員会での質疑において、「政策工房」の住所であるとして森ゆうこ議員が口走った情報がありました。

これについても相当問題のある発言だということが原英史氏から指摘されています。

森ゆうこ議員、国会での名誉毀損に加え、国会でのプライバシー侵害 – アゴラ

森議員は、もうひとつ、私が代表取締役を務める政策工房の会社住所も、資料に掲載し、質疑の中でわざわざ読み上げもした。個人情報ではないので緊急に削除まで求めていないが、これも、一般には公開していない住所だ。

公開していないことには理由がある。過去に不審者が事務所建物に入り込むなどの事案があった。今年夏にも、不審者が建物内の写真をSNSで公開し、脅しともとれるメッセージを残した。従業員も含め万一のことがあってはいけないので、所轄警察署に相談して対策を講じ、ようやく心配が軽減できそうになってきた矢先だった。

森議員のおかげで再び問題が生じかねないことを、また所轄警察署に相談にいかなければならない。

しかも、森議員がなぜ会社住所を明らかにしたのかも、さっぱりわからない。

私が代表取締役を務める政策工房と、私が理事を務めてきた外国人雇用協議会が「同じ住所」だと指摘しているが、それに何の意味があるのか不明だ。どちらか片方の法人が非公開で、私に関係あると示したかったならばわからないでもない。しかし、私が双方の法人で役職を務めていることは、私のプロフィールでずっと公開してきたことだ。公開されたくない住所情報を、無意味に公開されたとしか考えられない。

これはネット上の資料での記載は確認できませんでしたが、質疑では「政策工房の住所」として読み上げていたことは確かです。

「住所が同じだから」ということそれだけでは何ら意味がありません。

森ゆうこ議員からは政策工房の住所として読み上げたことについての合理的な説明がありません。単なる「晒し行為」以外の何物でもないと思います。

まとめ

免責特権があるからといってやりたい放題の森ゆうこ議員。

自身の質問通告遅延で台風19号が迫る中、官僚に長時間労働を強いた問題を糊塗するために論点ずらしをし、ツイート時刻の捏造までしたあげく、その質問では毎日新聞のフェイク記事(毎日新聞自体が原英史氏が金銭を受け取ったことを意味していないと裁判で主張)を引用して民間人に対して「公務員なら供賄罪である」と名誉棄損行為をし、その行為に対して憲法16条に基づく請願権を行使する署名を恫喝している森ゆうこ議員。

それを放置している国民民主党の玉木代表。懲罰にかけない与党。

永田メール事件以上の人権侵害が行われているのに報じないメディア。

一部のネットメディアしかこの問題を取り上げていない状況は異常と言わざるを得ません。

以上