事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

立憲民主党の「安定的な皇位継承に関する検討委員会」が開催

佳境を迎えている

立憲民主党の「安定的な皇位継承に関する検討委員会」

この中では、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設について「近々、女性皇族が婚姻により皇室を離れることは十分想定され、とりわけ緊急的な課題として議論を急ぐ必要がある」と指摘したうえで、女性皇族の配偶者や子どもに皇族の身分を付与する案についても検討が必要だとしています。

また、旧皇族の男系男子を養子に迎える案については、養子となり得る対象者を確認したうえで、憲法が「法の下の平等」を定めていることを踏まえ「憲法上の規定と整合性を持つかどうかを含めて検討すべき」としています。

立憲民主党は、3月中に党としての考え方をまとめたいとしています。

「安定的な皇位継承に関する検討委員会」の第1回全議員会議を開催 - 立憲民主党

立憲民主党の「安定的な皇位継承に関する検討委員会」で話し合われた内容が報道されています。立憲民主党HPでは、令和5年=2023年12月に 額賀衆院議長が皇位継承のあり方について各党に考え方の取りまとめ促したことがきっかけとあります。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」を受けて構成された有識者会議において令和4年12月に報告書がまとまり、令和5年11月には内閣法制局が「旧皇族男系男子の養子制度は法律で養子の範囲を適切に定める限り憲法14条違反ではない」と答弁しました。

これまでに日本維新の会が令和4年4月に旧皇族の養子縁組案の実現を求める意見書を提出、令和6年1月にはNHK党がそれに加えて悠仁親王殿下の警備強化・御学問所の再興・皇室バッシングに政府が対応・内廷費の見直し・皇室会議の構成への要請をする意見書を提出していました。

女性皇族の配偶者やその子息に皇族の身分を付与する案について

「女性皇族の配偶者やその子息に皇族の身分を付与する案」とは、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとする案に付随して検討されているものです。

メディアでは「女性宮家」と呼ばれることもありますが、政府の報告書では附帯決議の文言の引用以外に「女性宮家」と記述されている所がない点に要注意です。

たとえば、近代までは男性皇族を婚姻相手に選ぶ事も多く、その場合は婚姻後も女性皇族が皇室に残りました。現行の皇室典範でもその場合を想定した規定があります。*1

そのため、例えば【旧皇族の男系男子の皇籍復帰をする+その者と女性皇族との婚姻】という場合には、女性皇族は婚姻後も皇族の身分を維持するということになります。

ただ、果たして立憲民主党が想定しているケースはどうなのかは不明です。

また、その場合であっても配偶者に皇位継承権は付与しないことも考えられます。

「養子となり得る対象者を確認の上、憲法との整合性を検討」について

旧皇族の男系男子を皇族の養子(「天皇の養子」は報告書では外されている)に迎える案については立憲民主党内でも検討すべきという意見が出ているようです。

報道の限りだとこれは「養子の対象者次第では憲法14条の問題になり得る(が、対象が適切ならばそうではない)」という意味であり、何が何でも違憲だ、というものではありません。

ただ、立憲民主党関係者の中には「平等原則違反だから認められない」という強硬意見を持ち、そもそも男系継承を否定する者も居るため、予断を許しません。

さらに、「養子となり得る対象者を確認の上、憲法との整合性を検討」についも注意が必要でしょう。

「〇〇家の〇〇〇〇〇氏」というように具体的な対象者を選定した上で「この者の養子縁組は憲法に沿うかどうかを検討しろ」と俎上に載せるという意味ならアウト。

特定個人に対して失礼にもほどがある。週刊誌に情報が流れて叩かれるかもしれない。

本来は国が制度を決めた上で具体的な対象者にアプローチして「お願いしに行く」のが、旧皇族が皇籍離脱した経緯からして筋。

『ある程度の幅を持つ対象者の範囲』を決めた上での検討なら、OK。

この点、故安倍元総理大臣は旧皇族の男系男子の皇籍復帰を希望しつつ『旧宮家全部の復帰はない』という趣旨で国会答弁したという報道、第三者からの証言もあります。

また、継体天皇や光格天皇の先例に倣い、歴代天皇との血縁の近さを女性皇族を通して確保するという観点からは、旧宮家のうち、明治天皇第6皇女の昌子殿下や昭和天皇第1皇女の成子殿下、明治天皇第8皇女の允子殿下と血脈が繋がっている家の者を対象にするという考え方もあります。

この場合であっても、旧皇族の男系男子が皇籍復帰しても皇位継承権は付与せず、次世代の者から付与されるという考えもあり得ます。

皇室の話は政治的な対立を避けて静謐な環境で手続を進めるべき

安定的な皇位継承の確保に関する懇談会 有識者報告書について政府から説明聴取 自由民主党

皇室の話は政治的な対立を避けて静謐な環境で手続を進めるべきです。

本来的には皇族方が主導権と存在感をもって議論をする制度設計になっているべきです(国民に見えるところで表立ってやれということではない)。閑院宮家創設に貢献した新井白石など完全に臣下の側の関与を無くせということではありませんが。

が、現行制度はそうなっていないがために、各政党での議論や政府の有識者会議、国会での質疑答弁が注目されています。

歴史上の特異点としての現代の皇位継承議論は、佳境を迎えています。

我々一般国民がしなければならないことは、メディアに対する牽制でしょう。

来るべき時に備えて各人が行動様式を身に着けておくべきだろうと思います。

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*1:皇室典範第十二条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。