違法行政を適正化しただけでした。
「政治の力」についての疑問は以下で。
- 紀藤弁護士「統一教会名称変更は3年ルール無視のスピード認証」
- 宗教法人の名称変更で3年ルールを求めること自体が「実態隠し」
- ミヤネ屋8月8日の紀藤弁護士『「周知性要件」が求められる』
- 宗教法人法関係の通達・審査基準
- やはり統一教会から違法の指摘を受けていた文化庁
- 「解釈の変更が成されたこと」は、仮にそうならむしろ正しい:獣医学部新設に関する国家戦略特区の議論と同じ
紀藤弁護士「統一教会名称変更は3年ルール無視のスピード認証」
紀藤弁護士「宗教法人の名称変更は3年かかる、統一教会の2か月は異例のスピード認証」⇒法律上は受理から三月以内 - 事実を整える
紀藤弁護士は「統一教会名称変更は3年ルール無視のスピード認証」と発言していました。
もしも、名称変更の場合に「3年間、新名称での活動の実績を求める」としたら、いったいどうなるでしょうか?
宗教法人の名称変更で3年ルールを求めること自体が「実態隠し」
確かに、宗教法人設立時には実態把握として3年ルールはありますが、それは宗教団体としての実体があることを確認するためであり、また、法人格売買など不適切行為の懸念があったことから求められていました。
しかし、単なる名称変更の場合にそれを求めたらそれ自体が「実態隠し」です。
そもそも単なる名称変更は実態隠しになり得ません。
なぜなら、名称を変更したとしてもそれは世界中で既に1997年から変更されている「家庭連合」への変更だから。頻繁に変更するならそうですが、統一教会にはそういう事情も動機も見当たらない。
また、統一教会=家庭連合の悪質さは、勧誘時に統一教会という名称を隠したり、さらには宗教性すら秘匿しつつ行われるものだから、宗教法人の正式名称がどうあれ無関係に犯行が行われており、対策にはまったくならない。
しかも、宗教法人名は登記されています。
宗教法人法(設立の登記)
第五十二条 宗教法人の設立の登記は、規則の認証書の交付を受けた日から二週間以内に、主たる事務所の所在地においてしなければならない。
2 設立の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的(第六条の規定による事業を行う場合には、その事業の種類を含む。)
二 名称~省略~
(変更の登記)
第五十三条 宗教法人において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
登記上の名称と異なる名称での活動をしていたら、それ自体が不審な行為として問題視されていたでしょう。名称変更に際して「正式には旧名称のままだが新名称での活動3年ルール」を求めていたならば、それは単なる【罠】でしかない。
登記名義と異なる名称での活動を強いることになる「3年様子見ルール」…存在自体が疑わしいのですが、仮にそんな説明をしていた事実があるとすれば、確実に違法です。
なお、名称変更後には登記も変更する必要がありますが、この際は認証された旨を証する書類が必要になるため、認証⇒登記、という流れになります。認証を受けなけば、登記が変わることはありません。
ミヤネ屋8月8日の紀藤弁護士『「周知性要件」が求められる』
さらに、紀藤弁護士は。ミヤネ屋8月8日の放送において『「周知性要件」が求められる』「統一教会はこの要件をみたしていない」と説明していたことが放送されました。
この「周知性要件」はどうやら「教団内部及び対外的に名称変更をすることの周知」という意味のようであり、「3年間様子見ルール」とは別のようですが、奇妙です。
宗教法人法では一定の規則変更の場合に信者その他の利害関係人に対してその旨を公告することを求めていますが、その場合というのは以下の場合です。
(規則の変更の手続)
第二十六条 ~省略~
2 宗教法人は、被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更をしようとするときは、第二十七条の規定による認証申請の少くとも二月前に、信者その他の利害関係人に対し、当該規則の変更の案の要旨を示してその旨を公告しなければならない。
3 宗教法人は、被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更をしようとするときは、当該関係を設定しようとする場合には第二十七条の規定による認証申請前に当該関係を設定しようとする宗教団体の承認を受け、当該関係を廃止しようとする場合には前項の規定による公告と同時に当該関係を廃止しようとする宗教団体に対しその旨を通知しなければならない。
単なる宗教法人の名称変更の場合には求められていません。
それは1997年当時の認証に関する審査基準や事務処理に関する通達でも書かれていません。2015年時はどうかはわかりませんが。
文科省は「2015年は要件が揃ったから認証した」「それ以前は申請自体がなかった」と回答しています。申請自体が無かったというのは、前川氏らによれば受理を拒んでいたから、ということのようですが、文科省としてはそういう説明はしないでしょう。
なお、「個人の名前を変更する際も周知性が求められるから当然だ」という無理解なコメントがSNSでありますが、それは通称を本名にする場合の前提条件の話であって、個人の名称変更のすべての場合に要求されるものではない。
宗教法人法関係の通達・審査基準
1997年当時の改正後の宗教法人法とその実務について書いている以下の書籍を参照。
逐条解説宗教法人法 新訂/ぎょうせい/渡部蓊(平成10年3月10日新訂版初版発行)
知っておきたい宗教法人法 /国立印刷局/高松典雄(平成8年11月1日発行)
以下に名称変更の認証に関連する部分を抜粋しています。
結論から言うと、名称変更の場合に紀藤弁護士の言う「3年様子見ルール」は、文書上は存在していません。
また、前川氏の言う「実態が変わらなければ名称変更は認められない」などというルールも文書としては存在しません。
そもそもここで言う「実態」とは何なのか?規則変更の場合に注意されていたのは、宗教法人としての同一性の継続が認められないような規則変更であり、法人格売買の対象になっていないか等といった観点から審査の厳格化が求められていました。
※追記※
8月10日のアベプラでは前川氏は「世界基督教統一神霊協会」⇒「世界平和統一家庭連合」という名称の変化は、宗教法人としての同一性を失わせるものだ、としています。
その意味するところは明確ではないですが、「キリスト教」が当該宗教法人の根幹であるのに、その名称が消えるような変更は「同一性が無い」と評価する、という主張と思われます。
完全に無理筋です。
形式上、そういうルールは無いし、実質的にみてもキリスト教の宗教法人であっても「基督教」「キリスト教」という名称が付されていない団体はいくらでもあるし、仏教の団体だってそうですからね。
そして、この主張は前川氏が従前主張していた「実態が変わらなければ名称変更は認められない」とは異なり「実態と異なる内容を表すこととなる名称変更」という主張です。後者の方が主張はより詳細なので、従前の主張は適切な表現の選択を誤った、というものと扱うべきなんでしょう。仮に実態が変わったら、別の法人の設立が求められるでしょう。
※※追記終わり※※
むしろ「変わっちゃダメ」だったのが規則変更の認証審査実務でした。
しかし、被包括関係の設定・廃止を伴わない、単に名称変更をするだけではその危険はありません。
つまり、「実態が変わらなければ名称変更は認められないとして認証申請をそもそも受理しなかった」という前川の言っていることが事実ならば、宗務課の担当者レベル・或いは文化庁ぐるみで適法なルールとして存在していないものを存在しているとして騙していたことになり、違法な行為です。
それが統一教会にだけ行われていたのか、日本中の宗教法人を相手に行っていたのかは定かではありませんが。
その説明に従っている限りでは行政指導として問題は生じない。が、訴えたら即座に違法の問題になっていた、ということです。
そして、やはり2015年には問題視されていたようです。
やはり統一教会から違法の指摘を受けていた文化庁
統一教会の名称変更問題。①法律上は申請されたら形式的要件だけ審査して認証する仕組みなので、前川氏が担当課長の時に事前指導で申請させない形をとり、それが長年続いた、②教団側弁護士がこの行政対応は違法だと主張、③担当課長が申請受理を決めたので認証は避けられなくなったという流れ。続く。
— 野村修也 (@NomuraShuya) 2022年8月9日
喩えて言えば、婚姻届を出されると受理しない訳にいかないので、役所が婚姻届を出すなと指導していたようなもの。こうした行政対応は法律に基づかないので、変更を「申請させろ」と詰め寄られた。文化庁は前川氏が始めた行政対応を踏襲するのではなく、申請されても拒絶できる法改正をすべきだった。
— 野村修也 (@NomuraShuya) 2022年8月9日
この情報は野村修也弁護士の8月9日のツイートが初出ですが、2015年当時は「教団側弁護士がこの行政対応は違法だと主張」し、「担当課長が申請受理を決めたので認証は避けられなくなったという流れ」が存在していたようです。
※追記※
この認識は8月10日に行われた統一教会=家庭連合の記者会見上において、田中会長が発言した内容にも見られます。
【ノーカット・ライブ】旧統一教会 田中富広会長 会見|TBS NEWS DIG (2022年8月10日) - YouTube
※※追記終わり※※
行政の違法(文化庁1997~2015)を当時の文化庁担当者+政治の力で清浄化・正常化した、ということでしょう。法治国家として相応しい運用に変えたわけです。
「解釈の変更が成されたこと」は、仮にそうならむしろ正しい:獣医学部新設に関する国家戦略特区の議論と同じ
前川らは「解釈の変更が成されたことが問題」だとしていますが、仮にそういう解釈があったのであれば、それは従前の解釈がおかしいので、当然変更されてしかるべきでした。その変更の経緯がどうであれです。
この状況は、獣医学部新設に関する国家戦略特区の議論と同じです。
あのときも文科省が違法な告示によって獣医学部の新設を止めており、国家戦略特区によって風穴を開けようとしていたところに前川が事務次官だった文科省側が主張立証責任の理解を誤って審査を止めていたが、当時の担当課長に怒られが発生していたことは議事録に残っています。
前川氏に“踊らされる”毎日新聞、「第三の加計疑惑」と化す統一教会報道がなぜ的外れなのか – SAKISIRU(サキシル)
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