事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

日本出版社協議会の安倍元総理国葬反対声明が憲法軽視のデタラメ過ぎた

日本出版協議会

東京弁護士会を超えるデタラメが出てくるとは

日本出版社協議会の安倍元総理国葬反対声明

故安倍晋三元首相の「国葬」に反対し、撤回を求める声明魚拓

1 国葬は、法律に基づいていない。

2 国葬による安倍元首相の「業績」の強制は、表現の自由(憲法21条)に反する。

3 国葬による弔意の強制は、思想・良心の自由(憲法19条)に反する。

これらが理由らしいです。

以下、より詳しく見ていきますが、法律論もデタラメだし、それ以外の事実認識も誤っているわ、不適切な評価の仕方をしているわで、ここまでいいかげんな文章は久しぶりで歯ごたえがあります()

マスメディアが作り出した虚偽のナラティブの集大成という感じです。

憲法軽視のデタラメ過ぎた日本出版社協議会

故安倍晋三元首相の「国葬」に反対し、撤回を求める声明魚拓

このように法令上の根拠のないまま国葬を行うことは法治主義(憲法97条から99条)に反することは言うまでもない。また、それに国費を支出することは「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」(憲法83条)とする財政立憲主義の原則からも許されないと言わざるを得ない。

憲法97条から99条に反する、と言ってますが…

第十章 最高法規
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
② 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

これらの規定が法治主義を表すかはともかく、98条を含んでいるということは、「憲法の条規に反する」の具体的な内容を語らないといけません。どの条文に反してるの?これは国語の問題、論理的な帰結。それが示されていない時点でアウト。

国葬の法的根拠の話は、以下の規定が出発点

第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

それが行政法学では行政が具体的な活動をするにあたっては、いかなる性質の活動について法律の根拠が必要とされるべきか、という視点から解釈論が展開されてきました。

結論としては内閣が国葬を実施すること自体は問題ない。

法的根拠があると言ってもよい。

「法律に基づく行政」についての誤解が多いので、詳しくは上掲記事をみるように。

財政立憲主義?内閣の予備費を認める憲法87条を無視する出版社協議会

第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる
② すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

日本出版社協議会は憲法83条を持ち出して財政立憲主義がどうのと言っていますが、まさに憲法の規定に内閣が予備費を使えると書いてあるのに、それを無視するという憲法軽視の姿勢。

政府は、国葬儀は一般予備費を使う事を想定しているとしています。

「予備費の使い道が本来的に制限されている」という主張をしたいならそれを言わなければ話になりません。

「強行採決」というマスコミ用語と「貧富の差拡大」というデマ

故安倍晋三元首相の「国葬」に反対し、撤回を求める声明魚拓

安倍元首相の在任中の「業績」については、以下の点などで賛否が大きく分かれるところである。

 特定秘密保護法(2013年)、専守防衛の範囲を変更する閣議決定(2014年)、集団的自衛権行使を容認する安保法制(2015年)、共謀罪(2017年)などの強行貧富の格差拡大をもたらしたアベノミクス。森友・加計学園問題・「桜を見る会」問題。自殺者まで出した財務省の森友問題に関わる決済文書の改ざん問題。

強行採決」とは日本のマスコミ用語です。

野党が反対する中で採決することを指します。

このような意味での強行採決は民主党政権時代も多数あり、「3年3カ月の民主党政権は24回だったのに対し、24年12月以降の6年4カ月におよぶ安倍政権では27回だった。第2次政権以降の安倍首相の期間は民主党政権の倍近いのに「強行採決」の数はほぼ同じ、つまり民主党政権が倍のペースで行ったことにな」ります。

【政治デスクノート】民主政権、強行採決のペースは安倍政権の倍だった(2/4ページ) - 産経ニュース

また、マスメディアの用語法であっても、【安全保障法案の参議院での採決】においては強行採決という語は使われませんでした。なぜなら、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の野党3党が、賛成していたからです。

「貧富の格差拡大」という主張は、事実に反しています。

朝日新聞は「非正規雇用の人が全体の4割くらいにまで増えて、アベノミクス以降年収が200万円以下の人が36万人も増えた」と報じていますが、他の事情は隠しています

  1. 非正規雇用者は民主政権末期(2012年10-12月期)から2018年10-12月期までに、306万人も増えている
  2. 全体で見ると年収200万円以下の人の割合は減っている(2%減)
  3. 年収500万以下~700万円以下(401~699万)の層が増加している(2.2%の増加)
  4. 2013年初頭に20%近くもあった不本意非正規率は現在では12%にまで減った
  5. 非正規雇用者の給与、パートの時給も増加
  6. 正規社員も、V字で増加に転じている

高年収の人の割合がどれほど増えたのか定かではありませんが、「年収200万円以下の人の割合は減っている」時点で、「貧富の格差拡大」という評価は少なくとも不当でしょう。高年収割合が増えてる事情も示されない中では、事実誤認と言ってよい。

付言すれば、安倍政権以降、生活保護受給世帯も減り始めました

森友学園・加計学園・桜を見る会、財務省決裁文書改ざん問題

森友学園

・マスメディアのナラティブ:「安倍総理或いは明恵夫人の口利きによる不動産の廉価売買があった」

・実態⇒籠池夫妻の詐欺、名前を出してさも背後に意向があるように振る舞っていただけ+日本の不動産評価方法の標準化不足の問題

朝日新聞など複数のメディアが、黒塗りされているスペースからは到底入り込みそうにない「安倍晋三記念小学校」という名称について、籠池氏がそう言ったから、ということだけで疑惑を報じていました。実際には「開成小学校」でした。

やっぱり開成小学校だった森友学園小学校設立趣意書、不開示は国の「誤った判断」判決 - 事実を整える

加計学園

・マスメディアのナラティブ:「安倍総理が友人の加計孝太郎理事長に便宜供与をした結果、岡山理科大学獣医学部が新設された。まともな審査もしていない」

・実態⇒文科省の違法な告示に基づく獣医学部新設禁止が問題。国家戦略特区の審議については文科省側(前川喜平が事務次官時代)が反証を示すべき「挙証責任」があり、それがなかっただけなのを政府+申請者側が証拠を示していないと真逆の主張が為されていた。

加計学園に対しては、認可・開校後も様々な難癖や事実誤認の風評が広められていました。以下はそのごくわずかの事案です。

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桜を見る会

・マスメディアのナラティブ:「安倍総理の政治資金規正法違反(共謀・教唆)、公選法違反の便宜供与、行政の私物化、隠蔽のためにホテルに嘘をつくよう強要している」

・実態⇒桜を見る会本体については民主党時代も含めた公金支出の在り方や政治倫理の問題、「前夜祭」については安倍側の事務的ミスはあったが(秘書が政治資金規正法違反)、饗応接待ではないため公職選挙法違反ではなく、ホテル側の回答は常識的

桜を見る会問題まとめ 安倍は公職選挙法・政治資金規正法違反の違法か? - 事実を整える

財務省決裁文書改ざん問題

・マスメディアのナラティブ:「安倍総理のせいで近畿財務局の赤木さんが自殺した」

・実態⇒マスメディアが不毛な追及をしたことも影響して財務省本省がびびって近畿財務局に違法な指示をした問題。「赤木ファイル」の公開された一部文書では、森友学園の土地売買に関して安倍氏は無関係と認識していたと推認できる記述が。赤木氏の上司によるインタビューでも否定(ただしNHK以外のメディアは隠蔽)。以下のツイートのスレッド参照。

ところで、(12日0時時点)日本出版社協議会の声明では「決済文書」とありますが、「決裁文書」の間違いですね。

ちなみに、加計学園に関しても「決裁文書の改ざんダー!」(或いは「書き換え」)という話がありましたが、これは聴き取りミス等があったので、元の文書を残したまま、別の同種内容の文書を【再決裁】したものです。これすら改ざんと言うなら、仮に日本出版社協議会のこの誤記が修正したら文書改ざんということになります。

国葬実施は業績評価が封じられ表現の自由が冒される?

故安倍晋三元首相の「国葬」に反対し、撤回を求める声明魚拓

国葬を強行すれば、安倍元首相を賛美するという効果をもたらすことにならざるを得ない。その結果、安倍元首相の「業績」への評価が封じられ、安倍元首相に対する批判への攻撃が助長されるおそれがある。そうなれば表現の自由が冒され、民主主義が危機に瀕することになるのは言うまでもない。

「共謀罪で居酒屋で悪口言えなくなる」と同じレベルの妄言ですね。

100%断言しますが、9月27日に予定されている国葬儀実施後も、安倍元総理の「業績」を否定的に評価する言説は左派メディア・党界隈から止まることは無いです。

「批判への攻撃」とあるが『批判への批判』も当然あるわけです。批判されない自由など存在しません。表現の自由は、相手方による反論の自由も尊重して初めて成り立つ。

「国葬儀そのものが弔意を事実上強要されることに」

故安倍晋三元首相の「国葬」に反対し、撤回を求める声明魚拓

3 葬儀を国が主催することは、遺族など個々人が故人を悼むこととは異なり、国家の意思として当該個人への弔意を表すものである。国民が安倍元首相への弔意を事実上強要されることになりかねない。実際に、吉田茂元首相の国葬(1967年)の際には、競馬や競輪などの公営ギャンブルや娯楽番組の放送が中止され、全国各地で民間企業、学校などには半休を、一般家庭にも黙とうを要請されたという事態が生じている。

 すでに、安倍元首相の葬儀にあたり、弔旗を掲げたり、記帳台や献花台を設置した自治体もある。また、東京都に加え7つの教育委員会が「半旗掲揚」を求める文書を学校に送っていたことが明らかになった。教育機関への弔意の強制は、思想・良心の自由(憲法19条)に反するものであり、政府が国葬を実施すれば、こうした傾向がさらに助長されることが懸念される。

弔意が事実上強要されるとしてもそれは事実上の強要をされる人の周囲の者によるものであって、政府の問題ではない。全国津々浦々で行われる様々な人間による行為について政府が責任を負う謂れは無い。

吉田元総理の国葬の際に番組に放送が中止されたのはその放送局の自由。その他、一般家庭への要請が果たして誰から行われたのはか不明だが、今回の場合、政府としてそういう要請をすることは無い。

自治体が弔旗を掲げることも誰の自由をも侵害しない。

仙台市は羽生結弦選手の凱旋パレードを行い、市役所に日の丸を掲揚したが、日の丸を忌み嫌う者の権利利益を害したと法的に評価されることは100%無い。

「教育機関への弔意の強制は、思想・良心の自由(憲法19条)に反するものであり」とあるが、強制の事実は無いし、「教育機関」という組織に弔旗掲揚の要請をしただけではその組織の思想良心の自由の侵害にはならないのは明らか。当該教育機関には弔旗を掲揚しない選択肢が残されている。なのに、どういう理屈で強制と評価してるのだろうか?「強制」以外の問題を指摘するなら格別、強制と強引な評価をするならばその論理的道筋をつけてほしい。

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