事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

林智裕 『「やさしさ」の免罪符』の脚注リンクとWEB魚拓について

本書の「エビデンス」として、或いは本書を受けた先の「武器」としてネット空間で読者の方々に振るって頂きたい。「やらないよりもやる偽善」。

晴川雨読ブログで「やさしさ」の免罪符の脚注リンク

晴川雨読(せいせんうどく)さんという、マスメディア等の紙面を含めた情報を集めて整理しているブロガーで私の相互フォロワーの方がいらっしゃるのですが、この方のブログにて、『「やさしさ」の免罪符』の脚注のリンクを公開しています。

「やさしさ」の免罪符 暴走する被害者意識と「社会正義」[ 林智裕 ]は電子書籍版であれば脚注にハイパーリンクが付いており、クリック一つで当該URL先に飛ぶことができます。が、晴川さんのブログでのリンクは遷移先の記事タイトルや投稿の文章が表示されている点と、SNS投稿は魚拓リンクも用意している点が異なります。

完全ボランティア:徳間書店や林智裕氏は無関係です

念のため、当作業に関しては私も晴川さんも完全ボランティアです。

著者の林智裕氏や出版社の徳間書店とは一切無関係に行っています。

なお、晴川さんは林さんの前作である【「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か】に関しても脚注リンクを公開していましたので、今回もやるのではないかと思って期待して先に作業を始めていました。

脚注リンク先のWEB魚拓化をTwitter(X)などSNS中心に

『「やさしさ」の免罪符』は、その内容の特性上、インターネット空間における言論を多く参照しています。その対象は匿名の個人の投稿も含まれます。

本書の「脚注」のURLのほぼすべてをWEBリンクが占め、紙媒体が脚注にあるのは1つのみでした。「参考資料」としては数々の書籍等が掲載されていますが、その中にもWEB媒体があります。それ自体が本書の大胆な試みの1つと言えるでしょう。

本書ではリンク先の情報は「2024年3月11日現在のもの」であるとしていますが、これらのリンク先にはGoogleの検索結果やTwitter(現在はX)での検索結果、togetterまとめなど、遷移先の情報の内容が変動するのが当然視されるURLも含まれています。

そのため、本書の機能を完全なものにするためには、検証可能性を担保させるべく、WEB上の「根拠」が仮に消されても追跡可能なようにする必要があると考えました。その結果、今回、Twitter(X)などSNSのリンク先については一般的に削除されやすいので優先的にWEB魚拓を採っています*1。これは単なる「スクリーンショット」による画像化ではなく、特定の時点でのウェブコンテンツがそのまま保存されるものです。

仮にリンク先が削除されていても、Internet Archiveの"Wayback Machine"や"Archive. today"などのアーカイブサービスでURLを打ち込めば、過去の時点の状態で表示されることになります。

本書の電子書籍中でも「当時の投稿は削除されている」としてハイパーリンクされていないものが1つだけありました。これは2011年当時の頃の魚拓が複数残っているので、そちらを覗いてみれば確認ができます。これはTwitter(X)の投稿の事を指していますが、アカウント運営本人が投稿の削除やアカウントの削除をしていなくとも、Xの側から投稿の削除を求めたり強制的にアカウント凍結をする場合もあるという点は要注意です。

政府サイトやマスメディアのWEB記事も容易に消える日本

ページが政府のドメイン(go.jp)の場合でも掲載期間が終了することが容易にあります。その場合は国立国会図書館のインターネット資料保存プロジェクトであるWARPでURL等を入れて検索すればヒットするはずです。

残念ながら、日本では大手マスメディアのWEB記事も削除されるケースがよくあります。記事そのものの削除が無くとも、タイトル変更は日常茶飯事で、本文の変更であってもその旨の注意表記が為されることは皆無です。(その一例 ニ例 三例

記事単体ではなく大規模なドメイン移管や掲載場所の変更が行われた例があります。産経新聞のWEB記事は2016年まではMSN産経ニュースで掲載していたものが、同サイト閉鎖に伴い産経新聞単独のサイトで掲載するようになりました。その影響でMSN時代の記事URL先に遷移しても記事が表示されません。

最近では共同通信のように"thiskijiis"から"nordot"にドメイン移管されたせいで、過去記事を確認することが困難なケースも出てきました。朝日新聞の「WEBRONZA(論座)」のように新記事の更新を終了したことで論者からの掲載辞退の申し出を受け付ける所もあります。

もっと言えば、世の商業WEB媒体には無料公開されていたものですらログインしなければ見れなくなったものがあります。仮にそういう媒体のURLが含まれていた場合、読者による(作者ですら)追検証が不可能になってしまうということになります。Yahooのジオシティのように、ブログサービス自体が閉鎖されることもあります。

『「やさしさ」の免罪符』ではここで挙げたような変更は影響してないと思われますが、もはや「そういうことを避けるために紙媒体のみ参照するべきだ」と言うことができない状況になっています。なぜなら、紙媒体では存在しないWEB媒体の記事によって読者を煽動するメディアが現実に存在しているからです。それは運営者の規模の大小は関係ありません。

本書は、そうした「動き」をも捕捉し得るものとして機能させるべきだと、勝手ながら私は考えています。それは後述するように、林氏のフィールドワークを無駄にしないためにもなると思っています。

『「やさしさ」の免罪符』を支える林氏のSNSフィールドワーク

『「やさしさ」の免罪符』に記載されている内容については、私は林氏のTwitter(X)のアカウントをフォローしていたので、彼のTwitter(X)上のフィールドワークの一部をリアルタイムで見てきました。本書は、その成果が大きく反映されていると証言できます。

他の人からはどう見えていたかはわかりませんが、ここ数年の間だけでも、日本や福島を貶める非科学的で無根拠な主張をするアカウントに対して林氏が反論を試みている場面が何度もありました。

それは単に「破綻した主張をしている者を取り上げて論破」などという枠に留まるものではなく、彼のそれは風評加害者への反撃であると同時に資料収集でもあり、更には記録化でもあったのだと言えます。

単なる反論を超えた、言論空間全体の中の特定の「動き」を把握するための作業、傾向の分析、言語化の試みとその精緻化の実践…

その集大成が本書であり、脚注とそのリンク先を見ることで、本書がどのような背景となる現実を捉えてきた結果なのかを垣間見ることができるでしょう。

WEB魚拓化に際しての考え方と紙媒体が書店に置かれることの価値

正しさの商人とやさしさの免罪符

私は、林氏の前作である『「正しさ」の商人』の紙媒体の書店や図書館での扱いを見てきました。林氏自身も、紙媒体について各地の書店や図書館での所在をチェックするなどしていることをTwitter(X)上で度々投稿していました。

しかし、「風評加害者側」の言説を掲載している書籍の流通に比してあまりにも不均衡な扱いであったと言えます。Amazon等での売上が好調であった結果、4刷まで出版されているにもかかわらずです。

仙台駅前の丸善ですら、発売当初は1冊棚挿し状態でした。

ただ、今年の4月1日には5冊が表表紙を見せて陳列されているのを見ました。

『「やさしさ」の免罪符』も、早く良い扱いを受けられるようにするにはどうすればよいか?晴川さんのブログでの脚注のリンク化や、WEB魚拓化は、その一助になればと思いついてやってみたものです。紙の本を買った人にとって利益になるように。

そして、それを本書の「エビデンス」として、或いは本書を受けた先の「武器」としてネット空間で読者の方々に振るって頂きたい。継続的に参照され続けることで、宣伝になる。そうして購入者が増えれば増刷され、世の中に広まりやすくなる。書店も売りやすくなるでしょう。我々草の根の民の実践の中において「風評加害」「被害者文化」などの用語を使うことで、彼の著作の存在感が増すことにもなる。

脚注のWEB魚拓化程度でどれほどの効果があるのかは未知数ですが、「やらないよりもやる偽善」と、思い立った次第です。

以上:はてなブックマークをお願いします

*1:※特定のサービスの名称である「ウェブ魚拓」ではなく一般名称。「ウェブアーカイブ」がより一般的。