事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

『札幌市、千歳市は昼から断水』というデマはどう広まったのか?

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2018年9月6日の北海道地震に関連して、札幌市や千歳市などで「昼から断水になる」というデマが発生しました。現在も、他の種類のデマ情報がSNS等で拡散され、自治体公式が否定するということも起きています。

デマがツイッター上でどのように発生し、どういう文面だったのかを整理します。

※本記事は特定人の行動を非難する目的ではなく、後学のために流言(デマ)がどのように拡散されていったのかの情報を整理するために第三者のツイートをツイッターAPI機能を利用して引用しています。

※既に削除されたツイートについては把握できませんので、誰が最初にデマを発信したのか?という視点では情報収集していません。

「断水」について

断水とは水道が使えなくなることを指しますが、大きく2つの要因があります。

1つは災害などによって浄水槽、水道管の破損による断水。

もう一つは点検・工事のための人為的計画的な断水。

今回、これらが混同された可能性があります。

地震が起きてから早朝までは、「断水が起こる可能性に備えて水を蓄えておこう」というツイートが数多くなされていましたが、「〇〇市で断水が予定されている」というツイートがなされるのは6時以降のことになります。

「千歳市は昼から断水」について

千歳市は意図的な断水を行っていません。

ただし、「受水槽を設置している集合住宅等においては、自家発電設備が設定されていない場合、停電によりポンプ設備等が稼働しなくなると水道を使用できなくなる場合があります。」とあるように、世帯によっては「蛇口から水が出なくなった」状態になったところがあり得ます。

こちらのページに9月6日のお知らせがありますが、午前7時30分には断水はない旨の情報をUPしています。

一部世帯では水が出なくなったというのは事実だが、それは千歳市が人為的に行った断水ではないということになります。

実際に水が出なくなったというツイート

 

このように、実際に水が出なくなった場所は存在するということです。

「千歳市は昼から断水」のツイート

※archive.isで魚拓を採った後に表示される時間は、日本時間マイナス16時間です。

こちらは「断水 千歳市」のワードを含むもので6時25分までにツイートされたものを検索したときの時系列順に表示した画面です。

これを見ると、現時点で確認できるものとしては、日本時間9月6日6時20分のツイートが最初に「拡散希望」として千歳市が断水するという内容をツイートしています⇒http://archive.is/nr57l
※ただし、これ以前に削除されたツイートがある可能性もあります。

ただ、リツイートをしているのは「拡散RT」というbotであり、このアカウントがリツイートしても拡散力はほとんどありません。

その後、比較的多くリツイートされたものとして⇒http://archive.is/kA4Gwhttp://archive.is/te5Qqhttp://archive.is/HzooS

魚拓:http://archive.is/XAZu4

すべてが「知人から」「実家の家族から」「知り合いから」という伝聞です。中には「自衛隊から」というオーソライズされたもののように語るものもあります。

なお、店舗アカウントも「昼から断水」をツイートしていました。

予測ですが、「断水の可能性に備えて水を蓄えておけ」という忠告が行われたが、受け取った側が「計画的な断水が行われる予定なのか」と解釈してしまったのだろうと考えています。

DMで連絡を取り合っているものは調べられないので分かりませんが、おそらくそのような形での伝達もあったのでしょう。

断水はしないというツイートも早くから存在

これは結果論なのかもしれませんが、この情報が正しかったということになります。

ただ、今後に向けて、「忠告」を頂いたとしてもそれは「判断を保留」する気持ちの余裕を持っておきたいものです。これは、決して「その人を信用しない」ということではないので、相手に対して「それ本当?」と問うのは不毛な行為でしょう。

札幌市の場合

札幌市は災害による緊急的な断水が生じている地域とそうでない地域がありますが、「計画的な断水は9月6日は中止」とあります。

この表現が微妙なのですが、元々は内々に予定していたのでしょうか?

ともあれ、断水地域は徐々に広がっていたり、復旧したりしているようなので、札幌市の広報部が情報発信しています。

計画的な市内全域断水の予定を伝えるツイート

札幌市の場合、単純な「知人から」「友人から」というものは見当たらず、公的機関の名まえを出しているツイートがたくさん見つかります。

ただ、コピペのツイートが上記にもあるように、同じ文言で拡散されているツイートがあれば注意すべきだと思います。

特徴としては昼から、というよりも「〇〇時間後」「〇時〇〇分から」という具体的な数字を出したツイートが多いということです。

私の予想

どうも、札幌市は千歳市とは異なり、比較的権威のある場所がソースとしているアカウントが多いのが気になります。

札幌市が計画的な断水について「ありません」ではなく「中止」と表現していることからは、本当に市の公務員の誰かが計画的な断水の予定、或いはその可能性を示唆したのではないかと思います。

まとめ:公式発表以外は注意

私自身、東日本大震災で友人からのEメールでデマ情報を拡散してしまった経験があります。5分後に後追いで訂正するも時すでに遅し。

また、大正時代の関東大震災関係の情報を漁った経験から、ちょっとしたことからデマが拡散されるということは肝に銘じなければならないと思っていました。

公的機関に属する人間が言っていることを前提としていたら、公式発表でははしごを外された、というようなことは起こり得ます。

そのような中、今回は情報が「断水」という比較的生命身体や治安に影響の少ない事象であったこと、いずれにしろ「備えあれば憂いなし」の事柄であったこと、自治体の公式情報も早くからリリースされていたことから混乱はあまり生じなかったと思います。

私の自戒も込めて、このような情報を耳にした場合、はやる気持ちを抑え「判断を保留」しておくという心の余裕を持っておきたいと思います。

以上

とある弁護士の懲戒請求者へのメッセージ

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魚拓:http://archive.is/nqvLa

ある弁護士が「懲戒請求者」に送付したというメッセージがツイッターに上げられていました。

ただ、これが本当に実在の弁護士から送付されたのかという確認はとってません。

ですが、そうであれば、この内容は非常に問題です。

なぜなら、重大な事実誤認があるからです。

関連記事 

弁護士の懲戒請求者へのメッセージ

全部の掲載はしませんが、4つの画像の内、3枚目と4枚目の一部を引用します。

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私が本当に憤っているのは、貴殿のした懲戒請求が、在日朝鮮人あるいはその子どもたちの権利の平等性を認めていないという点にあります。個人はその本質において平等だというこの社会の前提を壊している…

貴殿の懲戒請求によって在日朝鮮人の子として生まれたがために学ぶ権利を否定された子ども達にであり…

「子どもたちの権利の平等性」「学ぶ権利を否定」

この部分は成り立たない主張です。

懲戒請求者が主張する懲戒事由

この件は960人からの懲戒請求の事案です。大枠は上記記事参照。

懲戒請求者が主張する懲戒事由はほとんどが同じ文言のコピペであり、概ね以下のような内容です。

「違法である朝鮮学校への補助金交付の会長声明に賛同、容認、その活動を推進することは、弁護士の確信犯的犯罪行為である。」

まず、メッセージを送った弁護士が実際に朝鮮学校への補助金交付に賛同していたかは不明ですが、仮にそうであったとしても、このような理由で懲戒請求が認められることは在り得ません。

この主張のうち、なぜ補助金交付が「違法」と言われているのかですが、憲法89条で公金支出規制が規定されているところ、朝鮮学校は私立学校であるからです。日本の私立学校にも補助金は交付されている例がありますが、同じ理由で疑問視されることもあります。

これは判例が無い領域なので、グレーゾーンの話です。

「在日朝鮮人の権利の平等性を認めていない」のか?

もしかしたらこのメッセージの受取人は少し違った主張をしていたのかもしれませんが、ここでは大量懲戒請求の事案を念頭に置いてますので、上記の懲戒事由を主張していたものとします。

朝鮮学校は学校教育法1条に定める高等学校=いわゆる「一条校」ではなく「各種学校」の区分です。

だからといって直ちに補助金交付の支給対象外ということにはなりません(ここは多くの人が勘違いしています)が、ありていに言えば予備校と同じ位置づけです。

予備校に対する補助金支給の例はありますが、権利としてではなく自治体の裁量で決められています。

朝鮮学校に対する補助金が支給されなくとも、それは学校に対する補助金なのであって、そこに通う生徒に奨学金が支給されないなどの話ではありません。したがって、在日朝鮮人を平等に扱っていないということではありません。

なお、朝鮮学校には日本国籍の生徒もごく一部ではありますが通っているようなので、外国人の権利云々の話はあまりするべきではないでしょう。

「学ぶ権利を否定」しているのか?

次に重要なことですが、朝鮮学校に通っている生徒は、他の学校に通う選択肢もあったのです。朝鮮学校で学ぶという権利は保障されており、転向先で学ぶ権利も保障されています。

したがって、「学ぶ権利を否定している」というのはまったくの事実誤認です。

懲戒請求者がこのような判断ができないと踏んで、無理な主張を通そうとしているとしか思えません。

まとめ:他人の権利をダシに使う弁護士

弁護士が朝鮮学校に通う生徒の代理人として、本人の利益のために朝鮮学校への補助金支給は適法であるという主張の一環としてであれば、引用したような主張をすることは当然にして許されるでしょう。

それが代理人弁護士というものだと思います。

しかし、自己が訴訟提起するにあたって、その相手方を論難する場面において朝鮮学校の生徒の人権という無関係なものを、しかも事実誤認を含む形で懲戒請求者へのメッセージとして送るのは非常に不可解です。

「私が本当に憤っているのは」という書きぶりからは、まるで朝鮮学校という特定人格の利益を守りたいがために懲戒請求者に損害賠償請求をしているみたいです(それは決して公益に適う行為ではないし、公益であるという主張も見当たらない)。

代理人でもないのに法的に争いのある他人の事柄に関するものを訴訟提起の主たる要因としているということは、動機に於いてイデオロギーに基づく損害賠償請求であると暴露しているのと同義でしょう。

イデオロギーvsイデオロギーの戦いを始めたということでしょうか?

弁護士という肩書と分かち難い状況でこのような主張をすることは、果たして公益のために弁護士自治を認めたことと合致するのでしょうか?

以上

Twitter検索で邪魔なアカウント・ツイートを消す方法とクマコポーロの使用感

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最近、Google検索よりもツイッター検索を用いて調べものをする人が増えているようです。

ツイッター検索をすると、同じ内容を何度も投稿しているアカウントが引っかかって邪魔なときがあります。このときの対処方法、というと大げさですが、少しはマシになる方法を紹介します。

連携アプリの使用感も紹介します。

ツイッター検索で邪魔なbotが出てくる

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ツイッター検索をかけると、たまにbotが居て邪魔なときがあります。

実はこれ、ミュートやブロックをするとそのときは表示から消えますが、さらに過去に遡って過去ツイートを表示させるとまた登場してきます。

このとき、既にミュートやブロックをしているので、さらに消す方法が無いように思われます。

再度ミュート、ブロックすればツイートは表示から消える

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このアカウントは既にミュート済みですが

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再度ミュートしてみます。

すると

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はい、消えました。

でも、さらに遡るとまた出現してくるんですよね。

ただ、私はツイッター検索で結構過去まで遡ることが多いのでこの方法を知ってると少しはマシだと思います。

連携アプリで検索する:クマコポーロの例

たとえば「クマコポーロ」というアプリでは

従来のTwitterアプリだと、検索の結果にはミュートしているユーザやブロックしたユーザが表示されてしまうものが多いのですが、クマコポーロはきっちりフィルタリングをかけます。

とあるように、最初から邪魔なものは消えて表示されるとのことです。

しかし

また、ネガティブ・フィルタという機能を搭載しているので、ネガティブなキーワードが入ったツイートも表示しません。

デフォルトでこのような制限がかかっています。

なにをもって「ネガティブ」と判定しているのか不明です。

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一応、自分でフィルタを外せるみたいですが…

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なんかよくわからない質問の答えを入れないと解除できません。

ちなみに【17.5】を入力したら外れました。

これって質問が更新されるんでしょうか?

検索結果も、結局はツイッターで検索するよりも表示数が少なくて、私が求める検索手段ではありませんでした。「エゴサに使える」とあるので、そのような使い方だと良いのでしょうか。

まとめ

Yahoo!リアルタイム検索を使うこともありますが、1カ月しか遡れません。

それ以上遡る方法も存在していますが、おそろしく面倒なのでツイッター本家で検索した方がマシでしょう。

結局のところ、自分で手指を動かして検索するのが一番早そうではあります。

以上

テレビ朝日障害者採用ページに検索回避のメタタグ:その理由に「だがちょっと待ってほしい」

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朝日新聞に続き、朝日新聞が筆頭株主であるテレビ朝日の障害者採用ページに検索回避のメタタグ(noindex,nofollow)が記述されていたことが分かりました。

最初の発見者は8月30日にはネット上の私人が発見したことが騒がれていましたが、テレビ朝日に取材した結果を掲載したのは産経新聞が最初だと思います。
※実際には8月28日に発見されていました。

なぜテレビ朝日は障害者採用ページに検索回避のメタタグを付けたのか?

その理由がちょっと不可思議であり、もしかしたらテレビ朝日の回答にはとんでもない矛盾があるかもしれません。

募集期間外に「誤って応募することがないよう」設置?

産経新聞の取材に対して朝日新聞は以下説明しています。

障害者採用が不定期だった頃、募集期間外に「誤って応募することがないよう」設置し、そのままにしていた

だがちょっと待ってほしい、その説明は説得力が無いのではないか?

検索回避のメタタグであってアクセスできないのではない

noindex等のメタタグをつけるのはGoogleで検索されないようにするためであり、インターネット上からそのページの存在を消し去るわけでも、別の方法によるアクセスを禁止することでもありません。

たとえば、採用ページを「お気に入り」登録していたり、URLをどこかに保存しておいた場合にURLを直接入力すれば、noindexがついていようがダイレクトにアクセスすることが可能です。

すると、募集期間外であってもそのページにアクセスできるので、無意味です。

「募集期間外に誤って応募することが無いように」ということであれば、面倒な設定をすることなく、単に「募集期間外」であることを明示すればいいだけの話です。

こう考えると、テレビ朝日の説明は、まったく不可思議です。

テレビ朝日障害者採用ページはポータルサイトからも可

テレビ朝日の障害者採用ページポータルサイト

http://company.tv-asahi.co.jp/contents/saiyo/

また、上記産経新聞の報道によるとテレビ朝日はこうも言っています。

「『テレビ朝日 障がい者 採用』で検索すると、当社の『採用情報』のポータルページがヒットする」とし、「検索を回避しようとしているわけではない」と反論した。

ポータルサイトは上の画像ですが、たしかにこちらに障害者採用ページへのリンクがあります。

だがちょっと待ってほしい、ここで疑問が湧きます。

  1. ポータルサイトを経由させないといけない必然性はあるのか?
  2. 障害者採用ページとポータルサイトが併存してはいけないのか?

企業によっては障害者採用ページは設けず、一般の採用と同じラインで採用するところもありますから、テレビ朝日は別枠であることを示す意味はあるでしょう。

しかし、必ずポータルサイトを経由させないといけない理由としては薄いです。このページから行けるページにIR情報など重要なものがありますが、応募者は障害者採用ページしか見ないということは無いでしょう。

障害者採用ページとポータルサイトが併存することでのデメリットですが、まったく思いつきません。noindexタグ等を使用する理由としてよく言われるのが「質の低いページをクロールさせないことで、検索順位が下がるのを防ぐ」というものがありますが、これは今回には当てはまらないでしょう。

障害者採用ページが「質の低いコンテンツ」かどうかは分かりませんが、仮に質が低いとしても致命的な内容や構成ではないと思われます。朝日新聞ほどの力のあるドメインに対して検索結果に上がらなくなるようなペナルティが課されるとは思えません。現にテレビ朝日はそのような「SEO」の観点からの理由づけを産経新聞に回答していません。
※ここは昔のGoogleの検索アルゴリズムが関係するので軽々には断定できませんが

障害者採用が通年となった後の開設ページにnoindex?

テレビ朝日の障害者採用ページポータルサイト

https://web.archive.org/web/20071031223739/http://company.tv-asahi.co.jp:80/contents/saiyo/

障害者採用ページのInternet Archive上の魚拓の最古のものは2008年9月3日のものです。

こちらのページのソースには既にnoindex,nofollowがついています。

このページ、どうやら2008年の間に初めて作成されたようです。現に、2007年10月31日のポータルサイトの魚拓では、障害者採用は専用ページへのリンクが貼っておらず、ポータルサイトに応募のための情報が載っています。

しかも、障害者採用が通年募集を行っているという文言は、2007年以降ずっと存在しています。

ということはですよ。

【障害者採用が通年になった後に作成されたページに、最初からnoindex等のメタタグがついていた】

ということになるのではないでしょうか?それとも、元々別々に存在していて募集が併存していたが、統一化したということでしょうか?他の可能性はあるのでしょうか?

上記の結論が正しいとすると、テレビ朝日が『障害者採用が不定期だった頃、募集期間外に「誤って応募することがないよう」設置し』と言っていることと矛盾します。

これはどういうことなんでしょうか?

仮に障害者採用専用ページが障害者採用が通年になる前に作成されていたとしても、少なくともこのページは何度も内容が書き換わっていたわけで、その都度メタタグを消し忘れていたということになりますね。

※そのウェブページが最初にリリースされた本当の日時は実はよくわからないという点は注意。

まとめ:だがちょっと待ってほしい

テレビ朝日は産経新聞の取材に対して検索回避目的を否定しましたが、これまで検討してきたように、それは信用に足るものなのでしょうか?

「だがちょっと待ってほしい。果たしてそのような言い分を何ら検証もなく信じるのは軽率ではないか?」

テレビ朝日は財務省の福田事務次官のセクハラ疑惑を報道している際、自社社員に対するセクハラ疑惑が持ち上がりました。

「しかし、だからといってテレビ朝日の説明が嘘であると決めつけることはできないはずだ。」

政府の障害者雇用の情報が水増しされていたことを追及している中で、テレビ朝日の障害者採用ページの検索避けのメタタグが発見されました。

「この件については議論が尽くされておらず、国民の合意が得られているとは言い難い」

筆頭株主の朝日新聞は慰安婦訂正ページに検索回避のメタタグが仕込まれていたことが明るみになったばかりです。

「筆頭株主の性質とテレビ朝日のそれを安易に結びつけることはあまりにも乱暴だ。いまこそ冷静な議論が求められる」

以上

在日特権はあるのか?:「法務省が公式見解」の嘘と特別永住権の根拠

 「在日特権は無いと法務省が公式見解を出した」などという言説がありますが、間違いです。「在日特権の有無」についての考え方と特別永住権の根拠をまとめます。

「在日特権は無いと法務省が公式見解を出した」は嘘

在特会の言う「在日特権」あるの? 記者がお答えします:朝日新聞デジタル

「在日特権は無いと法務省が公式見解を出した」というのは、朝日新聞の取材に対して法務省の担当者が「特権とは思っていません」と話したことが「公式見解」と言われているだけです。理由は「歴史的な経緯と日本での定着性を踏まえた配慮」とのことですが、単なる一担当者のコメントに過ぎず、公式見解にはなりえません

さらにはこの発言を根拠に「公式見解」としてNHKの「クローズアップ現代」という番組で紹介したのが国谷裕子氏です。

これについては、朝日新聞の取材は政府担当者に「お伺い」をしてその回答をそのまま無検証で掲載しただけであり、特権があるかどうかの調査すらしていないという批判が当時から寄せられていました。

ちなみに、この記事は朝日新聞の紙媒体では存在していません。朝日新聞デジタルのみです(おそらくネット上では「在日特権」という用語は知られていたのでそれを否定したかったが、紙媒体だと新たに「在日特権」を知る者が出てくる危険があるため避けた可能性を感じます)。

こんな情報操作会社が聞いただけの根拠で「公式見解」と扱うのはおかしいので、政府答弁としてどうなっているか確認しましょう。

在日特権についての政府答弁

上記の朝日新聞の取材から半年後の質疑でまとまったものがありました。

189 参議院 法務委員会 12号 平成27年05月21日

○仁比聡平君 ー省略ー

この在特会はヘイトをあおるビラの中で、特別永住資格、平和条約国籍離脱者等入管特例法によって認められた資格である、もちろん、他の外国人にはこのような資格は与えられておらず、在日韓国人・朝鮮人を対象に与えられた特権と言える、紛れもない外国人でありながら、日本人とほぼ変わらぬ生活が保障されていると宣伝して、扇動して、この在日コリアンの排斥をあおっているわけですね。入管局長に伺いますが、在特会のこう言うような意味においての特権なのでしょうか。

○政府参考人(井上宏君)

特別永住者と申しますのは、日本国との平和条約の発効によりまして本人の意思に関わりなく日本の国籍を離脱した者で、終戦前から引き続き我が国に在留している者及びその子孫であって、我が国で出生し引き続き在留している者のことでございますが、日本の国籍を離脱することとなった歴史的経緯でございますとか我が国における定着性に鑑みて、いわゆる入管特例法におきまして一般の外国人とは異なる措置が特例として定められたもので、そのような法的な地位でございます。

○仁比聡平君 そうした趣旨で定められているのであるから、これは特権ではないですよね。局長、もう一回。

○政府参考人(井上宏君) この特例措置は、特別永住者の法的地位の安定を図るために法律により特に設けられたものでございまして、このような措置を根拠として日本社会から排斥するようなことは、これはあってはならないことだというふうに理解しております。

「在日 特権」「入管特例法」など で国会の会議録検索をかけてみれば分かりますが、所管官庁である法務省が「在日特権は無い」と公式見解を発したことは一度もありません。また、「在日特権はない」と閣議決定した答弁書も存在していません。

それは当たり前です。

なぜなら、そもそも「特権」という言葉には法的な定義、公的な定義がないからです。なので答えようがありません。したがって「特権はあるのか?」という問いを行政にしても元々無駄な行為だったのです。

特権なのか?特権ではないのか?という問題設定自体、単なる「言葉遊び」に過ぎません。本質的なことは、他の外国人或いは日本人と比して利益を得るような事はあるのかどうか?ということです。

それを特権と呼ぶことが妥当なのかどうかという日常的な価値判断の次元でのみ通用する話です。

小括:「特権」と呼ぶか否かは非本質的で不毛な議論

  1. 「特権」という語の法的公的定義は無い
  2. そのため「在日特権を政府が認めるか?」は最初から不毛な議論
  3. 「政府が在日特権を否定した公式見解がある」は事実と異なる
  4. 「特権ではないと思う」という一担当者の発言を朝日新聞の取材で述べただけ

言葉の表面だけ捉えて「それはあるか、ないのか」と言っても何も始まりません。

具体的な現実を語らなければ無意味です。

現在の特別永住権の根拠

日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書

現在の特別永住者制度は、平成3年1月10日に日韓の外相間で交わされた【日韓外相覚書(日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書)】を受けて制定された【入管特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)】に基づいています。

日韓外相覚書は外務省のHPなどネット上にソースが見当たらなかったので調べたところ、【外務省公表集】に文章が掲載されていました。

日韓法的地位協定とは、1965年6月22日署名の【日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定】を指します。こちらは国立公文書館デジタルアーカイブで閲覧できます。

日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書

日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書 (一九九一年一月一〇日)

覚 書

 日本国政府及び大韓民国政府は、1965年6月22日に東京で署名された日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「法的地位協定」という)第2条1の規定に基づき、法的地位協定第1条の規定に従い日本国で永住することを許可されている者(以下「在日韓国人一世及び二世」という)の直系卑属として日本国で出生した大韓民国国民(以下「在日韓国人三世以下の子孫」という)の日本国における居住について、1988年12月23日の第1回公式協議以来累次にわたり協議を重ねてきた。

 また、大韓民国政府は、1990年5月24日の盧泰愚大統領と海部俊樹総理大臣との間で行われた首脳会談等累次の機会において、1990年4月30日の日韓外相定期協議の際に日本政府が明らかにした「対処方針」(以下「1990年4月30日の対処方針」という)の中で示された在日韓国人三世以下の子孫についての解決の方向性を、在日韓国人一世及び二世に対しても適用してほしいとの要望を表明し、日本国政府は、第15回日韓定期閣僚会議等の場において、かかる要望に対しても適切な対応を行うことを表明した。

 1991年1月9日及び10日の海部俊樹日本国内閣総理大臣の大韓民国訪問の際、日本側は、在日韓国人の有する歴史的経緯及び定住性を考慮し、これらの在日韓国人が日本国でより安定した生活を営むことができるようにすることが重要であるという認識に立ち、かつ、これまでの協議の結果を踏まえ、日本国政府として今後本件については下記の方針で対処する旨を表明した。なお、双方は、これをもって法的地位協定第2条の1の規定に基づく協議を終了させ今後は本協議の開始に伴い開催を見合わせていた両国外交当局間の局長レベルの協議を年1回程度を目途に再開し、在日韓国人の法的地位及び待遇について両政府間で協議すべき事項のある場合は、同協議の場で取り上げていくことを確認した。

1.入管法関係の各事項については、1990年4月30日の対処方針を踏まえ、在日韓国人三世以下の子孫に対し日本政府として次の措置をとるため、所要の改正法案を今通常国会に提出するよう最大限努力する。この場合、(2)及び(3)については、在日韓国人一世及び二世に対しても在日韓国人三世以下の子孫と同様の措置を講ずることとする。
(1) 簡素化した手続きで覊束的に永住を認める。
(2) 退去強制事由は、内乱・外患の罪、国交・外交上の利益に係る罪及びこれに準ずる重大な犯罪に限定する。
(3) 再入国許可については、出国期間を最大限5年とする。

2.外国人登録法関係の各事項については、1990年4月30日の対処方針を踏まえ、次の措置をとることとする。
(1) 指紋押捺については指紋押捺に代わる手段を出来る限り早期に開発し、これによって在日韓国人三世以下の子孫はもとより、在日韓国人一世及び二世についても指紋押捺を行わないこととする。このため、今後2年以内に指紋押捺に代わる措置を実施することができるよう所要の改正法案を次期通常国会に提出することに最大限努力する。指紋押捺に代わる手段については、写真、署名及び外国人登録に家族事項を加味することを中心に検討する。
(2) 外国人登録証の携帯制度については、運用の在り方も含め適切な解決策について引き続き検討する。同制度の運用については、今後とも、在日韓国人の立場に配慮した、常識的かつ弾力的な運用をより徹底するよう努力する。

3.教育問題については次の方向で対処する。
(1) 日本社会において韓国語等の民族の伝統及び文化を保持したいとの在日韓国人社会の希望を理解し、現在、地方自治体の判断により学校の課外で行われている韓国語や韓国文化等の学習が今後も支障なく行われるよう日本国政府として配慮する。
(2) 日本人と同様の教育機会を確保するため、保護者に対し就学案内を発給することについて、全国的な指導を行うこととする。

4.公立学校の教員への採用については、その途をひらき、日本人と同じ一般の教員採用試験の受験を認めるよう各都道府県を指導する。この場合において、公務員任用に関する国籍による合理的な差異を踏まえた日本国政府の法的見解を前提としつつ、身分の安定や待遇についても配慮する。

5.地方公務員への採用については、公務員任用に関する国籍による合理的な差異を踏まえた日本国政府の法的見解を前提としつつ、採用機会の拡大が図られるよう地方公共団体を指導していく。

なお、地方自治体選挙権については、大韓民国政府より要望が表明された。

(署名)             (署名)

中山太郎            李 相 玉

日本国外務大臣        大韓民国外務部長官

                                                   1991年1月10日 ソウル

日韓外相覚書についての各所の報道

当時、海部俊樹総理大臣も訪韓しており、大統領夫妻主催の晩餐会に参加していました。各社の報道は在日朝鮮人の処遇について協議すると報道しており、上記覚書の内容の通り入管関係、外国人登録関係、公務員採用、教員採用、朝鮮人教育について進展があるものと報道されていました。

ただし、朝日新聞は指紋押捺の廃止予想のみ事前報道で取り上げており、割いている紙面の量や見出しの大きさは他社に比して小さなものでした。

どの新聞も平成3年1月10日の夕刊に覚書の全文ないしは要旨を掲載していました。読売新聞が全文掲載であり、朝日・毎日・日経は要旨でした。 

「在日特権」と言われるものの中身について

「特権に定義はない」とは言いましたが、世の中で「在日特権」と言われているものは複数の性質のものが入り混じっています。それについて一応の整理を行っているのが「在日特権と犯罪」の著者である坂東忠信さんです。

坂東さんによると、「在日特権」と呼ばれているものは以下の種類があると言います。

  1. 在日朝鮮民族固有の「特権」
  2. 一般外国人には無い「特別永住権者」としての「優遇」
  3. 日本人にはありえない外国人としての「メリット」と「裏ワザ」
  4. 民族団体の組織力で勝ち取った生活保護受給資格とその扶助

1番は法定の要件を充たしていないのに行われていた朝鮮総連関係施設の固定資産税免除や、朝鮮学校の用地使用に関して事実上、格安の譲渡または貸与がなされていたという事実があります。固定資産税については平成27年に総務省が課税状況を公表して以降、全額免除は無くなりました。

それ以外の項目について、通名を使用することで犯罪者が過去の清算を図ったり扶養控除では架空の被扶養者の申請が可能で、実質税金をプラスマイナス0にできるというものが指摘されています。

詳細は坂東さんの著作を見て頂ければと思いますが、ネットにソースがあるものとして特別永住権者としての優遇について触れていきます。

特別永住権者としての優遇

2番目の特別永住権者としての優遇の例は、退去強制事由が非常に限られているために実質的に強制送還がないこと、 身分証明書の携帯義務が無い事、滞在資格が世襲制などがあります。

また、次に示すように、国籍を変えても身分が血統で保障されているということがあります。

参議院議員有田芳生君提出「特別永住者」に関する質問に対する答弁書】では「いま、日本に特別永住者は何人いますか。具体的な人数を国籍別にお示し下さい。」という質問に対して以下の回答がありました。

法務省の在留外国人統計(平成二十六年六月末現在)によれば、国籍・地域別の特別永住者の数は、スリランカが二人、中国が千七百五十九人、台湾が六百四十八人、インドが五人、インドネシアが八人、イランが九人、イスラエルが二人、韓国・朝鮮が三十六万四人、ラオスが一人、マレーシアが十一人、ネパールが四人、パキスタンが三人、フィリピンが四十六人、シンガポールが三人、タイが十人、ベルギーが四人、ブルガリアが一人、デンマークが三人、フィンランドが二人、フランスが六十七人、ドイツが十四人、ギリシャが八人、ハンガリーが二人、アイルランドが六人、イタリアが十二人、オランダが十三人、ポーランドが二人、ルーマニアが二人、ロシアが八人、スペインが三人、スウェーデンが九人、スイスが十八人、英国が八十一人、ウクライナが一人、スロバキアが二人、コンゴ民主共和国が一人、ガーナが一人、モロッコが三人、ナイジェリアが十五人、エジプトが二人、カナダが百五人、コスタリカが二人、ジャマイカが一人、メキシコが七人、米国が七百二十六人、アルゼンチンが二人、ブラジルが二十八人、ペルーが四人、オーストラリアが百五人、ニュージーランドが三十一人及び無国籍が八十七人である。

特別永住者とは第二次大戦前から引き続き日本に在留し、1951年のサンフランシスコ講和条約の発効に際して日本国籍を離脱した者です。入管特例法により「その子孫」が含まれます。

上記の国籍の中には1951年時点で存在していない国が含まれています(12か国ありますが数例を赤字表記)。つまり、在日韓国・朝鮮人(+αで台湾人・支那人)が外国人と婚姻してその子孫が国籍を変えても、特別永住者の地位を失わない場合があり、しかも相続できるのです。さらに無国籍者も含まれるという事実は衝撃的です。

「特権」の国語辞書的な意味として、このような権利・地位は他に例がなく、「特権」と言っても全く差支えが無いと言えるでしょう。

まとめ

特別永住資格そのもの=歴史的背景から日本国籍離脱者にも永住資格を認めることは、日韓両国の外相覚書とそれを受けた入管特例法という法令に基づくものであり、特権と呼ぶのはどうかと思います。

しかし、特別永住資格があることから派生する具体的な取扱いの差異について論じる際に、特権という言葉を使ってはならないとは思いません。

特別永住資格そのものと、そこから派生した利益の両者を分け、議論の場においては「特権か否か?」という不毛な問題設定は避けるべきでしょう。

以上