事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

レイプ犯罪率1位のオーストラリア議員「日本マンガアニメは性的搾取」:伊藤和子弁護士が裏に?

オーストラリアの議員がマンガ・アニメの年齢制限の分類を変更しようとキャンペーンを貼っており、日本のマンガ・アニメを槍玉に上げているようです。

※「伊藤和子弁護士の影響があった」と断定した部分は訂正し、ABC Newsの記事の内容の紹介にとどめました。

オーストラリア議員「日本マンガアニメは性的搾取」

Anime and manga depicting sexual images of children spark calls for review of classification laws - ABC News魚拓

Two South Australian crossbench politicians are calling for an urgent review of classification laws, after discovering videos and comic books sold in Australia that depict sexual images of children, including rape scenes.

南オーストラリア州の2人のクロスベンチャー(※注:いわゆる中立議員。独立した無所属議員と、少数政党の議員の両方を含めた概念)政治家が、レイプシーンを含む子供の性的画像を描写したオーストラリアで販売されているビデオや漫画を発見した後、分類法の緊急の見直しを求めています。

ABC Newsの上記記事の冒頭には伏見つかさ原作のエロマンガ先生のアニメ画がトップ画像として表示されています。

エロマンガ先生について

On Air | エロマンガ先生 | アニメ公式サイト

2018年に深夜アニメとして放送された作品ですが、もちろんレイプシーンなど存在しません。その画像の直近に上記の文章があるあたり、「狙って」やってますね。

記事中には他にも日本のマンガ・アニメが出てきますが、私の知る限りではいずれもアダルト向けではないものが出てきており、文中で取り上げている性的描写のあるマンガ等と混同させようとしているのが分かります。

文中ではオーストラリアの "Classification Board" = 等級審査委員会(日本で言う映倫のような組織)が、エロマンガ先生をMA15 +(15歳未満の人が閲覧するのに適さないコンテンツが含まれているため、閲覧のためには親または保護者の同伴が必要とされる分類カテゴリ )に認定したとされていますが、「R18」や「X18」ではないので、いわゆる「成人向け」とはみなされていません。

コニー・ボナロス、スターリング・グリフ上院議員が等級分類を変更しようとしている

この記事では上院議員のConnie Bonaros=コニー・ボナロス氏の主張がメインですが、彼女に賛同する者としてStirling Griff=スターリング・グリフ議員の主張も紹介されています。

両議員はオーストラリアにおけるマンガ・アニメの等級の分類を変更するよう活動をしているということです。そのための見せしめに日本のマンガが扱われているのでしょう。

記事の後半ではボロナス氏が「日本の活動家を助けたい」「彼らは外部からの圧力を必要としています」などと主張していることに触れています。

伊藤和子弁護士とコニー・ボナロスが会談と記述

ABC Newsの記事中には伊藤和子弁護士とコニー・ボナロスが会談する様子が写真に収められています。伊藤和子氏の影響が匂わされています。

本人はこのように主張していますが。

伊藤和子弁護士とは、ヒューマンライツナウ(HRN)という組織の事務局長で、慰安婦問題とAV出演強要被害を結びつけた催しを主催していたり、HRNが2017年7月24日に国連自由権規約委員会に英語で出した意見書では「性奴隷制を余儀なくされた」= "Wemen forced into sexual slavery" などと記述していたり、というようなことがありました。

また、「DAYS JAPAN」代表の広河隆一氏の「性加害行為」が明るみになった際には、ヒューマンライツナウのHPから広河氏絡みの活動記録を削除していました。

その理由として「告発された者に社会的名声がある場合、匿名で名乗り出た被害者の信ぴょう性を疑問視したり傷つける事があるため」などと言い訳してました。

OECDレイプ犯罪率1位のオーストラリア

オーストラリアのレイプ犯罪率:日本のマンガアニメが性的搾取?

http://www.civitas.org.uk/content/files/crime_stats_oecdjan2012.pdf

上図はCIVITASというイギリスのシンクタンクのデータの一部です。

国連薬物犯罪事務所の調査データを基に、比較的統計的な処理が似通っているOECD諸国に限って犯罪データを比較したものです。

オーストラリアの人口10万人あたりレイプ犯罪率は91.9です。

OECD諸国の中で断トツの1位となっているのが分かります。

マンガ・アニメを目の敵にする前に、こちらを先にどうにかするべきでしょう。
ちなみに日本は1.1で最低レベルです。

ABCの記事では、子どもの搾取に反対する専門家による「この手のマンガ・アニメは子どもの虐待への入り口である」という主張が紹介されていますが、まったく根拠がない話であるというのはいろんなところで何度も言われている話です(そのように実証したデータが無い上に、日本で性犯罪率が最低レベルであることの理由が説明できない)。

まとめ:現実の被害を救済するべき

  1. オーストラリアのある州の議員で、コンテンツの等級を見直すべきと主張する者が居る
  2. 彼らは日本のマンガ・アニメを槍玉に上げている
  3. オーストラリアはOECD諸国の中でレイプ犯罪率がトップ

オーストラリアは架空の世界の出来事を問題視するのではなく、先に現実の被害を救済するべきでしょう。

以上

ハフポスト「言論弾圧」記事の悪意:安倍総理の発言を印象操作

ハフポスト安藤健二

ハフポスト安藤健二による【内閣官房と自民党、公式Twitterで「羽鳥慎一モーニングショー」を名指しして反論。言論弾圧を危惧する声も】という記事が、悪意に満ちた、本当に低レベルのものでした。

そこで行われている印象操作が典型例だったのでその手口を晒します。

ハフポスト安藤健二の「言論弾圧」記事

当該記事は、内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報のツイッターアカウントが、3月5日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」に反論する連続ツイートをしていることを紹介し、それは言論弾圧であるという趣旨の内容です。

該当ツイートは以下です。

内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報の連続ツイート

これらのツイートは、当該番組内で「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」というコメントがなされたことに対する反論です。

その中で法改正の理由、すなわち現行法の新型インフルエンザ等特措法を適用できない理由を述べています。これは自民党広報も同じです。

ハフポストの安藤氏はこれに対して「言論弾圧」などと書きました。

反論されない権利など存在しないのに何を言ってるのか?

しかも、政府・与党側に対して再反論する機会は無限に存在しており制限されていないのに。

そして、最も異常なのは次の指摘です。

「未知のウイルス」の用語法を誤魔化して印象操作

内閣官房と自民党、公式Twitterで「羽鳥慎一モーニングショー」を名指しして反論。言論弾圧を危惧する声も

また今回、内閣官房と自民党は新型コロナウイルスについて「ウイルスとしては未知のものではない」と投稿したが、安倍首相は2月29日の記者会見の中で、新型コロナウイルスについて「未知の部分がたくさんあります」「未知のウイルス」という言葉で説明していた。

Twitter上では「安倍首相の発言は間違いということ?」「どっちなんや…」と戸惑う声が広がっている。

この部分は、「未知のウイルス」という同じ言葉を使っていても、場面が異なるため意味も異なることを無視している悪質な印象操作です。

一方は「新感染症には当たらない」という法解釈の場面。

もう一方は「新型コロナの性質」という日常用語として言及している場面です。

新型コロナウイルスは新感染症ではない

上記でまとめていますが、ここでも大まかに論じます。

新型インフル等特措法は感染症法上の新型インフルエンザ等」か「新感染症」でないと適用できません。新型コロナに同法が適用されるとすれば「新感染症」に指定されねばなりません。

しかし、感染症法上の「新感染症」とは、感染症法の構造により、『病原体=ウイルスが未だ特定されていないものを意味する』ものと理解するしかありません。

そのため、新型コロナウイルスは既に「コロナウイルス」という病原体が特定されておりゲノム解析も行われているので、感染症法上の「新感染症」には当たらないのです。
その他、病状の重篤性などの要件も満たしていないと考える他ない

新型インフル特措法を適用しない文脈での「未知のウイルス」

内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報は、「なぜ新型インフル等特措法を適用しないのか?」という法解釈の文脈の元で「未知のウイルス」という用語を使っています。

それはつまり、感染症法上の「新感染症」には該当しない、既にコロナウイルスという病原体が特定されている、という意味で使っているということが明らかです。

これに対して安倍総理はそういう文脈ではありません。

安倍総理は新型コロナの性質を述べる文脈での「未知のウイルス」

ハフポスト安藤氏の上記記事でテキストにハイパーリンクが付けられている「安倍総理の未知のウイルス発言」のリンク先は以下です。

令和2年2月29日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 令和2年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

今回のウイルスについては、いまだ未知の部分がたくさんあります。よく見えない、よく分からない敵との闘いは容易なものではありません。率直に申し上げて、政府の力だけでこの闘いに勝利を収めることはできません。最終的な終息に向けては、医療機関、御家庭、企業、自治体を始め、一人一人の国民の皆さんの御理解と御協力が欠かせません。

省略

今回のウイルスについては、いまだ未知の部分が多い中、専門家の皆様の御意見も踏まえながら、前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります。

省略

未知のウイルスとの闘いはとても厳しいものであります。その中で、現場の皆さんはベストを尽くしていただいているものと思います。同時に、それが常に正しい判断だったかということについて、教訓を学びながら自ら省みることも大切です。私自身も含めてですね。

「未知」という単語が登場するのは上記3か所です。

安倍総理が「未知のウイルス」という言葉を使っているのは、新型コロナウイルスの性質について述べている場面であって、法解釈の場面ではありません。

よって、安倍総理の発言と内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報のツイートで同じ「未知のウイルス」という言葉が使われていたとしても、別の意味であるということは明らかです。

「オールラウンドエディター」の安藤氏がこのことに気づかないハズが無いでしょう。

気づかなかったとしたら、これまで何を見てきたのか?という話です。そんなことはあり得ないでしょう。

「内調」と自民党広報のツイートが分かりにくいのであれば、それを一般人にも分かりやすいように説明したり、逆に「内調」らに対して「分かりにくい」という筋で批判するべきです。

メディアが一般人の混乱に乗じて更なる煽動をするのは見るに堪えません。

法律用語と日常用語の差異を利用する「悪意」の煽動・印象操作

このように、法律用語と日常用語の差異を利用する、或いは両者を混同させることによる煽動・印象操作はしばしば行われています。

例えば「テロ等準備罪」の議論過程においても、「一般人に適用されるのか?」というくだらない質問がありました。「法律用語である構成要件の主体たる者」としては一般人が対象ではないが、私達が普段素朴な表現として使っている「一般人」はテロ等準備罪の対象になり得るというだけの話なのに、両者を混同して印象操作している例がありました。

これをやってる記事は100%「悪意」(法律用語・日常用語、両方の意味で)なので、到底信用できないものと判断するべきです。

以上

新型コロナウイルスの水際対策強化をわかりやすく整理:入国拒否・制限、ビザ効力停止、検疫の強化、到着空港の限定

水際対策の強化をわかりやすくまとめ:発給済み査証の効力停止・入国拒否・検疫強化・到着空港の限定

3月6日に決定された新型コロナウイルスの水際対策強化を簡単に整理します。

新型コロナウイルスの水際対策強化を簡単に整理

新型コロナウイルス感染症対策本部:水際対策の抜本的強化

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020305.pdf

新型コロナウイルス感染症対策本部の資料で簡単に整理できます。

  1. 入国拒否対象地域の不断の見直し(法務省)
  2. 検疫の強化(厚生労働省)
  3. 航空機の到着空港の限定等(国土交通省)
  4. 査証の制限等(外務省)
  5. 水際対策に関する日中韓を始めとする国際協力の強化

それぞれ所管官庁が異なるのが分かります。

この中で「入国拒否」に関しては誤解もあるので詳しく見ていきます。

なお、これは新型コロナに感染した患者や無症状病原体保有者、疑似症患者であるかを問わず、まったくそういう者ではない健康な者に対しても行う措置です。

「強制入院」は感染症法に基づいており、それは患者や無症状病原体保有者、疑似症患者に対して行われているものです。

なお、新型インフル特措法を改正して新型コロナウイルス特措法的に適用することが検討されていますが、この場合には患者等でなくとも住民に対して一定の権利制限ができるようになります。

法務省所管事項の閣議了解:入国禁止=入国拒否は一部のみ

閣議了解:入国禁止、入国拒否

http://www.moj.go.jp/content/001316545.pdf

法務省:新型コロナウイルス感染症に関する取組について 出入国在留管理庁

中華人民共和国等で感染が拡大している新型コロナウイルス感染症に関して,3月5日の新型コロナウイルス感染症対策本部による公表及び3月6日の閣議了解を受け,3月7日午前0時から,当分の間,大韓民国慶尚北道慶山市,安東市,永川市,漆谷郡,義城郡,星州郡及び軍威郡並びにイラン・イスラム共和国コム州,テヘラン州及びギーラーン州に滞在歴がある外国人についても,特段の事情がない限り,上陸拒否の対象となります。

この閣議了解では、韓国とイランの全域について、法務大臣が必要と判断すれば入管法5条1項14号の「日本国の利益を害するおそれのある者」とするとあります。

少しわかりにくいですが、これを受けて法務省傘下の出入国管理庁は韓国とイランの上記特定の都市に関しては上陸拒否=入国拒否をするという措置を講じたということです。

決して韓国とイランの全域を入国拒否するとしたわけではありません。

国土交通省:中韓からの航空機到着空港の限定、船舶の旅客運送停止

危機管理:新型コロナウイルス感染症に関する国土交通省の対応 - 国土交通省

中韓からの航空機到着空港の限定、船舶の旅客運送停止については国土交通省新型コロナウイルス感染症対策本部(第7回)(2020年3月6日)にあるように総理大臣指示に基づいているようです。

「中韓からの渡航者への要請」は検疫の強化の話

 

閣議了解:入国禁止、入国拒否

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000604884.pdf

水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)厚生労働省

3月9日午前0時以降に、中華人民共和国又は大韓民国から来航する航空機又は船舶で日本に入国される際には、検疫法での隔離・停留が必要な場合のほか、検疫所長が指定する場所(御自宅等)において14日間の待機をお願いすることとなります。
また、御自宅等へは公共交通機関を使わず、自家用車でのお帰りをお願いすることとなります。

「14日間の待機を要請」というのは検疫の強化として、入国した者をどう扱うかという話です。これは強制力を伴った措置ができませんから、任意の協力を依頼するということです。

要するに武漢からのチャーター機で帰国した国民に対して承諾した方のみホテル等で隔離していた(実際にはほぼ全ての方が自主的に隔離に協力)ことと同じことを、今度は中韓からの渡航者に対しても行うということです。

これだけを見ると「手ぬるい!」と思うかもしれませんが、既に発給済みビザの効力停止、入国拒否地域の拡大、到着空港の限定と旅客船舶の禁止をしているので、問題ないでしょう。

法務省の発給済みビザ=査証の効力停止

法務省の発給済みビザ=査証の効力停止については別途まとめました。

なお、「数次ビザ」もちゃんと対象になっています。

まとめ

中韓からの外国人が自国から日本に入国するまでの間に、感染症対策強化がどう関係するのかを時系列で示すと図のような流れになります。

すなわち、①発給済みビザの効力停止によって中国人、韓国人は特段の事情が無い限り実質的に日本入国ができなくなり、②入国拒否対象地域の拡大によって当該地域からの外国人は日本入国が禁止され、③中韓からの到着空港限定・船舶の旅客運送停止によって入国手段は著しく制限され、④入国できても14日間の待機要請が為される、ということです。

協力強化は割愛します。

以上

新型コロナウイルスによる中国韓国のビザ(査証)効力停止の法的根拠

中国韓国のビザ(査証)効力停止の法的根拠

新型コロナウイルスの感染症対策において、水際対策のために中国人と韓国人に発給したビザ(査証)の効力が停止されましたが、その法的根拠は何でしょうか?

中韓の数次ビザも含めた査証の効力停止の閣議了解

新型コロナウイルス感染症対策本部:水際対策の抜本的強化

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020305.pdf

新型コロナウイルス感染症対策本部において決定された水際対策の強化策のうち、最も強力なのが査証(ビザ)の制限です。
※「入国拒否」については今の所中韓の全域ではなく、現段階では、法務大臣が必要に応じて全域に適用できると確認したに過ぎない。そちらを含めた「水際対策の強化」全般は以下参照。

国家安全保障局が提出した上記資料では、中韓所在の領事館等で発給された一次・数次ビザ(一度発給されれば数年単位で何度も有効なビザ)の効力停止と、香港マカオ韓国への査証免除措置の停止が書かれています。

こちらは外務省が所管となっています。

査証=ビザの所管省庁が外務省である法的根拠

査証の発給に関しては入管法に規定があります。

出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)

第三章 上陸の手続
第一節 上陸のための審査
(上陸の申請)
第六条 本邦に上陸しようとする外国人(乗員を除く。以下この節において同じ。)は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。

査証=ビザの所管省庁が外務省である法的根拠は外務省設置法にありました。

外務省設置法

(所掌事務)
第四条 外務省は、前条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
省略
十三 査証に関すること

今回のビザ=査証の効力停止については外務省HPに掲載されています。

3月5日 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の抜本的強化:査証の制限等について|外務省

3月6日 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の抜本的強化:査証の制限等について(追加情報等)|外務省

ビザの発給にあたって、何かルールはあるのでしょうか?

ビザ(査証)の性質と発給基準

ビザ・上陸許可について|外務省

ビザは、日本国大使館又は総領事館の長が、外国人の所持する旅券が真正であり、かつ、日本への入国に有効であることを確認するとともに、発給するビザに記す条件の下において、その外国人の日本への入国及び滞在が適当であるとの推薦の性質を持つものです。また、ビザを所持していることはあくまでも「出入国管理及び難民認定法」上の上陸のための要件の一つであり、入国を保証するものではありません。

査証とは「推薦」の性質であり、入国=上陸とは別概念であることが書かれています。

ビザの原則的発給基準|外務省

原則として、ビザ申請者が以下の要件をすべて満たし、かつ、ビザ発給が適当と判断される場合にビザの発給が行われます。

(1)申請人が有効な旅券を所持しており、本国への帰国又は在留国への再入国の権利・資格が確保されていること。
(2)申請に係る提出書類が適正なものであること。
(3)申請人が日本において行おうとする活動又は申請人の身分若しくは地位及び在留期間が、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)に定める在留資格及び在留期間に適合すること。
(4)申請人が入管法第5条第1項各号のいずれにも該当しないこと。

入管法5条1項各号は査証発給ではなく入国拒否の規定ですが、同様の考え方をするようです。新型コロナウイルスに関連して適用されているのは14号のことを指します。

出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)

5条 省略

十四 前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

さて、「日本国の利益または公安を害する(行為を行う)おそれがある」の判断については何か基準があるのでしょうか?

というのは、行政機関における何らかの許可等については、何かしらの審査基準が定められているのが通常であるからです。

また、「発行済みビザの効力停止」というのは対象国の全域からの入国拒否とほぼ等しい強烈な措置です。

そのような措置を取ったのは何らかの基準に基づいているのか?という疑問が湧いてきます。

審査基準・拒否理由等を提示する義務の適用除外

実は、行政手続法3条1項10号で「外国人の出入国に関する処分」については,審査基準・拒否理由等を提示する義務の適用除外としています。

行政手続法

(適用除外)
第三条 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。
省略
十 外国人の出入国、難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導

「次章から第四章の二までの規定」の関係する主要なものをピックアップします。

行政手続法

第二章 申請に対する処分
審査基準
第五条 行政庁は、審査基準を定めるものとする。
2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。

省略

理由の提示
第八条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。

省略

第三章 不利益処分
第一節 通則
処分の基準
第十二条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

要するに外国人の出入国に関する事項である査証については外務省の広範な裁量にまかされており、誰に対して査証を発給するか、既に発給された査証の効力を停止するか否かは外務省=日本国の意思によって決定できるということです。 

外国人の憲法上の権利と出入国

最高裁大法廷判決 昭和53年10月4日 昭和50(行ツ)120(マクリーン事件判決)

思うに、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。しかしながら前述のように、外国人の在留の許否は国の裁量にゆだねられ、わが国に在留する外国人は、憲法上わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求することができる権利を保障されているものではなく、ただ、出入国管理令上法務大臣がその裁量により更新を適当と認めるに足りる相当の理由があると判断する場合に限り在留期間の更新を受けることができる地位を与えられているにすぎないものであり、したがつて、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であつて在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。

憲法上、「日本国入国前の外国人が日本国に入国する権利」などというものは存在しないので、「人権との調整」などという契機も存在しませんから、国家がその領域を統治するために必要なあらゆる判断が可能であるということでしょう。

冒頭の新型コロナウイルス感染症対策本部の資料が国家安全保障局から提出されているのは示唆に富みますね。

出入国管理及び難民認定法逐条解説改訂第4版 [ 坂中英徳 ]でも以下書かれています。

240頁

査証を発給するかどうかは、条約又は確立された国際法規に反しない限り、日本政府の裁量に属する事項であって、たとえこれを拒否したとしても、違法の問題が生じる余地はない

「違法の問題が生じる余地はない」との言葉を逐条解説で見るのは初めてでした。

まとめ

中国韓国のビザ(査証)効力停止の法的根拠は「査証事務の所管が外務省であると外務省設置法に規定されているから」ということに尽きるということになるんじゃないでしょうか。

その前提として憲法上の外国人の権利についての理解があり、行政手続法で外国人の出入国については審査基準等の定めが除外されているということから国家の裁量が裏付けられているということでしょうか。

以上

DHC山田プロデューサーが問題視した青山繁晴ブログの投稿が明らかに

DHC山田プロデューサーが問題視した青山繁晴ブログの内容

青山議員ブログが繋がるようになり、DHC山田プロデューサーが問題視した青山議員ブログの内容が確定できました(当該エントリはキャッシュで見れていたが、もっと新しいブログの内容の可能性もあった)ので中身を見ていきます。

DHC山田プロデューサーが問題視した青山繁晴ブログの投稿

DHC山田プロデューサーが問題視したのは、2020-03-04 23:06:30 に投稿された「会えることと、会えないこと」というタイトルのエントリとしか考えられません。

会えることと、会えないこと|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road

▼3月9日の月曜にも、予算委員会が開かれます。
 予算委員のぼくは、審議に参加せねばなりません。
 これまでこうした場合は、番組からの要請もあって、前半に参加し、後半には別のゲストが来られました。ケント・ギルバートさんが多かったですね。
 素晴らしい発言と活躍をされているケントさんと、生放送のど真ん中で交代するのは、むしろ愉しかったです。

 そのため、政策秘書さんが今回もそのように番組にお話をしたら、突如として、「番組の前半が後半と違うのは困る」と言われて、それ以上の説明は何も無かったそうです。
 困惑した政策秘書さんから、ぼくにそのように連絡がありました。月曜の放送でご一緒する一平ちゃんや、岡本ディレクターはおそらく、こういう経緯をご存知ないだろうということでもありました。

以下省略

突如として、「番組の前半が後半と違うのは困る」と言われて、それ以上の説明は何も無かった

この部分が山田プロデューサーが問題視した表現でしょう。

改めて削除された内容を確認します。

削除された3月9日出演休止についての山田プロデューサーの声明

【青山繁晴さんの3月9日出演休止について】 | DHCテレビ

青山繁晴さんのブログをきっかけに当番組及び他の出演者への見当違いな憶測や批判が起こっておりますので、番組プロデューサーとしての見解を申し上げます。
まず、青山さんのブログに書かれておりました「番組の前半が後半と違うのは困る」というのは本当です。
今までもこのような場合にはケント・ギルバートさんや上念司さんなどレギュラー出演者の皆様にご協力を頂いておりました。
ただし、今回の件で今までとは違う対応をしたのには理由があります。
本来であればこうしたキャスティングにまつわる事情などは個人的なことも含まれますので公開するようなことではありませんが、他の出演者に迷惑がかかっておりますので、あえて公表したいと思います。

中略

虎ノ門ニュースは番組開始当初から青山さんに随分お世話になってきました。
そこは本当に感謝しておりますので、昨年の件をもって番組をお辞めいただくとか、そういうことは申しません。
しかし青山さんのブログでは、このような経緯に一切触れることなく、一方的に番組が強権的であるかのような言い方をなされたのは看過できません。

 「番組の前半が後半と違うのは困る」

「今回の件で今までとは違う対応をした」

これはつまり、【青山議員が予算委員会に出るときは番組前半に青山議員が出演し、後半は別のコメンテーターの方が担当するという従前の流れがあったが、今回は青山議員の出演は休止とし、前後半通して別の方が担当するようにした】ということを意味するのだと分かりました。

先に私信を公開したのは青山議員

ということで、私信を公開したのは青山議員が先であり、山田プロデューサーはそれに対抗するためにやむを得ず青山議員とのやりとりを公開したということになります。

未だに今回の措置の理由が不明

やはり、山田プロデューサーの今回の措置の「理由」が不明です。

削除された文章にあるのは、今回の措置を取るに至った「背景」に過ぎず、従前の扱いとは異なる番組編成にしたことの合理的な理由にはなっていません。

ミスコミュニケーションを公にする議員って…

さて、DHCと青山議員のやり取りはミスコミュニケーションが介在していると思われますが、それをワザワザブログにUPする青山議員の考え方には改めて疑問を感ぜざるを得ないと言っておきます。

通常であれば、単に青山議員はブログに「予算委員会に出席するため従前までは前半出演だったが今回は別のコメンテーターの方が前後半出演となりました」とだけ言うべきでしょう。
※この部分は「予算委員会に出席するため従前までは前半出演だったが今回は後半出演となりました」という記述となっていましたが「別のコメンテーターの方が前」を挿入して訂正します

それとも、他に意図があるのでしょうか?

合理的な青山議員を措定する

青山議員が合理的な思考・行動をすると措定するとすれば、青山議員が敢えてミスコミュニケーションをブログに公にすることには意味があるハズです。

  • 「みえざる力」がDHCの番組人事に常態的に介在していることを伝えたかった
  • 番組側から青山議員を「切る」ように仕向けさせたい

邪推に過ぎませんが、こう考えないと常識では考えられないことを行っているので。

以上

定年延長報道の錯綜:検察庁法改正案ではなく国家公務員法改正案か

定年延長:国家公務員法、検察庁法、65歳

「自民党の6日の総務会」における「定年延長」に関する報道が錯そうしています

共同・産経・東京「検察庁法改正案」

検察官定年延長、自民了承せず 閣議決定に異論も - 産経ニュース⇒「検察官の定年63歳を65歳へ引き上げる検察庁法改正案」

検察官の定年延長、自民了承せず - 共同通信⇒「検察官の定年63歳を65歳へ引き上げる検察庁法改正」

東京新聞:検察官定年延長に異論 自民、改正案の了承見送り:政治(TOKYO Web)⇒「検察官の定年六十三歳を六十五歳へ引き上げる検察庁法改正案」

毎日・テレ朝「国家公務員法改正案」

自民、国家公務員定年引き上げ改正案の了承見送り ベテラン議員から異論噴出 - 毎日新聞⇒「国家公務員の定年を現行の60歳から65歳へと段階的に引き上げる国家公務員法改正案

毎日新聞の消されたツイートは見つけられませんでしたが、おそらく「検察庁法」と書いていた可能性があります。

テレ朝News! 国家公務員“定年延長”法改正案 引き続き議論へ⇒「国家公務員の定年を65歳に延長する改正案」

毎日は(テレ朝も実質的に)「国家公務員法改正案」と書いています。

NHK「検察官などの定年を引き上げるための法案」

検察官などの定年延長法案 了承見送り 自民総務会 | NHKニュース⇒「検察官などの定年を引き上げるための法案」

絶妙な表現ですね。

なお、時事通信、朝日新聞のネット版では関連記事を見つけられませんでした。

国家公務員の定年を65歳にする法案は2017年から

公務員定年を65歳に 政府検討、19年度から段階的に: 日本経済新聞 2017年9月1日

政府は現在60歳の国家公務員と地方公務員の定年を65歳に延長する検討に入った。2019年度から段階的に引き上げる案を軸に調整する。

国家公務員の定年を65歳にする法案は遅くとも2017年から検討されていました。

ですから、今現在検討されている法案も国家公務員法改正案のハズです。

第200回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 令和元年11月6日

○武田国務大臣 行革推進本部から、定年引上げにとどまらず、能力・実績主義の徹底等も含めた公務員制度改革の徹底について提言を受けたということは承知をいたしております。
 人事院の意見の申出におきましては、複雑高度化する行政課題に的確に対応し、質の高い行政サービスを維持していくためには、六十歳を超える職員の能力及び経験を六十歳前と同様に本格的に活用することが不可欠となっており、本院としては定年を段階的に六十五歳に引き上げることは必要と考えておるということも、我々は承っておるところであります

まとめ「検察庁法改正案」は間違いの可能性

  1. 国家公務員法改正案・検察方法改正案・検察官などの定年延長法案という表現で割れている
  2. 遅くとも2017年から国家公務員の定年を65歳にする法案は検討されていた
  3. 直近の国会でも国家公務員法の改正が念頭にあった

「検察庁法改正案」は間違いの可能性が高いです。

ただ、今後は国家公務員の定年が65歳になることと連動して検察官の定年の引き上げをする可能性があります。

以上