事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

安倍政権、銀行口座開設時に通名のみ不可にしていた?在留カード・特別永住者証明書での本人確認について

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「安倍政権が銀行口座開設時に通名のみでの登録を不可能にしていた」という言説を相当数見つけたのですが、一定の予測込みで制度を振り返ります。

安倍政権、銀行口座開設時に通名のみ不可にしていた?

「安倍政権が銀行口座開設時に通名のみでの登録を不可能にしていた」というのは、本当でしょうか?

以下の重要な流れから調べていきました。

  1. 外国人登録原票記載事項証明書(外国人登録証明書)が廃止され、外国人在留者には「在留カード」が、特別永住者には在留カードに代わる特別永住者証明書が交付されるようになった
  2. 在留カード・特別永住者証明書には通名(通称)は不記載
  3. 銀行口座開設時に「在留カード等」が事実上必須になった
  4. よって、これにより銀行口座開設時には通名は不可能になったのではないか?

かつて存在した外国人登録証明書は本名に通称を併記することが可能でしたが、通称のみでの登録は不可。

なお、2010年頃の銀行口座開設の手続としてはメガバンクですら公共料金請求書+各種健康保険証などのみでの口座開設が可能でした。この場合には通称=通名のみでの口座開設ができそうです。

健康保険証は通称名での表示が可能だったようで、過去には悪用されたケースが報道されています。

http://kosakaeiji.seesaa.net/article/160528778.html

平成12年9月4日 読売新聞(関西)
外国人登録証の通名が容易に変更できることを悪用して名前の違う保険証を約30枚取得、その名義で大量の携帯電話を買って売りさばいていた、として京都府警は3日、京都市の在日韓国人の男(32)について詐欺容疑で逮捕状を取った。男はパチンコ店などで顧客を広げ、1台5万円程度で売却を繰り返していたとみられる。

複数の通称名の悪用による犯罪は他にも:http://archive.is/0PSXv

外国人登録証明書・外国人登録制度の廃止

特別永住者の皆さんへ 2012年7月9日(月)から 特別永住者の制度が変わります! 法務省入国管理局

現在お持ちの外国人登録証明書は,施行日(2012年7月9日(月))以降の一定期間は特別永住者証明書とみなされます

外国人登録証明書には通称が記載されているケースもありましたが、これが無くなりました。なお、地方自治体における通称登録については継続されている所がある。

参考:通称の記載または削除 大田区

 外国人住民の方は、本国名とは別に日常的に使用している日本式の名前を通称として登録することができます。
 通称は、住民票には記載されますが、在留カード及び特別永住者証明書には記載されません。

第二次安倍政権は2012年12月からであり、2009年7月改正(麻生政権下)2012年7月9日施行(民主党政権下)の入管法改正は、これを「安倍政権の功績」と言うのは厳しい。

よって、ここでは銀行口座開設時の在留カード必須化の実態についてまとめます。

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策

法務省:外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策 平成 30 年 12 月 25 日】において、省庁横断的に金融機関における口座開設の際に在留カードによる本人確認等の明確化の取組が方針として打ち出されました。

全ての金融機関において、新たな在留資格を有する者及び技能実習生が円滑に口座を開設できるよう、要請する。また、多言語対応の充実や、口座開設に当たっての在留カードによる本人確認等の手続の明確化など、銀行取引における外国人の利便性向上に向けた取組を行う。〔金融庁、法務省、厚生労働省、農林水産省〕《施策番号 43》

特別永住者証明書は在留カードに代わるものであるため、特別永住者証明書もイコールで見るべきでしょう。

しかし、「手続の明確化」とだけあって、必ずしも在留カードの提示を求める記載ではないのが気になります。

各金融機関における口座開設手続の案内

口座を開設される外国人のお客さまへ-ゆうちょ銀行

「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に伴うみずほ銀行の対応方針 | みずほ銀行

「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」を踏まえた三井住友銀行の取組について : 三井住友銀行

口座開設時の本人確認書類 | 三菱UFJ銀行

金融機関言及の金融庁ガイドラインには在留カードでの本人確認を必須にする旨の明言はありませんが、それを受けて各金融機関において口座開設の際には在留カード必須である旨(外交官など極例外を除く)を記述するところが出現するようになりました。

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の記述も、その一環と言えるでしょう。

また、本人確認の徹底については携帯電話契約にも言及されるようになりました。

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)令和元年 1 2 月 2 0 日 外国人材の受入れ・共生に関する 関係閣僚会議

在留外国人による携帯電話の契約及び利用の円滑化等の観点から、日本語の話せない外国人が一律に契約を阻害されることのないよう、携帯電話事業者等における多言語対応に向けた取組及び在留カードによる本人確認手続の円滑化に資する取組の推進に引き続き取り組む。〔総務省〕《施策番号 79》

なお、個々の銀行においてはもっと早い段階から在留カード・特別永住者証明書を必須としていたところもあります。たとえば外国籍の方の口座開設について | 新生銀行魚拓)では2014年7月1日以降にこのような運用となることを宣言しています。

※ということは、外国人登録証明書廃止のタイミングともズレがあることに。新生銀行のURLからは2014年5月28日のリリースと思われる。

外国人の方の本人確認資料が変わります|ジャパンネット銀行

2012年7月9日より「住民基本台帳法の一部を改正する法律」(2008年7月15日公布)が施行され、外国人の方にも住民票が作成されるようになります。(外国人登録原票記載事項証明書は廃止)
これに伴い、当社の手続きに必要な外国人の方の本人確認資料も変更となります

2012年7月9日以降は、住民票など他の当社所定の本人確認資料をご用意くださいますようお願いいたします。

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインと金融庁の方針

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マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題(2019 年9月)2019 年 10 月 金 融 庁

 金融庁は、外国人顧客による金融機関等の利用を円滑にするため、次のような取組みを行った。
・ 預金取扱金融機関及び資金移動業者に対して、外国人による円滑な口座開設等(多言語対応の充実)、在留カードでの本人確認が可能である旨等の手続の明確化を要請
・ 預金口座の開設、海外送金の利用や犯罪等への注意喚起について、外国人の受入れ関係者向けのパンフレット(2019 年4月 12 日公表)及び 14か国語25での外国人向けのパンフレット(同年 10 月7日公表)を作成

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインに基づく金融庁の運用として、預金取扱金融機関及び資金移動業者に対して、在留カードでの本人確認を要請していたというのが分かります。

ここまでみてきても、「手続の明確化」とだけあって、必ずしも在留カードの提示を求める記載ではないのが気になります。

政治的には、在留カードによる本人確認を業者の規定等に明記することを要請しているようです。

第200回国会 参議院 財政金融委員会 第2号 令和元年11月7日

○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 今お話がございました期限付の口座ということに関しましては、在留期限の到来前に帰国された場合の取扱いですとか解約時の口座残高の取扱いなど、その導入については更に様々な論点について検討する必要があるというふうに現時点では認識しております。そうでございますので、現時点におきまして金融庁におきましては、金融機関に対しまして、口座開設時の本人確認の際に在留カードを利用する、それによって、帰国される際には口座解約を促すということを、促すとともに、それに伴うガイドラインですとか規定の整備に取り組むように要請をしているところでございます。

※この答弁中の「ガイドライン」は金融庁ガイドラインでは無く金融業界ないし金融機関におけるものと思われる。

どうやら何らかの法規に在留カードによる本人確認が明記されているのではなく、金融庁の要請でそのような運用になっているところがあるというだけであって、それが徹底されているわけではない雰囲気を感じます。

さて、次項からは他の証明書についても概観していきます。

住民基本台帳への通称登録について

住民基本台帳法施行令 令和元年十二月十三日公布(令和元年政令第百八十三号)改正

外国人住民の通称の住民票への記載等
第三十条の十六 外国人住民は、住民票に通称(省略)の記載を求めようとするときは、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長(以下この条及び同項において「住所地市町村長」という。)に、通称として記載を求める呼称その他総務省令で定める事項を記載した申出書を提出するとともに、当該呼称が居住関係の公証のために住民票に記載がされることが必要であることを証するに足りる資料を提示しなければならない。
2 住所地市町村長は、前項の規定による申出書の提出があつた場合において、同項に規定する当該呼称を住民票に記載をすることが居住関係の公証のために必要であると認められるときは、これを当該外国人住民に係る住民票に通称として記載をしなければならない。
3 市町村長は、次の各号に掲げる場合において、外国人住民に係る住民票の記載をするときは、当該各号に定める通称を当該外国人住民に係る住民票に記載をしなければならない。
一 外国人住民が当該外国人住民の通称が記載された転出証明書を添えて転入届をした場合 当該通称
二 外国人住民が最初の転入届又は最初の世帯員に関する転入届をした場合において、法第二十四条の二第四項の規定により当該外国人住民の通称が通知されたとき 当該通称

外国人住民の通称については住民基本台帳法施行令に登録事項として規定されており、令和元年施行の改正法においても、住民票に「通称(氏名以外の呼称)」として記載されることとなっています。

よって、この点について安倍政権がどうにかした結果、通名による口座開設が不可能になったというわけではありません。

「通名での口座登録が不可能」ではない

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https://archive.is/N9FXr

通称名を使っています。金融機関の口座名義が通称名でも、特別定額給付金は振り込まれますか|東京都小平市公式ホームページ魚拓

自治体や銀行によって扱いが異なるのかもしれませんが、「通称=通名での口座登録が不可能」ということではありません。

あくまで「口座開設時の本人確認の際に通称のみでは不可能であり、本名が必須」ということのようです。

この点についても、今後は金融庁方針或いは業界のスタンダードとして不可能となるかどうかは気になるところです。

なお、スルガ銀行のページを見ると外国籍者も「在留カード・特別永住者証明書」は必須ではないかのようですが、記載の仕方が国籍関係ない感じなので、外国籍者に対しては必須である可能性も残る。短期滞在ビザで在留カードは無いがパスポートのある外国人などの場合は流石に弾いているはず。

運転免許証・パスポート・精神障害者保健福祉手帳について

運転免許証は本名に加えて通称=通名の併記が可能である(平成24年から可能に)というだけで、通称=通名のみの記載はあり得ません。

パスポートも併記が可能です。

○精神障害者保健福祉手帳の実施要領についての疑義照会について (平成七年九月一二日) (事務連絡各精神保健福祉主管部局長あて厚生省保健医療局精神保健課長通知)

(問) 氏名は本名と異なる通称でも良いか。

(答) 不可。

こうしてみると、上掲画像でスルガ銀行が1点のみでの受付可能としているもののすべてにおいて、本名記載が求められていると考えられます。

まとめ

  1. そもそも外国人登録証明書には通称のみではなく併記であったし、銀行WEBを見てもどうもこれの廃止が直接の要因で通名のみ口座開設不可となったわけではなさそう(通名が容易に変更できたことで健康保険証を利用した犯罪等が行われたケースはあるが)
  2. 在留カード・特別永住者証明書必須化の流れがあるが、これが通名のみ口座開設不可の原因ではなさそう(そういう効果はあるが)
  3. 結局、マネロン対策を強化する大きな方針の中で、在留カード・特別永住者証明書等の制度変更も相まって、金融機関において手続を厳格化してきた結果、事実上通名のみでの登録が不可能になったのではないか?
  4. 「マネロン対策を強化」の流れが7年8か月の安倍政権下で継続してきた結果であると言うことはできるかもしれない

ざっと調べた感じ、特定の時点から通名のみでの口座開設が不可になった、みたいな話ではなさそうな気がしています。

こういった話では、金融庁から何か言う前に自主的に動いている金融機関もあるように見受けられます(メガバンクなどが中心か)。

これは法律やガイドラインで定められているものではなく、運用によって実施されているものなので、すべての金融機関でそうなっているのかどうかは個別に確認するのは困難であるため調べていません。

今後は口座開設時の在留カード・特別永住者証明書での本人確認がすべての金融機関で必須になるのではないでしょうか?

以上

「都構想218億デマ」朝日NHKが訂正する中、毎日新聞が「全文を読め」と居直る

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「都構想218億デマ」朝日NHKが訂正する中、毎日新聞大阪社会部が「全文を読め」と居直っています。

「都構想218億デマ」は毎日新聞の記事が初出

大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算
会員限定有料記事 毎日新聞2020年10月26日 12時00分(最終更新 10月26日 12時00分)

大阪都構想コスト218億円増 維新「財政成り立つ」 自民「なぜ数字出さなかった」
毎日新聞2020年10月26日 21時21分(最終更新 10月26日 21時26分)

この他、紙面でも書いています。内容は若干異なっているようです。

大阪市がデマと指摘、朝日・NHKですら訂正

大阪市:新聞報道についての大阪市の見解について (…>大都市制度>お知らせ)

1.試算作成の経緯・前提
 複数の報道機関から財政局に対し大阪市を4市に分市した場合の基準財政需要額と大阪市の基準財政需要額との比較について試算作成の依頼があり、新たな特別区制度に即した正確な試算はできないことを前提として機械的に作成し情報提供したもの。

省略

 この度は、財政局が試算した前提から外れ、特別区設置に伴うコストが増加すると受け取られるような報道がなされ、市民の皆様に誤解と混乱を招く結果になったものと考えています。

 市としては、今回の特別区設置に必要なコストを算出したうえで、協定書を作成し、説明資料も作成しています。市民の皆様におかれては、正確な情報に基づいてご判断いただきますようお願いいたします。

大阪市が報道にあるような内容はデマと指摘しています。詳細は以下。

大阪市「都構想で4分割ならコスト218億円増」はデマと明言 - 事実を整える

報道は毎日新聞が初報、続いて代表的なところでNHK・朝日新聞が追随しました。

NHK 関西 NEWS WEB市分割でコスト218億円増試算 10月26日 19時06分

この記事内での訂正はありませんが、以下記事にて大阪市の見解を伝えています。

NHK 関西 NEWS WEB大阪市コスト試算 制度基づかず 10月27日 20時52分

いわゆる「大阪都構想」をめぐって、大阪市を再編した場合、標準的な行政サービスに必要なコストが、いまより増えるとした市の財政局の試算について、27日夜、大阪市は簡略な方式で試算したもので、今回の制度設計に基づくものではないとする見解を発表しました。

朝日新聞も以下訂正。以下の2つは表題が違いますが、更新時刻が違うだけで、同じURLの記事の魚拓です。

都構想の追加コスト、1年で218億円増 大阪市が試算 笹川翔平 2020年10月26日 22時06分

「年218億円増」試算 大阪市、単純に4分割なら 笹川翔平 2020年10月26日 19時27分(2020年10月27日 21時58分更新)

この記事の一部に「大阪都構想で大阪市を廃止して特別区に再編した場合」という記述がありましたが、正確には「大阪市を単純に四つの市に分割した場合」でした。訂正します。

28日の紙面でも訂正していました。

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毎日新聞は会員限定有料記事を公開

大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算
毎日新聞2020年10月26日 12時00分(最終更新 10月28日 10時56分)

有料時の魚拓

ところが、初報を行った毎日新聞は大阪市が報道についての指摘をした後にもかかわらず、会員限定有料記事を公開しました。

大阪市の発表の通り、報道機関から4市にした場合、つまり、4特別区ではなく4政令市にした場合の試算をするように要請があり、それに市の職員が決裁を経ずにメディアに情報提供したという経緯ですから、「毎日新聞の方からそのような計算をするように求めた」のが明らかなわけです。

それを市財政局が独自に試算していたとしか読めない趣旨の記事を書くのは明確に捏造です。

他、紙面掲載中の表現にも大きな問題があるのに、そちらは無視して「有料記事だったものをすべて読めば嘘ではないのが分かるだろう」という態度はいったい何様なのか?

今回の特別区設置に必要なコストについては、副首都推進局が別途算出しています。

協定書というのは副首都推進局による特別区設置協定書のことです:大阪市:特別区設置協定書 (…>大都市制度>大都市制度(特別区設置)協議会)

特別区の基準財政需要額は区部全体を一つの市として計算

特別区の基準財政需要額は区部全体を一つの市として計算するのですから、大阪市を特別区に分割する都構想において、大阪市域の基準財政需要額に変動があるわけがないのです。

これは地方交付税法と総務省令から自明な話です。

また、基準財政需要額は標準区以上の人口規模の場合には段階補正のスケールメリットがあるため人口による補正値が小さくかかって需要額も人口の割には小さくなります。

総務省 補正係数(測定単位の数値の補正)

総務省 補   正   係   数

それをわざわざ4政令市にした場合の合算をさせるというのは、「コスト増」の印象を与えたいという目的の元になされた捏造以外の何物でもありません。

毎日新聞の記事は、本来は関係の無い、都構想によって4特別区になった場合の基準財政需要額と、単純に4市に分割した場合の基準財政需要額を関連付けていることが明らかなので、全体として捏造と評価されるものです。

以上

日本学術会議「元号廃止・西暦使用」を申入していた

 

日本学術会議二十五年史

日本学術会議は「元号廃止・西暦使用」も申入していたことが判明しました。

日本学術会議「元号廃止・西暦使用」を申入していた

日本学術会議元号廃止の申入

日本学術会議二十五年史

日本学術会議は第6回総会が開催された昭和25年5月6日に「元号廃止・西暦使用」を申入していたことが分かります。

この事は以下の記事などでも紹介されています。

「元号」にも断固反対する日本学術会議の露骨な偏り(JBpress) - Yahoo!ニュース

日本学術会議は1950年(昭和25年)5月に、時の総理大臣あてに「天皇統治を端的にあらわした元号は民主国家にふさわしくない」としてその廃止を申し入れる決議を発表した。当時の日本学術会議は同会議の決議として、亀山直人会長の名で時の吉田茂首相らに「元号廃止、西暦採用についての申し入れ」を送ったのである。

 その決議には以下の記述があった。

 「法律上からみても元号を維持することは理由がない。現在の天皇がなくなれば、『昭和』の元号は消滅し、その後はいかなる元号もなくなるだろう」

 「新憲法の下に天皇主権から人民主権にかわり、日本が新しく民主国家として発足した現在では元号の維持は意味がなく、民主国家の観念にもふさわしくない」

追記1-57 総発183号の1 昭和25年5月6日

https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/01/01-57-m.pdf

元号廃止の理由の第一に「元号を用いているのは、たんに日本だけにすぎない」という記述もありました。日本の場合は「和暦」としています。

これ自体は事実です。「元号」とは、古のチャイナの「元」から来てるものですから。

しかし【その国独自の年の数え方・暦】という意味では西暦と元号以外にあります。

台湾 (交通部観光局)のページを観れば分かりますが、「110年」などの表記があります。これは「民国紀元」という暦をベースにしています。ダウンロードするファイル名も、そうなっています。

また、タイでは「仏暦」、イスラム圏では「イスラム暦」が使われています。

ネット上では「元号を使ってるのは日本だけ」⇒だから⇒「元号を廃止して西暦でもいいんじゃね?」というような誘導になっているページがたくさんみつかりますが、非常に悪質な工作です。それは日本学術会議の主張そっくりです。

なお、北朝鮮は金日成の誕生年〜現在までを『主体暦』という暦にしています。

_______

元号を使用すべき法体系上の要請が無い、という論法は国会議事録にも見られました。

国会議事録における元号廃止議論と亀山直人会長の主張

第7回国会 参議院 文部委員会 第7号 昭和25年2月28日

昭和二十五年二月二十八日(火曜日)
   午後一時三十八分開会
  —————————————
  本日の会議に付した事件
○「元号」に関する調査の件

○委員長(田中耕太郎君) それでは只今から今日の文部委員会を開会いたします。
 お諮り申上げますが、本日の議題は六件ございまして、第一から第五までは法律案に関係しております。御異議がございませんければ議事の都合によりまして、第六の「元号」に関する調査を議題といたしたいと存じます。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(田中耕太郎君) では御異議ないものと認めまして、「元号」に関する調査を議題といたします。
 初めに御挨拶を申上げます。この元号の問題は、国民生活全体に非常な密接な関係がある問題でございまして、而も又その調査に当りましては特別の学識見識等を必要とする重大問題でございます。従つて本委員会におきましても、この調査に当りましてはできるだけ周到を期し、各方面の有識者の御意見を伺うということが必要でございます。で、さような趣旨を以ちまして、各方面の多数の専門の方々をお招きいたしまして、数日に亘りまして御意見を伺うことといたした次第でございます。今日はその第一着手といたしまして数名の方々に御足労を煩わしましたわけでございます。非常に御多忙中のところをわざわざお繰合せ頂き、殊に外国に御出張になる御予定の龜山博士わざわざお出で下さいまして我々の調査をいろいろお助け頂きますことは感謝の至りに堪えないのでございます。で、皆様方に対しましてあらかじめ厚くお礼を申上げます次第でございます。それでは只今から御出席の方々の御意見を伺うことといたします。甚だ申しにくいのでございますができるだけ詳しくお伺いいたしたいことはやまやまでございますが、多数の御意見を伺いますためにはやはり時間を止むを得ず制限して頂かなければならないような次第でございまして、十分乃至十五分くらいの見当でお話をお願いしまして、後は質問等によつてお答えをお願いいたしたいと存ずる次第でございます。
 初めに簡單でございますが、かさねがさねお礼を申上げます次第でございます。それでは公報に載つております順序に従いまして、先ず宮内庁次長の林敬三君から御意見を伺うことにいたします。

○参考人(林敬三君) 御承知のように元号につきましては、旧皇室典範第十二條に「踐祚ノ後元號ヲ建テ一世ノ間二再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ從フ」とございます。又登極令第二條と第三條とにこれに基いての規定がございましたのでありますが、新典範制定に当りましては、元号は皇室典範中に規定せらるべき事柄ではないという見解の下に、旧皇室典範第十二條に相当する規定は設けられておらないのであります。尚申添えますと旧規定のありました当時におきましても新しい元号を定めます場合には、これは国の事柄として内閣総理大臣以下国務各大臣が副署をいたしました。当時の宮内大臣は、副署いたしておらない次第でございます。更に新憲法施行後の現在におきましては、特に宮内庁の所掌と相関する所がございませんので、従つて第一及び第二の問題につきましては、これはなかなかむずかしい問題とは存じますが、宮内庁といたしましては以上の外格別申述べることはない次第でございますので、この点御了承を頂きたいと存じます。
 碕御質問によりましてお答えを申上げたいと思います。

○委員長(田中耕太郎君) 御異議がございませんければ、各御陳述になつた方々に対する質問は一応全部伺つた後にいたしたいと思います。と申しますのは、お急ぎの方もおありになりますのでさように取計らいましてよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

まとめると、元号に関しては旧皇室典範に規定があったが、新憲法制定後、新皇室典範においてはそのような規定は存在せず、また元号について規定する法律も無く、宮内庁の所管でもないため、宮内庁としては法制度上の位置づけ以外に何も述べることはない(というか職域の関係でできないだろう)と述べています。

続いて当時の日本学術会議会長の亀山直人氏から以下発言がありました。

○委員長(田中耕太郎君) それではさように進行いたします。次に日本学術会議会長龜山直人君にお願いいたします。

○参考人(亀山直人君) 私は大体賛成であります。その理由の一つは、大変勘定がし易いということでございます。第二番目には非常に国際的であるということであります。それから尚私のこの意見につきましては、別に宗教的である、キリスト的であるとかそういうようなことは何も考えないでいるのであります。考えない方がいいと思つております。
 第一の勘定が便利だということは、これはもうすぐお分りかと思いますが、この一番勘定の分り易いものは、年齢などでありますが、明治天皇、大正天皇、今の陛下、それぞれ相当に高い年齢までお生きになつたものでありますから、まだ割合に簡単だと思うのでありますが、明治は四十五年も続きました。併し日本の歴史を見ますともつともつと非常に短い天皇がおられますので、我々一代の中にどうしても三つくらい改元されるのが自然だと思いますが、年齢の短い方で天皇でありましたらもつともつと数が多いかと思います。年齢の勘定だけでも現在の制度でありますと大変に複雑であります。その外でも元が変じますと勘定が非常に面倒になる。そういう点で第一に勘定がし易い。
 二番目に国際的であるということですが、これは世界は非常に交通が頻繁になりますし、それから又物理的にも非常に短時間で交通ができます。その中に日本だけ特別に隔離された島みたいになるということは精神的にも非常におかしいし、世界の文化国家と一緒に日本が暮して行くのが適当だと思うのでありますが、それにもましてもつと実際的にも国際的であることが必要だと思います。例えば商品の輸出、輸入、それらの文書、或いは新聞、ラジオなどでいろいろ通信があり話があつた場合に、やはり国際的に通用されておる西暦の方が勘定がし易い。ただ精神的の意味でなくて実質的に世界各国といろいろ通信交通、それらの点でも今のそれぞれの年号よりも西暦の方が非常に便利だと、こういうわけであります。それから尚この西暦につきましてはこれがキリスト紀元であるというようなことでなしに、今は現実に世界で通用せられておる万国殆んど共通な年号の勘定だと、こう思つておるのであります。尚これを改めますにつきまして国費がどのくらい要るか、或いは行政上どういう困難があるかということは私は分りませんのでありますが、併し今のままで非常に長い間置いておくことは困難かと思います。ますますこれから交通が頻繁になり、通信が頻繁になり、世界が小さくなるときに、いつかはそれだけの手数と金をかけて変えなければならんときがやがては来るだろう、まあ国の経済の事情によりまして多少数年くらいは変つても、とにかくいつかはやらなければならんことだと思うのであります。これが私の意見であります。

まぁ要するに元号の廃止に賛成だと。

その理由として「計算が簡単になる」+「西暦が世界共通なので」というものだけが挙げられていました。

この日の議論では他の委員から、元号の意義について指摘がありましたが、亀山氏の弁としてはここに現れた通りです。

結局、結論は出ず。その後、元号法が制定されています。

元号法が制定

1979年(昭和54年)6月6日に成立した元号法で「法律上の」根拠が規定されました。

昭和五十四年法律第四十三号
元号法
1 元号は、政令で定める。
2 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和の元号は、本則第一項の規定に基づき定められたものとする。

立法化しなければルールは存在しないなどということは無いのだから、別に立法化する必要はないという議論もありましたが、このような議論経過があったので明文化することで守ったというのが実情だろうと思います。

このあたりは近年の自衛隊を憲法で明文化しようとしている動きも似たようなものだといえます。

日本学術会議にとっては「黒歴史」か

福島要一、11期33年日本学術会議委員だった:「民科」に共産党員が多い事も記述|Nathan(ねーさん)|note

このことは関心が薄かったのか声明や勧告ではなく単なる「申入」であったことからなのか、共産党系の支持を得て11期33年も学術会議委員だった福島要一氏の著作【「学者の森」の四十年】でも触れられていません。サンフランシスコ講和条約に関連する討議にページが割かれています。

また、『中古』日本学術会議25年史 (1974年) [Jan 01, 1974]においても年表で確認できるにとどまっています。

年表を見るとソ連と中華人民共和国との学術交流を求める要望も出していて、軍事研究禁止の声明を出している組織と同じ所とは思えないような要求もしているのが分かります。

以上

共産党の辰巳孝太郎25日に「大阪市財政局が試算を作ってると思います」

都構想218億円デマ辰巳孝太郎共産党

共産党の辰巳孝太郎25日に「大阪市財政局が(試算を)作ってると思います」と発言していたことが分かりました。

共産党の辰巳孝太郎25日に「大阪市財政局が試算を作ってると思います」

共産党の次世代のエース・辰巳孝太郎(無職)が、25日に「たぶん大阪市財政局が(都構想によるコストに関する試算)作ってると思います。」と発言していたことが判明。

該当部分は以下。上掲動画の2時間14分あたりから。

「218億円の試算」というデマ報道は26日からなのに

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大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算
会員限定有料記事 毎日新聞2020年10月26日 12時00分(最終更新 10月26日 12時00分)

大阪都構想コスト218億円増 維新「財政成り立つ」 自民「なぜ数字出さなかった」
毎日新聞2020年10月26日 21時21分(最終更新 10月26日 21時26分)

218億円の試算」というデマ報道は26日に毎日新聞WEB版で報道され、紙面としても夕刊で報じられました。

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27日にも同様の記事。

毎日新聞デマ

※なぜか26日の会員記事は大阪市が27日に否定した後の28日10時台にYahoo記事に転載されています。

※会員記事自体も全体公開にしたようです⇒https://archive.is/PmwLd

26日に報道されて初めて分かる話をなぜ、25日の段階で言及出来ていたのでしょうか?

23日に共産党山中議員の218億円発言とも符合

先立つ23日にはテレビ討論会で共産党の山中議員が「218億円」とまったく同じ数字を発言していたこととも符合しています。

なぜ副首都推進局ではなく財政局とピンポイントなのか

大阪市副首都推進局:トップページ

大阪都構想に関する大阪市の関係部局は「副首都推進局」であり、財政局とは別の部局です。基準財政需要額を利用した試算は既にこちらで行っており、特別区設置協定書は副首都推進局が出しているものです。

大阪市:新聞報道についての大阪市の見解について (…>大都市制度>お知らせ)

2.特別区設置にかかる実際のコストについて
 特別区設置に伴い実際に発生する職員体制の整備に伴う経費や設置コストについては、特別区制度案や財政シミュレーションにおいて実態に即して積算のうえ示しており、これに基づき、特別区設置協定書も作成されています。

大阪市:特別区設置協定書 (…>大都市制度>大都市制度(特別区設置)協議会)

共産党辰巳氏は、なぜ副首都推進局ではなく財政局とピンポイントで指摘出来たのでしょうか?副首都推進局が作成する際のベースとして財政局が関係しているという予測が立てられるのであれば結構ですが、23日の山中議員の発言もあるため、疑惑が深まる方向の事実だと言えます。

以上

大阪市の「都構想で218億増デマ」は共産党が出所か

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 大阪市の「都構想で218億増デマ」は共産党が仕掛けていた疑惑があります。

共産党山中議員、10月23日に「218億」と発言

松井 200億の足りなくなるという試算はどの試算ですか?

山中 ですからさきほどから言われているように…自民党ではありません、それは財政に詳しい方に計算してもらいました。218億です

共産党の山中智子議員は、10月23日の時点で「218億」と発言していました。

218億円のコスト増が報道されるのは毎日新聞の10月26日が初出です。

大阪市は「報道機関から依頼を受けて」作成と発表

大阪市:新聞報道についての大阪市の見解について (…>大都市制度>お知らせ)

1.試算作成の経緯・前提
 複数の報道機関から財政局に対し、大阪市を4市に分市した場合の基準財政需要額と大阪市の基準財政需要額との比較について試算作成の依頼があり、新たな特別区制度に即した正確な試算はできないことを前提として機械的に作成し情報提供したもの。

ー省略ー

 特別区設置に伴い実際に発生する職員体制の整備に伴う経費や設置コストについては、特別区制度案や財政シミュレーションにおいて実態に即して積算のうえ示しており、これに基づき、特別区設置協定書も作成されています。
 この度は、財政局が試算した前提から外れ、特別区設置に伴うコストが増加すると受け取られるような報道がなされ、市民の皆様に誤解と混乱を招く結果になったものと考えています。

大阪市は27日に発表した経緯説明において「報道機関から依頼を受けて」作成としていますから、23日(金曜日)の時点で報道機関に対して回答があったのであればその時点で報道しているはずです(土日の間に反論できないことを狙って金曜日に印象操作・事実歪曲の報道がなされることが多い)。

したがって、共産党の山中議員がこの「あり得ない前提に基づいた試算」の結果を知っているということは、2つの可能性を強く疑います。

  1. 共産党が計算した通りになるように大阪市に試算要求をした
  2. 大阪市内部の担当者から直接聞いた

①の場合、まったく同じ数字になるというのは偶然にもほどがありますが。

いずれにしても、これは、各所メディアと共産党が足並みを揃えていたということも示唆します。

以上

大阪市「都構想で4分割ならコスト218億円増」はデマと明言

 

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大阪市が「都構想で4分割ならコスト218億円増」はデマと正式に発表しました。

大阪市「4分割ならコスト218億円増」はデマと明言

大阪市:新聞報道についての大阪市の見解について (…>大都市制度>お知らせ)

1.試算作成の経緯・前提
複数の報道機関から財政局に対し、大阪市を4市に分市した場合の基準財政需要額と大阪市の基準財政需要額との比較について試算作成の依頼があり、新たな特別区制度に即した正確な試算はできないことを前提として機械的に作成し情報提供したもの。
単純に大阪市を4つの政令市に分割する簡略な方式で試算したもので、事務分担など今回の特別区の制度設計の内容に基づいたものではありません。
(注)基準財政需要額とは、各地方公共団体の支出の実績(決算額)でもなければ、実際に支出しようとする額(予算額)でもありません。

2.特別区設置にかかる実際のコストについて
特別区設置に伴い実際に発生する職員体制の整備に伴う経費や設置コストについては、特別区制度案や財政シミュレーションにおいて実態に即して積算のうえ示しており、これに基づき、特別区設置協定書も作成されています。
 この度は、財政局が試算した前提から外れ、特別区設置に伴うコストが増加すると受け取られるような報道がなされ、市民の皆様に誤解と混乱を招く結果になったものと考えています。

 市としては、今回の特別区設置に必要なコストを算出したうえで、協定書を作成し、説明資料も作成しています。市民の皆様におかれては、正確な情報に基づいてご判断いただきますようお願いいたします。

意訳すれば、大阪市は「4分割ならコスト218億円増」は機械的な計算をした「仮の試算」であり、特別区設置に伴うコスト等は別途計算しており、新聞報道にあるような内容はデマである、と明言したわけです。

しかも、「複数の報道機関からの依頼に基づいて作成した」とあることから、完全にこのような内容の試算であることが分かっていて報道するために要求していたということになります。

このような要求に応じた大阪市の担当者も異常です。

都構想仮試算の中身

資料の出どころは⇒大阪市財政局は結局、何が言いたかったのか|ペーター|note

本件はこの手の計算に詳しい人たちが各所で昨日の段階から検証をしてきました。

参考:【ファクトチェック】「コスト218億」の嘘と真実 | おとな研究所

 基準財政需要額の法的な位置づけは足立議員のツイートが詳しい。

大阪市の正式な決裁を通したものではない

冒頭説明の経緯であることから、この仮計算は大阪市の正式な決裁を通したものではないにもかかわらず、各所の報道(特に初報の毎日新聞)は「財政局が試算」と報道しており、非常に悪質です。

毎日新聞・朝日新聞・NHKは、「218億円~~~試算を、市の財政局が行っていた」と報道していますが、そのように報道機関が求めていたことをきっかけに計算をした結果なのですから、明確に事実と異なる報道をしています。

日本国民が勝つか、マスメディアによる情報操作に負けるか

大阪都構想は【日本国民が勝つか、マスメディアによる情報操作に負けるか】という話であるということがこれでハッキリ(前回の投票の際の報道で既に明確だったが、改めて)したでしょう。

維新の党運営や政策の方針が気に入らない人も居ると思いますし、個々の政策の意義や説明に納得がいかない人が居ることもわかっていますが、これはもはやそういう次元で捉えるものではないでしょう。

以上