この案で行くだろうか
- 韓国政府が「財団による賠償肩代わり」案を公式表明
- 韓国の日帝強制動員被害者支援財団による第三者弁済
- 財団の求償権放棄と日本企業等からの寄付はあるのか?
- 徴用工問題のおさらいとまとめ:日韓請求権協定で解決済み
韓国政府が「財団による賠償肩代わり」案を公式表明
韓国政府「賠償肩代わり」案を公式表明 徴用工問題 - 産経ニュース
韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた、いわゆる徴用工訴訟問題をめぐり、韓国政府は12日、被告企業の賠償金支払いを韓国の財団が肩代わりする案を検討していると公式に表明した。韓国外務省が同日開催した公開討論会で、これまでの検討結果として明らかにした。
徴用工訴訟 日本企業への求償権放棄が最低条件 政府は実効性見極め - 産経ニュース
いわゆる「徴用工問題」と呼ばれている、朝鮮半島出身の戦時労働者(募集工)が、日本企業における労働が非人道的であったなどとして日本政府や日本企業に賠償を求めたが排斥されてきた中で、文在寅(ムンジェイン)大統領政権時代の2018年に韓国大法院が日本企業に対して賠償命令を下し、財産差押えが為されてきたという、1965年の日韓請求権協定に違反する状況について進展がありました。
1月12日に、尹錫悦(ユンソギョル)大統領下の韓国政府が「財団による賠償肩代わり」案を公式表明しました。
韓国の日帝強制動員被害者支援財団による第三者弁済
韓国政府「徴用賠償は財団が先に支払う」日本政府「日本企業の参加を検討」記事入力 : 2023/01/13 12:09 朝鮮日報
韓国外交部(省に相当)アジア太平洋局の徐旻廷(ソ・ミンジョン)局長は12日、韓国外交部と韓日議員連盟の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)会長が国会議員会館で共同で主催した公開討論会で上記の政府案を提示した。
最も詳細に書かれているのが朝鮮日報の記事。
韓国語の「本紙」でも大々的に扱われています。
韓 “징용배상, 재단이 우선 지급” 日 “일본기업 참여 검토” - 조선일보
이재명, 정부 강제징용 배상 방침에 “제3자 뇌물죄 아닌가” - 조선일보
[사설] 정말 어렵게 나온 ‘징용 배상’ 해법, 日도 호응을 - 조선일보
「財団による賠償肩代わり案」の報道の要点をまとめると
- 国会議員会館で共同で主催した公開討論会で政府案が提示
- 韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が主体
- 元徴用工である勝訴原告が日本企業に対して有する債権=債務名義を得た不法行為に基づく損害賠償請求権として認容された賠償額を、財団が第三者弁済する
- 共同通信の報道によれば、日本側としては、財団が第三者弁済をすることで生じる日本企業への「求償権」を財団が放棄すれば、日本企業による財団への寄付には反対しないとの立場
3番は共同通信による予測的な(観測気球的な)報道を伝えたものですが、重要な要素なので取り上げました。
また、1番は「現時点での政府案」ということで、韓国世論や国会での動きによっては今後変更される可能性があるものである、という点は認識すべきでしょう。
やはり、韓国の国会や世論としては激しい反発があるようです。
今回の「案」は、昨年に非公式な案として報道がざわついたものよりも、日本側に寄った展開となっています。
昨年の報道時点よりも、日本側に寄った展開になっています。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2023年1月13日
・韓国の財団の「設立」に日本側から「拠出」することは無い(韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が支払う案)
・財団に「日本側」のマネーが流入されるかは、現時点では不明、宙ぶらりんの状態
今後の展開がどうなるか。
【徴用工問題】日韓両政府が日本企業の賠償金支払いを韓国財団が「肩代わり」で調整との報道 2022-10-26
2019年にも同様の報道があったなど、「牽制」「腹の探り合い」が継続していました。
徴用工問題で日韓が経済基金案?共同通信の報道を外交部が否定と韓国メディア 2019-10-29
菅官房長官、共同通信の報道を否定:徴用工問題の日韓経済協力基金 2019-10-29
財団の求償権放棄と日本企業等からの寄付はあるのか?
①韓国の日帝強制動員被害者支援財団が徴用工勝訴原告に対し、原告らが日本企業に対して有する債権相当額を支払い
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2023年1月13日
②「行使すれば日韓請求権協定違反となる徴用工訴訟勝訴原告の日本企業に対する債権の求償権」を財団が放棄
③求償権相当額のマネーを「日本側」から財団に流入
③を阻止できるか。
第三者弁済をすると求償権が発生するというのは民法上の法的効果です。
本件では、財団が求償権を放棄するのか?という点が第一に重要になってきます。
求償権が放棄されないと、以下のような展開が考えられます。
「政府による代位弁済」だと
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2022年10月27日
①韓国政府が自称元徴用工に支払い
②韓国政府が日本企業に求償権行使
③日本企業は支払わない
④韓国政府が提訴
⑤裁判所が判断する
みたいな流れで、⑤でストップすることを期待するのかどうか。それとも判決が出ても執行しないのかどうか。
これは昨年の報道時のシミュレーションですが、「政府」のところが「財団」に変わっただけということになります。
他方で、仮に求償権が放棄されるとなると、日本企業を縛っている財産差押えも解消されることとなるため、法的には2018年の大法廷判決から続く喧騒は終わる、ということになりそうです。
ただし、事実上の問題、政治的な問題は残ります。
焦点は、「日本側」から財団にお金が行くのか、行くとしてもどこからなのか?という点に絞られます。
財団に対する任意の寄付はまったく妨げられていないため、日本政府が企業・団体・個人に対して「寄付するな」と言う権限など存在しませんし、法的には徴用工訴訟の賠償金ではないのですから、寄付に反対する動機も弱い、ということに。
ただ、事実上は「賠償金の代わり」であると認識されるので、本来は払う必要の無かった金が韓国側に行く点で日本側としては好ましくない展開です。
この場合、一番よくないのが韓国に拠点を持つ日本企業で戦前から存在し、朝鮮人を雇用していた所が寄付をするということ。
そうではない在韓国の企業・団体・個人なのか、日本の企業・団体・個人であっても、避けるべき展開です。
在日コリアンの団体・個人からの拠出なら咎める必要もないのかもしれませんが。
繰り返しますが、韓国財団による肩代わり案は「現時点での政府案」に過ぎず、韓国世論や国会での動きによっては今後変更される可能性があります。
徴用工問題のおさらいとまとめ:日韓請求権協定で解決済み
徴用工問題とは、本来的には「日本における労働環境が劣悪であった結果、死亡・傷病者となってしまった者やその遺族らに対する日本国の賠償責任の問題」と言うことができます。
当時韓国という国は存在しておらず、朝鮮人は当時日本人であったので、現在の韓国との関係では「賠償」関係に立ちません。
後に韓国人となった元朝鮮半島戦時労働者については、日本国と韓国との協定(日韓請求権協定)によって、「日本国が責任を負わない」ことが決定され、「完全かつ最終的に解決された」とされました。
したがって、既に終わった話なのです。
日本での訴訟でも元徴用工らの原告の敗訴が確定していました。
韓国政府も元徴用工らへの補償義務は韓国政府が負うと明言していました。
ところが、2018年秋頃から韓国側が協定に反する行為をしてきた、というのが「徴用工問題」です。
これは当時のムンジェイン大統領が北朝鮮を利する行為を数多く行っていた中、日韓離間工作ではないか、とも言われていました。弁護士であるとは俄には信じがたい「三権分立」論を展開してきたこともありました。
「請求権」に関する法的な込み入った話は以下。
朝鮮人戦時労働者・韓国徴用工問題 カテゴリーの記事一覧 - 事実を整える
※追記※
[단독] 강제징용, 日 '우회사과' 무게…한·일 재계, 모금 나설 듯
韓国、経団連の賠償負担を画策
— 小咲なな (@TIOffoa1Iny67ll) 2023年1月13日
韓国政府は、日韓の経済団体「経団連(日本)」と「全経連(韓国)」に基金を作らせ、「社会貢献」の名目で元徴用工への賠償金を集める案を検討している。
こんなものは「社会貢献」ではない。「日韓協力」と言って経団連がこの話に乗ったら間抜け。https://t.co/1wPzcNS4kd
Daumの記事によると、ポスコ等に出捐させる案は反対が強いため、次善の策として日韓の経団連が財団を別途作る方策も議題に上がっているようです。
※※追記終わり※※
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