事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

青山繁晴氏,共同通信「中国批判声明参加を日本が断り欧米失望」が捏造と完全に証明

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香港情勢に関する共同通信の「中国批判声明参加を日本が断り欧米失望」という記事が捏造であったことを青山繁晴議員が完全に証明したようです。

この問題については以下記事で「欧米が失望」「日本が中国に配慮」がおかしいという点を既に書きました。ここでは「日本が米英から声明入りの打診を受け、断った」か否かについて論じます。

共同通信「中国批判声明に日本が拒否」報道、青山繁晴議員が虚偽と非難、産経は記事を削除 

青山繁晴議員、共同通信「日本、中国批判声明に参加拒否 」の報道の違和感を指摘

青山繁晴氏,共同通信「中国批判声明参加を日本が断り欧米失望」の捏造を完全に証明

青山氏は、個人的見解であり、政府見解ではないとしながらも、以下書いています。

香港をめぐる虚報について その4 (推敲しました)|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road

22日、東京都内の駐日英国大使館から外務省に電話がありました。
 実際は大使館の誰から、外務省の誰に電話があったか、分かっていますが、この『誰でもどこでも見られる、中国、韓国、北朝鮮の工作員でも無条件に見られるブログ』では記しません。
 高官同士であったことは記しますが、高官と言っても大臣や総理では全くありません。

 英国大使館の高官からは「近く米国など5アイズ ( 米英にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン系の英語圏5か国 ) で中国に対して共同声明を出します。中国に対して厳しい姿勢で日本も一緒に臨みましょう」という趣旨の話がありました。
 その共同声明に入ってくれという明確な勧誘はありません。
 中国に共に対峙しようという確認に過ぎません。
 そして共同声明の中身の話も全くありませんでした。

▼こういう話が来たのは英国だけであり、アメリカをはじめ他の5アイズ諸国からは何の話もありませんでした。
 しかも、その後4日間、英国からも一切、何の話もありません。
 そして採択となる5月28日の前日、27日になって突然、共同声明の文案 ( 英国による文案。のちに発表されたものとは一部、異なっている。アメリカなどと調整を経たと青山繁晴は考えています ) がEメールによって前触れなく外務省に送られてきました。
 ただし発信者は、前述の英国大使館の高官ではなく、大使館の担当官です。宛先も外務省の担当課であって、日本の高官宛てでは全くありません。

▼さらにメールが来ただけで、「参加してくれ」とも何をしてくれとの話も何もない。
 当惑した日本政府は、メールの発信者である英国大使館の担当官に連絡を取ろうと努めましたが、まったく掴まりません。
 困って、日本政府は英国の外務省本省 ( 正式には、外務およイギリス英連邦省 Foreign and Commonwealth Office ) に問い合わせましたが、「そんな話は在京大使館に聞いてください」と言われて、英国が何をしたいのか、共同声明の文案を直前になって送ってきたのは、参加してくれという意味なのか、参考にどうぞという意味なのか、日本は政府全体として確認すらできませんでした。

省略

▼正確な時系列は以下の通りです。

5月28日木曜  すべて日本時間 ( 北京は、日本より1時間遅れです )

1600すぎ 全人代で採択
1610頃 官房長官会見が始まる
1620頃 外務報道官談話を発出 ( 霞記者クラブに配布 )
1720頃 駐日中国大使を召致
1800頃 外務大臣ぶら下がり会見

青山繁晴議員が確認した事実関係をまとめると「英国側から声明への参加の誘いの意味があったのか、日本政府は判断しかねたために確認を試みたが、結局分からないまま全人代の採択を迎え、即座に菅官房長官会見で「深い憂慮」を表明し、その後、秋葉剛男・外務事務次官が中国大使館に対して「深い憂慮」の抗議をした、その間、EUや5アイズ諸国は声明を出していない」という ものだったということです。

こんなものは「正式・具体的な声明参加の打診」ではないわけです。

「拒否するかしないかというレベルですらなかった」ということです。

あと、英国からしか来なかったということで、共同通信のワシントン支局の情報源と思われるアメリカ側の動きはまったくなかったことも解せません。

夕刊フジには強気の共同通信

共同通信は夕刊フジに対して「取材は尽くしています。配信内容に関するコメントは控えさせていただきます」と言い放っているようです。

取材を尽くしたなら情報源を秘匿した上で、具体的な打診の動きの経過くらい言えるはずだと思われるのですが。

青山繁晴議員ブログの記載内容について

もっとも、青山議員の記述にもいくらでも疑問点は湧いてきます。

27日から28日の16時まで、英国大使館の担当官がまったく掴まらないなどということがあり得るのか、といった具合にです。

「本当だったら結構くだらない話だなぁ」という感じがします。

英国側の雑さを責める方向性と、日本側が雑に扱われているという方向性があり得ると思いますが、いずれにしても表沙汰にしたいと思うような話ではありません。

さて、青山議員は大使館への抗議でもって「声明と同等、少なくとも欧米諸国よりも劣った声明ではない」と言っていますが、日本は「中国批判声明」を出していた?でも書いたように、具体的にどういう価値に反しているのかをEUも5アイズ諸国も明言している中で日本のものは曖昧模糊としていることからは、日本の「声明」の中国批判の強度は弱い、と評価されるおそれもあると思います。

現実に、日本が「中国批判声明をだした」という認識は、少なくともTwitter上ではまったく見られませんでした。

青山議員もあの抗議で充分かというとそうではないという見解であり、そこは完全に同意しますが、外務省の「深い憂慮」の英訳のserious concernが5アイズのdeep concernと比べて強い非難だとかなんとか形式面で論じてるのは気になりました。

正しければ菅官房長官が触れなかったのは当然ということに

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青山議員のブログにある経過が正しければ、菅官房長官が6月8日の午前の官房長官記者会見で事実関係を問われた際に声明への参加の呼びかけがあったのか否かについて触れなかったのも頷けます。

こんなもの、日本側と英国側のどちらのコミュニケーションがうんたらかんたら…という話にしかなりません。そんなくだらない話をして誰が得するでしょうか?

また、フィナンシャルタイムズのWashington looks to Five Eyes to build anti-China coalitionという記事では、香港の中国への引き渡しに携わった元国務省高官ニック・バーンズが「ファイブ・アイズの署名国は長年の同盟国で、民主主義を有し、および香港へのコミットメントをしてきた歴史のある国だ」と説明し、国務省の担当者が声明文に関して「これは、4カ国の全員が共有する価値の長い歴史についてです」と語っていることが分かります。 

日本が参加を呼びかけられたというなら、この話がおかしなことになります(日本と5アイズ諸国の香港への関わり方は明らかに異なる。ファイブアイズはイギリス連邦諸国が居る)、こちらはきちんと取材元の名前が記事で明らかにされています。

青山議員のブログにある内容とも矛盾しません。

※6月10日の岡田直樹内閣官房副長官の記者会見でも「外交上のやりとりなので詳細は差し控える」としています。

触れなかったから、否定しなかったから声明参加の打診はあったんだ、という危うい事実認定

自民党の議員とは片山さつき氏か長島昭久議員のツイートと思われます。

片山議員の「突然言われても、というだけの話だそう」も声明の誘いがあったかのように思えてしまう表現ですが、青山議員のブログを読んだ後だと、そうではないと理解できます。

長島議員のは青山ブログを前提にすると単なる杞憂、ツイート時点でも根拠のない憶測にすぎません。

別に究極的に真実であるかが明らかになったとは言えないものの、これは当たってるか当たってないかの話じゃ無いんですよ。

チャイナに関する日本の態度が国際的に問われており、他の報道でもそれを否定する材料がある中で、「菅官房長官が答えなかったから声明参加の打診はあったハズだ」という推定を安易にする姿勢を問うているわけです。

このように、この時点でも政府が返答しないことの意味について「声明参加の打診があったから」以外の可能性の言及もあるわけです。

チャイナ側に日米欧州の離間工作に利用されかねない話題において安易に「声明打診があった」と認定することが如何に国益に反するか。

以上