事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

日本学術会議の法人化が決定:有識者懇談会「タイムリーな助言を」処理水への風評加害を意識か

ついに法人化。

日本学術会議の法人化が決定

「日本学術会議の法人化に向けて」(令和5年12月22日) - 内閣府

https://www.cao.go.jp/scjarikata/pdf/20231222houshin.pdf

令和5年(2023年)12月22日、日本学術会議の法人化を内閣が決定しました。

新たな日本学術会議は、特別の法律に基づいた存在として規定されることとなりました。(現行の学術会議も特別法で内閣に設置されている)

これは昨年末の「日本学術会議の在り方についての方針」(令和4年12月6日) - 内閣府を受けて学術会議が反発した結果、法人化の検討について有識者懇談会を経て決定されたものです。

目的として書かれている「科学の進歩と科学の成果の活用は国民及び人類の福祉に資するものであるという確信に立って、国民の総意の下に設立される」という部分は、現行の日本学術会議法の目的規定にはない、「成果の活用」「福祉に資する」という文言があります。

これは、昭和23年に趣旨説明された「国民生活に科学を反映浸透」させるという、もともとの学術会議の存在意義を明文化したものと言えるでしょう。本来はそのための組織として設立されていたものが、明文化されていないがために無視・曲解されるのを防ぐ効果があるでしょう。

なお、日本学術会議からは今年12月には法人化を否定しない立場が表明されていた声 明 日本学術会議のより良い役割発揮に向けた基本的考え方-自由な発想を活かした、しなやかな発展のための協議に向けて- 令和5年(2023年)12月9日 

会員選考はコ・オプテーション方式、選考助言委員会を置く

今回の法人化のきっかけになった、メディアで騒がれた任命拒否の際に焦点となった会員選考の方法については、従来通りコ・オプテーション方式とするが、会長が任命した外部の有識者からなる選考助言委員会(仮称)を置くことや、会員・連携会員の任期、定年、定員、なども今後検討対象になるとあります。

過去の選考方式の変遷の概要は以下ですが、政治ゲームの場になっていたことや、軍事研究の禁止など、学術会議自身が学問の自由を圧迫していたことは周知の通りです。

  1. 発足当初は委員の選出は選挙制
  2. 選挙運動の過熱による弊害が起こり、選出会員に偏りがある、科学者の代表として相応しくない者が選ばれているという指摘が
  3. そこで昭和58年改正で選挙制度から学協会からの推薦制度へ
  4. しかし、会員が選出母体の学協会の代表として振る舞うなど、日本学術会議の活動が偏向しているとの見解が強まったため、平成16年改正で学協会による推薦方式から日本学術会議内からの推薦方式=コ・オプテーション方式へ

日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会では「タイムリーな助言を」

日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会 - 内閣府

日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会中間報告(令和5年12月21日)

先だって、「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」において中間報告が為されていました。そこでは、「タイムリーな助言」が意識されていました。

社会課題の解決についての国民や社会の具体的なニーズや政府等からの要請など
を踏まえて要な学術的・科学的助言がタイムリーに行われるとともに、その有効
性や実現可能性を高めるためには、受け手である政府、産業界を含む社会、国民か
ら広く意見を徴するなどの丁寧なコミュニケーション及びフォローアップを行うこ
とが強く求められる。

(3) 今後の学術会議の業務については、懇談会の中で、「タイムリー、スピーディな意思の表出と助言機能の強化」「学術の発展のための各種学術関係機関との密接なコミュニケーションとハブとしての活動強化」等の7項目が、「日本学術会議第 26 期アクションプラン骨子」として学術会議から示された。

議事録を見ると、これらは新型コロナ禍の対応やALPS処理水に関する風評加害に対して何らの提言もしてこなかった経緯が意識されているのではないかと思われます。

過去には大学による自衛官の入学拒否について無視されていたことがありましたね

第8回 日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会 議事録

○笹川室長

 学術会議の使命・目的については、現状及び問題点、これは簡単に言うと、学術会議の使命・目的の条文は古くて、国民・社会を啓発の対象、客体として捉えている印象が強い。もちろん科学リテラシーなどの文脈では啓発的な意味合いもあるのでしょうけれども、対等な立場に下りていくとか、国民・社会のニーズを汲み上げる、その辺はやり切れていないのではないかということでございました。必ずしもニーズを汲み上げていないのではないかということは時々耳にすることであって、懇談会でも、さっきも出ましたけれども、AIだとか、処理水だとか、そういったものをタイムリーに出してくれればいいのになというようなことも例示的に挙がっていたところです。

第4回 日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会 議事録

○笹川室長 

 それから、4ページの次のところに行きます。国民的・社会的な関心の高い課題への対応。ここは中長期的な観点とは逆の話で直近の課題なのですけれども、前回の懇談会で、コロナ、処理水、生成AIといったようなことが話題になりました。コロナについては、一番下の○にありますけれども、武田前部長がおっしゃっていたと思いますが、政府や自治体の活動に大きな瑕疵がなければ独自の意見表明を控えて、その代わりシンポジウムなどでエビデンスを出していくのだというようなお話でした。これはこれで一つのスタンスだろうと思いますけれども、国民、社会の期待としては、そういったことも大事だけれども、とにかくピンポイントで科学的な知見を教えてほしいとか、方向性を早く知りたいという人も多いのではないかと思います。

~省略~

○光石会長 

 社会が直面する課題について、処理水の問題が挙がっていますが、科学というのはいろいろな意味がありますが、サイエンス・アンド・テクノロジーの観点からいくと、これは結構、解や考えるべきことは出されていると思います。むしろ社会科学的な観点が抜けていたかもしれず、例えば、外国との関係とか、あるいは世論の形成とか、そういったところが実は結構重要であったのではないかと思っております。

第三回の議事録に各委員が新型コロナ禍や処理水に関する学術会議の態度について述べているものが見つかりますので読むと良いでしょう。

福島第一原発のALPS処理水の海洋放出については、デイリーメールの虚偽情報について外務省が抗議していましたが、こうした情報発信媒体に対する対応については、国や自治体は放置していました。

福島県行政も「正確な情報発信に努めるよう国と東電に求める」という姿勢でしたが、12月21日には一転して「対応を検討」という答弁をしました。20日段階の質疑と答弁について以下でおいておきます。

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