事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

韓国国防部が支離滅裂な見解を発表:レーダー照射事件

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1月22日、韓国国防部が支離滅裂な見解を発表していました。

あまりにも意味不明過ぎてもう「哀れ」です。

日本では報道されない内容もあるので、主張とそれに対する考え方を整理します。

日本の哨戒機低空脅威飛行に関連する国防総省の立場:일본 초계기 저공위협비행 관련 국방부 입장

언론보도 바로보기:日本の哨戒機低空脅威飛行に関連する国防総省の立場との声明。
魚拓はこちら

こちらでレーダー照射事件についての日本側の見解に反論しているので紹介します。

訳が所々不適切かもしれませんが大枠は外してないはずです。

「実務協議による問題解決とかけ離れた」のはどちらか?

언론보도 바로보기

ビデオ実務会議を開催した翌日韓国側の反対にもかかわらず、動画を公開するなど、実務協議を通じた問題解決の努力とはかけ離れた行動を見せながら

これは防衛省の指摘と矛盾します。

 

韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について 

防衛省は、本年1 月14 日の実務者協議において、相互主義に基づき、解析結果のもととなる探知したレーダー波のデータやレーダー波を音に変換したデータなど事実確認に資する証拠と、韓国駆逐艦の火器管制レーダーの性能や同レーダーの使用記録などを、情報管理を徹底した上で突き合わせ、共同で検証していくことを提案しましたが、受け入れられませんでした。
なお、昨年 12 月 27 日の実務者協議でも、同趣旨の提案をしています。また、本年1 月14 日の実務者協議では、事実確認に資する証拠の一つとして、探知したレーダー波を音に変換したデータを持参し、その場で韓国側に聴取してもらうことを提案しましたが、韓国側はその提案も拒否しました。

しかも韓国側は、レーダー電波情報の「公開」を要求していることから、韓国側が「実務協議を通じた問題解決の努力」をしていないことは明らかです。

「150mは必ず避けるべき低高度」という非常識

언론보도 바로보기

最低安全高度150mについて、国際民間航空条約は軍用機には適用されないことを日本側が最終的に認めたが、民間航空機においても150mは人や建物がない場合でも、安全のために遵守しなければなら最低高度である。すなわち、150mは日本側が言うような「十分な高度」ではなくて、必ず避けるべき」低高度」というのは常識である。

まず、日本の防衛省が国際民間航空条約(ICAO)の150mという基準を持ち出したのは海洋法条約で認められている航行の自由に「配慮」しているというだけであって、それが軍用機に適用されるという国際的な規定があるわけではありません。

軍用機は基本的に無制限です。(もちろん平時の航行の自由の侵害をしない限度で)

安全保障上様々な飛行をする場合が考えられるからです。

民間機は「人を目的地に運ぶ」のが主たる目的なので(空撮など例外はあるだろうが)そもそも低空飛行をする必要がありません。地上物との接触の危険が生じる低空飛行をする必要が無いことが、高度規制が設けられている要因の一つになっています。

軍用機であるP1哨戒機に「150mは必ず避けるべき低高度というのは常識である」などという主張は、国際的に甚だ非常識です。

韓国哨戒機は距離5500m~9000m離れて飛行?

언론보도 바로보기

ちなみに、我々の哨戒機は疑わしい船舶の監視などの特殊作戦以外には、高度約300メートル、距離約5,500〜9,000メートルを離隔して飛行し、探知機の性能などを考慮すると、この程度の距離でも十分相手艦艇を識別することができている。ところが哨戒機が高度150mと距離500mまで接近して低空威嚇飛行をしたということは、友好国艦艇を疑しい船舶とみなして実施する偵察行為としか理解できない。

「高度約300m、距離約5,500〜9,000mを離隔して飛行」

これを本気で言っているとは俄かには信じがたいのですが、韓国国防部の公式HPに掲載されている内容です。

レーダー電探だけで相手艦船の国籍やその他の細かい情報を得ることは不可能なので、目視による確認ができれば行うのが当たり前なのですが、韓国の軍隊はそういう運用をしていないとでも言うのでしょうか?それでは安全保障の任務を実行できてないでしょう。

流石にそんなことは無いハズなので、これは日本だけに向けて「この距離以内に来るな」という無理難題を吹っかけているだけでしょう。

「脅威を受けた者が脅威と感じれば、それは脅威である」

언론보도 바로보기

問題は「威嚇飛行」である。当時、我々の艦艇の乗組員は、哨戒機の低空飛行を明らかに脅威として認識したこと。友好国艦艇が救助活動中の場合は助けてくれるのが常識なのに、緊迫した救助活動を進行中の私たちの乗組員が騒音と振動を感じるほど艦艇横を向く進路飛行と近距離横断飛行のよう飛行をした。

 「威嚇飛行」の根拠として、「乗組員が脅威と感じた」「騒音と振動を感じた」ということを持ち出していますが、こんな感覚的なことを言われても、という感じです。

防衛省の最終見解でも、「防衛省は、実務者協議において、更なる客観的根拠の提示を求めましたが、韓国側からは、そのようなものは示されず、逆に「脅威を受けた者が、脅威と感じれば、それは脅威である」などの全く客観性に欠ける回答を繰り返してい
ます。」と指摘されています。

艦艇横を向く進路飛行と近距離横断飛行の事実も、日本防衛省の映像からは否定され、韓国側がそれを肯定する証拠は一切出していません。

「救助活動中は助けてくれるはず」⇒なぜSOS無し?

友好国艦艇が救助活動中の場合は助けてくれるのが常識なのに

ならばなぜSOSを日本側に出さなかったのでしょうか?

レーダー照射がされた場所は日本側のEEZです。沿岸国に救助を求めることが最も効率的であるはずなのですが。

SOSを出さなくとも、P1哨戒機に対して無線交信で「救助活動中である」と伝えなかったのはどうしてでしょうか?

韓国の声明は、韓国がおよそ不合理な行動をしていたということを示してるだけです。

レーダー照射をしていない再現実験???

언론보도 바로보기

我々は日本側の主張を真剣に検討して細かい検証作業まで進行した。当日と同じ条件で実施した2回の再現実験、乗組員のインタビュー、システムに保存された資料の分析などを通じて、当日、私たちの艦艇から追跡レーダー(STIR)が照射されていなかった明らかな科学的結論に達した。

この件は韓国メディアも報じています。

[정치][자막뉴스] 일본 측 '레이더' 주장 반박하는 실험 공개

軍は、同じ場所で、天候や波の高さなど、複数の条件を合わせ、北朝鮮漁船救助作業に出た海洋警察のサンボンギョ(三峰号)も再び動員しました。広開土大王艦とサンボンギョは救助作業時と同じようレーダーを作動し、起動もそのまま再現しました。海軍哨戒機P-3Cを浮かべるなど、2回の模擬実験の結果射撃統制レーダーは全く捕捉されなかったと明らかにした。

しかし韓国メディアの表現では「사격통제레이더」=射撃統制レーダーとなっているのに対し、韓国国防部は「추적레이더」 =追跡レーダーとなっています。

これらは別のものを指しているのではないか?という疑問があります。

いずれの意味なのか、韓国メディアが間違えたのかは別にして、この「再現実験」については各所から突っ込みの嵐です。

そうです。火器管制レーダー(FCレーダー)を照射したなら韓国海軍のP3Cが探知していないというのはおかしいですし、照射していなかったならそもそも捕捉できないので、「再現実験」になる訳がないのです。

そのような性質のものを「再現実験をして証明した!」と言うのは、明らかに政府レベルに対するものではなく、国内の頭の弱い人か、世界の一般人向けのものでしょう(流石に韓国国民はバカにされ過ぎだと思います)。

レーダー周波数は公開できないから実務協議で交換できないから日本はレーダー波形を公開しろ

언론보도 바로보기

艦艇の追跡レーダー周波数の仕様については、非常に高いレベルの軍事機密事項として、これを公開する場合には、機密が露出して、私たちの艦艇の武器体系すべてを変更する必要があるという問題に直面することは日本側もよく知っているものである。実務会議で、これらの絶対的な非対称性を持つ情報を交換しようという主張を曲げない日本側の意図が分からない。

この一節を取っただけでも意味不明なのが分かるでしょうか?

韓国は「公開」すると機密が露出すると言ってます。

「じゃあ実務協議で秘匿をかけて交換しましょう」

日本側は12月27日の実務者会議からそう主張しているのですが、韓国側は拒否。

暗に「日本が秘匿を破って公開する」という前提であるとしか思えません。

にも関わらず、韓国は日本に対して「探知したレーダー波形を「公開」しろ」と言っているのです。

レーダー波形を公開すれば、同じSTIR180を装備している多数の国にとっても不利益になるのであり、レーダー製造会社の怒りを買うことになります。そのような行為を韓国は求めているということで、他国も韓国側の要求は「ふざけるな」と思っているでしょう。

もはや話が通じる相手と思う方が無理があります。

「相手が怯えてないから脅迫ではない」という謎理論

언론보도 바로보기

通常、航空機が追跡レーダー照射を受けた場合、速度を最大に加速して回避飛行をするのが一般的であるのに対し、P1哨戒機は加速もせず、むしろ1次照射を受けたと主張した時点以降、私たちの艦艇の方向に旋回する異常な起動を行った。

これは「私が包丁を突きつけたと言うが、仮にそうだとしても相手が怯えていなかったから脅迫ではない」と言っているようなものです。

「全速力で逃げなかったのだからレーダー照射の事実は無い」論は成り立ちません。

しかも、P1は「離隔」動作を行っており、一応は「逃げる」行為をしています。

無線交信については開き直り

언론보도 바로보기

通信関連、日本側が主張した3種類の無線呼び出しの中でただ1種類だけやっと聞くことができたのは事実であり、残りの2回の呼び出しは、最初から録音さえされていないことを確認した。これにより、韓国側は、残りの二つの呼び出しが実際送出されたかを確認することができる記録の記録などを日本側に要請したが、何の答えがない。 

受信が可能であったVHF 156.8MHzへの通信呼び出しもノイズ過多、受信感度不良、一側のパイロットの不正確な英語の発音で通信で「Korea South」と言及したことを「Korea Coast」(海警呼び出し)と通信の監視員が誤って聞こえたと日本側に説明したものである。

録音されていない原因を「日本側が送出していなかったこと」にしています。

無線交信において送出記録を残すということって、一般的なのでしょうか?

日本の映像で「KOREAN SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971, THIS IS JAPAN
NAVY.」と言っていることを明らかにしたのに、未だに『「Korea Coast」と言っていた』という嘘をついてます。

まとめ:報道には現れない韓国の異常性

「国際社会の和合には役に立たない不適切な世論戦をこれ以上しないことをもう一度厳重に促す」

これは韓国の見解の締めの一節ですが、日本が映像公開したことがダメージになっているということがありありと感じられます。

むしろ韓国自身が政府相手には通用しない「世論戦」を行っているとしか思えません。

ここで取り上げた内容はあまり報道で取り上げられることはありません。

たぶん、あまりにもばかばかし過ぎて報道してないのでは?とも思います。たしかに報道する価値があるのか疑問です。

それでも韓国側がどういう主張をしているのか、一度しっかり理解しようと試みた次第です。疲れました。

以上

韓国が「証拠」の写真画像を公開:P3C哨戒機低空威嚇飛行捏造問題

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日本のP3C哨戒機が韓国艦艇「大祚栄」上空を低空威嚇飛行したと主張される問題。

韓国が証拠の「画像」を公開しました。

映像ではありません。画像です。

相変わらず突っ込みどころ満載です。

韓国国防省には「証拠画像」の該当ページ無し

대한민국 국방부

今のところ、韓国の国防省のHPには、「証拠写真」は公開されていません。

「低空飛行が明らか」とまで言っていたのになぜ公開しないんでしょうね?

 ツイッターとフェイスブック等でしか確認できないのですが。

P3C哨戒機の実際の高度と「大祚栄」との距離は…

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P3C哨戒機の大きさの規格から判断可能ですね。

P3C哨戒機は幅30.4メートル 全長35.6メートル 高さ10.3メートルです。

この画像に収まる範囲で言えば、P3C哨戒機と画像下端までの距離は約70メートルと言えそうです(笑)

しかし、海面や韓国艦艇までの本当の距離はこの写真からは不明です。

ただ、実際はもっと高い高度を飛行していたということは明らかでしょう。

明らかに150mの飛行をしていたという日本の主張が相対的に正しいと分かります。

この画像以外にも4枚の画像を公開していますが、海面を映したものはありません。

韓国が「証拠」の写真公開 “低空威嚇飛行”問題 TBS NEWS

なお、ポールは大祚栄艦のアンテナです。

動画・映像は?

韓国は動画については「急いで撮ったため短い」として公開には消極的とのことです。

これはありえない言い訳です。

威嚇飛行:再発防止求めるも6日間で3回「日本の底意を疑わざるを得ず」-Chosun online 朝鮮日報

大祚栄は日本の哨戒機による接近飛行に20回余りにわたって警告通信を行った。大祚栄は「貴軍は韓国側に接近している。経路を離脱せよ。これ以上接近すれば自衛権的措置を取る」と警告したが、哨戒機は応答することなく、約35分にわたり大祚栄の周辺を旋回したという。

20回も警告通信を行う余裕があり、35分も旋回していたということです。

なぜ動画が撮られてないのでしょうか?

「映像が短い」というのは意味不明でしょう。

しかも前回は海警庁からの短い動画を公開していたのに、矛盾行動が極まっています。

低空威嚇飛行への警告の呼びかけ無視の証拠は?

20回余りにわたって警告通信を行ったというなら、韓国はその際の映像なり音声は公開しないのでしょうか?

自衛隊トップが“威嚇飛行”を否定「韓国側は冷静な対応を」 | NHKニュース

韓国軍が23日、自衛隊機による威嚇飛行があったと発表したことについて、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長は、24日の定例会見で、距離は1000メートル以上離れていたとして韓国側の主張を否定したうえで、「冷静な対応を求めたい」と述べ、現場の緊張感を高めないことが重要だという考えを示しました。

この中で、河野統合幕僚長は、韓国側が高度60から70メートルの低空で自衛隊機が威嚇飛行をしたと主張したことについて、「自衛隊の飛行記録では、高度が150メートル以上、距離は1000メートル以上離している」と述べ、韓国側の主張を否定しました。

また、韓国側が無線でおよそ20回、警告したものの自衛隊機から応答がなかったとしている点についても、「呼びかけに対し、国際法などにもとづいて安全な距離、高度で飛行している旨の回答をしている」と述べ、自衛隊側の対応に問題はなかったと説明しました。

日本は 「低空飛行」も「威嚇飛行」 も「呼びかけ無視」の事実も否定しています。

日本側は適切に応答したのですから、日本側にも交信時の音声の証拠があるわけです。

韓国側が音声の「証拠」を出してこないのは自明の理でしょう。

韓国側が韓国側の音声を公開したら、それに対して応答していた証拠を日本が出すのでバレますからね。捏造音声を公開しても同じです。

まとめ:「低空威嚇飛行捏造問題」が発生

今回の事案は「韓国による日本哨戒機が低空威嚇飛行をしたとする捏造問題」「韓国による日本哨戒機が無線交信に応答しなかったとする捏造問題(しょーもない)」です。

なんか、日本の防衛省や政府関係者は呆れてる感じがしますが、ここで「札束でぶん殴る」くらいやらないとダメでしょう。

この程度ならわざわざ飛行記録等を日本が公開するまでもなくよさそうな気がしますが、息の根を止めて欲しいという気持ちが少しあります。

以上

韓国が映像公開予定「日本哨戒機低空威嚇飛行」の嘘・捏造をした理由の分析

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21g.html

日本哨戒機が韓国艦艇に低高度で威嚇飛行と韓国国防省 - 産経ニュース

국방정책

1月23日、韓国国防省が新たに日本の哨戒機が東シナ海の岩礁「離於島(蘇岩礁)」沖で韓国海軍の艦艇に低空で接近する威嚇飛行を行ったと主張しました。

当然日本側は威嚇飛行であることを否定しています。

これについて韓国が映像公開する方針だとの報道もありますが、まぁ捏造ですね。

なぜ韓国がこのような虚偽を発表するのか、その理由を考察していきます。

離於島沖で日本哨戒機が低空威嚇飛行の報道

韓国国防相「自衛権的措置の実行」に言及 日本を批判|au Webポータル国際ニュース

離於島は韓国と中国が管轄権を争っており、周辺は日中韓の防空識別圏が重なる。声明によると、哨戒機は海軍艦艇が明確に識別できる状況にありながら、距離約540メートル、高度約60~70メートルの「低高度の近接威嚇飛行」を行ったという。韓国軍関係者によると、韓国側は哨戒機に数十回の警告通信を行い、「離脱せよ」、「これ以上、接近するなら自衛権的措置を取る」などと呼びかけたが、哨戒機は通信に応じず、周辺の旋回を続けたとしている。今月18日、22日にも韓国艦船に「威嚇飛行」を行ったとも主張している。

韓国国防省は、「明白な挑発行為」と認定したうえで、「このような行為が繰り返される場合、軍の対応行動規則に沿って強力な対応を取る」と主張しています。

いろいろ突っ込みどころがありますが、まずは「自衛権的措置を取る」と呼びかけた点について、非常におそまつな顛末があったので指摘します。

「自衛権的措置」から「対応行動規則」にトーンダウン

威嚇飛行:「次からは自衛権措置」…韓国軍の超強硬対応案が発表直前に削除-Chosun online 朝鮮日報

韓国国防部は当初、公式発表文草案に「再びこのような行為が繰り返される場合、我々は自衛権的措置を含め強力に対応していく」という文言を入れていた。「自衛権的措置」とは、韓国軍が2017年まで北朝鮮の核実験やミサイル発射のような挑発行為に対して断固とした対応を取ると宣言する時に使っていた表現だ。自衛権的措置には警告放送のほか警告射撃や実際の射撃(ミサイル発射など)が含まれる。日本の自衛隊哨戒機の近接威嚇飛行が続くなら、北朝鮮に対する懲らしめに準ずる行動に出ることもあり得るという意味だ。ところが、最終的な発表文では「自衛権的措置」という文言を外し、「対応行動守則」という文言に強硬度を下げた。国防部は発表文を発表する時も鄭景斗長官が自ら記者会見室で発表するとしていたが、直前に韓国軍合同参謀本部の徐旭(ソ・ウク)作戦本部長(陸軍中将)に交代した。

本当に「自衛権的措置」ということをP3C哨戒機に向けて発していたら大変です。

「哨戒機の威嚇飛行=ミサイル発射」とするような話ですからね。

自衛隊機が通信に応じなかったと韓国側は言ってますが

むしろ日本側が問題視して取り上げる内容ですね。

「(仮に威嚇飛行してたとしても)この程度で自衛権的措置ってどういうことだ!?」

という感じで、日本側が意図的に無視する必要がないんですが。

韓国側も「これは無理矢理過ぎた」と思ったから「対応行動守則」にしたんでしょう。
それでも強行な姿勢ですが:日本の挑発に対する国防部の対応行動守則とは : 政治•社会 : hankyoreh japan

こうした点からも「低空威嚇飛行」の事実は非常に疑わしいと言わざるを得ません。

なお、論理的に日本側が機械等の故障で傍受していなかった可能性は残りますが、その可能性は元々低いうえに、そもそも「威嚇飛行」をしていたかどうかが問題です。

日本防衛省は威嚇飛行も呼びかけ無視も否定

自衛隊トップが“威嚇飛行”を否定「韓国側は冷静な対応を」 | NHKニュース

韓国軍が23日、自衛隊機による威嚇飛行があったと発表したことについて、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長は、24日の定例会見で、距離は1000メートル以上離れていたとして韓国側の主張を否定したうえで、「冷静な対応を求めたい」と述べ、現場の緊張感を高めないことが重要だという考えを示しました。

この中で、河野統合幕僚長は、韓国側が高度60から70メートルの低空で自衛隊機が威嚇飛行をしたと主張したことについて、「自衛隊の飛行記録では、高度が150メートル以上、距離は1000メートル以上離している」と述べ、韓国側の主張を否定しました。

また、韓国側が無線でおよそ20回、警告したものの自衛隊機から応答がなかったとしている点についても、「呼びかけに対し、国際法などにもとづいて安全な距離、高度で飛行している旨の回答をしている」と述べ、自衛隊側の対応に問題はなかったと説明しました。

「低空飛行」も「威嚇飛行」 も「呼びかけ無視」の事実も全て否定しています。

否定するだけでなく、飛行記録を公開すれば韓国側の虚偽が明らかになると思うのですが、それはやらないのでしょうか?

自衛隊哨戒機の飛行映像・呼びかけ音声は出すのか?

数十回の警告通信を行い」という韓国側の主張が本当であるならば、映像を撮影する時間的余裕は十分にあったのであり、当然映像公開するでしょう。

呼びかけをしたと言うので、おそらく呼びかけている音声も公開するでしょう。

それが本物なのかどうかは、映像を見て判断しましょう。

日本側としては、飛行記録を出せば終わりな話と思われるので、しばらく相手の出方待ちということになりそうです。

「低高度=威嚇飛行」ではない

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x.html

低高度の飛行が直ちに威嚇飛行になるわけではありません。

12月のレーダー照射事案で日本の防衛省が150mを基準として提示したのは平時に民間法規に準じた「配慮」をしていたというだけの話です。

軍用機に対して高度制限を課す何らかの国際法規があるわけではありません。

よって、本来的には軍用機の飛行高度は、極端に接近しない限りは問題視されません。

一般的には飛行パターン(飛行態様)が問題視されています。 

実際、韓国艦艇に同程度接近した過去の事案は複数あり、何ら問題視されていません。

よって、仮に今回自衛隊機が「距離約540メートル、高度約60~70メートル」の飛行をしていたことが事実だったとしても、それが「威嚇飛行だったか」が問題であって、直ちに日本側に落ち度があるという話ではありません。

「今回だけ問題視した」ことを誤魔化そうとしている

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x.html

今回の韓国側の言動は、防衛省の最終見解の上図の指摘が痛かったんだと思います。

「12月の事案だけなぜ問題視したのか?」「北朝鮮船舶と何をしていたのか?」

これが争点になってくるからです。

韓国側としては「12月の事案だけ反応した」という印象を薄めるために、早めに別の事案で日本哨戒機の飛行に難癖をつける必要があると考えたのでしょう。

加えて、韓国側が高度150m、距離500mを問題視したことによって、同種事案は今後も問題視し続けるという意思表示であることも考えられます。

レーダー照射の論点ずらし:悪い奴がごね得する

更に、忘れてはならないのが、韓国側は「韓国軍によるレーダー照射事件」を「日本の哨戒機の低空威嚇飛行問題」にすり替えようとしているということです。

基本的に100%悪い者はごねた方がイーブンに持って行ける可能性が上がるのです。

そうした目的からも、今回1月23日の「低空威嚇飛行」を主張したのでしょう。

とにかく韓国は政府・軍レベルでは通用しない印象操作を世界の一般人に対して行うことに腐心していますから。

まとめ:評価の問題ではなく事実認定の問題

ここまで日本側は「未来志向」とか「真摯に努力する」などと言ってきました。

しかし、「数十回の警告通信を行ったが、哨戒機は通信に応じず」などということが、虚偽の事実を捏造しているなら、「韓国は捏造を止めよ」と言わなければならないと思います。

「威嚇飛行か否か」は「事実に対する評価の問題」と見る余地がありましたが、「無線通信に対する反応」については純粋な「事実認定の問題」だからです。

自衛隊員の命にとどまらず日本国の主権を危険に曝す政策判断があってはならないと思います。

以上

防衛省まとめ:韓国海軍艦艇によるP1哨戒機への火器管制レーダー照射事件

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韓国海軍艦艇によるP1哨戒機への火器管制レーダー照射事件について。

まとめページが防衛省のHPにあります。随時更新されるでしょう。

日本政府の見解を把握するためにはそちらを見ると良いでしょう。

その他、補足的に情報源を書いていきます。

防衛省の火器管制レーダー照射事案まとめ

こちらのページに経緯・動画・音声・関連ページへのリンクが貼られています。

「火器管制レーダー照射事件 まとめ」などの検索クエリで防衛省のページが上位表示されていないようなので、そちらに誘導するためにここに掲載します。

韓国海軍艦艇のP1哨戒機へのレーダー照射事件の記事

幣ブログでも本件について記事を書いていますので、関連するものを貼ります。

まずは初期のものについて

「P1哨戒機低空威嚇飛行」コラ画像など印象操作まとめ

サムネイル画像にP1哨戒機が韓国艦艇に対して低空でアプローチしているかのような画像が使用されている件の関連記事です。

NHKや共同通信について「この程度で騒ぐのはおかしい」という意見がありますが、これらの報道姿勢が韓国の動画のサムネイルに影響を与えたと考えられ、本件の事案においては少なくとも甚だ不適切だと言えるでしょう。

韓国海軍火器管制レーダー照射事案の報道のまとめ

日韓のメディアの報道内容を分析、検証したものです。

「韓国政府・軍の公式見解は何か?」について、各所で争いがあるようです。

現状では「韓国側は最初はレーダーを照射したと言ったが後で覆した。言ってることが二転三転している」という理解が主流のようです。

しかし、あくまで韓国政府の記者会見・国防部のHPに掲載されている情報ベースだと、(レーダー照射の事実に関しては)言ってることは一貫しているが、それは一貫した嘘である、というのが私の理解です。

この違いは、韓国側で「火器管制レーダー」という用語の使い方が通常とは異なっていることに起因していると思われます。

なお報道等で「国防部の情報筋が…」などと書いてるのは公式見解とは扱ってません。

ただ【当時の日本海海域の気象条件や無線交信の事実】についての見解がどうなっていたか?については検証していません。

韓国側「P1哨戒機が低空威嚇飛行」への反論

国際民間航空条約(ICAO)の適用について誤解があったので整理しました。

重要なのは、軍用機の高度を制限する何らかの国際法規は存在しないということです。

日本の自衛隊機は平時はICAOや航空法に準じて「配慮」しているに過ぎません。

軍用機は安全保障上の必要があればその基準より低い高度で飛行することもあります。

高度のみではなく、飛行パターン等によって威嚇飛行か否かが判断されます。

したがって150mより低い高度だからといってそれだけで威嚇飛行とはなりません。

日本の報道を受けた人の誤解について

ネット上では「政府の対応は生ぬるい」「弱腰だ」という論調があります。

その「あおり」を受けて勘違いが広まっていた例について正しています。

韓国政府の「反論動画」と「論点ずらし」について

韓国政府(ムンジェイン政権)がバカであるという前提に立ってしまうと、韓国側の常軌を逸した言動について理解を誤る可能性があるのではないか?という観点から、一種の予測をしています。

また、SNS上ではトンデモ論によって「日本側が悪い」と思わせる工作が行われている例があるので、そういったものに流されない・騙されないようにするための考え方をまとめています。

その他、事態の推移に合わせて随時更新していきます。

 以上 

「11歳100ミリシーベルト被曝の疑い 福島第一事故」の報道状況

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11歳100ミリシーベルト被曝の疑い福島原発事故で」という報道について。

私が放医研に確認した結果を記事化しましたが、この件がどのように報道されて、どのように受け止められているのかをまとめます。

「11歳100ミリシーベルト被曝の疑い」の初出は東京新聞

東京新聞:11歳少女、100ミリシーベルト被ばく 福島事故直後 放医研で報告:社会(TOKYO Web)魚拓はこちら

1月21日の6時57分に配信されています。紙面でも編集者の意見付きで掲載。

これを共同通信の47Newsが8時00分に配信しています。

地方紙は調べてませんが、その後NHKも20時04分に追随します。

福島の女児 甲状腺に放射線100ミリシーベルト被ばくか | NHKニュース魚拓

11歳100ミリシーベルト被曝の疑い 福島第一事故で:朝日新聞デジタル魚拓。朝日新聞のWEB版は21日の22時02分に配信されていますが、紙媒体では22日の朝刊で同じ内容のものが掲載されています。

yahooニュースやMSNニュースなどで広く拡散されたのは朝日新聞のWEB版です。

東京新聞の記事本文は必要な情報が揃っている

  1. 5万~7万cpmという数値が徳島大学のチームによって把握
  2. しかし、検出機器は本来使用されるべきものではないGM型だったため不正確
  3. その数値をベクレルに試算
  4. ベクレルに試算された数値をさらにミリシーベルトに試算
  5. 「100ミリシーベルト」は最大に見積もった極大値で科学的根拠は無い
  6. 「100ミリシーベルト」は等価線量であり実効線量ではない
  7. 「政府機関等が隠蔽」という評価は成り立たない。

私が放医研に確認した事実は上記1~6で、7がそれらから考えられる結論です。

東京新聞の記事は、上記の5以外の1~6の事実が分かるようになっています。

情報源は情報公開請求で入手したメモや関連文書、放医研です。

これ以降の報道媒体で、追加的な情報があるのはNHKです。

NHKは佐瀬教授や誉田教授、福島県、国にも取材

NHKの記事は情報源に対する取材の数という点では最も行動量のあるものです。

佐瀬教授誉田教授放医研、福島県、国に対して取材した内容をもまとめています。

ただし、21日の時点では国に取材した結果までの記述であり、後に佐瀬教授や誉田教授に対する取材結果や追加情報を追記しています。それにより全体としては放医研よりは佐瀬教授らの認識ベースで書かれていると言えます。

遅くとも22日中には等価線量と実効線量との関係が分かるように追記されています。

GMサーベイメーターやNaIサーベイメーターについては名前が出ていませんが「測定に適した機器が使われていなかった」という点でカバーしていると考えたのでしょう。

ところで、放医研の「100ミリシーベルトは仮試算であり最大に見積もった値」という情報は今のところどの報道にも現れていないのですが、放医研の側が伝えるべき情報について段々と整理がついてきたために私が聴いたタイミングで仰ってくださった、という可能性があると思います。或いはこれは「放医研の認識」に過ぎないので「事実」としては扱うことを躊躇した可能性もあるのではないかと思います。

NHKは福島県が「11万4000人を対象にしたスクリーニング結果の中で、今回のような数値を出した者は居ない」としたことを記事に載せています。

私は、東京新聞やNHKの記事それ自体は非難されるべきものではないと思います。取材担当者の仕事をリスペクトしたいと思います。

東京新聞の「デスクメモ」には底意がある

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東京新聞1月21日特報面

今回、明らかになった「一〇〇ミリシーベルトの女の子」。彼女を不確かな推計結果とみるか、氷山の一角とみるか。事の重大さを考えれば、後者とみて対応すべきではなかったか。

「氷山の一角」というのは事実として存在しているような場合に使う言葉でしょう。

上述のように100ミリシーベルトという値は検出値ではなく推計値です。

しかも、①厳密ではない検査機器での検出値を元に②2度、推計を挟んで、さらに③極大値をとったものが100ミリシーベルトという値です。

このような数字に対して「事が重大だ」と捉えることは一般的に理解不能です。

NHKによれば『誉田教授は「事故直後は混乱していたが、関係者が女の子の測定結果を受け止めていれば子どもたちにより丁寧なフォローができたかもしれない」』ということですが、女の子目線で考えた見解としてはそうなるでしょう。その後彼女に深刻な健康問題が生じたというなら少し話は変わりますが、そうではないでしょう。

科学的・統計的な視点で見れば、福島県が大規模なスクリーニングをした結果からは無視できる話であったということが示されています。

東京新聞の記事本文にある内容を正確に理解したのなら、どうしてデスクメモのような主張が出てくるのか?底意があると思わざるを得ません。

読者がデスクメモの見解に引きずられて記事本文を理解するのが狙いなのでしょう。

内容を薄めて「がんのリスク」を強調した朝日新聞の記事

さて、私が書いた記事では朝日新聞を主に名指ししています。

朝日の記事日を跨いだ後発のものであるにもかかわらず東京新聞やNHKの記事で書かれていた重要な内容が削られています

記事の構成も、事実経過を記述する前に「甲状腺に100ミリシーベルト被曝すると、がんのリスクが増える」『これまで国は「100ミリシーベルト以上被曝した子どもは確認していない」としてきた。』という文が先に来ており、強調されています。

一般の読者は「等価線量」と「実効線量」の存在は分かりませんから、『甲状腺に100ミリシーベルト被曝の疑い」という表現だけで、正確な理解ができるとはまったく期待できません。

私も「何かがおかしいのでは?」と思って調べた結果、等価線量を指しているということに気付いたのですから。

SNSでは「隠蔽」という評価も

プロフィールにそれなりの立場が書かれている者が「隠蔽」と評価する例があります。

魚拓:http://archive.is/PrXJW http://archive.is/YB4Wf

魚拓:http://archive.is/VSa4P http://archive.is/j97o8

魚拓:http://archive.is/ELHFG http://archive.is/9XHo0

それなりの立場がある者ですらこうなのですから、一般人が一読したらどのような評価になるのか、という懸念を持つのは、何ら不思議なことでは無いでしょう。

まとめ:地方紙が報じ、全国紙が乗っかって拡散する構図

今回の報道状況は、東京新聞という地方紙が情報公開請求までして整理した情報について、朝日新聞という全国紙が内容を薄めて拡散していたということです(その間、NHKのように追加取材した所もあるにもかかわらず)。

このような報道のされ方は他にもあり、沖縄県の政治問題についてはよくこのような状況がみられます

こういう報道状況では初出の記事内容よりも後発の大手紙の紙面から生じる認識が世の中に広がります。その記事内の記述に嘘がなくとも、読者の受け取る認識が好ましくないものになる危険性が高い報道は数多くあります。

特に福島第一原発事故関連の報道では、このような報道が繰り返されてきました。

福島の風評被害を継続させかねない構図には注意しなければならないと思います。

以上

放医研に確認:朝日新聞「11歳100ミリシーベルト甲状腺被曝」の実態

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朝日新聞の「11歳、100ミリシーベルト被曝疑い 甲状腺の周囲 福島第一事故」という記事内容について。魚拓はこちら

放射線医学研究所(放医研)に電話取材した結果をまとめます。

朝日新聞の記事は概ね事実を書いてますが、詳細が省かれています。
東京新聞魚拓)が初出のようですが朝日新聞の記事はこれをさらに薄めています。

最初に徳島大学のチームがCPMを計測した

まず、朝日新聞の記事では「5万~7万cpmの値が応援に来ていた徳島大のチームに伝えられた」旨の記述がありますが、違うとのことです。

放医研の広報課長マツハシ氏からは「事実は徳島大学のチームが5万~7万cpmの値を計測し、それが郡山の文部科学省緊急災害対策センター(EOC)に伝えられ、放医研はEOCから情報共有をした」というものであると説明されました。

この5万~7万cpmという値を出したのは放医研ではありません。

その後、この数字をベースに試算がなされますが、後述するようにこの数字自体が科学的な信憑性に乏しいものであると判断されています。

人体用ではない機器で測定した数値

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https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/201510mat1s-01-4.pdf

上記の5万~7万cpmという数値を測定したのは「GM型のサーベイメーカー」を用いて行ったものであるということでした。

これは科学的に正確に人体内部の被曝量を検出するためのものではありません。

空間の線量や物体の表面の線量を検出するために用いられるものです。参考例。 

人体内部の被曝量を科学的に測定するためには、本来は「NaI型」というものを使うのが一般的です。体内にとりこまれたものだけを正確に検出する必要がある際にはこちらを使います。

GM型でもまったく無意味ではありませんが「科学的には無意味」 になります。

放医研の広報課長はこのような機器での検出となった理由について、徳島大学で用意している機器に限りがある中で非常に多い人数の測定をする必要があった結果、サーベイメーカーが不足していたのではないか?と推測されていました。

CPMからBqへの試算、そして等価線量への再試算

このような経緯のある5万~7万cpmという数字について、人体への影響を考えるために当時徳島大学のチームに居た放射線の専門家である佐瀬氏を中心にBq(ベクレル)という数字に試算しました。

それが「十数キロベクレルの可能性がある」という試算結果となりました。

これも試算であり、直接検出したものではありません。

そこからさらに情報がEOC⇒放医研へと渡って、放医研の対策本部会議で情報共有されました。

放医研は放射線医療を専門にしているため、「5万~7万cpm」や「十数キロベクレル」という数字では実態を掴みづらく、放射線医療のための把握に資さないことから「等価線量(※実効線量ではない)になおしてみよう」というレベルの話だったのです。

CPMから直接等価線量(mSv)を計算で出すということは出来ないので、ベクレルから等価線量を試算で出してみたということです。

当然ながらこのような計算は通常は行いません。正確な実態を反映しないからです。

「100ミリシーベルト」は極大値の見積もり

更に100ミリシーベルトという数値は最大限に見積もった数値であるとのことです。

当時の放医研の内部でも「実際上はここまでの数値にはならないだろう」「過大評価だろう」と扱われていただろうとのことでした。

本来は計算しないものを無理やり計算してみたものであり、放射線被害の規模を計算上枠づけるためには最大でどれくらいか?ということは示す必要があったものと思われます。

「政府等の機関が隠蔽していた」との印象は事実と異なる

さて、この数字は計測後に情報共有されましたが、上述の通り科学的根拠のない単なる参考値に過ぎません。

EOCから放医研に「数字を出せ」という依頼があったのではありませんから、放医研としても公表を前提として算出した数値ではありません。

仮に放医研が国から「CPMから等価線量を算出してよ」などという正式な依頼を受けたとしたら、「科学的な根拠のある数値ではないと報告するだろう」ということでした。

こうしたことから、この数値が今出てきたことについて「隠蔽されていた!」と騒ぐのは無理やり過ぎて話にならないということが分かるでしょう。

そして「100ミリシーベルト」という数字自体もネット上では勘違いされています。

100ミリシーベルトは【甲状腺等価線量】

ここでの「100mSv」は【甲状腺等価線量】であり【実効線量】ではありません。

実効線量」は私たちがよく報道等で目にすることのある数字です。

1時間あたり空間被曝線量が〇〇μSv年間の被曝線量が〇〇mSvでよく表現されます。

実効線量は人体全身で受けた被ばく量を表します。

対して「等価線量」は一部位への影響を考慮するために適用される数値です。

ICRP 2007 での甲状腺の組織加重係数は 0.04です。

したがって、100mSvを 0.04 倍した 4 mSv が実効線量ということになります。

もちろん、甲状腺等価線量のスクリーニングレベルはmSv換算で100mSvなので、実際にこの数値が検出されていたということであれば一応は問題です。

しかし、それでも【たった一例に過ぎない】ので、 科学的に意味のある情報かというと疑問符がつきそうです。

まとめ:「11歳100ミリシーベルト被曝」に踊らされるな

  1. 5万~7万cpmという数値が徳島大学のチームによって検出
  2. しかし、検出機器は本来使用されるべきものではないGM型だったため不正確
  3. その数値をベクレルに試算
  4. ベクレルに試算された数値をさらにミリシーベルトに試算
  5. 「100ミリシーベルト」は最大に見積もった極大値で科学的根拠は無い
  6. 「100ミリシーベルト」は等価線量であり実効線量ではない
  7. 「政府機関等が隠蔽」という評価は成り立たない。

朝日新聞の記事はこれらの事情のうち、5番目と6番目については読者が把握できるようになってません。また、東京新聞は6番について確認できますが、実効線量との関係は書かれていません。

現在、数字だけでなく数字の性質までもが独り歩きしかねない状況ですが、正確な理解が広まってほしいと思います。

なお、放医研としては今回の報道によって何かコメントを出すということは、今のところは考えておらず、事態の推移によっては何らかの判断をする可能性があるとのことでした。

以上