事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

津田大介・表現の不自由展中止に関する外国特派員協会記者会見

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愛知県の芸術祭である「あいちトリエンナーレ」において表現の不自由展という展示が中止された件について、トリエンナーレの芸術監督の津田大介が外国特派員協会で記者会見をしました。 

津田大介が外国特派員協会記者会見

45分から質疑応答が始まります。

気になった点を書いていきます。

菅官房長官ら政治家らの発言が問題だという主張

57分20秒頃に菅官房長官がトリエンナーレについて、補助金に言及したことについて津田大介が「驚いた」と言っていました。

詳細は上記で説明していますが、文化庁からの補助金交付の流は下図の通りです。

現在は補助金が「採択」はされましたが、交付は決定されていません。

補助事業実施後に実績報告書が提出され、それを審査した上で交付決定をするという運びになっています。

菅官房長官は、「事実を確認して適切に」としか言っておらず、当然のことを言っているに過ぎません。

 

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表現の不自由展実行委員会側との協議が必要では?の質問

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朝日新聞記者からの質問 1時間12分20秒くらい

展示中止はどういうルールというか権限で行ったのか。展示中止には表現の不自由展実行委員会との協議が必要ではなかったのか、そのへんのルールはどうなっているのか」

津田「検証委員会でも瑕疵がなかったのかは検討中ですが、表現の不自由展実行委員会を中心としたグループは一作家としての立場でもある。そういう意味で、トリエンナーレ実行委員会は作家と直接契約は結んでいない」

「不自由展との協議も含め、安全に管理運営ができなかったのは契約に基づく判断だった」

要するに津田大介側としては、表現の不自由展側とは協議の上で決定したことであると認識しているということでしょう。この質問の前に、上記スライドで認識の違いについて説明していました。動画の時間としては1時間くらいのところです。

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しかし、津田大介の説明だと、津田-大村-不自由展の3者しか登場人物が存在していません。上記の契約書ではチーフキュレーター・キュレーターも含めて協議することとされていることから、「契約上の協議」がなされているとは到底思えません。

大村知事は展示中止の判断はトリエンナーレ実行委員会規約の「会長の専決処分」として行ったと言っていますが、これはトリエンナーレ実行委員会の内部規約に過ぎず、表現の不自由展側に対して対抗できるものではないでしょう。

まとめ:検閲や表現の自由の問題ではない

あいちトリエンナーレの表現の不自由展の展示中止に関して、作品選考時の拒否は「検閲にあたるからできない」だとか、「展示中止は事後検閲だ」とか「政治家が内容に踏み込んで否定的な発言をするのは表現の自由の侵害だ」などと言われていますが、そんなものは全部フェイクです。

表現の不自由展側は、トリエンナーレ実行委員会から「作品の選考・制作・展示をする義務」が生じる(準)委任契約の受任者であり、単なる契約関係の問題です。

公立の場所を借りて芸術作品を展示している民間事業と同じように考えることは出来ません。

以上

愛知の芸術祭:トリエンナーレ検証委員会で芸術監督の業務内容が判明

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あいちトリエンナーレ検証委員会で芸術監督の業務内容の定めが判明しました。

津田大介は芸術監督の業務契約に違反しているのではないでしょうか?

トリエンナーレ芸術監督の業務内容

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 - 愛知県

議事概要(あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 第1回会議) - 愛知県魚拓はこちら

【6 あいちトリエンナーレ2019芸術監督の業務内容等について】

平成29~31年度のものまで載っています。

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津田大介は芸術監督の契約違反?

あいちトリエンナーレが複数分野(現代美術、舞台芸術、普及・教育)の芸術祭であることから、各分野を包含して普遍的な意義や理念をメッセージとして分かりやすく国内外へ発信する。

この文言にどれだけの意味があるのかは正直よく分かりませんが、素朴な印象では、津田大介は表現の不自由展を認めたことで、この芸術監督の職務に反していると思うんですよね。

トリエンナーレ検証委員会の第一回の資料では芸術監督への委嘱状や契約書は添付されていなかったので、具体的な契約内容がどうだったのかは今後の検証になるんでしょうけれども。

「少女像」に言い換えた平和の碑

少女像と称する捏造慰安婦像も、作者は「正式名称は平和の碑であり、日本を非難する意図では無い」などと言っていますが、ならばなぜトリエンナーレへの出展に際して「平和の少女像」などと、「少女」という歴史的実態と異なる名称にしたのか?

歴史的事実と異なる実態を印象付けることが「普遍的な意義や理念」なんですかね?

そりゃあ一部にはそういう不幸な例もあったんだろうと思いますが、基本的には一定の年齢以上の者が募集されていたのが事実。当然、歴史的に見て「強制」の主体に日本軍は含まれない。

もうこの時点で、「韓国政府や韓国人団体が政治利用しているためにイメージが付いているが、それは関係ない」などと言うのは詭弁でしかない訳です。完全にそのイメージを利用してるでしょう。

昭和天皇の御尊影を燃やしたのではないという詭弁

昭和天皇の顔写真をコラージュした図版が、最後に昭和天皇の御尊顔が残る形でガスバーナーで焼却され、灰になった後に靴で踏みつぶされる映像。

これについて映像の作者は「過去に富山美術館で自分の作品の図録が焼却処分されたことを表現しているだけであり、昭和天皇の写真を燃やしたというのは誤解だ」などと言っています。

これって「普遍的な意義や理念をメッセージとして分かりやすく」伝えていますかね?

そもそもそういった経緯を知らない人がほとんどでしょう。

さらに、富山美術館で焼却処分されたのは作品本体ではありません。図録です。

その上で、今回、あらためて生々しい映像を新たに制作したことは、「過去に展示拒否された作品を再展示する」という当初の予定とも逸脱しています。

他のルールでは政治活動目的が禁止されている

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まず、トリエンナーレの全体像は上図のようになっています。

が、それぞれの展示において個別にルールが設けられている例があります。

  1. トリエンナーレ本体では無いパートナーシップ事業の団体参加要件
  2. トリエンナーレとは別の愛知県の補助金支出要件
  3. トリエンナーレの舞台芸術公募プログラムの要件(表現の不自由展は国際現代美術展)

上記には「政治活動目的」が禁止されています。

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あいちトリエンナーレの連携事業のうち、パートナーシップ事業の上図のページを見てみると、「宗教活動や政治活動を目的とする事業でないこと。」という制限があります。

パートナーシップ事業はトリエンナーレ本体とは別個の展示やパフォーマンス等なので、表現の不自由展はこの除外ルールとは直接的には関係ありません。

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愛知県文化活動事業費補助金 募集案内(上図)を見ると「政治的又は宗教的意図を有する事業」については補助対象事業から除外されています。

過去の補助対象事業を見ると、トリエンナーレに参加する団体の一つに対して交付されている事例が見つかりますが、トリエンナーレ全体に対して交付されるようなものではありません

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検索結果一覧 - 愛知県(愛知県芸術文化選奨選考委員会開催規程)のワードファイルを見ると、舞台芸術公募プログラム募集要項では「政治的宣伝意図を有するもの」が禁止されています。

こういった個別のルールを見ると、やはり政治的な要素があるものはトリエンナーレにはふさわしくないという認識が愛知県側には存在していたと言えるでしょう。

まとめ:自己矛盾行為の強制となる政治的メッセージは「普遍的」なのか?

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政治的なメッセージのある何らかの表現が、すべて悪いなどとは思いません。

見ている側が勝手に風刺だと思い込む例もありますし、そういった要素から完全に抜け出せる・抜け出さなければならない、などということはありません。

問題は公的機関が主催する場において、公的機関の立場とは相いれない政治的な表現が行われようとしている際に拒むことができないとすれば、それは【自己矛盾行為の強制であるということです。国家間合意に反する含意のある像の展示や国家元首を貶める映像の展示を行政機関が行うことは自己の存在否定でしょう。

強制執行でもないのに自己矛盾行為の強制を受けるというのはおかしい。

そういう感覚こそが「普遍的な意義や理念」ではないでしょうか?

以上

トリエンナーレ検証委員会:少女像=捏造慰安婦像の展示撤去は表現の自由ではなく契約違反

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8月16日に開催されたあいちトリエンナーレ検証委員会の議事要旨と資料が8月23日にUPされていました。

そこでは重要な契約内容が示されていましたので紹介します。

あいちトリエンナーレ検証委員会議事要旨と資料

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 - 愛知県

議事概要(あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 第1回会議) - 愛知県魚拓はこちら

ここでは【12 契約書 [PDFファイル/386KB]】に絞って紹介します。

「展示義務」の(準)委任契約

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トリエンナーレ実行委員会と表現の不自由展(の各個人)との間で【業務委託契約】が結ばれていた事が分かりました。

契約内容を見ていくと、これは民法の典型契約に引き付けるならば(準)委任契約の性質のものです。

契約書の冒頭に「作品選定・制作・展示義務」とあるように、表現の不自由展側は契約上の義務として作品選定・展示等をしているのであって、表現の不自由展側を主体と考えるならば、これが表現の自由という憲法上の権利行使ではないということは明らかです。

民法上の委任契約は必ずしも代理権を伴う訳ではないですが、自己の名で取得した権利を委任者(本件の場合はトリエンナーレ実行委員会)に移転する義務があります。

民法 第六百四十六条 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

よって、作品の著作者から作品を「借用」した場合、その作品を利用する権利はトリエンナーレ実行委員会にある、ということになります。この契約において、そのような効果を排除する特約の存在は確認できません。

「借用」とはどういう意味か

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では「借用」とはどういう意味か?

通常の芸術作品の場合、民法上の典型契約であれば使用貸借と賃貸借があり得ますが、それに当てはまらない特別の契約が交わされている可能性もあり、今後の検証で明らかになることでしょう。

使用貸借と賃貸借であれば、作品の著作者らは表現の不自由展実行委員会(権利の帰属主体としては最終的にトリエンナーレ実行委員会)に対して作品を展示することを求めることはできません。そういう性質の契約ではないからです。

「借用」契約の本旨と展示の法的主体

そこで、特別の契約でそういった期待権はあるのかが問題になりますが、現時点で内容はほぼ確定されていると言え、そのような期待権は無いのではないでしょうか?

なぜなら、トリエンナーレ・表現の不自由展両実行委員会同士の契約書の1条3項(上図)を見ると、『乙等(不自由展側)は、出品作品の展示のため、所有者から借用した上での設置を…完了させるものとする』とあるからです。

これによれば、作品展示をする法的主体は著作者らではなく、あくまでも表現の不自由展側であるという「契約の本旨」が見て取れます。これと異なる内容の契約を表現の不自由展側と著作者らとで締結していた場合は不自由展側の債務不履行になります。

表現の不自由展はトリエンナーレ実行委員会の(準)委任契約を受けて作品を展示しているのですから、結局のところ、作品展示をしているのはトリエンナーレ実行委員会ということになるでしょう。

トリエンナーレ実行委員会はほぼ愛知県たる公的機関なので、作品展示は公的機関の行為であり、やはり「政府言論」と見る他ないと思われます。

表現の自由の問題ではなく【政府言論】トリエンナーレ表現の不自由展中止 

会社の営業マンが契約を取ってきても権利義務は会社に帰属するように、現実に動いている存在と法的な主体が異なるという事は、当然に発生していることです。

トリエンナーレ実行委員会・表現の不自由展実行委員会・著作者らの関係

  1. トリエンナーレ実行委員会
  2. 表現の不自由展実行委員会
  3. 作品の著作者

この三者の関係を考えていきます

作品の選考・制作・展示前段階での関係

以上みてきたように、どの作品を選考して展示するのか?という権限はトリエンナーレ実行委員会が有しており、表現の不自由展実行委員会は業務委託を受けたに過ぎません。

したがって、両者の関係において不自由展側の提案をトリエンナーレ側が拒否したとしても、それは表現の自由の侵害ではなく、論理必然的に検閲ではありません(広義の検閲ですらない)。あくまでも内部のルールに則って選定していれば問題は無いと言えます。

不自由展側と著作者らとの「借用」契約が特別なものであって作品展示の期待権があっても(トリエンナーレvs不自由展の関係では後者の債務不履行になる契約)、それはあくまでも両者の契約関係に基づいて発生している事柄なので、その場合に不自由展側が著作者らとの合意に反する行為をした場合には契約上の債務不履行の話にはなっても憲法上の表現の自由の侵害ではありません。

大村知事や津田大介の「検閲になるから」は完全に筋違い

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したがって、大村知事や津田大介の「検閲になるから」という論は完全に筋違いということになります。

これは本件が発生した当初から指摘していることですし、何より大村知事や津田大介の考える「検閲」概念では、既に彼らは「検閲」をしていることになり、矛盾しています。

また、トリエンナーレ「国際現代美術展」以外の展示や愛知県の補助金支給要件では「政治目的の事業」が禁止されている例が既にあるので、彼らの言い分ではこのルールの存在との整合性が取れません。

一度作品展示を承認しながら無断で撤回した場合=本件の場合

本件の特徴は、一度作品展示を承認しながら無断で撤回したということです。

著作者vs不自由展≒トリエンナーレ実行委員会≒愛知県らとの関係

不自由展≒トリエンナーレ実行委員会≒愛知県vs著作者らとの関係では、著作者らが展示の期待権を有していると認められる場合には実行委員会側が法的責任を問われることになるかもしれません。

日本国内の類似事案では図書館が購入した書籍が閲覧に供されたことによって、著作者らが著作物によって思想意見を公衆に伝達する利益が発生しているとしました。

その上で、図書館の規定のルールを破って書籍を無断廃棄したことについて、上記法的保護に値する利益が侵害されたとして損害賠償が認められました。

ただ、この判断は公立図書館が「公的な場」であると関係法規を参照して認定したことが前提にありますから、トリエンナーレの事情はかなり異なるために同様の判断になるかは分かりません。

不自由展vsトリエンナーレ実行委員会の関係

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トリエンナーレ実行委員会と不自由展実行委員会との契約書には、『出品作品の展示の撤去にあたっては協議をする』とあります。

これに対して、大村知事からは、今回はトリエンナーレ実行委員会の会長たる大村知事が、トリエンナーレ実行委員会規約の16条の「会長の専決処分」として独断で撤去を決定したと主張されています。

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しかし、専決処分はトリエンナーレ実行委員会における「運営会議」に関するものであって、対外組織である表現の不自由展実行委員会側に対してこれをもって対抗することはできないのではないかと思います。

よって、表現の不自由展側からトリエンナーレ実行委員会側に対して契約上の請求がなされた場合、後者は負けるのではないでしょうか。

まとめ:「公金支出をしてるから」は本質ではない

以上、法的な行為主体は誰か?に着目すると、トリエンナーレ事件の本質が見えてくると言えるでしょう。

それに対して「公金を支出しているから」というだけでは、この事件を捉えることはできません。

公金を支出していても、それが民間事業であれば、主体は民間です。

たとえ政府の方針に反する行為が行われていたとしても補助金の支出基準に準拠している限り違法でもなんでもないですし、基本的には政府がその行為を是認したと評価されるものでもありません。

今回の件で公金支出が問題視されているのは、公金が支出されている以上、支出の判断過程や審査基準が適切だったのかの事後的チェックを行うためであり、必要であれば新たな立法の検討をするためであるということに過ぎません。 

以上

メールを誤送信した場合の対策・取消し方法:Gmailの場合は送信取消し時間を長めに設定

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メールを途中で誤送信してしまった場合の対策・取消し方法。

Gmailの場合は「送信取消し時間」があるのでそれを長めに設定すれば取消しミスもなくせます。

Gmailで送信取消し時間を長めに設定

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他のEメールアプリケーションでもあるかもしれませんが、Gmailでは「送信取消し時間」が最初から設定されています。

設定変更は上記画像のような部分をクリックして「設定」画面に遷移します。

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送信取り消し」の項目がありますので、5・10・20・30秒の設定が可能です。

デフォルトは5秒です。

画面の最下部で「設定変更」ボタンを忘れずに押してください。

メールを誤送信した場合の対策・取消し方法

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では実際にメールを誤送信した場合の取消し方法について。

メールを送信した後は画面の左下あたりに上図のような表示が出てきます。

「取り消し」を押します。

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こうなるので、取り消しが成功したことになります。

そもそも送信が取り消せるということが分かっていれば、取消し時間を30秒にしなくとも良いかもしれません。

まとめ:誤送信対策はおろそかにしてはいけない

当たり前過ぎる話ですが、メール送信を取り消せるからといって、誤送信対策を疎かにしてはいけないということは肝に銘じておくべきでしょう。

たとえば、普段とは違うメールアプリケーションを利用しているときにGmailと同じ感覚で操作してしまうということが有りえます。

Gmailとは機能が異なる場合には、たとえ取り消せる使用であったとしても取消しが間に合わなかったりする、なんてことは起こりますからね。

たとえGmailを使っていても、PCの動作が固まっているせいで間に合わなかった、とか、他のアクシデントと重なって取消しボタンが押せないとか、そういう悲劇は起こり得るので、油断は禁物だと思います。

以上

愛知の芸術祭の「少女像=捏造慰安婦像」で黒岩神奈川県知事「表現の自由を逸脱」は間違っている

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神奈川県の黒岩知事が愛知の芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」における表現の不自由展の一部作品について「明確な政治的メッセージで表現の自由を逸脱」と評しました。

このような評価は非常に危険だと思います。

黒岩神奈川県知事「表現の自由を逸脱」は間違っている

動画の30分くらいから記者から唐突にトリエンナーレについて質問がありました。

朝日新聞記者 事務会の会見で伺うべきだったんですけれども、あいちトリエンナーレでですね、表現の不自由展というのがありまして、抗議が殺到して中止になりましたということがありましたが。県が関わる芸術展で名古屋市長と愛知県知事の主張が結構食い違っていてですね。大村知事の方は表現の内容までは行政側は踏み込むべきではないとおっしゃっている一方で、公金が出されている芸術展なので河村市長の方は日本人の心を踏みにじるみたいな意見もある。この辺りの見解についてですね、もし知事が同じ立場であったらどんな風に考えられるか、というあたりをお聞きしたいです。

黒岩知事 そうですね。あのやりとりというのは報道を通じて以上のことは私もよくわからないですけどね。しかし、皆さんと同じようなメディアという立場でずっといた立場としてですね、人間として、表現の自由ということは非常に大事だというふうに思います。ただそうはいっても、何でも表現してなんでも自由なのかと、それは違うだろうというふうに実は思っていますね。たとえば人を殺す瞬間がアートだと言う人が出てきたときにですね、人を殺すところをみんなの前でやって表現の自由だって、そういうのはありうる話ではないですよね。そういう何でもかんでも表現の自由で許されるということではないですね。で、河村市長と大村知事とのやりとりは別にして、もし同じようなことが神奈川県であったとしたならば、私は認めませんね。私は表現の自由ということから逸脱しているというふうに私は思います。或いは表現の自由だと認めるんでなくてあれは極めて政治的なメッセージでありますから、それに対して県の税金を使って主催・後押しするといったこと、それは表現の自由を後押しするという以上に政治的なメッセージを後押しするということ繋がると私は思いますから、それは県民の御理解を得られないと私は思いますから、そういうことがあったのなら、開催を認めないと思いますね。仮定の話ですけどね。

???記者 形としては公金を使ってやるものではない、ということなのか、それとも表現自体が行き過ぎているという判断なのかどちらでしょうか。

黒岩知事 どっちもですね。やっぱりああいう慰安婦像といったものは極めて政治的なメッセージであってですね、しかも事実を歪曲したような形での政治的メッセージですよね。そういうこと自体が私はおかしいと思いますね。それとともにやはりそれに対して公金を使って支援をするということなんて有りえないと思いますね。

時事通信記者 事実を歪曲している、捻じ曲げられているというのはどの部分にかかってくるのでしょうか

黒岩知事 要するに慰安婦の問題ですよね。慰安婦問題とされているものに対する主張ですよね

記者:慰安婦問題が存在したかしていないかという点ということでしょうか

黒岩 それは慰安婦問題が取り上げられている日本と韓国の様々な主張がありますよね。韓国の政治的な主張はある種一方的な主張だとだとおもいます。

記者 韓国の一方的な主張というのはどういった主張でしょうか

黒岩 強制的に連行していったようなニュアンスで伝えられていますよね。

記者 つまり強制連行があったということが…

黒岩 その問題について今日深く踏み込む話ではないですよね。

記者 結構大事なところだと思ったので、記事にするのに大事なポイントだと思ったので確認しているのですけれども

黒岩 その点は今までの議論を踏まえての私の判断だということです。

表現の不自由展における慰安婦像の展示についての黒岩知事の主張は、表現の内容が「事実を歪曲した」政治的メッセージであるのが問題であり、さらにそのような展示に対して公金を使って支援をするということは間違いだというものです。

「表現の自由を逸脱」ではなく「政府言論」

黒岩知事は「表現の自由を逸脱」と言っていますが、その判断は表現内容に着目した結果です。このような判断の仕方は非常に危ういと思います。

今回の事案は、行為者が「愛知県=公的機関」であり、民間ではないという視点が最も本質的で重要です。

詳細は上記記事で研究論文を引用して論じていますが、表現の自由は原則的に公権力に邪魔するなと言う権利であって、公権力に対して表現させろと言える権利ではないところ、本件は行為主体は愛知県=公的機関であって、表現の不自由展は履行補助者的立場にあるに過ぎないから、表現の自由の問題ではないということです。

素朴に考えてみれば、自分(政府)の方針と異なる行為を強制させられるのはおかしいという、ごくごく当たり前のことを言っているに過ぎません。

同様のことは横大道聡教授が朝日新聞デジタルで論じていますし、北村晴男弁護士メルマガで指摘しています。また、大阪の吉村知事(弁護士)や自民党の三谷英弘議員(弁護士)など、早くからこの問題の本質を「公的機関が主体」であることに言及していました。

もちろん、政府言論だからといって何をしてもOKということにはならないことには注意が必要です。今回の件は、作品選考前の段階では弾いても裁量の範囲内だが、展示後の撤回の場面で表現の不自由展との関係では、何らかの違法になる可能性があります。ただ、それは表現の自由に反したからということではない可能性が高いということです。

単なる「公金支出の問題」ではない

よって、今回の件を単なる「公金支出の問題」と捉えると、おかしなことになります。

公金を支出していても、それが民間事業であれば、主体は民間ですから、補助金の支出基準に準拠している限り、政府の方針に反する行為が行われていたとしてもそれは違法でもなんでもないし、必ずしも政府がその行為を是認したと評価されるものではありません。

今回の件で公金支出が問題視されているのは、公金が支出されている以上、支出の判断過程や審査基準が適切だったのかの事後的チェックや立法の検討が必要であるということに過ぎません。

政治的メッセージは表現の自由で保護されない?

黒岩知事の発言が危ういと言ったのは、政治的メッセージだから表現の自由を逸脱=表現の自由で保護されないと言っているという側面もあります。「表現の自由の濫用」は一応は表現の自由の枠に入っていますが、それとも違っています。

これの何が問題か?

ある行為が表現の自由に入らないと言ってしまえば、それを公権力の側が侵害したとしても、正当化される余地が大きくなってしまいます。その判断は事実上恣意的になされるので、国民の表現行為に対する「萎縮効果」が大きく働いてしまいます。

ですから、よほどのことが無い限りある表現行為を表現の自由の保護対象ではないとするのは慎むべきでしょう。

まぁ、そもそも今回のは表現内容を見て表現の自由論で語ることが困難だというのは先述の通りなので、仮定の話です。

仮に今回の事案が単なる民間団体が民間のスペースを借りて展示をしていただけに過ぎないと言う場合に、公権力が「政治的だから表現の自由ではない」といって中止に追い込んだらどうか?を考えればよい。

「事実を歪曲した」について

「日本軍の手によって強制された」というものとして展示されているのが事実歪曲であるということを明確に指摘しないといけません。

主体」ではなく「客体」である当時日本人たる朝鮮半島の住民の女性の立場からすると、親や女衒に意思に反して売春させられた例があるということは日本政府も認識しているところですからね。

ただし、「強制」の「主体」については日本政府は明言していません。「軍の関与のもと」と言っています。それは、慰安所は軍が管理運営していたからであって、そこに女性が来るまでの過程については応募も居たでしょうし、不幸にも身売りさせられた方も居たでしょう。日本政府は、後者のような当時日本人たる女性に対して責任を感じているという意味で何度も遺憾の意を表明してきたということです。

決して異民族たる韓国人に対して言っているのではありません。

捏造慰安婦像の作者がどういう意図だったのかを弁明しようとも、出来上がった作品は「日本軍によって強制連行させられた」ものであると受け止められるように喧伝させられているのですから、「事実歪曲」そのものです。

こういった理解をせずに「強制はなかった」だけでは、メディア等に利用されてしまいます。

まとめ:愛知の芸術祭の「少女像=捏造慰安婦像」は承認してはいけなかった

黒岩知事のように「トリエンナーレ・表現の不自由展の主体は誰か?」を無視してしまうと、ツッコみを受ける余地を与えてしまうことになります。

また、「慰安婦強制連行問題」についても雑な理解があってはいけません。

そういう意味で、黒岩知事の発言は残念だなと思います。

以上

金山茂樹議員「聯合ニュースには実名報道の是非は論じていない・確認次第修正をかける」

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聯合ニュースでの奈良県桜井市議会議員の金山茂樹議員のインタビュー記事の内容について、金山議員から連絡があったので彼の認識を伝えようと思います。

「在日韓国人の犯罪事件で実名報道は悪いイメージを与えようとしている」と発言と報じられる

"재일한국인 범죄자 일부 언론 실명보도…우려스럽다" | 연합뉴스魚拓はこちら

「日本の犯罪に関する記事で実名報道をするのは珍しいことで、最近、在日韓国人が起こした犯罪事件を報道しながら、いくつかのメディアが加害者の実名を報じることがありました。韓国の悪いイメージを与えようとしているようです。残念に思います。」

在日同胞3世の金山茂樹、奈良県桜井市議会議員は28日、聯合ニュースとのインタビューで、最近、いくつかの日本のメディアが反韓感情を加熱させていると指摘した。

この発言の内容の真実性について、金山議員後援会に昨日問い合わせをしていました。

本日、回答を頂きました。

金山茂樹議員「聯合ニュースには実名報道の是非は論じていない・確認次第修正をかける」

これに関するツイートは10近くに及びますが、私のところにも確認メールへの返信で説明されていました。以下はツイートでも確認できる内容です。

韓国のメディアである、聯合ニュースさんの取材を8月28日に受けたことは事実です。

ただ、私は、韓国語は全くわからないので、通訳を介した取材でした。

取材の中で「在日韓国人の犯罪者の実名報道があった際に、一部メディアで過熱することを懸念している」という意図を私は伝えたつもりです。韓国語の分かる方を通じて、記事を精査し(翻訳ソフトでは意図が変わる場合があるので)、聯合ニュースさんには本日、修正依頼をかけます。

なお私は、犯罪者の実名報道の是非について論じたことはありません。

実名報道は、法や、マスコミの報道ルールに沿って行われるべき性質のものだという認識です。

私には韓国語が分からないので、確認してから修正依頼を掛けさせていただきます。

私は、以下の3点を主に伝えました。

・日本との約束、そして国際法を、韓国は遵守するべきである。

・在日韓国人の方々が、大変肩身の狭い想いをしている。韓国は、日本に対して、どうしてそんな対応をするのかと哀しく思っている。

・時間軸は未来にしか流れないから、未来志向的な時間軸を持って、日韓両国が発展的な関係を築いていくべきだと思う。

なので、私にとっては取材が終わるごろにチラッと話したことが大きく扱われ、戸惑っているというのが正直なところです。

日韓両国がこんな状況だからこそ、韓国のメディアの方にも改めて日本の状況をお伝えするべきだと思い、今回取材をお受けしました。メディアの取材には慣れていませんし、そして言葉が分からない場所での取材のリスクを十分に認識してなかったことは、反省しています。

また、記事の一部が切り取られ、私の意図と違う形で、事実を確認することなく、このように拡散されたことは残念に思っています。

「実名報道があった場合」という趣旨

聯合ニュースの記事では、実名報道そのものを咎めているような記事の構成になっていました。

しかし、金山議員としては「在日韓国人の犯罪者の実名報道があった際に、一部メディアで過熱することを懸念している」という意図だったということでした。

これは聯合ニュースの記事とは明らかに意味が違いますね。

韓国の犯罪報道と聯合ニュースの認識

韓国では犯罪報道時の被疑者の名前は氏名をすべて報道せず、苗字のみを報じるようです。苗字が少ない韓国では、実質的に匿名報道に近い状況になっているということです。

聯合ニュース側としてはそういう頭があったので、金山議員の発言も記事のような内容に変換されたのかもしれません。

聯合ニュースにおける他の金山しげき議員の発言内容について

さて、私は金山議員の後援会に対して、冒頭の発言の事実確認しか求めていません。

この記事内容の他の部分の発言内容の評価は、個々人の価値観の違いという範囲に収まるだろうと思ったからです。

そちらの方も修正をかけるのかは気になるところですが、敢えて問いませんでした。

以上