事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

浅田均「森ゆうこは刑事責任に問われないと知って凶悪犯罪に及ぶ触法少年と同じ」

浅田均「森ゆうこは触法少年」

日本維新の会の浅田均議員が「森ゆうこは刑事責任に問われないと知って凶悪犯罪に及ぶ触法少年と同じ」と指摘しました。

その通りだなと思う一方で、下手をしたらそれ以上に悪質だと思います。

なぜそう思うのかを説明します。

浅田均「森ゆうこは刑事責任に問われないと知って凶悪犯罪に及ぶ触法少年と同じ」

森ゆうこ議員は毎日新聞の記事を根拠として、原英史氏に対して「公務員ならあっせん利得・収賄罪にあたる」などと発言し、これが名誉毀損にあたるとして抗議を受けていました。

さらに、森ゆうこ議員は上記事案に関連してタイムスタンプが捏造されたツイートを元にして、「高橋洋一氏に質問通告内容が漏洩した」などと国会で発言し、それがネット上で指摘されたのちの12月に入ってからも再度上記趣旨の発言をしました。
 

よって、これは意図的に虚偽の事実について、犯罪行為と知りながら発言しているとするほかありません。

浅田均議員は「森ゆうこは刑事責任に問われないと知って凶悪犯罪に及ぶ触法少年と同じ」と指摘していますが、私は今後の状況によってはそのような触法少年よりも悪質だと思います。

国会議員の免責特権と少年法

国会議員は憲法51条で院内での発言は責任を問われないと規定されています。

少年法は14歳未満の者による犯罪行為は刑事罰を科さないとあります。

少年法(審判に付すべき少年)
第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年

しかし、「家庭裁判所の審判に付する」とあるように、刑事責任は問われませんが、一定の処分が為される余地があります。

少年院送致などの保護処分もある触法少年

少年事件の手続きの流れを見ると分かりますが、14歳未満の少年であっても、家庭裁判所の審判を受けた後には保護処分として保護観察・児童養護施設送致・児童自立支援施設送致があり、さらには少年院送致もあります。

少年院送致を受ければ個室寮での生活から始まり、調査等を経て集団生活をしていくことになり、数年間の更生教育を受けることになります。

保護処分は罰を与えるものではなく更生を期して行われるものですが、少年院送致は自由を拘束する点で、事実上、一定の不利益を与えるものと言えると思います。

これに対して、国会議員が故意に犯罪に相当する演説等を「院内」で行った場合には、何らの処分を受けることもありません。

触法少年による故意の犯罪よりも悪質だと思うのは、こういうところからです。

これに対する唯一の措置は、国会における懲罰の対象になることしかありません。

懲罰を求める請願が無視される可能性

国会が自律的に森ゆうこ議員に対して懲戒処分をしないので、原英史氏は国会に対して森ゆうこ議員に対する懲罰を求める請願を日本維新の会の協力もあって提出しました。これは憲法16条で認められている権利行使です。

しかし、請願を議題として採択するためには、「全会一致」でなければならないというのが国会の慣例となっています。

これは憲法や法律では求められていない要件であり、相当の理由があって形作られた慣例であろうと思われます。

ただ、今回の請願は特定会派の議員の懲戒を求めるものですから、その会派が採択に反対すれば審議不成立となります。これでは「事実上、私人が国会での人権侵害に抗する術が一切な」くなると原英史氏が指摘しています。

これがまかり通るなら、森ゆうこ議員は触法少年よりも悪質だと言う他ないでしょう。

森ゆうこ議員の懲罰請願:全会一致ではなく多数決をお願いしたい – アゴラ

まとめ:触法少年より悪質な森ゆうこを自民党は容認するのか

自分が絶対に法による処罰を受けず、何らの権利制限も受けないことを知りながら犯罪行為をする点で、森ゆうこ議員は14歳未満の触法少年と同一視されるべきですが、触法少年は刑事処分はなくとも少年院送致があり得るため、懲罰を受けないのであれば、森ゆうこの悪質性はそれ以上であると言わざるを得ません。

国会の多数派である自民党はこれを見て向ぬふりをするのでしょうか?

元はと言えば、この話は原英史氏が国家戦略特区のワーキンググループ座長代理という立場であり、規制改革に絡んだ話だということが忘れ去られています。

常識で考えれば、国会の多数派が懲罰を決めればできるのに、堂々と懲罰相当の行為をしているということは、多数派である自民党内に森ゆうこら既得権官僚側の利に沿う言動をする者を支持・容認する議員が居ると考えるのが筋です。

「安倍政権の改革本気度が問われている」とアゴラの新田さんが指摘しているのは、そういう点からも正しいと言えるでしょう。

以上

石垣のりこ「憲法秩序と相入れない人物に発言の機会は与えられない」⇒これ自体が憲法秩序に反してます

石垣のりこ議員、高橋洋一さんをレイシスト・ファシスト扱い

石垣のりこ議員ツイッターから引用して改変

石垣のりこ議員が高橋洋一氏に関して「憲法秩序と相入れない人物に発言の機会は与えられない」とツイートしました。

この発言自体が日本国憲法の秩序に反してます。

石垣のりこ議員 高橋洋一氏に「レイシズム」「ファシズム」

魚拓はこちら

発端となったツイートでは、石垣のりこ議員が高橋洋一氏を名指しして「レイシズム」「ファシズム」には加担しないと言っているものです。

当然これに対しては高橋氏本人から抗議と根拠の明示が要求されています。

「憲法秩序と相入れない人物に発言の機会は与えられない」

「憲法秩序と相入れない人物や組織に発言や正当化の機会は与えられない」

石垣のりこ議員のこの見解は、要するにそのような発言をした者は一般の者とは違って原則的に不自由であり、口をつぐんでいろ、ということを意味します。

この発言自体が日本国憲法の秩序と相入れません。

日本はドイツのような「たたかう民主制」 の立場ではない

たたかう民主制(たたかう民主主義)とは、一般に民主主義そのものを否定するような自由・権利までは認められないとする考え方を指します。

たとえばドイツ連邦共和国基本法18条では「憲法が保障する権利を、自由で民主的な体制を破壊するための闘争に濫用する者は、これらを制限される」と規定されています。

日本国憲法の場合は憲法尊重擁護義務があるのは公務員等であり、一般国民は直接的な法的義務を課されているわけではありません。

国民も一定の場合には公共の福祉による制限を受けるとされていますが、それは主張の種類が憲法秩序破壊であるか否かによって変わるものではなく、すべての場合に共通したものです。

ドイツでは共産党(KPD)の組織が禁止された

政党の内部秩序は民主制の諸原則に合致していなくてはならない(基本法21条1項)

この規定に基づき、暴力主義革命を主義主張としていたドイツ共産党(KPD)は違憲判決を受け、解体されました。何らかの暴力による攻撃の事実があったのではなく、単にそのような主義主張であった、ということだけで違憲とされました。

なお、後継団体(公式には後継ではないとされているが)であるドイツ共産党(DKP)は現在でも存在しているが、政治的な勢力は弱く、連邦憲法擁護庁からは左翼過激派・反憲法的組織として監視対象になっています。

日本共産党の暴力革命の主張も日本国憲法では表現の自由がベース

日本共産党の暴力主義革命の主張も(現在は表立って主張していないが、完全否定もしていない)、日本国憲法下では一応は表現の自由の範疇であり、そのような主張をすること自体が違憲・違法になるとはされていません。

石垣のりこ議員の「憲法秩序と相入れない人物や組織に発言や正当化の機会は与えられない」という見解は、日本共産党もその主張自体によって解体されるべきということになるが、それでよいか?

まとめ:石垣のりこ議員の発言自体が憲法秩序と相入れない

普通はある意見の表明に対して、なんらかの批評や相手方からの反論など意見の流通が為されることで何が真理であるかが明らかになるのであり、それが(少なくとも日米式の)民主主義社会の基本です。

つまり「間違った意見だから」という理由で国家が表現を規制してはならないのです。

ところが、国会議員という権力者側にある石垣のりこ議員は、「反論を封じる」ことでまさにそれをやっていることになります。

「たたかう民主制」を採ってない日本においては、このような態度自体が憲法秩序と相入れないものです。憲法尊重擁護義務(憲法99条)違反であるともいえるのではないでしょうか?

そして、当然ながら、高橋洋一氏が「ファシスト」「レイシスト」と評価されるような言動をしたという事実はありません。

以上

罰則つき川崎市ヘイトスピーチ条例の問題:条例制定権の逸脱?

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川崎市長提出の議案157号「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案」

罰則付きであることが問題視される川崎市ヘイトスピーチ条例ですが、憲法違反の可能性について整理しました。

川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例

川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(案)
※「条例素案」の内容はパブリックコメント後に修正されている部分がある

川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例では「被害救済」のための措置と「罰則対象行為」と「規制対象行為」が別々に規定されています。

これらの分類は重要です。

罰則対象になるのは川崎市内において拡声器を使うなどの手段によりデモ行為等を行うという類型の本邦外出身者に対する不当な差別的言動です。

川崎市内・類型・手段という限定がついています。

対して、公表や拡散防止措置の規制対象になるのは、そうした限定の無い本邦外出身者に対する不当な差別的言動を行う「インターネット表現活動」です。

本邦外出身者に対する不当な差別的言動」は、いわゆるヘイト規制法によって「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」と定義されているものをそのまま使っています。

本題に入る前に自治体が条例によって刑罰を規定することについて確認します。

憲法94条 「法律の範囲内で条例を制定することができる」

日本国憲法 第九十四条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

憲法94条 では法律の範囲内で条例を制定することができるとあります。

自治体を規律する一般法として地方自治法があるのでそちらの規定を確認します。 

地方自治法14条で自治体が刑罰を定めることができる

第十四条 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
○2 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
○3 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮こ、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる

地方自治法14条3項では自治体は一定の刑罰を科すことができるとあります。

川崎市のヘイト規制条例は「50万円以下の罰金」なので、これには反しません。

どうも、この辺りから勘違いしてる人がネット上には居るのでここで明確にします。

ただし、ここでも「法令に違反しない限りにおいて」とあるため、刑事罰を設けることがいわゆるヘイト規制法の趣旨に違反しているのではないか?という問題があります。

関連して、条例制定権の限界について判示した最高裁判例があります。

徳島市公安条例事件最高裁判決での条例制定権の範囲

最高裁昭和50年9月10日 昭和48(あ)910

普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによってこれを決しなければならない。

徳島市公安条例事件と呼ばれる最高裁判例では、条例制定権の範囲について、上記の考えのもと、以下の基準によって判断するとされました。

  1. ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうる。
  2. 特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときは国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない。
  3. 両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるとき国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない。

まとめると、法律にある事項を規律する明文規定があるか否か⇒ない場合には1.

ある場合には2,3の話に。法令と条例が同一目的か否かで2と3が分かれる。 

このような判断構造になっています。

条例で刑罰を定めるのはヘイト規制法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)に違反するのか?

いわゆるヘイト規制法と呼ばれる【本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律】では以下書かれています。

(国及び地方公共団体の責務)
第四条 省略
2 地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。

同法では基本的施策として「相談体制の整備「教育の充実等」「啓発活動等」が掲げられていますが、刑罰を設けることは書かれていません。

何らかの罰則を設けることは、少なくとも法律レベルでは行わないという考えがあるからです。

ヘイト規制法の立案者の一人である西田昌司の見解

190 参議院 法務委員会 10号 平成28年04月26日

○西田昌司君 なかなか一言で答えられるような質問をされていないんですね。
 それで、先ほど私は、民進党が出されているのと変わらないというのは、その方向性の話なんですね。それで、ちょっと思い出していただきたいんですが、平成二十七年の八月六日、参議院法務委員会、この本委員会で、これは仁比議員から質問があって、小川議員がこういうふうに答えられているんですよね。
 してはならないという差別的行為をしたということがあっても、この法律で、つまり皆さん方が出された法律で、直ちに刑罰を科するという構造にはなっておりません。また、刑罰を科さないというだけでなくて、この法律をもって直ちに何らかのそうした差別的行為が行われたことに対する行政的な措置がなされるという意味の規制があるという趣旨でもございません。これは、ですから、具体的な処分がなされるというのではなくて、あくまでも、してはならないという理念を定めて、その理念に基づいて、これからの国の施策あるいはこれからの立法や条例の制定におきまして、様々なそうした行政の分野、立法の分野におきまして、この理念を生かした形で行ってほしい、こういう意味で理念を定めた理念法でございますと答弁をされているのは小川委員であります。まさに我々が言っているのも同じことを言っているわけです。

ヘイト規制法の立案者の一人である西田昌司議員の見解としては、法律では規制を設けないことを意図しているということは述べられています。 

ただ、条例レベルでは禁止するということは明確に述べておらず、他の立案者も存在するため西田議員の意思が絶対というわけでもありませんし(参議院立法で、提案者は「愛知次郎外2名」とある)、司法判断がある場合でも立法者の個人的な意見が必ずしも採用されるものではありません。

川崎市ヘイトスピーチ条例で刑事罰を設けることは条例制定権の逸脱なのか?

さて、ここまで整理してきたことから、川崎市のヘイトスピーチ条例で刑事罰を設けることはいわゆるヘイト規制法と矛盾抵触して条例制定権を逸脱しているのでしょうか?

私は、かなりグレーだと思います。

ヘイト規制法の趣旨目的

理念法であるいわゆるヘイト規制法は総則の第四条で「国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施」するとされ、第二章 基本的施策の項では「相談体制の整備・教育の充実等・啓発活動等」が国と地方公共団体の責務として規定されているだけです。

つまり、罰則・規制という【行為者】への応報に着目したものではなく、【被害者】の救済に着目したものであると考える余地があります。

川崎市の条例案では「全ての市民が不当な差別を受けることなく、個人として尊重され」ることを目的として、市が人権侵害を受けた者に対する相談の実施その他必要な支援に努めることとされていますが、これは被害者救済を念頭にしているからです。

また、いわゆるヘイト規制法の成立の背景には人種差別撤廃条約の存在があります。

人種差別撤廃条約とracialdiscrimination & hatred

日本国が人種差別撤廃条約4条(a)及び(b)を留保しているのは、これらの規定が「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」、「人種差別の扇動」等につき処罰立法措置をとることを義務づけるものであるがゆえに、憲法の保障する集会、結社、表現の自由等を不当に制約することにならないか、刑罰の対象となる行為とそうでないものとの境界がはっきりせず、罪刑法定主義に反することにならないかなどについて極めて慎重に検討する必要があると考えられたからです。

そして、人種差別=racial discrimination と憎悪=hatredはこの条約では分けて書かれていますが、いずれも「マイノリティに対する行為」とは書かれていませんし、一般的にもそうした理解は誤りです(そういう事にしようと現実を改変しようとする者は居る)。

参考:神奈川新聞「日本人ヘイトはありえない」に対する不都合な真実

すると、「罰則対象行為を定めていること」は、法が「いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨」であることと矛盾抵触することになる可能性があります。

さらには条例制定権を逸脱して法令違憲であるかはともかく、少なくとも運用次第では適用違憲になる可能性があると思われます。

刑罰法規の明確性

なお、「刑罰法規の明確性」の問題があると言われますが、これは日本属性者(本邦内出身者)が日本属性を理由に排斥され、且つ、捜査機関が行為者を逮捕起訴をした場合に初めて問題になるのであり、かなり現実のハードルは高いと思います。
(抽象的違憲審査制を取らない日本の司法制度のもとでは、具体的な被害者が出てからでないと裁判所は憲法判断を行わない。)

条例において「罰則対象行為から一部の者に対する行為を除外していること」が違憲であると主張するということは、つまりは既存の刑罰法規の対象にならない日本属性者への「不当な差別的言動」を、文言上は除外されているにもかかわらず刑罰対象にすることであり、憲法31条から導かれる刑罰法規の明確性の観点からは無理筋なんじゃないでしょうか?

インターネット表現活動を規制するのは条例制定権の逸脱なのか?

刑事罰を設けることとは別に、公表等の措置を講じることが条例制定権の逸脱になるのではないかという問題もあります。

川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(案)

 (インターネット表現活動に係る拡散防止措置及び公表)
第17条 市長は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを利用する方法による表現活動(他の表現活動の内容を記録した文書、図画、映像等を不特定多数の者による閲覧又は視聴ができる状態に置くことを含む。以下「インターネット表現活動」という。)のうち次に掲げるものが本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当すると認めるときは、事案の内容に即して、当該インターネット表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずるものとする。
⑴ 市の区域内で行われたインターネット表現活動
市の区域外で行われたインターネット表現活動(市の区域内で行われた
ことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
ア 表現の内容が特定の市民等市の区域内に住所を有する者、在勤する
者、在学する者その他市に関係ある者として規則で定める者をいう。以
下同じ。)を対象としたものであると明らかに認められるインターネッ
ト表現活動

この点については大阪市のヘイトスピーチ規制条例の問題点について論じた以下の記事で指摘しています。

端的に言えば、地方自治法14条では地方自治体は「法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる」とあるところ、地方自治法2条2項は「地域における事務」と法律で定められたその他の事務を処理するとされていますが、インターネット表現活動規制は法律で定められたものではないので「地域における事務」として行われようとしています。

しかし、条例の適用は原則的に自治体の領域内の事柄に対して行われるものであって、インターネット規制は国が本来果たすべき役割であり、川崎市外での行為を捕捉するような属人的な規定はそもそも「地域における事務」とは言えず、地方自治法14条・憲法94条に違反しているのではないか?というのが結論です。

罰則つき川崎市ヘイトスピーチ条例は条例制定権の逸脱?

  1.  条例で「罰則対象行為を定めていること」は法と矛盾抵触する可能性
  2. インターネット表現活動を規制する行為のうち、川崎市外における川崎市民等に対する言動を捕捉する規定は「地域における事務」ではない可能性
  3. 具体的な適用が違憲になる可能性

これらの疑問については、国会レベルでも、大阪市議会や成立過程の議論、東京都議会や川崎市議会でもまったく触れられていません(一部で理解が浅い議員による憲法94条違反の指摘があったが、議論は深まらなかった)。 

以上

 

神奈川新聞「日本人ヘイトはありえない」に対する不都合な真実

神奈川新聞が「日本人ヘイトはありえない」からヘイト規制条例で本邦「内」出身者への差別的言動が処罰対象になっていないのは正しい、などと暴言を吐いています。
そもそも「日本人」という国籍ではなく「日本属性」が問題だが、ここでは捨象する

神奈川新聞「日本人ヘイトはありえない」

相次ぐ「電凸」嫌がらせ 川崎・差別根絶条例案巡り | 社会 | カナロコ by 神奈川新聞

そもそも「日本人ヘイト」は存在しない。へイトスピーチは歴史的、構造的に劣位にある社会的弱者・少数者に対する差別や暴力をあおるもので、日本において圧倒的多数者の日本人一般へのヘイトスピーチは語義矛盾に他ならない。

朝鮮半島系の活動家や弁護士など一部の論者は「ヘイトスピーチ・ヘイトクライムはマイノリティに対するもの」という理解を必死に広めようとしていますが、それは現実と異なるということは確定してます。

なぜなら、マイノリティに対するものではない事件がヘイトスピーチ・ヘイトクライムとされた例があるからです。

マイノリティの定義とは

マイノリティの定義として固まったものはありませんが、ヘイトスピーチはマイノリティに対するものであるという理解である師岡康子(枝川朝鮮学校取壊し裁判弁護団)の著書「ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書) [ 師岡康子 ]では以下書かれています。

ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書) [ 師岡康子 ] 40~41、48頁

「ヘイト・スピーチとは、広義では、人種、民族、国籍、性などの属性を有するマイノリティの集団もしくは個人に対し、その属性を理由とする差別的表現であり、その中核にある本質的な部分は、マイノリティに対する『差別、敵意又は暴力の煽動』(自由権規約二十条)、『差別のあらゆる煽動』(人種差別撤廃条約四条本文)であり、表現による暴力、攻撃、迫害である。」

「マイノリティ」の国際人権法上確立した定義はないが、国連人権小委員会に任命された特別報告官のカポトルティが一九九七年に提出した報告書「民族的、宗教的、言語的マイノリティに属する者の権利に関する研究」の次の定義が議論の土台となっている。

5つの定義(要素)が紹介されています

  1. 一国においてその他の住民より数的に劣勢な集団
  2. 非支配的な立場にある
  3. その構成員は当該国の国民である
  4. 国民の人たちと異なった民族的宗教的または言語的特徴を有する
  5. 自己の文化、伝統、宗教または言語を保持することに対して、連帯意識を黙示的であるにせよ示しているもの

しかも、師岡氏は「これらの5要素のうち、②が最も重要な要素とされ」るとまで言っています。

ところが「支配的な立場」の集団がヘイトスピーチ・ヘイトクライムを受けたとして起訴された事件があります。

 

イギリスで黒人による白人へのヘイトスピーチが有罪に

イギリスで黒人による白人へのヘイトスピーチが有罪になった事例があります。

イギリスにおけるヘイト・スピーチ規制法の歴史と現状

1967年 11 月,マイケル・アブドゥル・マリック(Michael Abdul Malik)が黒人運動の集会において,人種差別的言論を用いたことで 6 条 1 項 b 号違反で有罪とされた。また同月に,4 人の黒人の急進論者が白人の殺害や白人の家の放火を求める等の人種差別的な内容の過激な演説を行って,合計 270 ポンドの罰金刑に処せられている

この刑事処分の根拠法になったのはRace Relations Act 1965(1965年人種関係法) での人種的憎悪煽動罪の規定ですが、この法律の構成要件には「マイノリティに対するもの」という要素はありません。

師岡氏の言うように「非支配的立場」がマイノリティの要素であり、マイノリティに対するものであることがヘイトスピーチの要件だとするならば、非支配的立場の黒人から支配的立場たる白人に対する差別的言動が刑事処分を受けた事例はどのように理解すればよいのでしょうか?

ちなみに、1965 年人種関係法 6 条では,宗教的憎悪が法の射程から外されています

法務省もヘイトスピーチの定義は社会的弱者・少数派に対するものとはしていない

法務省のヘイトスピーチの定義

http://www.moj.go.jp/content/001221772.pdf

法務省:ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動

ヘイトスピーチって何なの?

特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみを理由に, 日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの 一方的な内容の言動が,一般に「ヘイトスピーチ」と呼ばれています (前述「人権擁護に関する世論調査」より)。

法務省も一般的なヘイトスピーチの定義を紹介していますが、法的な定義や政府が公式に認定した定義として紹介しているわけではありません。

「マイノリティ・少数派に対するもの」という要素がないのがわかるでしょう。

「ヘイトスピーチはマイノリティに対するものであり、マジョリティに対するものは該当しない」ということは、通説でも何でもありません。

過去の日本人・日本属性者に対するヘイトスピーチ・ヘイトクライム

日本人・日本属性者であることを理由に脅迫的言辞や有形力の行使を働いた事例はいくらでもあります。

刑事罰に問われるべき行為はそちらで捕捉されましたが、金輝俊(キムフィジュン)のツイートはヘイトスピーチと言い得るでしょう(彼はこの後、実際にコンビニで女性の首に刃物を当てて逮捕された)。

詳細は以下でまとめてありますが、「日本人ヘイトはありえない」などと、こうした事件があったにもかかわらずよくも言えるなと思います。

「ヘイトスピーチはマイノリティに対するもの」は定義ではない

「ヘイトスピーチはマイノリティに対するもの」というのは、単に起こりがちな現象であるという意味しかありません。それはヘイトスピーチという言葉の本質的な定義ではなく、典型例を言っているにすぎません。

「ヘイトスピーチ」の意味内容に確定した国際的な共通理解が無い以上(公約数的な理解はあるが)、それぞれの国において「人種差別的言動」なりの定義を決めるしかありません。

現在、朝鮮半島系の活動家らが一生懸命になって「ヘイトスピーチはマイノリティらに対するものだ」という観念を日本社会で広めようとしています。

神奈川新聞は、そうした連中の言っていることを真に受けているか、そのような理解を拡散させようとしているのでしょう。

以上

ヘイトスピーチというフェイク 在特会西村斉に京都朝鮮学校に対する名誉毀損の判決

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在特会元支部長(現:日本第一党 京都府本部長)が京都朝鮮学校に対する名誉棄損罪に問われていた刑事裁判で、京都地裁は11月29日、求刑・懲役1年6月に対して罰金50万円の有罪判決を言い渡しました。

『ヘイトスピーチが名誉毀損罪』というのはフェイクです。

在特会元支部長が京都朝鮮学校に対する名誉棄損罪に

学校法人京都朝鮮学園)弁護団・声明

2019年11月29日、京都地方裁判所第3刑事部(柴山智裁判長)は、ヘイトスピーチによる名誉毀損被告事件(被告人西村斉)について、罰金50万円に処する有罪判決を言い渡した

在特会元支部長である西村斉 氏が京都朝鮮学校に対する名誉毀損罪に問われました。

求刑1年6月に対して罰金50万円というのは、実質的に朝鮮学校側の負けです。
(刑事裁判なので法的には被害者側の勝ち負けの話ではないが、これは政治闘争なので)

判決以前に本件について在特会西村氏が主張している動画は以下。

西村斉のヘイトスピーチ?発言の内容

判決では、被告人 西村斉 氏が、2017年4月23日、勧進橋公園において、かつて同公園に隣接して所在した京都朝鮮第一初級学校を指し、拡声器で「ここに何年か前まであった京都の朝鮮学校ってありますよね、この朝鮮学校は日本人を拉致しております。」「まだこの朝鮮学校関係者がこの近辺に潜伏していることは確実」「朝鮮学校関係者かなと思ったら110番してください」等の発言を行い、動画配信サイトにその様子を投稿したとしています。

京都朝鮮学校と他の朝鮮学校と朝鮮総連

重要なのは、「被害者」は朝鮮学校一般ではなく「京都朝鮮学校」だということです。

各朝鮮学校は朝鮮総連の不当な支配を受けていますが、運営者は異なり、別主体です。

なので「京都朝鮮学校の関係者が日本人拉致をしたか」がこの訴訟では争点でした。

 

公益性を認定、真実相当性は認めず  朝鮮学校側は控訴

西村氏は「大阪朝鮮学校の元校長が日本人拉致で国際指名手配されている」ことをベースに主張していたので、その事実の真実性も争点になりました。

判決では西村氏がそのような報道があることに接していたため真実相当性が認められるとしました。

しかし、「京都朝鮮学校」に関しては真実相当性は認められないとされました。

ただ、先述の発言をしたことについては「公益性」が認められるとしました。

なので京都朝鮮学校側の弁護団は今回の判決を「最悪の判決」と非難して、量刑不当で控訴しているのです。

「ヘイトスピーチ」は無関係 単なる名誉毀損事件

 

日本人を拉致したのは北朝鮮政府であり、政府は朝鮮総聯の傘下団体が関与していたという認識を持っているということが答弁書に現れています。

衆議院議員松原仁君提出朝鮮総連による対日有害活動等に関する質問に対する答弁書

一について
 政府としては、現時点においては、昭和四十九年六月に発生した姉弟拉致容疑事案、昭和五十三年六月に発生した元飲食店店員拉致容疑事案及び昭和五十五年六月に発生した辛光洙事件において、それぞれ朝鮮総聯傘下団体等の構成員の関与があったものと認識している

しかし、朝鮮総連と朝鮮学校は別主体なので、それを安易に同一視して別個の証拠も無く拉致実行犯の認定してしまうと学校側に対する名誉毀損になるということです。

その判断自体は法的には当然です。

別の主体が拉致をしたのであって、京都朝鮮学校関係者が拉致をしたという証拠が無いのですから。

結局、「ヘイトスピーチ」は無関係で単なる名誉毀損事件だったということです。

「司法の汚染ガー」が湧いてきそうですが、そういう連中が日本を貶めています。

朝鮮人・朝鮮民族という属性を理由に攻撃したのではない

他方、在特会元支部長は「朝鮮人という属性・朝鮮民族という属性」を理由に攻撃したのではありません

要するに、単なる名誉毀損の事案であって、「ヘイトスピーチ」と殊更に評価するべき事案ではありません。裁判所がこの事案を「ヘイトスピーチ」だと認めたということではないようです。それは朝鮮学校側の声明からも読み取れません。

しかし、朝鮮学校側の弁護団は「ヘイトスピーチが名誉毀損になった初の事例」ということを強調しています。

報道もそのように報じています。こうやって誤解を拡散しているのです。

ヘイトスピーチは法務省も定義はしていませんが、公約数的な理解としては「人種・信条・性別等の属性を理由にした排斥的言動」と言えるでしょう。今回の言動にそうした要素は見出せませんから、ほぼデマと言ってよいと思います。
(ヘイトスピーチがあったかという事実の問題ではなく、ヘイトスピーチと言えるかという評価の問題なので「デマ」は本来不適切だが、あまりにも不当な評価についてはそう言っても差し支えないでしょう)

なお、「国籍」の違いを理由にする区別、排除、制限又は優先については、少なくとも人種差別撤廃条約(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)は禁止対象にしていません。

人種差別撤廃条約1条 省略

2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。

ヘイトスピーチ罪という罪は無い

繰り返し言いますが、「ヘイトスピーチ罪」という罪はありません。

名誉毀損罪になった言動の内に、「ヘイトスピーチ」の実質が含まれているか否かが問題になっていたにすぎません。

そして、この事案では「ヘイトスピーチ」に該当するなどとは京都地裁は言っていない上に、実態を見てもヘイトスピーチと言うことは難しいでしょう。

いわゆるヘイト規制法と呼ばれている【本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律】に言う「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」や、大阪市・東京都で成立したヘイト規制条例、川崎市で制定されようとしているヘイト規制条例素案で規制されている行為にも該当しないでしょう。

まとめ 単なる名誉毀損をヘイトスピーチと言い換えるフェイクに注意

単なる名誉毀損をヘイトスピーチと言い換え、「そういう事案だったのだ」と読者・視聴者に思い込ませることが朝鮮学校や一部報道機関の目的です。

中にはこのカラクリに気が付かないで安易に「ヘイトスピーチに名誉毀損」と書いている所がありますが、そういうレベルの低い記事ばかりでゲンナリしている所です。

以上

モンスターマップがマイニングプログラムを導入 アクセス負荷対策か

モンスターマップ ウェブマイニングプログラム 対処法

モンスターマップが「ウェブマイニングプログラム」なるものを導入したようです。

モンスターマップがマイニングプログラムを導入

官報の破産者情報を違法に掲載し続けているモンスターマップ。

サイトの記述が更新されているのに気が付きました。

サーバーに対し引き続きDos、DDoS、F5アタックが継続しているため、対策としてウェブマイニングプログラムを導入いたしました

ウェブマイニングプログラムとは?

ウェブマイニングプログラムとは、とてもざっくり言うと、閲覧者の端末のCPU等を利用して仮想通貨をマイニング=計算処理をさせるものです。

つまり、多くのアクセスがあった場合、モンスターマップの資金源になるのです。

ウェブマイニングがあること自体は現在は違法では無いはずですが、Coinhiveという、仮想通貨Moneroを採掘するマイニングプログラムを設置したサイト運営者が起訴された事件があります。

この事件では無罪判決を得ています。

こうした経緯もあり、閲覧者に承諾を得るプロセスを導入している所や、さらには閲覧者が任意に端末への負荷を調節できるようにしている所があります。

 

対策・対抗策は

ウェブマイニングプログラムが働いていると、閲覧者のPCやスマホが処理のために稼働するので熱を帯びることがあります。動作も遅くなることがあります。ブラウザを閉じてもしばらく続いたりするのでシャットダウンなどして対応する必要があります。

私のPCに入っているウィルス対策ソフトも、モンスターマップにアクセスしたら不正プログラムとして検知しました。

対策としてはサイトをむやみに閲覧しないこと、閲覧したら端末を一度シャットダウンするなどしてマイニング処理を停止することです(そこまでやっても消えない場合には、もはやウィルスと言って良いので刑事事件化可能なハズ)。

閲覧者の端末への負荷はサイト運営者の設定次第なので、動作が遅くなったり熱を帯びるということがまったくなくとも、いつの間にか微量な領域を使用されて採掘し続けている状態になっている可能性があります。

アクセス負荷対策⇒やはり「大勢に存在を知られる」のが嫌

モンスターマップについて記事を書いた所、複数の者から「お前も加担している」などと言ってくる人が居ました。

しかし、今回の件で、やはりモンスターマップ側も大勢に存在を知られることが嫌なのが分かりました。

「知る人ぞ知るサイト」としてごく一部の者たちに利用され続けることがこのようなサイトが意味を持つ最大の存在形態なので、そういう環境にしないことが大事です。

個人情報保護委員会に通報

既に、個人情報保護委員会は対策を検討しています。

個人情報保護法によって、個人情報保護委員会には勧告・命令の権限があります。

それに従わなかった場合には懲役6か月以下or罰金30万円以下の刑事罰があり、法人に対しても罰金刑があるという「両罰規定」も存在します。

大勢で監視して新たな動きがあれば個人情報保護委員会に通報することで、多少の牽制にはなるはずです。

以上