事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

韓国憲法裁判所の日韓合意判決文(決定要旨)法的拘束力なしは「約束を守らない」ではない

韓国憲法裁判所の日韓合意・判決文・決定文・決定要旨・判決要旨

韓国憲法裁判所で日韓合意に関する決定文が出て、法的拘束力が無いとしたことについて「やっぱり韓国は約束を守らない」「韓国司法もおかしい」「日本に不利」という声がありますが、これは違うと思います。

韓国憲法裁が日韓合意の違憲審査を却下

[速報]「韓日慰安婦合意、違憲性判断の対象でない」 韓国憲法裁が却下 | 聯合ニュース

【ソウル聯合ニュース】韓国憲法裁判所は27日、慰安婦被害者らが旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年末の韓日政府間合意の違憲性判断を求めた訴えに対し、「違憲性判断の対象ではない」とし、却下した

韓国憲法裁が日韓合意の違憲審査を「却下」したことが報じられて騒がれてますが、どうも、この意味があまりよく理解されてないようです。

次項は「憲法裁判所」と「却下」だけでピンと来る人にとっては不要な説明です。

韓国憲法裁判所と訴訟要件

韓国では日本の最高裁にあたる大法院とは別個に憲法裁判所があり、ドイツの司法制度と類似していますが、実は韓国も抽象的違憲審査制がありません

そのため、具体的な権利利益の被害者であると主張する者が、その手続内で法規の違憲性を主張しなければなりません。

韓国憲法裁判所の組織と権限 國分 典子では憲法裁判所の権限が書かれています。

今回は韓国の憲法裁判所法68条の「憲法訴願」の「1項訴願」の手続であるため、『公権力の行使または不行使により、憲法上保障された基本権を侵害された者』でなければ訴訟要件を欠くことになっています。

この訴訟要件を欠くといわゆる「門前払い」となり「訴え却下」となります。

訴訟要件を具備する場合には本案(中身)審査となり請求棄却or請求認容となります。

今回はもちろん訴え却下でした。

日韓合意の法的拘束力についての判決文(判決要旨)

헌법재판소 전자헌법재판센터:韓国憲法裁判所HPに判決文(決定要旨)があります。
※法律用語として正しくは「判決」ではなく「決定」ですが判決と呼ぶ人が多いので一応記述している。

そこでは条約とそうではない合意とを明確に区別し、日韓合意は文書を交わしていない口頭形式(外相の記者会見)だったことや、合意の内容では韓日両国がいかなる権利と義務を負うかが不明であることなどを理由として、法的拘束力を認めませんでした。
なお、日本も韓国も条約は国内法と同一の効力を有するものとなっている。

ざっくりとした説明は以下でまとまっています。

4年前の「慰安婦合意」、法的効力ない | Joongang Ilbo | 中央日報 

「韓国は約束を守らない」ではない

韓国憲法裁判所が「日韓合意には法的拘束力はない」と判示したことについて、「やっぱり韓国は約束を守らない」と評している人が居ます。

また、韓国側にシンパシーを持つ者で「韓国憲法裁判所は日本に不利な判断をした」と評している人が居ます。

これらは両方とも違うと思います。

このような外交上の合意まで司法判断が及ぶとなると、外交上の裁量の余地がかなり狭くなるということになることが指摘されています。

国と国同士(政府は行政権)が合意した内容について、なんでもかんでも片一方の国の司法権が勝手に有効・無効などと判断してしまうと、ろくに約束もできないことになるのはおかしいので、正当な指摘だと思います。

法的拘束力のない「政治的合意」

条約法に関するウィーン条約(条約法条約)第2条1項には、『この条約の適用上、 (a)「条約」とは、国の間において文書の形式により締結され、国際法によつて規律される国際的な合意(単一の文書によるものであるか関連する二以上の文書によるものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。)をいう。』 とあるように、日韓合意が条約ではないというのは明らかなので、それでも法的拘束力があるのかが争点となっていました。

「法的拘束力があると主張してるのは元慰安婦側」 ということです。

法的拘束力のない「政治的合意」だというのは日韓両政府の共通認識です。

ですから、日本政府は法的拘束力の有無が韓国の裁判所で認定されようともされなくともどうでもよいのです。

いずれにしても日韓両政府が約束をしたということ、約束は守るべきであるということは変わりないのですから。

日本政府も憲法裁の判決は「当然」

韓国憲法裁、「日韓合意は違憲」却下…元慰安婦ら訴え : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン

木宮正史・東大教授(朝鮮半島地域研究)は「外交的に決着した『日韓合意』が憲法裁の審理対象になれば、司法が外交に介入することになりかねず、妥当な判断だ。『元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)』問題がある中、日韓関係にさらに悪影響を及ぼす事態は避けられた」と指摘している。

   ◇

日本政府は、韓国憲法裁の請求却下について、「当然の結論だ」と受け止めている。

日本政府も憲法裁の判決は「当然」と受け止めていることが報道されています。 

安倍政権を支持する者の多くが「韓国憲法裁判所が法的拘束力が無いと判示したのは、約束を守る気が無いからだ」と言っているのが見受けられますが、こうした日本政府の態度と矛盾することになっているのですが、気づいているのでしょうか?
行政府(ムンジェイン政権)の方針はともかく、憲法裁判所の判決からはそのようには言えない。

日韓合意の法的拘束力を問うた質問主意書に対する日本政府の答弁

衆議院議員井坂信彦君提出日韓合意の法的拘束力に関する質問に対する答弁書 

一及び二について
 平成二十七年十二月二十八日の日韓外相会談で確認された慰安婦問題に関する合意(以下「当該合意」という。)については、同会談で岸田外務大臣が尹炳世韓国外交部長官と協議を行い、韓国政府としての当該合意に対する確約を直接取り付けたものであり、また、同長官は、同会談後の共同記者発表の場で、当該合意を日韓両国民の前で、国際社会に対して明言した。さらに、当該合意は、同日の日韓首脳電話会談でも確認された。
 したがって、政府としては、韓国政府の明確かつ十分な当該合意に対する確約を得たものと受け止めている。
三について
 政府としては、日韓両政府がそれぞれ当該合意を着実に実施することが重要と考えており、引き続き、韓国政府と緊密に連携していく。

日韓合意の法的拘束力を問うた質問主意書に対する日本政府の答弁でも、日本政府は「法的拘束力がある」とは言っていません。

これは、法的拘束力が無いのは当然ですが、「無い」と言ってしまうと「約束を守らなくても良い」などとくだらない反対解釈をする輩が出てくるおそれがあるので、法的拘束力について触れないようにしたのだろうと推測されます。

「国家間合意を遵守すべき」なのは変わらない

国と国との「約束」にたとえ法的拘束力が無くとも、「約束は守るべき」という原理原則は変わりません。

韓国の憲法裁判所は「法的拘束力が無いから勝手に破棄して良い」「日韓合意は実質的に無効」などとは一言も言っていません。それは日韓のメディアが勝手な評価をしたり、日韓の対立を煽ってアクセスを稼ごうとしているだけに過ぎません。
韓国側が「実質的に無効化された」と言って合意の履行を逃れようとしているという態度自体が国際社会からは軽蔑の目で見られることになるだけ

日韓のメディアがいい加減なことを言って混乱を招いているだけだということは実務者レベルでは共通認識で、たとえば輸出管理・ホワイト国除外の問題でもCISTECがメディアの報道に呆れて対抗するためにパワーポイントスライドを作ってまで苦言を呈していました。

以上 

「このツイートは表示できません」ツイートが表示されない原因と対処方法

ツイッターの不具合

「このツイートは表示できません」となっている原因はツイッター全体の不具合かもしれません。

※2020年10月16日の障害に関連して検索されてる方が多いので以下で整理

【2020年10月16日】Twitter障害について:「通知はまだ届いていません」

「このツイートは表示できません。」という表示

「このツイートは表示できません。」という表示は突然出現します。

この表示になる場合として

  1. 当該ツイートが通報されている
  2. ツイッター側から不適切と判定されている
  3. ユーザの設定によって表示されないようになっている

これらの可能性が考えられます。

シャドウバンされていないか調べる

「最新のツイートしか見えず、それ以前のツイートは存在しないことになっている」ような場合は、「シャドウバン」の一形態なので、そのアカウントがピンポイントで対象になっているということです。

Twitter Shadowban Testで自分のアカウントのチェックができます。

先にこちらを調べると絞り込みができると思います。

旧UIの時のまとめですが以下で書いています。

ツイート自体はTLからも閲覧可能、リプ欄から元ツイートが見えない

このツイートは表示できません。

このように、ツイート自体は当該アカウントのトップページ等から閲覧可能であるが、リプ欄から元ツイート側に辿ろうとすると閲覧できないようになっているという状況です。

この場合はユーザ設定ではなく、別の可能性と考えるべきだと思います。

ユーザー設定のプライバシーとセキュリティ⇒セキュリティの項目で

  • センシティブな内容を含む可能性のある画像/動画を表示する⇒チェック
  • ツイートする画像/動画をセンシティブな内容を含むものとして設定する⇒チェックなし

このようになっているにもかかわらず非表示になっている場合には、ユーザ側の設定の問題ではないということになります。

ツイッター全体の不具合が原因かもしれない

結局、ツイッター全体が何らかの不具合が起きていて、その影響で無差別にそうなっているだけである、という可能性があります。

ツイッター全体の不具合であるかどうかを判別する方法としては、ツイッター検索窓に「このツイートは表示できません」や「ツイート 表示されない」などで検索をかけて、近いうちに多数のユーザが同様の悩みを訴えているかどうかを調べることだと思います。

今回(2019年12月27~28日)も、多くのユーザにおいて表示されないことを呟く人がいらっしゃったので、そういうことだと思います。

リンクを貼っているツイートが対象かもしれない

ツイートが表示されない原因と対処方法

今回の事象に遭遇したユーザを調べたら【そのほとんどが元となるツイートにリンクを貼っている】ということに気づきました。

あるユーザのリンクを貼ったツイートが非表示になったら、それに紐づいているそのユーザ自身のリプライも全て非表示になるということかもしれません。

まとめ:対処法は「待つ」しかないかもしれない

実は27日の夜に私がシェアしたツイートのリンク先に遷移しようとするとツイッターの警告画面になるということがありました(それは一時的ですぐに警告画面はなくなった)。

おそらくこの頃のツイッターはそういう状況なんだろうと思います。

今後も同様の事象があれば、単なるツイッターサービス全体の不具合であるということで、「待つ」ということが最良の対処法なんだろうと思います。果報は寝て待て。

以上

保守速報への大阪市ヘイト条例適用は違憲違法の可能性?

保守速報の記事やコメントが大阪市ヘイト規制条例に言うヘイトスピーチに当たるとして、管理人の氏名が公表されました。

保守速報への大阪市ヘイト条例適用は違法の可能性があります。

大阪市が条例上のヘイトスピーチと認定した保守速報の文言

保守速報のヘイトスピーチ

大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例に基づくヘイトスピーチの公表(案件番号「平 28-6」)

まぁ酷い文言がありますね。

これを見ながら、大阪市のヘイト規制条例に言う「ヘイトスピーチ」の定義はどうなっているのか確認しましょう。

大阪市ヘイト規制条例のヘイトスピーチの定義

大阪市ヘイト規制条例のヘイトスピーチの定義は、いわゆるヘイト解消法の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは異なります。

「特定人等」が対象

条例2条1項アでは、「特定人等」として「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人」と、「当該個人により構成される集団」が規定されています。

要するに、特定人と特定人が所属している集団に対するヘイトスピーチが禁止されています。

でも、ちょっと考えると、この規定は変です。

「当該個人により構成される集団」とは?

条例には「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団」と書いてあります。

人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は集団」ではありません。

集団の場合には、「当該個人により構成される」集団でなければなりません。

通常の日本語の理解ではたとえばAさんという特定の人種民族属性を有する人が居て、そのAさんが構成員である、とある集団が「当該個人により構成される集団」であると考えることになります。

『いやいや、そのような属性を持つ人間、という意味で「個人」なんだから、Aさんなどという個別の人格を有する登場人物がなくても、〇〇人という意味の表現であれば良いんだよ』

このような指摘がありそうですが、では、そうすると「個人」って何でしょうか?

およそ「〇〇人」という表現をする場合、既にある国籍or民族集団であるという前提が含まれています。そうである以上、「個人」が「〇〇人」を意味するとは考えられません。

したがって、「〇〇人という意味の表現であれば当該個人に該当する」という解釈は成り立たないということになります。

公表された保守速報の記事の文言では「〇〇人」など集団を指す文言はありますが、特定人格を有する個人名が出てきていませんから、ヘイトスピーチには当たらないのでしょうか?

保守速報のページの文言はヘイトスピーチに該当しない?

ところが大阪市が紹介した保守速報の頁にある文言はあれが全てではないでしょう。

どうやらある事件のとある人物(在日韓国・朝鮮人の人でしょう)の言動がベースとなっていて、それに対する言動と思われるからです。

公表文にある文章が全てではなく、引用元や保守速報のコメント欄の前後の文脈で必ず特定の人物の名前が存在しており、それと関連して行われた投稿であると考えられます。

そうすると上記で指摘したような話にはならず、公表された文章は「朝鮮人」等の集団の表現であったとしても、それはあくまでも個別の人格を有する人が属するという前提が文脈から読み取れるので、ヘイトスピーチに該当しないと言うことはできないのではないでしょうか?

条例のインターネット規制の条項が憲法94条違反?

前々から指摘してきていますが、大阪市のインターネット表現に対する規制は地方自治法上の「地域における事務」ではなく、憲法94条の条例制定権の逸脱ではないかと思います。

インターネットは大阪市の市域外で行えるものであり、自治体の領域外の話は「国と自治体の役割分担」を越えたものであると考えられるからです。

この点の先例は無いので未知数ですが、保守速報が争うとすればこの点しかないと思います。

保守速報への大阪市ヘイト条例適用は違憲・違法の可能性?

ヘイトスピーチに該当するとされた保守速報の削除されたページを知らないので判断できませんが、それを知っている人なら、大阪市によるヘイトスピーチの認定が正しいのか間違っているのか、明らかに判断できるはずです。

保守速報への大阪市ヘイト条例適用が違法である可能性は、憲法94条違反かどうかによると思いますが、いろいろとハードルが高そうです。

以上

保守速報管理人の栗田香の名前が大阪市ヘイト条例違反で晒される

保守速報管理人の名前:栗田香

保守速報管理人の栗田香の名前が大阪市ヘイト条例違反で晒されましたが思うところがいくつかあるので書いていきます。

保守速報管理人の栗田香の名前が大阪市ヘイト条例違反で

保守速報管理人の名前:栗田香

大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例に基づくヘイトスピーチの公表(案件番号「平 28-6」)

大阪市のヘイト規制条例にいう「ヘイトスピーチ」該当性についての論評は別稿で改めますが、これは酷いでしょう。

文脈からして政策論ではないということが明らかです。

保守速報の記事は基本的に他のサイトからの記事の転載、5ちゃんねる(2ちゃんねる)のコメントの転載が多かった上に、コメント欄は承認制にすることもできるのに、管理人の栗田香(くりたかおる) 氏は、このようなコメントを容認していたということになります。

なお、管理人の氏名は、保守速報(の運営者)が被告となった裁判を調べている人なら前々から知っていたハズです。

ヘイトスピーチ条例の「立法事実」にされる

保守速報のこの事案もヘイトスピーチ条例の「立法事実」にされるおそれがあります。

しかし、立法事実とは「現実に発生した具体的事件」を指すものではありません。

どうやらこの点が多くの議員や行政職員に誤解されていると思われ、また、朝鮮総聯系の人間が理論捏造をしているので以下でまとめています。

大阪市の氏名公表措置の問題点

ヘイトスピーチした人物の「氏名を公表」 全国で初めて 大阪市が条例に基づき実施(関西テレビ) - Yahoo!ニュース

オーサーコメント篠原修司

今回の公表方法には問題があると考えます。同姓同名の人がヘイトスピーチをした人物だと勘違いされる可能性が高いです。

中略

この公表方法ではデマによる炎上が起こりえます。

大阪市は氏名だけの公表をして、一体何をしたいのだろう?と思います。

確かに条例では「氏名を公表する」とありますが、果たして本来の目的であるヘイトの拡散防止に繋がるのでしょうか?

条例制定の当初から規定や運用の問題点を指摘してきましたが、いよいよ懸念が現実化したという思いです。

保守速報は「匿名で表現活動をする利益」の侵害で法的対抗措置を取るのか?

ちなみに、なぜか私のツイッターアカウントをブロックしてる保守速報ですが、27日の記事では

大阪市から指摘された記事は削除済みです。対応したにもかかわらず本日、措置を受けてしまいました。
保守速報の今後については日をあらためて報告させて頂きます。

などと言っています。

仮に栗田氏がこれを不服として法的措置を検討しているとしても、不法行為で慰謝料請求になるでしょうが、「匿名で表現活動をする利益」が認められるかはともかく(参考資料:アメリカでは認めた例)、この観点からの大阪市の措置は正当化されると思われる上に、氏名そのものだけでプライバシー侵害になることは決して無いので、どうするんでしょうか?

以上

死刑廃止国が犯人を殺害・射殺した人数の統計と日本との比較資料

死刑廃止国の射殺人数と日本との比較

死刑廃止国で犯人が殺害・射殺された人数について整理しました。

何かと参照されるイギリスと日本で死刑執行されると大使館のツイッターアカウントがうるさいフランスについて取り上げます。

欧州各国の公権力執行による殺害と日本の死刑の統計

List of killings by law enforcement officers by country - Wikipedia12月27日魚拓

国家の法執行官による殺害者数リスト」というページによると、2018年の各国の殺害数(死刑は含まれていない)は以下の通りです。

フランス⇒人数:26人、1000万人あたり3.8人

日本⇒人数:2人、1000万人あたり0.2人

イギリス⇒人数:1人、1000万人あたり0.15人

この表は「射殺」以外の原因も含まれているため、出典を参照する必要があります。

フランスとイギリスは死刑廃止国なので、日本はさらに死刑による死亡者も別に調べる必要があります。

フランスの2018年の射殺件数は15件、非武装者が8人

Vingt-six personnes sont décédées à la suite d'une intervention des forces de l'ordre en 2018 - Basta !魚拓

2018年、警察の介入により26人が死亡しました。これらの死者のうち、15人が警察官または憲兵による発砲後に射殺された。これらのうち8人は非武装でした。

フランスの2018年の射殺件数は15件、非武装者が8人でした。

15人というのは2018年の日本の死刑執行人数と同じですね。

そして、43年間の殺害人数を視覚化したのが以下のページ

Morts à la suite d'interventions policières - une enquête de Basta Mag魚拓

これは公式な数値ではありませんが、概ね参考になるものでしょう。

そこでは、43年間のうち、警察の介入の結果または法執行の結果として676人が死亡したとあります。

そのうち、412人が銃器で殺害され、そのうちの235人は非武装であると指摘されています。毎年9.5人が射殺されてる計算になります。

他にも、82人が警察署や憲兵隊で逮捕されたとき又は逮捕されたばかりの移送中に死亡したことや、77人の未成年者が死亡していることが報告されています。

イギリスの射殺事件でも正当防衛事案ではない単独犯・非武装者が含まれる

Fatal police shootings | Inquest魚拓

イギリスでは1990年以降に警察等による射撃によって72名が死亡しています。

毎年約2.5名が射殺されている計算になります。

大まかな射殺時の状況は以下で確認できます。

List of killings by law enforcement officers in the United Kingdom - Wikipedia2019年12月27日魚拓

これを読むと、射殺当時「非武装」だった者や単独犯であった者などが見つかります。

しかもどう見ても正当防衛の事案ではありません。
(正当防衛でなければ警察が発砲できないという日本が特殊過ぎる)

日本の死刑執行人数と射殺事例

日本の死刑執行人数は1993年以降の合計127人です。

他方、警察等が射殺した人数は、戦後の合計で13名です。

2018年は交番に刃物を持って接近した犯人をその場で射殺した事件と、けん銃で警察官らが殺害された現場で駆け付けた警察官が犯人を撃ち、後に死亡した事件があります。武装した単独犯だということが分かります。

これらを合計すると(射殺は戦後からだが)毎年約5.5人が死刑または射殺により殺害されていることになります。

世界とヨーロッパ諸国の射殺数

なお、あくまで上記のWikiによればですが、他に日本よりも殺害率が低い国はデンマーク・アイスランド・スイスのみであり、欧州各国は世界の他の地域よりは低いですが、日本よりは高い殺害率です。

世界とヨーロッパ諸国の射殺数は、総体としてみれば、日本の死刑と射殺数を含む数値よりも遥かに高いレベルにあるということが言えます。

死刑廃止国は死刑の代わりに現場で射殺=簡易処刑"summary execution"してる?

こういう主張に対して『死刑廃止国は死刑の代わりに現場で射殺=簡易処刑"summary execution"してるだろう』と指摘されることがあります。

私は基本的にこういう事は言いたくないですが、日本を野蛮であるとか言ってる者に対して揶揄するために用いる反論としてはありだと思います。

死刑が存在しない国から「非人道的」と言われていることに対して、日本の死刑と比較するには、射殺事例が一番適切だろうということで持ち出されているに過ぎません。

論理的には死刑と射殺の数は無関係ですがこうした非対称な状況なので仕方がない。

死刑の「代わりに」現場で射殺しているという事を示すような証拠はおそらく無いので、因果関係なんて分かりっこないです。死刑制度があった国が、死刑廃止をしてから射殺等の殺害が多くなったという事実があるかを考えるのは、治安の変化等もあって無意味でしょう。イギリスは日本よりも(死刑含めた)殺害については低いですからね。

特に本稿では日本の銃殺も含めて論じているのでここでの意味での比較は無関係という指摘はあたりません。

フランス大使館の主張が受け入れられていないのは、主に次に指摘する点が原因です。

フランス大使館のダブルスタンダードが問題

フランス大使館の主張がおかしいのは、【死刑廃止を日本に迫る理由として「非人道的」等を持ち出しておきながら別の公権力行使の形態で殺害を行ってて、それはあんたらの理屈上は「非人道的」では?】という点です。

要するにダブルスタンダードの問題です。

非武装者が235人射殺されているという点を見ても殺害せざるを得ない状況でも何でもない事案でも殺害が起こっていることが伺え、射殺をする際の手続・基準が(日本との比較で)緩いと考えられるから、簡易処刑と言われても仕方がないと思います。

死刑には犯罪抑止効果が無い?

死刑には犯罪抑止効果が無いと言う人が居ます。

これは「犯罪抑止効果」を1面だけで捉えているのが原因だと思います。

  1. 死刑という刑罰法規が存在することによる一般予防効果
    ※チャイナは死刑が現に行われている事実をもって抑止効果と考えており上記とは異なる意味合い
  2. 死刑がその者に執行されることで「その者による将来の犯罪が無くなる」

犯罪抑止効果」と言うとき、刑法学でも1番の意味で使われますから、それにしか意識が向かないのはある意味で当然だと思います。

刑事政策というある種の定量的な観測の次元では犯罪抑止効果は可視化されない

しかし、2番目の効果は絶対的に存在することが明らかです。

そのような考え方をすることが妥当かはともかく、死刑がその者に執行されることでその者による犯罪は行われなくなるというのは「事実」でしょう。

フランスもそれ以上の犯罪が行われるのを防ぐ目的で現場で射殺しているのではないのでしょうか?それともフランスの警察等は快楽で射殺をやってるんでしょうか?

現場での射殺は非武装・単独犯には為されない?

基本的に軽武装・単独犯ならば射殺ではなく制圧・確保するという運用が為されているというのはその通りだろうと思います。

というか「基本的には確保を第一に試みる」というのは先進国では当たり前でしょう。

しかし、先述の資料でも明らかですが、射殺時に非武装であった単独犯のケースはいくらでもあるのであって、非武装・単独犯は射殺されない、ということにはなりませんし、そういう事案のすべてが違法行為として処罰対象になっていることはないでしょう。

非武装であっても集団で殴り掛かるなど、銃器を使わないといけない状況があるのは確かなので、非武装者・銃火器ではない軽武装者に対する射殺だからといって不当だとか言う気は、私はまったくありません。 

たとえば歴史上も以下のような事例があります。

朝鮮騒擾(三・一運動)平安南道孟山の「住民54名銃殺」の実際

日本では重武装集団による犯行が無いから比較できない?

確かに、フランスの事件を見ても分かりますが、重武装のしかも集団によるテロ行為の鎮圧・阻止の必要がある事件がある所では、どうしても射殺せざるを得ない場面は多くなります。

私を含む多くの人は、その事自体を残虐であるとか非人道的だと言ってるのではない。

あくまでも日本の制度を批判するために「非人道的」などという文言を使っていることとの整合性を問題視してるに過ぎません。

現場の警察官等の負担・巻き添えが少ないこと

忘れてはならないのは、犯行現場で殺害しない・極力犯人に対して有形力を行使しないことによって、数字に表れない警察官らのケガや精神的苦痛があるということですね。

他方で、銃器を安易に使わないことで関係ない国民が巻き添えになることが無いという効用があるというのも確かでしょう。

死刑は証拠に基づく裁判で合理的な疑いを入れない程度の立証を経て行われる

そして、死刑は訴訟手続のもと、証拠に基づく裁判を経て合理的な疑いを入れない程度の立証がなされた場合にのみ行われています。

ですから、死刑が人権軽視であるとか非人道的であるとかを、現場で非武装の人間もバンバン射殺し、未成年も執行中に死亡するような権力行使をしている国が言ってくるというのは、いったい何様なんだと思います。

冤罪の場合に取り返しがつかないから廃止すべき?

それでも「死刑は冤罪の場合に取り返しがつかないから廃止すべき」と言われます。

しかし、それはどの刑にもありえる話です。

刑罰によって法益が侵害されればそれは回復しないのであり、費やされた時間は戻ってこないのであり、「冤罪の場合に取り返しがつかない」のは死刑も無期懲役などの他の刑も一緒です。それを言ったらおよそ全ての刑罰を科すこと自体の是非を論じることになります。

まとめ

死刑を廃止するか否かは人道問題でも合理性の問題でもなく、国の政策としてどう決断するか否かの問題だと思います。

道路を右側通行にするか、左側通行にするかの違いのようなものです。

死刑を無くして国民の税金で犯罪者を養うのか、それとも冤罪の可能性をゼロに限りなく近づけた上で死刑を執行するのか。

正解なんて無いと思います。

以上

政府の秋元容疑者出張記録の提出拒否は捜査に支障があるから当然だと思う

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政府(内閣府)が26日の野党合同ヒアリングにおいて、秋元司容疑者の出張記録の提出を拒否したという報道が共同通信からありました。

政府の秋元容疑者出張記録の提出拒否

政府、秋元容疑者の出張記録の提出を拒否(共同通信)

これが事実だとして、政府の秋元容疑者出張記録の提出拒否は捜査に支障があるから当然だと思います。

国政調査権の行使でもない、単なる野党議員に資料を渡して証拠隠滅されたら大変だからです。

国政調査権の限界:捜査に支障をきたす調査は不可

野党合同ヒアリングではなく、議会の権限として国政調査権を行使した場合はどうか?

この場合でも、浦和充子事件の教訓からは以下の教訓があります。

  1. 判決確定前後において判決内容を批判したり審理に影響を与える調査をなすことは許されない
  2. 起訴不起訴の判断や公訴の内容、捜査の続行に重大な障害をきたす方法による調査は許されない
  3. ただし、これらに抵触しない限りで事実について裁判所と異なる目的で並行調査することは許される

詳細は以下でまとめていますが、要するに捜査機関の捜査の障害になるような行為は立法府だろうが許されないだろうということが憲法62条の運用になっているということです。

国政調査権ですらそうなのですから、単なる野党議員の要求に応じるべき必然性は無いでしょう。

野党議員に出張記録等が渡れば関係者が証拠隠滅逃亡する可能性が

別に野党議員に限る話ではないですが、他の議員やマスメディアに秋元議員に関する記録が全部渡ってしまうなら、関係者で「ヤバい人」が事前に対処する隙を与えてしまうことになりかねません。

ですから、政府も今の段階では秋元議員に関する資料提出を拒否するものの、捜査が進展した後には資料提出に応じると思います。

以上