事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

茂木外務大臣ジャパンタイムズ大住マグダレナ記者へ「日本語分かっていただけましたか」発言は正当である

茂木外務大臣日本語わかっていただけましたか?ジャパンタイムズ大住記者に

令和2年8月28日に行われた茂木外務大臣の記者会見でジャパンタイムズの記者に「日本語分かっていただけましたか?」と発言した事がなぜか叩かれていますので事実関係を整理します。

茂木外務大臣「日本語分かっていただけましたか」発言の文脈と全体の質疑動画

茂木外務大臣会見記録|外務省 (令和2年8月28日(金曜日)11時37分 於:本省会見室)

【ジャパンタイムズ 大住記者】2点お伺いします。入国規制が、外国人を対象にした入国規制が緩和される方向であるというふうに伺っているんですけれども、その方向性の中には、在留外国人は日本人と同じような、それに似たような条件で入国が認めるようになるかというその方向について、それは1点で、2点目はそもそも論として、この在留外国人を含めた規制は、特に在留外国人を対象にした入国規制は、どういった、その背景になった科学的な根拠を具体的に教えてください。

【茂木外務大臣】まずこういう在留資格を持つ方々、今、日本にいらっしゃる、もしくは在留資格を持っていったん海外に出られている方、そういった方々の入国もしくはその再入国を認める方向で、今、最終調整をしているところであります。
 そしてこれは、日本に限らずあらゆる国が、今、新型コロナウイルスの中で、水際措置、これをとっている状況であります。それぞれの国によりましてやり方は違ってくるわけでありますけれども、まさにそれは各国の感染症対策であったりとか主権に関わる問題でありまして、各国がとっている措置、日本としても適正な措置をとっていると考えております。

【ジャパンタイムズ 大住記者】すみません、科学的な根拠について。

【茂木外務大臣】What do you mean by scientific?

【ジャパンタイムズ 大住記者】日本語でいいです。そんなに馬鹿にしなくても大丈夫です。

【茂木外務大臣】馬鹿にしてないです。いや、馬鹿にしてないです。全く馬鹿にしてないです。

【ジャパンタイムズ 大住記者】日本語で話しているなら、日本語でお答えください。科学的な根拠の、同じ地域から日本国へ、日本国籍の方が外国籍の方と一緒に戻られて、全く別の条件が設けられ、その中には例えば事前検査だったり、同じ地域に住んでいるところから、全く別の条件で入って、入国が完全に認められないケースもあったんですね。それに関しては、その背景に至ったその違い、区別を設ける、その別の条件を設ける背景になった、背景にある科学的な根拠をお聞きしています。

【茂木外務大臣】出入国管理の問題ですから、出入国管理庁にお尋ねください。お分かりいただけましたか。日本語、分かっていただけましたか。

茂木外務大臣が「日本語分かっていただけましたか」と発言した文脈と全体の質疑動画を見ると、印象は変わりますね。

ジャパンタイムズの大住マグダレナ記者の「科学的根拠」質問が稚拙

「日本文化と言語学で修士号を取得している日本学者」ですって…

ジャパンタイムズの大住マグダレナ記者がした質問を整理すると、「在留外国人は日本人と異なる条件で入国審査が行われているが、その科学的根拠はあるのか?」というものです。

文字に起こすとわかると思いますが、「質問の仕方」が稚拙だというのが分かります。

上司とかに会見録みたいな質問したら下手したら怒られますよ。

これはネイティブじゃないからとかそういう話ではないです。

まぁ、それを言ってしまうとダイレクトに能力評価になってしまうので、茂木さんは日本語能力の問題にしたんでしょう。

法務省傘下の出入国管理庁の所管の話

茂木大臣も指摘していますが「入国審査」は法務省傘下の出入国管理庁の所管の話。

検疫に関する話なら厚生労働省が所管です。

この関連で言うなら、外務省は「ビザの発給」に関しての所管です。

大住記者は所管外について質問をしているので、そりゃあ「科学的ってどういう意味だ?」と英語で言いたくなりますよ。日本語能力の限界によって「場違い」な質問がされていると考えるのも無理はないです。

差別ではないし、科学的根拠は必要ない

所管外の事項について稚拙なまとまりのない質問をしてくる記者に対する応対として、これのどこが差別なんでしょうか?

日本人とそうではない者の入国審査に扱いの差が出てくるのは当然です。

日本人には入国の自由があり、外国人にはそれが無いからです。

「科学」の中に法学が含まれるとして、説明するとすればそういうことになります。

以上

署名してない縦覧者に署名簿全部を渡さない運用は違法?:愛知県選挙管理委員会の方針の適法性

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リコール請求の署名簿に関して【署名していない縦覧希望者に署名簿全部を渡さない運用】は違法なのでしょうか?

愛知県選挙管理委員会の現行方針の適法性について検討しました。

結論

長くなったので結論を先出しします。

  1. 署名していない縦覧希望者に署名簿全部を渡さない運用は、署名簿の縦覧の目的を達成するための方法として十分な仕組みが備わっている限り許されると考える
  2. 個人情報保護の要請が高まってきた経緯からは当然
  3. そもそも「投票の秘密」の趣旨からは署名簿の縦覧方法は限定されるべき

以下、基本的な話を確認しつつ記述していきます。

リコール請求の流れ

リコール請求の流れは以下です。

  1. リコール請求の署名を有権者の3分の1以上集めて選挙管理員会に請求
  2. 署名簿を選挙管理委員会が審査する
  3. 署名簿を縦覧に供する
  4. 有効署名数が有権者の3分の1以上であれば、リコールの住民投票
  5. 住民投票で有効投票総数の過半数がリコールに賛成であれば、リコールが成立

ここで問題にするのは、2~3の「署名簿の縦覧」に関してです。

なぜなら、2020年夏に始まった愛知県知事の解職請求に際して、「署名簿は縦覧に供されることになっているから、個人情報(氏名と住所)が誰でも知ることができる、そういう署名をする人は勇気がありますね…(意味深)」という事を言っている人が居るからです。

署名簿を縦覧に供する範囲

署名簿を「縦覧に供する」の方法と縦覧できる者の具体的範囲 - 事実を整える

地方自治法では、直接請求(今回の場合は地方公共団体の長たる愛知県知事の解職(リコール))請求)における署名簿は、「関係人の縦覧に供さなければならない」とあります。

縦覧の制度趣旨は、署名簿を一定期間関係人の縦覧に供することで署名簿の署名の効力決定の正確を期するため、関係人をしてその効力決定の過誤の有無を検討させ、修正の申立てを行わせる趣旨とされています。
参考:逐条地方自治法 新版 第9次改訂版[本/雑誌] / 松本英昭/著

また、地方自治法施行令により署名簿は市区町村ごとに作製することとなっています。

そこで、「関係人」とは「市区町村に登録されている有権者」を意味すると解されていますが、「縦覧に供する」の定義や具体的な運用は法令上に記述がありません。

つまり、市区町村が管理する署名簿を一冊まるごと有権者たる縦覧希望者に渡して確認させるのか、それとも本人の署名があるページのみ見せるのか、本人の署名がある部分のみ見せるのか、ということは、自治体の運用次第になっています。

愛知県選挙管理委員会の「縦覧に供する」の具体的方法

「縦覧に供する」の具体的方法について愛知県選挙管理委員会に確認したところ、各自治体の窓口で有権者である旨を伝えると、職員の側で当該有権者が署名簿に記載されているかをチェックし、記載されていれば当該ページのみを見せ、そうでなければ「記載されていない旨を伝える」運用になっているとのことです。

なお、「請求代表者」であればすべての自治体の署名簿を、署名を集めることの委任をうけた「受任者」であれば担当部分の署名簿をチェックできる、とも言っていました。

つまり、単なる有権者たる縦覧希望者が当該市区町村管理の署名簿をすべて見てチェックをする、などという方法は採られていない、と説明されました。

縦覧に供する範囲を本人署名部分に限定するのは違法か?

さて、愛知県選挙管理委員会の説明する運用に異議を唱える者がいます。

自分がした署名の効力の有効無効を判定するために署名簿をチェックする場合は良いですが、問題は、署名をしていない者が縦覧をしようとする場合です。

この場合は、自分の氏名住所が冒用=勝手に使われて署名が偽造されていないかどうかをチェックする目的で窓口に来ているのですが、これが無制限に認められると「自分の名前が冒用されているかを確認する建前で、実質的に誰が解職に賛成しているのかを確認する目的で署名簿を見る」ことが可能になってしまいます。

署名簿の縦覧制度が威迫的に利用された過去の事案

この目的のために署名簿を見ているのではないか?或いはその可能性を匂わせて署名することを思いとどまらせようとしていた事案もあります。

参考:宇都宮市陳情第61号「署名簿縦覧の目的外を防止する条例等の制定を求める陳情」

参考:署名縦覧を盾に議員らがビラで暗黙の圧力?町長リコール運動をめぐる川島町住民の狼狽 | 相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記 | ダイヤモンド・オンライン

これについて、愛知県選管の説明する運用では、自治体職員が名前の有無を確認して、名前が無ければその旨を伝えるだけ、ということになり、この心配は無くなります。

選挙管理委員会は信用できないという反論

しかし、異議を唱える人は、「職員による確認では本当にそうであるのかが分からない。その自治体の署名簿を全部渡してもらって自分自身で確かめないとダメだ。チェックにならない。これでは地方自治法上定められている「縦覧に供する」を逸脱した違法な運用だ」と言っているのです。
ちなみに昭和20年代には数百名規模で署名の偽造が行われていた事案がある

この主張は妥当でしょうか?

愛知県選管は「縦覧制度の趣旨」から、署名簿を全部渡して閲覧させることは不必要であるとしているようですが、詳しい中身は現時点ではよくわかりません。

過去の縦覧制度の運用方法

「直接請求の署名簿は縦覧できるから誰が署名したかバレる」は署名の自由妨害のデマなのか? - 事実を整える

2014年に埼玉県川島町で行われた町長の解職請求の際に実際にあったことですが、町議ら12名が「署名簿に署名捺印した場合は、取り消しはできません。また、一定期間内に、川島町選挙管理委員会で有権者なら誰でもその署名簿を見ることができ、誰が署名したのか確認できます。」と書かれたビラを配布したことがありました。

で、このときの運用を川島町役所に伺ったところ、請求代表者なのか誰なのか分からないが、川島町の有権者2名が縦覧を希望したため、庁舎内の場所を指定して署名簿を全て渡して縦覧させた、と言っていました。

他にも同様の回答をする自治体はいくつもありました。

ただ、その後、法体系に変遷があったということは考慮しなければなりません。

個人情報保護・プライバシー保護の機運の高まり

現在では信じられませんが、過去には住民基本台帳を誰でも閲覧可能でした。

また、公職選挙法上、選挙人名簿をその自治体の選挙人等の関係者であれば誰でも縦覧することが可能でした。

しかし、その後個人情報保護の機運が高まったことから、平成29年6月に、公職選挙法から「縦覧」の文字が消えて縦覧制度を廃止し、個人情報保護に配慮した規定が整備されている閲覧制度に一本化されました。
参考:公職選挙法施行令の一部を改正する政令(案)及び 公職選挙法施行規則の一部を改正する省令(案)の概要 平 成 2 9 年 4 月 総務省自治行政局選挙部選挙課

※同じ文言を使っていても法律が異なる場合には意味内容が異なる可能性があるため、「公選法では縦覧が消えたのに地方自治法では残っているということは旧公選法下において行われていた縦覧と同じことが可能なハズだ」という主張はそれだけでは何ら説得力を持ちませんたとえば「新型インフルエンザ」の定義は新型インフル特措法と感染症法とでは異なります。ここでは個人情報保護の機運が高まって来たことを説明するために例示しています。

「個人情報保護法」や「行政機関の保有する個人情報の公開に関する法律」では地方自治体の長や職員等が出てきませんが、同様の内容の個人情報保護条例や関連規程が全国の自治体で制定され、実施機関等の言葉で自治体の長や選挙管理委員会が規定され、義務を課されています。愛知県やその基礎自治体も例外ではありません。

愛知県個人情報保護条例 名古屋市個人情報保護条例

なお、個人情報保護法や関係法令に規定される「個人情報」として保護されなくても、実体的利益としてのプライバシーとして権利保障される可能性が残る場合があります。

個人情報とプライバシーの違い

https://www.soumu.go.jp/main_content/000190686.pdf

こうした社会情勢であるため、たとえば政府見解によって義務であるとされている事務に関して国からの要請があったとしても、個人情報を考慮するあまり要請を拒否する自治体が少なからずあります。

安倍総理:自衛官募集事務に協力しない自治体が6割と憲法改正の関係 - 事実を整える

もっとも、地方自治法上の縦覧については個人情報保護条例は適用されないと明記されているハズで、当の愛知県の個人情報保護条例28条でも法令に基づく縦覧に際しては適用しないと規定してあります。

ただし、自治体によっては「縦覧人は,縦覧により知り得た個人情報については,その保護に配慮しなければならない」といったような規程が存在しています。そうした規定が無くとも、現場の運用において職員の側で配慮しようと努めていることでしょう。

参考:阿久根市直接請求に係る請求者署名簿の縦覧に関する規程

公職選挙法上の「選挙人名簿抄本の閲覧」制度

選挙人名簿は、投票できる者の範囲を確定するために調製される公簿であり、名簿への登録の有無は選挙権行使とも密接に関連していることから、その正確性を確保するため、閲覧制度が設けられています

したがって、「特定の者が選挙人名簿に登録されているかどうかを確認する場合」に閲覧が認められており、不特定又は多数の選挙人に関しては公職の候補者等の政治活動・選挙運動をする場合や公益性の高い調査をする場合でなければ不可能になっています。

その関係で、選挙人名簿抄本のコピーを行っていた根拠規定であった旧法29条2項の「その他適当な便宜を供与しなければならない」という文言は消え、コピーを行うことはなくなりました。

参考:選挙人名簿の抄本の閲覧制度に関する論点整理(案)

なお、固定資産の縦覧・閲覧制度は同一自治体内に存在する他の土地や家屋の評価額と自己の土地や家屋の評価額を比較することにより、評価が適正であるか縦覧帳簿を確認することができる制度であるため、無関係な話です。

「公職選挙法上の閲覧制度では有権者なら他人たる「特定の者」を調べるために名簿を見れるのに、地方自治法上の縦覧制度では見れないという愛知県選管の運用はおかしい」

という声が聞こえてきそうですが、選挙人名簿の記載と署名簿の記載は、その性質が異なるだろうと思うのです。

それは、「投票の秘密」の趣旨が作用するべきかどうかだと考えています。

憲法15条4項の選挙における投票の秘密

日本国憲法15条4項では「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」とあります。「秘密投票の保障」と言われます。

制度趣旨は、誰が誰に投票したのかが判明してしまうと、選挙人=有権者に対して不当な圧力がかけられて自由意志で投票することが困難となるおそれや買収などの不正行為が行われるおそれがあり、正当な選挙ができなくなるため、それを防ぐためです。

ただ、「選挙」における、と書いていますから、たとえば最高裁判所裁判官の国民審査=公務員の罷免は憲法15条1項の話であって、直接的には関係ないように見えます。

しかし、実際には国民審査の際には誰が誰を不適格としたのかが分からないような投票用紙を投票箱に入れていますよね?

最高裁判所裁判官国民審査法18条でも「秘密投票」が規定されており、実行されているわけで、「選挙以外の投票にもこの趣旨は及ぶ」と考えられています。
参考:注釈憲法 伊藤正己/〔ほか〕著

また、たとえば国会では、議長、副議長の選挙において「それぞれについて単記無名投票(投票用紙には選ぶ相手1人の氏名だけを記載し、投票する自己の氏名は記載しない)で行われます。その理由は、議員が何ものにも拘束されることなく自己の判断に従って投票できるようにするとともに、当選した正副議長が、投票者の意向等に捕らわれることなく、中立、公正な院の運営にフリーハンドで当たれるようにする、との配慮に基づくものと考えられています」とされています(「表決」の場合には起立や記名投票の場合もあり得る)。これは「選挙」ではありませんが、明らかに投票の秘密を意識した制度です。
参考:正副議長の選挙:国会キーワード:参議院 衆議院規則

さらに、「被選挙権」は憲法に明文が無いにもかかわらず、「憲法一五条一項には、被選挙権者、特にその立候補の自由について、直接には規定していないが、これもまた、同条同項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべき」と最高裁が判示しています。
参考:最高裁判所大法廷判決 昭和43年12月4日 昭和38(あ)974

このように、憲法の明文上は規定されていないものの、ある条文の精神・趣旨が他の場面においても妥当すると考えられ、運用に反映されていることは大いにあるのがわかります。

そこで、「選挙における投票の秘密」を一般化すると、「民主的意思決定過程における判断内容の秘密」と言えるでしょう。

憲法上の投票の秘密とリコール請求における秘密

地方自治法上の直接請求制度のうち、議会の解散請求や長の解職請求においては、署名を集めたあとに住民投票が行われますが、これは「選挙」ではありません。

しかし、この際には無名投票の方法が採られています。

これは公職選挙法の規定を準用しているからなのですが、その背景には間違いなく憲法15条4項の選挙の秘密があります。

こうしてみると、『地方自治法上のリコール請求もまた、選挙の裏返しであり、「誰が解職に賛同する署名をしたのか」については秘密が守れられるべきである』ということは、直接的に憲法上の要請が働かなくとも、その精神からは配慮が求められていると言えるのではないでしょうか?

この点が、選挙人名簿の閲覧と異なります。

選挙人名簿は見られたところで、そこから分かるのは氏名と住所くらいです。「誰に投票したのか?」という民主的意思決定の結果までは分かりません。これに対して、リコール請求の署名簿が無制限にみられるなら「誰が解職に賛同したかという民主的意思決定の結果」が判明してしまいます。

仮に、これまで縦覧において署名をしていない者が署名簿のすべてを見ることができたとして(※追記:令和2年6月に行われた静岡市の条例制定に関する直接請求の署名簿は、選挙人であれば誰でも署名簿を渡して自身で調べていた。他の複数自治体も同様)、それは縦覧による弊害除去の必要性が高いと考えられていたことや、技術的な制約(現在ではデータベース化して検索可能なハズ)、ひいてはそれらによって立法者の意識が投票の秘密確保に向かっていなかったと考えられます。

実は、この点について昭和の国会で興味深い質疑がありました。

リコール請求は請願権?

第6回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 昭和24年11月17日に興味深い質疑がありました。

○立花委員 請求権の制限の問題でありますが、請求権に関しまして、大体選挙に準ずるものとして、お扱いになつているように考えられますが、そういたしますと、署名簿の縱覧という言葉があるのでございますが、これは非常に問題ではないかと思われます。御承知のように、選挙の祕密の保持ということは憲法にも保障されておりまして、選挙における投票の祕密はこれを犯してはならないということがはつきりあるのであります。もし署名を選挙に準じてお扱いになり、それに関する取締りあるいはその他の規定を選挙法に準じておやりになるとすれば、縱覧ということは非常に不適当ではないか。これは表面上非常に合法的のように見えますが、合法的な形で選挙権の、行使に対する非常な圧迫になるのじやないかと考えられます。署名と申しますことは、投票にいたしましても記名投票と無記名とありますが、記名式の投票に準ずる、それに近いものだと考えられますが、記名ということは決して縱覧させてもいい、公表してもいいという意味の記名ではございません。投票した者は何のたれがしだという記録上の責任を明らかにしたものだと思いますので、この縱覧ということは非常に投票に準じた署名の圧迫になり、従つてリコール活動そのものの非常に大きな制限になると思うのであります。この点に対してまず御説明を承りたいと思います。

昭和24年の時点でも、縦覧制度(その具体的方法として選挙人が当該自治体の署名簿をすべて見れる運用が念頭にある)は選挙の秘密と抵触しているのではないか?という疑問が呈されていたのが分かります。

それに対して政府答弁は憲法16条の「請願権の性質だ」と答えています。

○鈴木(俊)政府委員 署名が選挙と類似する行為であるかどうかという点でありますが、これは選挙とは似た点もあり違つた点もある。一口に言えばそういうふうに言えると思うのでございますが、多数の選挙人が参加をしなければ成立たない行為であるという意味におきまして、これはやはり選挙ときわめて類似した関係のある行為であると思うのであります。しかしながら根本的に違います点は、選挙はあくまでも祕密に行う、記名投票を廃しまして無記名投票で、しかも何人もこれを監視していない所において投票函に投ずるというのが選挙の本質であります。それを憲法が保障いたしておるわけでありますが、署名と申しますのは、むしろ堂々と自己の住所、姓名を書きまして、こういう点に対して請願をする、憲法上の一つの権利に結びつけて考えますならば、これはいわば請願の権利で、請願というのは、堂々と住所と姓名とを署して、意見を具申するのでありますから、これはいわゆる投票の祕密という原則が、ここには当然及んで来ないというふうに考える次第であります。

しかし、翌日には政府答弁はぐらつきます。

第6回国会 衆議院 地方行政委員会 第6号 昭和24年11月18日

○床次委員 簡單に二項ばかり御質問申し上げたいと思いますが、今度直接請求の問題に関しまして、請求者の署名簿を縦覧せしめる規定が加わつておりまするが、この署名簿にとりましたものを一般に縦覧せしめるというのは、どういう理由でその必要を認めておられるか。必ずしもここでは直接の必要要件ではないように思いますが、これに関して特にこの手続を加えられた点が第一点。それから第二点として…省略

○小野政府委員 床次さんの御質問に対しましてお答え申し上げます。まず第一に直接請求の場合における署名簿の縦覧期間の問題でございますが、この点につきましては鈴木部長から他の機会に御答弁申し上げたかとも存ずるのでございますが、今回の署名を適正に行うということが、直接請求権の行使について基本的な点についての制約を加えないで、むしろ正しい直接請求権を行使するような方向に持つて行く、こういう意味におきまして所要の改正を加えたい。こういうことはかねて御承知の通りでございます。これに関連いたしまして、縦覧期間を設けて、署名簿を縦覧に供するということは、やや行過ぎではないか、こういう御質問のように伺うのでありますが、一応ごもつとものようにも聞き取れるのでございますが、やはり署名簿の問題につきましては、署名自体の取扱いが選挙の考え方を加味いたしまして、この改正法律案におきましても取扱つておる点にかんがみまして、私どもといたしましてはこれは縦覧期間等に関する規定を設けましたことは妥当であろう、かように考える次第でございます。
 省略
 なお御質問の詳細な点につきましては、鈴木部長から御答弁をいたしたいと思います。

「選挙の考え方を加味」とだけ言って、「請願」とは言わなくなりました。

直接請求の署名簿の収集・縦覧が「請願の性質」を有するというのは否定できないでしょうが、「請願権」とは別個の扱いになっています(地方自治法上、請願の扱いが直接請求とは別に定められている)。

憲法学上・実務上、「請願権」の参政権的機能が指摘されますが、それは憲法15条の参政権を補充するものであるという理解が支配的です。
参考:請願権 渡辺久丸

したがって、「請願権(的)だから投票の秘密の趣旨が及ばない」という論理は採り得ないと考えられます。「請願」と言った政府答弁が生きているなら、それは司法的には否定される可能性が高いと思います。

署名の偽造防止の必要性からの縦覧の運用方法

もっとも、縦覧の具体的方法として当該自治体管理の署名簿を選挙人にすべて渡していた運用には、一定の合理性があると思われます。

○鈴木(俊)政府委員 第一点のお尋ねの署名簿を縦覧に供するようにした理由は、どういう点であるかというお尋ねでございますが、現在の署名の実情を見て参りますと、はなはだしいのに至りましては五割、六割の代筆偽筆というものがございまして、神聖なる住民の基本的な権利として、自治法が保障いたしております直接請求権の行使がきわめて乱雑な、濫用された形に置いて行われておる実情にあるのは、御承知の通りであろうと存ずるのでありますが、そういうような非常に多くの代筆偽筆ということを、選挙管理委員会が形式的に書面によりまして審査をいたしましても、なかなかこれはそれだけによりまして真実を期するということは、非常に困難でございます。そこでこれを縦覧に供しまして、自分が全然署名をしたこともないのに、名前が書いてあるということを発見したものにつきましては、それをやはりその人の正しい権利を尊重ずるという意味から、異議の申出を認めるということが、署名全体を正しい公正に行わしめるゆえんであるというふうに考えまして、署名の結果というものが、事後に非常に大きな各種の手続を展開する前提になつておるものでございますから、ちようど選挙人名簿の縦覧というものと同じような、一つの手続をここにとるようにいたしたらどうであろうということを考えた次第でございまする

省略

○鈴木(俊)政府委員 署名簿に記載を全然しなかつた者が、その人の全然知らぬうちにその者が署名をしておるということで、署名の数の計算の中に入つて、そのまま投票にまで持つて行かれてしまうということでは、これは非常に不正当な結果になるわけでありまして、全然署名をいたさなかつたようなものが、自己は全然署名をしていないのだということを、正式に申し出る機会を設けるということは、やはりそのものの権利を保護する上においても、また直接請求という制度を公正に行わしめる上から言つても必要ではないかと考えるのであります。

五割、六割の代筆偽筆

これでは確かに縦覧の具体的方法として署名簿を全部渡してチェックさせることで弊害除去をする必要性が高いと言えますね。

おそらくですが、憲法上の権利との抵触関係を無視してでも実際上の不都合を解消するために、縦覧によって投票の秘密を害するおそれというのは無視されてきたのではないでしょうか?

しかし、現在では検索システムで名前と住所を入れて引っかからなければ冒用は無い、つまり勝手に名前を使われて署名を偽造されたということは無いということが短時間で確認可能なのであるから、これをもって縦覧の目的が達成されるとすれば良いのではないでしょうか?※追記:愛知県選管がシステムに登録すると言ったわけではないです。

実際上、縦覧希望者にとってもそれが簡便でしょう。

問題があれば自身で検索できるようにすればいいのではないかと思います。

これに対しては「選管が無能ないし極悪」である前提で「それは信用できないからダメだ」という反論がありますが、この前提では職員が誰の署名については偽造であるか、ということを把握した上で縦覧希望者に伝えないということになりますし、チェック体制に引っかかるリスクを背負って行えるものなのかかなり疑問です。

私が極悪な選管職員なら、架空の人間の署名を追加します。そうすれば「縦覧に供」しようが絶対にバレない。いちいち誰の名前が冒用されているかを把握して、その人の名前がヒットしたら伝えない、という運用をするよりずっと楽でしょう。

そういう事を言ってしまうとすべての行政事務について難癖を付けなくてはならなくなるため、非現実的でしょう。

まとめ

  1. 縦覧制度は必要で、特に署名の偽造が横行していた立法時の懸念を払しょくする必要からは、署名していない者の縦覧に供す場合には、署名簿を全部渡す運用は一応合理的
  2. しかし、その憲法15条の「投票の秘密」との関係における「許容性」については無視されてきた
  3. 直接請求の署名収集は選挙類似であるため、投票の秘密の趣旨が及び、「民主的意思決定過程における判断内容の秘密」が保護されるべきである
  4. 現代ではデータベース化して検索も楽なので、愛知県選管が説明するように、署名していない縦覧希望者に対しては職員の側で縦覧希望者が署名簿に記載されているかをチェックし、記載されていれば当該ページのみを見せ、そうでなければ「記載されていない旨を伝える」運用にしても、縦覧制度の目的は達成できる
  5. よって、愛知県選管の説明する「縦覧に供する」の運用方法は適法ではないか

折衷案としては、署名簿は全部渡すけど、最初は住所部分だけしか見れないようにし、自分の住所が見つかったらその部分の氏名欄が見れるようにする、といった二段階の仕組みを設けることですかね。

住所から個人を識別できるのは、向こう三軒両隣くらいでしょうし。

ただ、運用上可能なのかはよくわかりません。

以上

「直接請求の署名簿は縦覧できるから誰が署名したかバレる」は署名の自由妨害のデマなのか?

 

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「直接請求の署名簿は縦覧できるから誰が署名したかバレる」は署名の自由妨害なのでしょうか?

「縦覧できるから個人情報がバレる」は署名の自由妨害か?

地方自治法

第七十四条の四 条例の制定又は改廃の請求者の署名に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮こ又は百万円以下の罰金に処する。
一 署名権者又は署名運動者に対し、暴行若しくは威力を加え、又はこれをかどわかしたとき。
二 交通若しくは集会の便を妨げ、又は演説を妨害し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて署名の自由を妨害したとき。

署名の自由とは「直接請求の署名に関して認められた権利の行使に伴う自由」とされています。参考:逐条地方自治法 新版 第9次改訂版[本/雑誌] / 松本英昭/著

直接請求制度(今回の場合は地方公共団体の長の解職請求)と規律や所管が似ている選挙については、選挙当日に選挙人を尾行して選挙人に不安の念を生じさせた行為は、多くの場合自由妨害になるものとしています。

直接請求の署名簿の縦覧に関して、「署名簿は縦覧できるからどこの誰が署名したかが分かる」というような事を伝えるのは、「偽計詐術等による署名の自由妨害」になり得るでしょうか?

まずは縦覧の運用方法について確認していきましょう。

選挙管理委員会に確認した内容

署名簿を「縦覧に供する」の方法と縦覧できる者の具体的範囲 - 事実を整える

愛知県選挙管理委員会に確認した「縦覧に供する」の内容はこの記事でまとめていますが、以下、簡潔に示します。

署名簿を縦覧できる人はその自治体の有権者

「縦覧」できる人は「関係人」=その自治体(市区町村)の有権者です。

署名簿は市区町村ごとに作製することになっているので、署名簿の管理も各自治体の選挙管理委員会になります。

縦覧制度は、署名簿を一定期間関係人の縦覧に供することで署名簿の署名の効力決定の正確を期するため、関係人をしてその効力決定の過誤の有無を検討させ、修正の申立てを行わせる趣旨とされています。
参考:逐条地方自治法 新版 第9次改訂版[本/雑誌] / 松本英昭/著

一般有権者の縦覧の範囲

よって、一般有権者の縦覧の具体的な方法としては、署名が書かれている該当ページのみを縦覧希望者に見せる運用が取られているとのことでした。

また、自分の名前が盗用されていないかを確認したい、という場合には、各自治体の窓口で有権者である旨を伝えると、職員の側で当該有権者が署名簿に記載されているかをチェックし、記載されていれば当該ページのみを見せ、そうでなければ「記載されていない旨を伝える」運用とするとのことです。

つまり、縦覧希望者が当該市区町村管理の署名簿をすべて見てチェックをする、などという運用を採ることにはしていない、ということです。 

※なお、自分の署名部分だけを見せる運用が採られるのかは各自治体の運用次第かもしれず、ここでは明言しません。

請求代表者・署名受任者の縦覧できる範囲

請求代表者はすべての署名簿を縦覧可能です。

また、署名を集めることを受任した者は、担当部分の署名簿を縦覧可能です。

過去の直接請求の事例における縦覧の方法

愛知県選挙管理委員会以外にもいくつかの自治体の選管に過去の事案において署名簿の縦覧が行われた場合の運用も確認しました。

いずれも2014年以前のもので、公職選挙法から「縦覧」の文字が消えて縦覧制度を廃止し、個人情報保護に配慮した規定が整備されている閲覧制度に一本化されたのが2017年6月ですから、自治体を取り巻く法体系や個人情報の取り扱いの空気感というものは、現在とはかなり異なると言えるでしょう。

この場合、請求代表者か一般の有権者かはわからないが、縦覧に供した際の扱いとしては、署名簿を全て渡して庁舎内の一定の場所で読ませた、という回答でした。

過去に「署名による個人情報が流用される」と脅し紛い行為がなされた事例

2014年夏に、埼玉県川島町で住民グル―プによる町長解職請求(リコール)の署名集めが展開されたことがありました。

署名縦覧を盾に議員らがビラで暗黙の圧力?町長リコール運動をめぐる川島町住民の狼狽 | 相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記 | ダイヤモンド・オンライン魚拓

 考える会がリコール署名に向けた手続きを済ませた直後、町内の民家にあるチラシがポスティングされた。「町長リコールは本当に必要か?」と題されたもので、「川島町の良識を守る会」という団体が出したものだった。代表者名などの記載はなく、住所のみ。

 書かれている内容は、議会に提出された町長の意見書をなぞったようなもので、「町長にリコールしなければならない失政は有りません」と断言している。その上で「作為に満ちたリコール運動」とバッサリと切り捨てた。そして、「今回の新庁舎建設反対運動の本当の目的は何だったのでしょうか」と疑問を呈し、「署名簿が別の目的に流用されるおそれはありませんか?」と問いかけている。言外で「選挙目的である」と批判しているのである。

省略

チラシには「我々議員12人は、リコールを断固阻止します!」といった激烈な表現が散りばめられた。問題はチラシの最後の部分である。

大きな文字で「(!)署名の前に考えてください。」とあり、その下の白抜きの文字でこう書かれていた。「署名簿に署名捺印した場合は、取り消しはできません。また、一定期間内に、川島町選挙管理委員会で有権者なら誰でもその署名簿を見ることができ、誰が署名したのか確認できます。」

リコール反対派(町議員12人)が、「有権者ならだれでもその署名簿を見ることができ」と書かれたチラシを配って、半ば脅しのような形で署名の意思を削ぐ活動が行われました。

このときの縦覧の運用としては、請求代表者なのか誰なのか分からないが、川島町の有権者2名が縦覧を希望したため、庁舎内の場所を指定して署名簿を全て渡して縦覧させた、と川島町窓口から聞きました。

「署名簿は縦覧できるから個人情報漏洩」は愛知県知事リコール運動妨害になり得るデマなのか?

さて、では愛知県知事の解職請求に際して、「署名簿は縦覧できるから誰が署名したのか分かる」と言って署名を躊躇させる(良い言い方をすれば一歩踏みとどまって考えさせる)ということは、果たして「署名の自由妨害」に当たると言えるでしょうか?

ちなみに、8月28日時点では愛知県選管は各自治体に対して正式に縦覧の運用を通知しているのか定かでは無く、公式リリースもしていません。ここで書いたことも私が愛知県選管に直接確認したから把握できたことで、一般に広く周知されているものではありません。

現在は法体系の変更などがあり運用がそのようになっているとしても、過去にはそのような扱いをしている事案があったことや、過去の公職選挙法に存在した「縦覧」制度などから、2020年に行われる愛知県知事の解職請求に際して「縦覧に供する」の運用について、署名簿はその自治体の選挙人であれば署名していない他人が閲覧できると喧伝すること」は、愛知県選管の運用事実と異なるデマであるとは言えるでしょうが、地方自治法上の刑罰対象行為となるかというと、故意が否定されるかもしれず、よくわからないなというのが率直な感想です。

以上

安倍総理辞任の意向を固めるという報道と記者会見

安倍総理の辞任に関して報道が錯そうしています。

安倍総理辞任の意向を固めるという報道

安倍総理辞任の意向を固めるという報道がありますが、ブルームバーグの取材に答えた菅官房長官の弁はいったいなんだったんでしょうか?

菅官房長官が「任期全う」と取材に答えていたが

 菅義偉官房長官は、健康不安説が出ている安倍晋三首相の体調について、「変わらないと思う」と述べ、自民党総裁の任期である来年9月まで職務を全うするとの見通しを示した。そのための体力や気力も「大丈夫だ」と語った。

本来の任期は2021年9月までですが、それ以前に辞任或いは衆議院を解散するだろうとは言われていました。ただ、2021年の初頭、と予測するところが多く、「体調不良説」報道が過熱する前は、2020年内の辞任を予想していたところは私の把握する限り見たことがありません。

偽情報ルートの炙り出しという報道

安倍首相、28日に会見…コロナ対応に体調言及も 「健康不安説」騒動、ニセ情報ルートあぶり出し (2/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

安倍晋三首相は、28日に記者会見を開く方向で調整に入った。新たな新型コロナウイルスの対応を説明する方針で、自身の体調にも言及する見通しだ。首相は新型コロナ対策にあたるため、6月20日まで147日連続で執務した。過労や潰瘍性大腸炎という持病の悪化が懸念されたが、官邸幹部は回復に自信を持ちつつある。一連の「健康不安説」騒動では、ニセ情報を流した複数ルートがあぶり出されたという。

中略

一連の「健康不安説」騒動では、永田町周辺から「重病説」や「退陣説」が流された。明らかなデマも多々あった。

 官邸周辺は「複数のニセ情報ルート、謀略情報ルートが明らかになった。『新聞・通信社関係』や『党幹部周辺』『厚労省周辺』『病院関係者』などだ。寝首をかきに来た面々や、愉快犯のようにウソを吹聴している人物もいた。裏切り者がハッキリ分かった。安倍首相は今後、適切に対応するだろう」と語っている。

産経新聞によって、「官邸により偽情報ルートの炙り出しが行われた」という報道がありましたが、何が偽情報だったのでしょうか?

偽情報というのは健康状態に関してであって、それとは無関係に辞任する時期を決めたというのでしょうか?

後任は麻生太郎副総理なのか?

麻生副総理の面会は、「最近では15日に全国戦没者追悼式に参列した後、東京・富ケ谷の首相の私邸で56分間面会した」ともあり、長時間割くような内容を話し合っていたということなんでしょう。

とすると、麻生太郎副総理が総理大臣になるのでしょうか?

安倍総理の記者会見

安倍総理の8月28日の17時からの記者会見については上記案内されています。

アーカイブも残るのでここに一応貼っておきます。

以上

麹町文子の安倍総理に関する記事をプレジデントが削除も理由が不可解

麹町文子のプレジデント記事が削除、魚拓

麹町文子氏の安倍総理・安倍政権の評価に関する記事をプレジデントが削除しましたが、ちょっと気になる点があります。削除された記事の魚拓から考えていきます。

プレジデント編集部が麹町文子の記事削除と謝罪

プレジデント編集部が麹町文子氏の記事を削除したことを報告し、謝罪しました。

だがちょっと待って欲しい、その削除理由で納得できるでしょうか?

麹町文子の安倍総理関係記事の削除理由が不可解

プレジデントオンラインの説明する麹町文子の安倍総理関係記事の削除理由は不可解であると感じませんか?

「総理大臣の資質は、病気であるか否かが必須である」という印象がタイトルによってもたらされたというなら、タイトルを変えればいいじゃないですか

理由は別のところにあるんじゃないですかね?

産経新聞の偽情報ルート炙り出し報道

安倍首相、28日に会見…コロナ対応に体調言及も 「健康不安説」騒動、ニセ情報ルートあぶり出し (2/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

安倍晋三首相は、28日に記者会見を開く方向で調整に入った。新たな新型コロナウイルスの対応を説明する方針で、自身の体調にも言及する見通しだ。首相は新型コロナ対策にあたるため、6月20日まで147日連続で執務した。過労や潰瘍性大腸炎という持病の悪化が懸念されたが、官邸幹部は回復に自信を持ちつつある。一連の「健康不安説」騒動では、ニセ情報を流した複数ルートがあぶり出されたという。

中略

一連の「健康不安説」騒動では、永田町周辺から「重病説」や「退陣説」が流された。明らかなデマも多々あった。

 官邸周辺は「複数のニセ情報ルート、謀略情報ルートが明らかになった。『新聞・通信社関係』や『党幹部周辺』『厚労省周辺』『病院関係者』などだ。寝首をかきに来た面々や、愉快犯のようにウソを吹聴している人物もいた。裏切り者がハッキリ分かった。安倍首相は今後、適切に対応するだろう」と語っている。

8月27日午前には産経新聞がこのような報道をしていました。

「偽情報ルートが炙り出された」という書き方になっていますが、十中八九、官邸側がワザと偽情報を掴ませて造反者を特定しようとしたということでしょう。

これが麹町文子氏の記事の削除に関係した可能性があるんじゃないでしょうか?

 

麹町文子の削除された記事の魚拓から健康関連部分

ということで、削除された麹町文子氏の記事の魚拓から、安倍総理の健康関連部分を抜き出してみました。

元URL:ttps://president.jp/articles/-/38283

政府関係者「2期で辞めればよかった」

「たしかに『あの時辞めていたら……』というのはあるかもしれないな」
本来なら歴代最長記録に沸いていたはずの政府関係者はこう声を潜めた。8月24日、安倍総理が真っ先に向かった先は東京・信濃町の慶応大病院。17日の日帰り受診から2週続けての訪問で、政界は総理の「健康不安」説で持ちきりだ。「またしても突然の辞任があるのではないか」。13年前に持病の潰瘍性大腸炎が悪化し、志半ばで総理の座を退いた時と重ねる向きは少なくない。もちろん、その真贋は安倍総理と医師団にしかわからない。安倍総理自身は24日、「(健康問題については)今日は再検査を行ったところで、またそうしたことについては話をさせていただきたい」とけむに巻いた。

中略

国家のトップが健康に万全を期すのは当然

しかし、現実は2020年4~6月期の実質GDPが前期比年率で27.8%減と戦後最大の落ち込みを記録。アベノミクス効果が「帳消し」となった形で、目先の欲にかられて腹八分目で終えなかった者の悲しい結末ともいえる。
麻生太郎副総理兼財務相から「あなたも147日間休まずに働いてみたことはありますか?」と言われなくとも、総理の職が激務であることは分かっている。しかし、コロナ禍の今は国民も大変な時期であり、失業や収入減に苦しむ人々がいるのも事実だ。陣頭指揮をとる国家のトップは健康管理に万全を期すのが当たり前で、経済のみならず外交も安全保障も決して滞ることなく、エネルギッシュに行う責務がある。

だが、安倍総理のもう1つの看板である「外交の安倍」も鳴りを潜めているのが現実だろう。世界中に新型コロナウイルスが広がり、得意の外遊を果たせないとの意見はあるかもしれないが、それは他国も同じである。国際情勢に休みはなく、超大国の米国と中国は貿易戦争で激しくしのぎを削り、国益をかけた戦いを繰り広げているのだ。同盟国である米国は総領事館の閉鎖や中国の動画投稿アプリ「TikTok」の売却命令、通信機器大手「ファーウェイ」への追加制裁などに踏み切り、中国の軍事的覇権主義や海洋進出に対抗している。

中略

親中路線をとる“世界の嫌われ者”文在寅
中略

健康に問題がないなら、安倍総理もコロナ禍で鬱積した国民の不安や不満を放つように「強い外交」を再度強調し、文大統領にガツンとかましてやれないのだろうか。

コロナ対策、外交政策、全て失敗

安倍政権のお偉いさんたちは「ポスト安倍は誰になるのか」ということばかりに目を向け、コロナ禍の国民の苦しさも、外交完敗に伴う国民の恥ずかしさにもあまり関心はないようだ。いまだ「コロナ対応の責任は安倍政権にはない。悪いのは自治体だ」などと責任転嫁する政府高官の発言が繰り返され、専門家や国民の懸念を無視して強行した観光需要刺激策「GoToトラベルキャンペーン」の効果を宣伝する始末である。もはやブラックジョークの域だろう。
激動の国際社会において、国内政局や内輪もめばかりしている安倍政権のお偉いさんの話につきあっているほど今の国民に余裕はない。「経済の安倍」も、「外交の安倍」という言葉も死語になりつつある今、「史上最長」という冠だけが残ったというのはあまりに悲しいものがある。だが、すでに「燃え尽き症候群」に至っているならば、この国の未来はもはや託せないという点だけは肝に銘じるべきである。

全4ページの記事ですが、文量だけ見ると、安倍総理の健康に関連する部分はあまり多くありません。しかし、安倍総理の健康状態に絡めた表現(「国際情勢に休みはなく」や「ポスト安倍は誰になるのかばかりに目を向け」など)が随所にあるため、記事の根幹部分となってしまっているのが分かります。

産経の報道によって、この前提が成り立たなくなったため、麹町文子氏の記事は、根幹が成り立たなくなり、削除せざるを得なくなった、しかしそれをダイレクトに言うのは憚られるので、編集部のタイトルのせいにした。

こんなところじゃないか?というのは考えすぎだろうか?
(他に北朝鮮の「委任統治」など真偽が曖昧な点もあるが断定調ではなく、決定的な事実誤認は見当たらない)

以上

署名簿を「縦覧に供する」の方法と縦覧できる者の具体的範囲

 

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条例の制定改廃や解職請求(リコール)の際の署名簿は、審査後に「縦覧に供する」こととなっていますが、「署名者の個人情報が流出する危険がある」などと騒がれることががりますので、「縦覧に供する」具体的な方法と縦覧できる者の具体的範囲について選挙管理委員会に確認しました。

地方自治法上要求される解職請求における署名簿の縦覧

地方自治法

第七十四条の二 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければならない。この場合においては、当該市町村の選挙管理委員会は、その日から二十日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない。
○2 市町村の選挙管理委員会は、前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときは、その日から七日間、その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない。

第八十一条 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一(省略)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる。
○2 第七十四条第五項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数(省略)について、同条第六項の規定は前項の代表者について、同条第七項から第九項まで及び第七十四条の二から第七十四条の四までの規定は前項の規定による請求者の署名について、第七十六条第二項及び第三項の規定は前項の請求について準用する

地方自治法上、知事の解職請求の署名簿は、その署名の効力の審査の後に縦覧に供することとなっています。

この制度は、署名簿を一定期間関係人の縦覧に供することで署名簿の署名の効力決定の正確を期するため、関係人をしてその効力決定の過誤の有無を検討させ、修正の申立てを行わせる趣旨とされています。
参考:逐条地方自治法 新版 第9次改訂版[本/雑誌] / 松本英昭/著

「縦覧の告示」は行われますが、縦覧をする旨とその場所と期間を告示するだけで、署名簿そのものを告示として公報するわけではありません

では、この「縦覧に供する」の具体的な方法は何でしょうか?

愛知県選挙管理委員会に確認しました。

選挙管理委員会に確認した縦覧に供する方法と「関係人」の範囲

地方自治法上、署名簿を縦覧できる者は「関係人」と限定されています。

この「関係人」とは、「選挙人名簿に記載のある者」、すなわち、その者が住民票上の住所を有している市区町村の「有権者」を意味します。

審査後の署名簿の管理は市区町村毎に行っているということです。

そもそも、この場合の署名簿は市区町村ごとに作製しなければなりません。

地方自治法施行令

第九十三条 条例制定又は改廃請求者署名簿は、都道府県に関する請求にあつては市町村ごとに、指定都市に関する請求にあつては区又は総合区ごとに、これを作製しなければならない。

第百十六条 第九十一条から第九十七条まで、第九十八条第一項、第九十八条の三及び第九十八条の四の規定は、地方自治法第八十一条第一項の規定による普通地方公共団体の長の解職の請求について準用する

よって、その市区町村の有権者でなければ、署名簿の縦覧はできません

そして、選挙管理委員会に確認した縦覧の具体的な方法ですが、署名簿は通常膨大な数に及ぶため、該当ページのみを縦覧希望者に見せる運用が取られているとのことでした。

自分が署名したものが有効になっているかを確認したり、自分の名前が盗用されていないかを確認したりする場合に縦覧をするのが制度趣旨なので、各自治体の窓口で有権者である旨を伝えると、職員の側で当該有権者が署名簿に記載されているかをチェックし、記載されていれば当該ページのみを見せ、そうでなければ「記載されていない旨を伝える」運用になっているとのことです。

つまり、縦覧希望者が当該市区町村管理の署名簿をすべて見てチェックをする、などという方法は採られていない、ということです。

なお、請求代表者でも受任者でもない単なる有権者は自分の名前部分しか見れないのか、当該署名があるページだけなら一覧できるのかはその市区町村の運用次第であるためここでは明言しませんが、基本的には自分の署名部分しか見れないと思っていた方が良いです。
※愛知県選挙管理委員会は、厚紙等を切り抜いたものを敷いて他の署名者の情報が見れないようにして対応しているようです。

署名受任者と請求代表者が縦覧できる範囲

請求代表者は、全部の署名簿を縦覧できます。

署名受任者の場合には、その者が担当した分の署名部分だけを縦覧できるとのことでした。つまり、市区町村の署名簿の中でも更にその一部しか見ることができません。 

署名簿の告示・公告・公報はしない

こうした扱いであるため、署名簿記載の署名者の氏名住所が告示・公告・公報されるということはあり得ません。

この点は請求代表者の氏名住所の告示(地方自治法施行令によって規定)が行われているのとは別個の扱いです。

「署名簿で個人情報がだだ洩れ」は基本的にデマ

したがって、「署名簿で個人情報がだだ洩れ」という言説は基本的にデマです。

署名簿によって個人情報が漏れるとすれば、署名簿自体がどこかに流出したり、署名簿記載の情報を自治体職員が不法に閲覧したり請求代表者が悪用して情報を流す、という場合が考えられます。

※追記:私が他の自治体において過去の直接請求の際の「縦覧」方法について確認したところ、署名簿をすべて見れるような運用になっていたところもあったようですが、請求代表者だからだったのか、単なる一般有権者からの縦覧希望だったのかは不明でした。

以上