事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

NHK広島のシュン=新井俊一郎氏の朝鮮人関係ツイートの問題点

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NHK広島のシュン=新井俊一郎氏の朝鮮人関係ツイートの問題点

NHK広島のシュンの謝罪について

リンク先のNHKのHPでは「必要に応じて注釈をつける、出典を明らかにするなどの対応を取」っていくことを述べていますが、この企画は1個人の感想がそのまま流されていると思われている面もあるため、客観的な資料によって裏付けのあるものなんだということを示すべき場合があるのではないかと思うのです。

帝国議会での第三国人、朝鮮人等の列車での暴状に関する答弁

戦後の帝国議会では、第三国人=朝鮮人・台湾人と、中国人らの不法行為・闇行為について何度も質疑が行われています。

ここではその中でも列車での暴状に関する答弁を抽出します。

第89回帝国議会 貴族院 予算委員会 第2号 昭和20年12月14日

○政府委員(小泉梧郎君) 朝鮮人の暴動の問題に付きまして、私から御答へ申上げたい思ひます、終戰當時に於きまして内地に居りました朝鮮人は、約九百萬餘り居つたのであります、其の中二十五萬は集團勞務者として計畫的に内地へ入れたものであります、終戰と同時に是等の朝鮮人の中に歸國を希望する者、内地に其の儘留りたい者、色色あつたのでございます、歸國を希望致しまする者に付きましては、當局と致しましては努めて其の希望に副ふやうに努力して參つたのであります、處が當時なかなか此の送還計畫が思ふやうに參らなかつた事情もございまして、今日迄朝鮮人を中心と致します集團的な暴行事件が十一月末頃迄に五十件以上に及んで居ります、又參加人員も一萬七、八千名に及んで居るやうな状況でございます、是が治安の上に非常に惡い影響を與へて居りますことは、私共と致しまして誠に遺憾に思つて居る次第でございます、此の原因は何かと申しますと、先程申上げましたやうに、當初に於きまする送還計畫が思ふやうに圓滑に參らなかつたと云ふことと、送還がうまく行かない爲と申しますか、歸國が思ふやうに出來ないことに關聯致しまして、或は退職金の問題であるとか、或は賃銀の問題であるとか、或は食糧の増配の問題、或は衣料品の増配の問題、或は從來の取扱者に對する反感、色々な問題が錯綜致しまして、各所に集團的な暴行事件が起つたやうな次第であります、大體是が十月を頂點と致しまして、十月迄に事件が多かつたのであります、其の後各種の待遇の問題であるとか或は食糧、衣料等の配給の問題に付きましても各種の措置を執りました、一方暴行致します者に對しましては、出來るだけ警察と致しまして、治安の立場から斷乎たる態度で臨むことに致しましたので、十月を頂點と致しまして、十一月になりますと、是等の暴行事件は急に減つて參りましたのであります、現在ではそれ等の事件は殆ど稀になつたと申上げても差支ないと考へるのであります

 

第90回帝国議会 衆議院 隠匿物資等緊急措置令(承諾を求める件)委員会 第3号 昭和21年7月5日

○大村國務大臣

 次に朝鮮人の闇行爲の問題でございますが、是は大體御尋ねになりましたやうなことの通りだと存じます、敗戰後御承知の如く朝鮮人、支那人等は、是は敗戰國人ではないのだ、寧ろ戰勝國人であると云ふことで、意氣大いに揚りますし、之に反しまして、我が國民は敗戰の苦杯を嘗めたのでありまして、其の間に精神力に於きまして非常な逕庭が起つて來た、さう云ふやうな所に食込みまして、多敵の朝鮮人の中には宜しからぬ者も相當あることでありますので、それが經濟上の利益と結付きまして、凡ゆる不正行爲をやると云ふやうなことに相成つたのであります、殊にそれ等が闇買出をやると云ふやうな次第で、列車の内に集團的に乘込んで參りまして、人もなげな、傍若無人の振舞をする、之に依りまして全國民は敗戰の悲哀と申しますか、洵に暗い氣持に追込まれたのであります、私は一月十五日に慥か内務次官を拜命致したのでありますが、朝鮮人の此のやうな暴状を取締りまして之をなくすると云ふことが、國民の鋭氣を取戻すと云ふ上に絶對必要なことと云ふやうに考へまして、此の點に付きまして些か努力を傾注致したのであります

第90回帝国議会 衆議院 会計法戦時特例廃止等に関する法律案委員会 第8号 昭和21年7月24日

○青木(清)委員 それでは今度は運輸省の關係に付て質疑を續けて行きたいと思ひます、現在の鐵道の運行其の他の亂脈状態を考へて見ますと、寧ろ私は戰爭中よりはひどいのぢやないかと思ひます、終戰後列車の「ガラス」戸が壞れると云ふ程にまで乘客の統制が取れなかつたと云ふことは、私は非常に遺憾と思ふのでありまして、是等の起つて居る現象其のものが、國民に對して一種不安の念を起す、又政府に對する不信の念を起す、其の源動力をなして居るものと考へるのであります、鐵道と致しまして、今後如何なる方法を以て是が改善を行ふ御豫定であるか、承りたいと思ひます

○伊能政府委員 省略

最前御指摘の交通秩序の維持、列車の混亂と云ふ問題に對して如何考へるか、今後の對策如何と云ふやうな御話もございましたが、此の點は獨り運輸省の力のみを以ちましては、中々困難でありまして、國民全體が輸送に御協力を願ふと共に、私共自身も國家國民の鐵道を、出來得る限りより良い状態に運營すると云ふことを心掛けて居ります、又一部朝鮮人、臺灣省民等の列車内に於ける各般の「トラブル」等に付きましても、政府と致しましては一般司法警察の外に、鐵道行政警察を強化致しまして、交通秩序の確保、正當旅客の乘車保護、竝に一般荷物輸送の安全、的確な輸送を確保して參りたいと云ふ決意を以て、著々準備を進めて居るやうな次第でございます

第90回帝国議会 衆議院 本会議 第30号 昭和21年8月17日

 

○國務大臣(大村清一君) 省略

 次に第三國人に依りまして、或は闇市場に於ける各種の好ましからざる行爲が頻々として行はれて居ること、或は列車の中に於ける暴状、不正乘車、是等見るに忍びざる行爲に付きましては、國民齊しく不快とせられ、又是が我が國の治安を攪亂する一つの重大な要素であると云ふ點に於きまして、多大の憂慮を寄せられて居りますことは、私共洵に恐縮に存じて居る所であります、幸ひにして列車の暴状に付きましても、數次の嚴重なる取締に依りまして、逐次改善を致して居ることは明かであります、此の點に付きましては更に鐵道警察力の整備と云ふやうなことも致しまして、列車内に於ける暴状は斷然之を根絶すると云ふ所まで、取締を強化する決心で居ります

第90回帝国議会 衆議院 臨時物資需給調整法案委員会 第10号 昭和21年9月23日

○平塚國務大臣 各驛に見る状況は今御質問の通りでありまして、洵に此の點は遺憾に存じて居つたのであります、どうしてあんなに混亂するのかと色々原因を探究して見ますると、終戰後朝鮮人、中國人などが、無切符で相當大量の者が乘込んで居つたと云ふ事實が發見されたのであります、勿論邦人でもあの混亂に紛れて、無切符で乘つた者が相當ありまして之を一番先に手を著けなければならぬ、それには或る程度やはり警察力を用ひなければならぬと云ふので、内務省等に應援を求めまして、移動警察官に車に乘つて貰つて、切符の嚴重なる調べを行つたのであります、其の結果無賃乘車は非常に減つて居ります、隨て混亂も多少緩和され、過去のやうに窓の出入も餘程緩和されたのでありますけれども、思ふ程に列車を運行出來ませぬ爲に混雜はまだ止みませぬ、併しながら是がどの程度に減つたかと云ふことは收入の點に明かに現はれて居ります、

第92回帝国議会 貴族院 本会議 第5号 昭和22年2月18日

○國務大臣(植原悦二郎君) 板谷君の御質問に御答へ致します、御質問の一つは朝鮮及び臺灣人に關することだと思ひます、一つは北海道開發廳に關する點であつたと承知致します、此の二點に付てお答へ致します、朝鮮臺灣其の他三國人のことについての御話がありましたが、現在朝鮮人は約六十萬、臺灣人は約一萬三千人程居ります、是等の歸還に關することは、厚生大臣の所管でございますから、厚生大臣から御答へして然るべきだと思います、私として御答へ致しますのは、内務省の所管として、是等の不法行爲に對する主として取締に付ての御尋だと了解して居ります、是等の六十萬人の朝鮮人、一萬三千人の臺灣人の中には、善良なる者も居ります、併し其の或者は多數集團して物資保管倉庫を襲ふとか、或は隱匿物資の摘發なりと稱して恐喝するとか、官公署又は物資配給所に對して聯合軍の名を藉りて莫大の配給物資を騙取するとか、或は又集團の威力を以て鐵道不正乘車を爲し、客車の一部を不法占領して、主食等の大量買付けを爲す等の行爲に出づる者が相當に上つて居ります、是等の惡質行爲の放任は國内治安の上から見ましても寒心に堪へないので、之に對して警察取締を強化致して居ります、又全國に互る鐵道關係の取締も引續き之を實行し、警察官を列車に乘り込ませて車内秩序の維持、列車利用に依る集團買出の取締等を目標に、嚴重なる取締を勵行し、相當の效果を收めて居るのであります、臺灣及び朝鮮人と雖も日本人同樣一切の日本法令に從ふ義務があり、其の法令適用に付きましては何等の例外を認めて居らないのであります、此の法令遵守の義務を強制し、之に罰則を科する取締竝に裁判權は、客年二月十九日附聯合軍總司令部より日本政府宛裁判管轄權の行使と題する覺書に依り、完全なる權限が我が方に認められて居るのであります、日本政府は朝鮮及び臺灣人に對しまして、法と秩序を維持する責任と義務とを固より感ずるのであります  

新井俊一郎氏の日記の朝鮮人関係ツイートの問題点

このように、帝国議会においても戦後2年ほどは朝鮮人を中心に台湾人、中国人らによって不法行為が多数発生しており、その中で列車における割込み、車両占領、器物損壊などがたびたび発生しているために取り締まりを強化する必要が語られるなど、「シュン」のツイートには客観的な整合性があるということがわかります。

上記は政府答弁を中心に起こしましたが、質疑における描写はさらに詳細かつ過激なものになっています。

新井俊一郎氏の日記の朝鮮人に関するツイートの問題点は、注釈としてこうした資料の提示がなかったために「アカウントの運用を担当している高校生の憶測で書いている」と思われたという点もあるのではないかと思うのです。

なお、21日の時点でNHKのHP上では「※ご本人の日記は、8月17日~27日まで空白です。8月15日~21日までのツイートは、後年ご本人が書かれた手記とインタビュー取材をもとに掲載しています。」とも書かれており、手記に書かれていないからといって「捏造だ」と指摘するのは筋違いなのですが、ツイートの方ではそのような注意書きは見つからず、こうした発信も改善点だろうと思います。

以上

町山智浩、愛知県公報ページの情報を不正ツイートでプライバシー侵害か?

町山智浩氏が愛知県公報ページのリコール請求代表者の個人情報含む画像をツイートしましたが、これがなぜ問題視されているのかを解説します。

町山智浩、愛知県公報ページの情報をツイート

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町山智浩氏が、愛知県公報ページの情報をツイートしていました。

ここに張り付けた画像では個人名と住所部分は載せていませんが、ツイートからは確認可能な状況でした。※現在は削除されているようです。
※町山氏は「リコールに参加した人たち」と書いていますが、情報が掲載されているのは高須院長以下37名の「請求代表者」であり、その委任を受ける「受任者」や署名する有権者の情報は掲載されていません。

公報ページなのになぜダメなのか?」という点について次項以降で説明します。

愛知県公報「このページ以外のURLリンクは禁止」

愛知県の公報魚拓

※愛知県公報のウェブページについては、このページ(http://www5.pref.aichi.jp/kofu/以外のページにリンクを設定しないでください。

愛知県公報のHPでは、上記のURL以外のページのリンクは明示的に禁止されています。

要するに「転載禁止」と言っているわけです。

町山氏がやっているのは愛知県公報のHPのうち、【第132別冊1号 令和2年08月25日 選挙管理委員会告示 愛知県知事解職請求代表者証明書の交付】の文書の画像の表示なのですが、当該ページのリンクを貼っているのと同じですし、それ以上に画像に個人の住所が掲載されています。

実は、公的機関がインターネット上で公開した情報であっても、それを再度拡散することが違法になり得るのです。

判決文記載の登記簿上の住所のブログ公開がプライバシー侵害の不法行為になった裁判例

【東京地裁 平成22(ワ)47931号 平成23年8月29日判決】

事案の概要 原告X1は全日本海員組合の組合長であり、被告が原告と被告との訴訟の判決文をインターネット上のブログに掲載した際に原告の住所が公開された(3ヶ月後に削除)。原告はこのことをプライバシー侵害として訴えた。被告は、原告の住所は登記簿や電話帳にも記載されていることからプライバシーの利益として保護されないと主張した。しかし、裁判所は以下判断してプライバシー侵害の不法行為を認め被告に6万円余の支払いを命じた。

登記簿や電話帳への自宅住所の記載は、いずれも一定の目的の下に限定された媒体ないし方法で公開されるもので、同目的に照らし限定的に利用され、同目的と関係ない目的のために利用される危険は少ないものと考えられ、公開する者もそのように期待して公開に係る自宅住所情報の伝搬を上記範囲に制限しているというべきであるから、原告X1が自宅住所情報につきプライバシーの利益として保護されることまで放棄していると評価することはできない

インターネット上でも閲覧できる(できた)登記簿に掲載されている代表者の住所であり、判決文に記載されているものであったとしても、この事案では公開する利益が公開されない利益を上回ることはないとして、プライバシー侵害として不法行為となったということです。

そして、登記簿上の代表者住所についてもネット閲覧が禁止されました。

登記簿上の会社代表者住所もネット閲覧が禁止に

法務省:法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会第19回会議(平成31年1月16日)開催

また、以下の内容の附帯決議がされた。

省略

2 省略

 (2) 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に基づく登記情報の提供においては,株式会社の代表者の住所に関する情報を提供しないものとする。

登記簿上の会社代表者住所は、かつてはインターネット閲覧が可能でしたが(自由閲覧ではないが)、過去に法人の代表者の個人住所がみだりに利用される事案が発生したため、ネット上での閲覧のみ規制をかけることが決定されました(紙媒体では見れます。)

実際上も法人の住所だけがあれば良い場合がほとんどであるため、必要な人にとって何ら不都合はないと思います。

町山氏はプライバシー侵害になるのか

インターネット上に掲載された情報を再拡散した事例として、破産者マップやその後継サイトがあります。

このときは破産者情報というものが、債権者に迅速簡便に通知するためという公益目的によって公開されているものであるところ、破産者マップはそのような公益目的が無く時宜に適った利用方法ではないことなどから個人情報保護法違反の可能性もあり、プライバシー侵害に当たると考えられたため、行政指導が行われました。

町山氏の場合は有り得るのはプライバシー侵害の可能性ですが、請求代表者の情報についてツイートをずっと放置していたならともかく、リコール運動期間中に公職者の解職という公的な運動の代表者氏名をツイートに掲示することが直ちに違法になるかというと、よくわかりません。判決文記載の住所は既にその「役割を終えた」情報であるところ、今回のものは役割を終えたものではないと考えられるからです。

いずれにしても掲載期間は1日にも満たず現在は削除しているため、違法となるかというと厳しいのではないかと思われます。

「リコール運動の妨害」は有り得るのか

リコール運動の妨害になるかというと、これも厳しいのではないかと思います。

何か危害を加えるような言動が無い限り、請求代表者の氏名は公表されているのですからリコール運動の期間中であればそれを確認することの意義は失われないはずです。

ただ、愛知県公報が明示的に転載を禁止していることとの関係でどうなるかはよくわかりません。愛知県がワザワザ町山氏を相手取って訴訟をすることは考えにくいですが。

以上

河野太郎の日本国憲法「日本国民の総意」:過去の政府見解に反するが?

 

河野太郎公式サイト:日本国民の総意

河野太郎公式サイト:https://www.taro.org/

河野太郎議員のブログで皇位継承問題について書かれましたが、そこで論じられている日本国憲法1条の「日本国民の総意」について、整理していきます。

河野太郎の日本国憲法「日本国民の総意」についての誤解

皇統の議論 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト 2020年8月24日

皇室に男子のお世継ぎがいなくなるという事態が起きた時にどうするか、万が一のときのことも考えておかねばなりません。

選択肢はおそらく二つですが、いずれも皇室典範の改正が必要です。

男系が維持されているということはY染色体が受け継がれてきたということです。

そこで、天皇陛下と同じY染色体を保有しているであろう、天皇家から分かれ男系を維持してきた旧宮家や皇別摂家等の男子を皇室に養子として迎え入れることで、Y染色体を繋げるという選択肢。

このためには皇室典範第九条「天皇及び皇族は、養子をすることができない」の改正が必要です。

もう一つは現在の皇室に残る内親王殿下、女王殿下に宮家創設を認め、そのお子様に継承権を与えるというもの。

この場合、皇室典範第一条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」の改正が必要です。

このいずれかでしょう。

日本国憲法第一条に「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とあるように、このいずれを選択するかは国民の総意によります。

中略

繰り返しますが、これまで男系を維持してきたという歴史がありますから、男系を維持できるものならば、それに越したことはありません。

しかし、もし、皇室に男子のお世継ぎがいなくなったときに、皇室の一員として努力してこられた内親王殿下あるいは女王殿下のお子様に皇位を継承させるのか、600年なり250年なり前に皇室から分かれた家の男子を養子に迎え入れて、その子に皇位を継承させるのか、国民の総意で判断することになります。

男系を維持すべきだと主張するならば、今やるべきは、国民の理解を得る努力をすることです。

自分と少しでも違う意見を持つ人を罵倒したり、中傷したり、否定してみても世の中の理解は進みません。

憲法第一条にあるように、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」ものです。

国民の総意に基づかない皇位継承は、やがて国民の無関心につながり、天皇制を揺るがすことになりかねません。

河野太郎氏は父親である河野洋平氏に腎臓を提供した聖人君子であるわけですが、聖人君子であることが主張の正統性を担保することはなく、その日本国憲法1条「日本国民の総意」についての解釈は間違っています。

彼の見解は昨年、津村啓介議員が開陳した認識と同じです。

報道特注:国民民主党の津村啓介議員の女性天皇・愛子天皇容認論その3 - 事実を整える

「日本国民の総意」は1条、皇位継承ルールは2条

法的な話をすれば、まず形式論として、「日本国民の総意」とは、憲法1条の話であって、天皇の存在についてのものです。

皇位継承ルールについては憲法2条で「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより」と規定されていますので、河野太郎氏は別の条文の話をごちゃまぜにして論じているということです。

そして、法的な実質論としては、「日本国民の総意」に基づくという意味は、天皇の地位が何に基づくかという話です。法理論上、大日本帝国憲法では天皇という御存在の根拠が「天壌無窮の神勅」であったのに対して、現行憲法では「日本国民の総意」に基づくという、憲法を前提とした存在であるという意味を指しています。

もちろん、歴史的事実からは、遥か昔から日本国民が存在を是認してきたということがあったのであって、明治憲法から現行憲法になったからといって天皇の存在の存立基盤が変わったということにはなりません(変わったと言う主張をしてるのが東大法学)。

女系継承を認める場合にはこれまでの天皇の存在形態が変わると考えれば憲法1条の話だ」と言う者が現れそうなので言及しておきますが、この論理は、憲法1条に規定する「天皇」と、「女系継承後の天皇」は別物であるという前提で論じていることになります。

すると、もはやそれは現行憲法1条の解釈論ではなく、現行憲法典を超えた立法論・国家論です。河野太郎氏はワザワザ憲法1条の「総意」を持ち出しているので、それは解釈論の話ですから、的外れな指摘である、と言っておきます。

日本国憲法第一条と皇位継承:天皇の存在は「日本国民の総意に基づく」の誤解と女系天皇・女性天皇 

河野太郎は「日本国民の総意」の政府見解を調べたのか?

河野議員はブログで以下のようにも書いています。

皇統の議論 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト 2020年8月24日

2019年11月に共同通信が行った世論調査では皇位継承を男系男子に限る現在の制度を維持すべきだという意見は18.5%にすぎず、こだわる必要がないと答えた割合は76.1%にのぼります。

こうした世論のなかで、600年から250年前に皇室から分かれた家の男子を養子に迎えて男系を維持することが大事なのだということを国民にしっかりと伝えることができるでしょうか。

NHKは1973年から5年ごとの世論調査の中で「あなたは天皇に対して、現在、どのような感じをもっていますか。リストの中から選んでください」という質問をしています。

回答の選択肢は「尊敬の念をもっている」「好感をもっている」「特に何とも感じていない」「反感をもっている」「その他」「わからない、無回答」の六つです。

1973年から1988年まで、トップの回答は「特に何とも感じていない」で、当初の43%から47%近くまで右肩上がりに数字が上がっています。

次に「尊敬の念をもっている」が35%から30%弱に数字を落とし、20%前後の人が「好感をもっている」で続きます。

ところが1993年の調査では「好感をもっている」が一気に40%を超えて第一位となり、「特に何とも感じていない」は35%程度、「尊敬の念をもっている」は20%前後に下がります。

1998年調査では「特に何とも感じていない」が「好感をもっている」を抜いて再びトップになり、以降、「特に何とも感じていない」と「好感をもっている」の順番が一回ごとに入れ替わります。

しかし、その後、「尊敬の念をもっている」という回答がじわじわと増え、とうとう2013年の調査では「尊敬の念をもっている」が34%と調査開始以来最も高い数値を記録して、「好感をもっている」35%にほぼ並びました。

そして「特に何とも感じていない」という回答は、28%と調査開始以来最も少なくなりました。

こうした数字は、上皇陛下、上皇后陛下の被災地へのお見舞いをはじめとする国民を癒やし、元気づけてこられた活動が国民の心の中に尊敬の念を芽生えさせた結果ではないかと私は思います。

つまり国民は、上皇上皇后両陛下、天皇皇后両陛下をはじめとする現在の皇室のあり方に好感を抱き、上皇上皇后両陛下、天皇皇后両陛下の活動に尊敬の念を抱いているのではないでしょうか。

この流れで「総意」の話をし出したのです。

このような論じ方もまた明確に間違っています。

日本国憲法第1条・第2条に関連する政府の説明】に政府見解が示されています。

②昭和21年7月3日 衆議院帝国憲法改正案委員会 金森徳次郎国務大臣
《 …… 「 国民トハ現在ノ瞬間ニ於キマシテ、日本ニ生キテ居ル国民ノコトデアルノカ、サウデナシニ、ソレガモウ一ツ理念化サレマシタ国民、モツト極端ナ表現 スレバ、日本ノ民族国家形成以後ノ国民、乃至ハ今後之ヲ形成スベキ国民ト云フモノモ其ノ中ニ含マレテ居ルノカドウカ」との問に対して》第一条ニアリマスル日本国民ト申シマスルノハ、理念的ニ申シマスレバ、現在ノ瞬間ニ生キテ居ル日本国民デハナクテ、是ト同一性ヲ認識シ得ル過去及ビ将来ノ人ヲモ併セ考フル考ヘ方デアリマス、

④昭和21年7月12日 衆議院帝国憲法改正案委員会 金森徳次郎国務大臣
日本国民ノ総意ト云フモノハ、統合シテ一ツニナツテ居ルモノデアリマシテ、一人々々ノ人間ニ繋ガリハ持ツテ居リマスルケレドモ、一人々々ノ人間其ノモノデハアリマセヌ、サウ云フモノガ過去、現在、未来ト云フ区別ナク、一ツノ総意ガアル訳デアルト思ツテ居リマス

要約すれば「日本国民の総意」とは、日本国成立以後に存在してきた全ての日本人、将来の日本人の認識をも含む観念であって、現在生きている具体的な日本国民の意思を指すものではないということです。ましてや、国民投票や国会の議決で全会一致しなければならない、という意味ではありません。

この質疑の中でも、「国民の総意」と皇位継承の話は関連付けられていません。

私は、天皇と国民の歴史的な協同関係から考えてこの解釈が正統だと考えます。

河野太郎氏は閣僚という立場にありながら、政府見解に反する主張を勝手にブログで行っているということです。敢えてそう主張するというなら分かりますが、過去の政府見解に反する主張をすることの妥当性について何ら論証をしていないというのは、議論のお作法が分かっていないんでしょうか?

日本国民の総意はどうやって斟酌されたと言えるのか?

「国民の総意」が持ち出された例として、天皇の譲位に関する問題について皇室典範特例法が成立した経緯があり、菅官房長官が以下返答しています。

第198回国会 参議院 予算委員会 第8号 平成31年3月13日

○国務大臣(菅義偉君) 天皇の退位等に関する問題につきましては、各政党各会派は、象徴天皇制を定める日本憲法を基本として、国民代表機関たる立法府の主体的な取組が必要であるとの認識で一致をされて、衆参正副議長による議論の取りまとめがなされたものと承知をしております。憲法第一条において、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」とされていることを踏まえた御判断であり、その御尽力に敬意と感謝を申し上げるものであります。
 その上で、この議論の取りまとめにおいては、政府においては、立法府の総意を厳粛に受け止め、直ちに法律案の立案に着手し、誠実に立案作業を行うとともに、法律案の骨子を事前に各政党各会派に説明をしつつ、法律案の要綱ができ上がった段階において、当該要綱を全体会議に提示していただき、そこで確認を得た後、速やかに国会に提出することを強く求めるとされたところであります。

国会が国権の最高機関と言われているのは、それが選挙によって国民の意思を背負った国会議員によって構成されているからであり、内閣は議院内閣制のもと、基本的に国会議員らで構成され、行政権を執行・監督する立場にあります。

したがって、「日本国民の総意」を言うからには、それら国家機関の人間がきちんとした「論じ方」をしなければなりません。

もちろん我々一般の日本国民において、皇室に関して学ぶ必要はありますし、国民の間で議論をすることを呼び掛けることは何ら妨げられるものではありません。法的な文脈から離れた実質論を言えば、間違いなく皇室はその時代時代の国民によって支えられてきたのですから。

天皇の国史

たとえば私も天皇の国史 [ 竹田 恒泰 ]も買って読み進めて理解を深めている最中です。

ただ、河野太郎氏には、突然「世論調査」の結果などを利用して国民の側に責任を振るような真似はしないで頂きたい。国民に議論を呼びかけるのであれば、せめて自身が過去の政府見解くらい参照したらどうなんでしょうか?

これは「知識が無い」という話ではありません。

こんなもの、「過去の政府見解はどうだったか?」ということを疑問に持ち、検索をすればすぐに出てくる話です(私はこの記事を書くにあたって政府見解が変更されたか、直近2年分くらい国会議事録を検索しました。)。

河野太郎氏は、そういう作業を怠っているというのがありありと見えてしまっているので、聖人君子としての名声に傷が付いてしまい、痛々しいなぁと感じています。

以上

河野太郎の女系天皇容認論は一般的なロジック能力の問題が露呈しただけ

河野太郎女系天皇容認論

河野太郎氏が女系天皇(雑系継承)積極容認の発言をして炎上していますが、これはその論じ方によって「河野太郎氏の一般的なロジックのレベルが知れた」という以外にありません。

皇室の歴史に関する専門知識が無くとも判定可能な話なのだということを書いていきます。発言の全文書き起こしは以下。

河野太郎の「女系天皇容認発言」の重大な勘違い - 事実を整える

河野太郎の女系天皇(雑系)容認発言

河野太郎の女系天皇(雑系)容認発言の関連部分だけ掲載します。

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河野 で、そういうときに多分やり方としてはもう愛子様佳子様眞子様はじめ、皇室の女性を皇室、今もう結婚すると女性は皇室から外れるわけですけども、とにかく、女性も皇室の中に残す、そしてもう男の子がいなくなったときには、もうしょうがないから愛子様から順番に女性の皇室のお子様を天皇にしていくということを考えるというのが一つあります。それからもう一つは、旧宮家、マッカーサー、GHQが宮家全部だめ~って言って民間に戻しちゃった、それを戻すっていう議論をする人がいます。ただ、旧宮家というのはですね、旧宮家なんですけども今の天皇家からどこで分かれたかというと、1400年代なんですね。要するに戦後まで残った宮家というのはすべて1400年代に今の天皇家から男系は分かれたわけですから、宮家から元に戻すというけどもそりゃ600年前に天皇家から分かれた人たちなんです。そうすると、じゃあこの人が旧宮家だったからもう一回皇室に養子に入れてって言うけども、遡ると600年前に別れたっていうのはそりゃ男系という意味ではY染色体は繋がってるとかですね、そういう話なのかもしれませんけども、そっちが本当に良いのかという議論はこれやっぱりしていかないといけないと思います。600年間男系が続いているっている保証も確かにありません。それからY染色体というのはですね突然変異しやすい、まあ確率の問題ですよ、確率の問題だけど突然変異しやすい、回文構造っていうおんなじのがこう沢山出るっていう意味でY染色体というのは確率的に突然変異が起きやすい。そうすると、仮にもとに戻そうといった宮家の養子にしようとした方の血液を持ってきて染色体の検査、遺伝子の検査をやったら変異があってそこがずれてたらどうするんだ、繋がってねーじゃねーかっていう話になるかもしれない、ということで本当に国民が支持してくれるだろうか、要するにY染色体といういわばタンパク質が大事なのか、或いは今の天皇陛下を始め、皇室が国民から尊敬され、象徴だ~と言って受け入れられているというのは、そりゃもう天皇陛下をはじめ毎日国民のことを考え、災害が起きれば行って勇気づける或いは色んな行事に出てきて本当に色んな分野で頑張っている人を激励をするということを皇室を挙げてやってこられたそういう皇室の姿をやっぱり国民はそれを支持してるんだとすると、そりゃもうその皇室のメンバーである愛子様はじめ内親王のお子さんの方を素直に次の天皇として受け入れるということもあるんではないかと思います。だから最近なんか男系で維持されてるから~女系天皇はだめだ~というけれどもじゃあ本当に600年前に分かれた人が戻ってきてもそれは本当の万世一系と言えるの?じゃあ遺伝子調べて微妙に違いがあったらそれはどうなの?というところをやっぱり考えないといかんという風に思っています。女系だと別系列になるというけどじゃあ600年前に分かれたのは別系列じゃねぇのか?というとですね、そう思わない人もたくさんいるんだろうと思います。遺伝子の問題じゃないというけども、男系だっていうのはもう要するに繋がっているのはY染色体が繋がっていますっていうぐらいの話であって、要するに遺伝子の問題なんですよ。遺伝子以外に何があるんだと。或いは国民のために一所懸命皇室が努力をされている、その皇室を大事にするのか、600年前に分かれたという血統を大事にするのか、そういう議論だと思います。だから僕は簡単に女系はだめだ~と言うけども、そんなことを言って600年前の方を元に戻してですね、国民にしっかりと受け入れられるのかどうか、そこは議論が要るんだろうと思います。

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  1. 国民は今の皇室・天皇の行動を尊敬
  2. 女系は別系統だというけど600年は別系統じゃないのか
  3. 旧宮家は遺伝子でしか繋がってない

河野太郎氏のこれらの発言について取り上げます。

国民は「今の皇室・天皇」の行動を尊敬しているにとどまらない

河野 今の天皇陛下を始め、皇室が国民から尊敬され、象徴だ~と言って受け入れられているというのは、そりゃもう天皇陛下をはじめ毎日国民のことを考え、災害が起きれば行って勇気づける或いは色んな行事に出てきて本当に色んな分野で頑張っている人を激励をするということを皇室を挙げてやってこられたそういう皇室の姿をやっぱり国民はそれを支持してるんだ

一代(或いは数代)限りの天皇の言動が天皇・皇室の正統性だという甚だしい勘違いがここにはあります。

断言します。日本国民は「今の皇室・天皇」の行動を尊敬しているにとどまらず、「歴代の皇室の歴史を含めた」ものとして天皇・皇室を捉えています。

なぜなら、「被災地に身を寄せてうんぬん」と言うなら、歴代の総理大臣やローマ法王も同じような事をしているからです。その立派な行いをテレビを通して見たからといって、日本国民が総理大臣やローマ法王に「その系統に皇室としての正統性がある」などとは思うわけがありません。

国民が一般的なある対象について「尊敬を持つ」ことの理由としては「被災地に身を寄せてうんぬん」は有り得るでしょう。

しかし、「天皇・皇室に対する特別な尊敬」とは、一代の人間が実際に見た天皇の言動によってのみ醸成されるものではないでしょう。我々は天皇・皇室の歴史をも知っているからこそ、そこに特別な思いを持っているはずです。

参考:天皇の国史【電子書籍】[ 竹田恒泰 ]

旅行者が京都のお菓子の八つ橋の老舗で八ツ橋を買うのはなぜでしょうか?

そのお店が八ツ橋を製造する工程を見たから?会社の社会貢献活動を見たから?

中にはそういう人も居るかもしれませんが、基本的には「昔から続いている」という評判を聞いているからでしょう。当然、購入後は「やはり老舗のものはおいしいな」ということで実体の伴う「尊敬」になっていくのですが。

日本国民が天皇・皇族と生涯の内に直接お会いしてお話をするなんてことは滅多にありません。でも、「そのような経験が無いから日本人は皇室に尊敬の念を抱いていない」とはならないのは、我々の先祖が、家族が天皇・皇室の存在をずっと頂いてきた、そのような環境があったからです。

明治天皇も歴代の天皇の行いの集積たる「大御心」を意識しているのであって、一代の天皇の意思をダイレクトに参照しろとは言っていません。

大御心の意味とは:皇祖皇宗の遺訓 - 事実を整える

歴史の積み重ねをゼロベース思考で捉える愚

河野 女系だと別系列になるというけどじゃあ600年前に分かれたのは別系列じゃねぇのか?

河野大臣の言動は「歴史の積み重ねをゼロベース思考で捉える」愚を犯しています。

我々文明社会には「継続した事実状態の尊重」という価値観があります。

だからこそ民法で時効取得という制度があるのです。

で、時効取得に限りませんが、たとえばあなたが長年(分かりやすいように20年以上とする)住んでる家にいきなり他人が来て「この家と土地は俺のものだ、出ていけ」と言われたとします。

そのときに近所の人がその「争い」を外から眺めて「どちらの言い分も成り立ちうるな」「そういえばこの人がこの家に住んでることの根拠って何だろう?」と思うでしょうか?

たしかに純粋に論理的には土地の登記の有無などを確認しないと分からない話ではありますが、近所づきあいをしていた人はずっとそこにあなたが住んでいたことを(平穏公然と)知っているわけですから「後から来た人が証明しろよ」と思うのが当然で、ゼロベースで考えるわけがないのです。

タレブは著書「反脆弱性 下巻」において、誰かに経験的な知恵があるかどうかをたしかめるためには「立証責任をその人はどこに置いているのか」を見るのが一番だ、という旨を書いてます。

反脆弱性[下] 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方 [ ナシーム・ニコラス・タレブ ]

「天秤」を想像して、その事案のスタート地点は平行であるべきなのか、それともいずれかに傾いた状態でスタートしているのかという判断、そして、重りを載せるべき責任を負っているのは左右のどちら側なのか?

この立証責任の所在の判断は、法的な思考をしていれば馴染みがあるものになるでしょうが、なにも法的な知識を持っていたり証拠法の訓練を受ける必要はないわけです。

物事の比較としておかしい「600年は別系列」論

話を戻して、「女系継承」と並べて「600年」を別系列と言うのがどれだけおかしな比較論なのか、普通の人間ならば一瞬で理解できなければおかしい。

2680年遡っても神武天皇の系列に繋がらない「女系継承」』と「男系で繋がるためには600年遡る旧皇族の男系男子」と、どちらが「より別系列」と呼ぶべきかというと、明らかに前者なわけです。

「別系列」と呼ぶかは別にして、より先例に近い形なのが旧皇族の皇籍復帰や養子縁組なわけで、その可能性を排除するために「女系と同じでしょ」というロジックを取るのは論理が対応しておらず、破綻しています。

河野氏がこう考える前提として「歴史あるものに対するゼロベース思考」があるんだろうと思います。

 

※補足として、これらを同列に見るのは不当だというのが、伏見宮系の旧皇族が歴代の朝廷や幕府(新井白石を見よ)・大日本帝国の政権によって維持されてきたことを考えれば明らか。
※なお「600年前に天皇家から分かれた人たち」というのは間違いなのも明らか。「天皇家」を現在の皇室を起点にして理解していると思われる。

積極的根拠の主張立証責任の所在の認定ミス

河野  男系だっていうのはもう要するに繋がっているのはY染色体が繋がっていますっていうぐらいの話であって、要するに遺伝子の問題なんですよ。遺伝子以外に何があるんだと。或いは国民のために一所懸命皇室が努力をされている、その皇室を大事にするのか、600年前に分かれたという血統を大事にするのか、そういう議論だと思います。

なぜ、「継続した事実状態」が根拠だと思わないのでしょうか?男系継承を2000年以上続けてきた事実そのものを。

河野氏の上記発言は、単にY染色体理論の論者の主張に反論しているだけなのですが、Y染色体理論があるからこのような視野の狭い「反論」に過ぎないものが本筋論だと錯覚するのでしょう。

【皇位継承】Y染色体遺伝子理論という劣化保守擬きのエセ科学が誤りである理由 - 事実を整える 

これは「何かが正統だと言うためには、その積極的根拠を示さなければならない」というドグマに陥っていることから起こる発想でしょう。

生半可に頭のイイ論理的な人にこういう者が多いです。

全ての物事に積極的根拠を見出そうとすると、淘汰の過程で残ったモノや、特定の人ではない多数の人々の活動によって醸成されてきたモノが排除されてしまいます。

天皇の御存在というものは、誰かの意思によって根拠づけられて成立し、継続してきたものではありません。そこにはただ、多数人の行為の蓄積によって醸成されたものがあるだけです。

エラそうな物言いをすれば、「歴史の淘汰に耐えた」御存在です。

したがって、皇統は男系継承されるべきだということについて、なぜそうなのかを言う必要など存在しないのです。逆に、「他の男系継承を可能にする方法を模索する必要は無く、女系継承を容認すべきである」「男系継承をするべき前提が崩れている」と主張する者の側において、積極的に論証をしなければならないという関係にあるのです。

このことは3年前に女系天皇を避けるべき理由 - 事実を整えるで既に述べています。

不可逆事象の扱いとして不適切な河野氏の態度

また、男系継承を途絶えさせて「女系継承をも認める雑系」に移行するということは、不可逆事象です。女系継承が完全に間違いであるかどうかは一度もそのような状況になったことが無いので断定できませんが、後で「間違いだったから元に戻そう」とすることが不可能なものです。

しかも、河野氏自身も「男系継承であれば望ましい」と言っている通り、「男系継承が危険であり、ダメである」という話はまったくないのです。

したがって、「万が一取り返しのつかないことにならないように男系継承の可能性を最大限模索する」という態度になるのが通常です。

しかし、河野太郎氏はそういうことはしない、と言い放ったのです。

なぜこのタイミングで旧皇族の皇籍復帰や養子縁組の道を諦めるのか?

この点について、河野太郎氏はまったく弁明していません。

議論の仕方として、非常に不適切であり、非対称な態度でしょう。

※ここでも補強として明治政府が男系での継承を維持する判断をしたことや「菊栄親睦会」によって現在も皇室と旧皇族が交流を持っていることから、男系継承の道を最大限模索することを皇室が重視している事実などを挙げることができるが、本題からずれるので割愛する。

皇室問題の論じ方で明らかになる一般的な思考方法の誤り 

さて、ここまで書いてきた理解をするのに皇室の歴史の細かい話を知っていることは不要だというのに気づきましたでしょうか?

河野太郎氏の一般的なロジックの欠如の話です。

何らかの物事に対して向き合う際の思考に問題があることが、皇室問題において顕著に炙り出されてくるということです。

これでは陸上イージス問題に関連する一連の説明のように、他の事案でも致命的な判断ミスを起こしかねません。

以上

河野太郎の「女系天皇容認発言」の重大な勘違い

河野太郎女系天皇容認

河野太郎氏が「女系天皇容認発言」をしたので、実際の発言内容と、何がおかしいのかを指摘します。

河野太郎のYoutubeのLIVE配信

「女系天皇容認論」は、河野太郎氏のYoutubeチャンネル"KonoTaroGomame"で2020年8月23日にLIVE配信された動画で言及されました。

動画内では44分くらいからです。

この際の発言は新聞も取り上げました。

河野防衛相が女系天皇容認論 次の天皇「内親王のお子さまも」 - 産経ニュース

河野太郎の女系天皇容認論

該当箇所を書き起こします。

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質問 河野さんは女系天皇をどう思っているのですか?

河野 女系天皇…まぁ、今も天皇家はずっと男系で来ていますから、そら男系が続くんだったら男系でもう1000年以上きてるわけですからそりゃ男系でやるのがいいんだと思います。問題は、天皇陛下、それから秋篠宮様それから悠仁さま、今の世代、次の世代はもうとにかくおひとりしかいないわけですから、さぁどうするというのは真剣に考えなければいかんと思うんです。雅子様紀子様を見ていて、本当に皇室にお嫁入してくれる人が本当にいるだろうか、という問題もありますし、そりゃ結婚したはいいけど物凄い男の子を生めというプレッシャーがかかってくるわけですよね。で、人工受精とかですね、いろんなことが考えられると思いますが、それでも男の子がいなくなるという可能性はもう確率的にあるんだと思うんです。で、かつては側室制度があったりしたわけですけども、この21世紀に側室というのがいいのかというと、そりゃそうはいかないだろうと思いますし、じゃあクローンというわけにもやっぱりいかないんだと思います。そうすると、男系で行くんだけど男の子がいなくなる、男子のお世継ぎがいなくなったときにどうするんだ、ということをやっぱり考えとく必要はあると思います。

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この部分だけ聞くと、男系で行くなら行くが、それが無理な場合も考えておく、という仮定の話かと思いますが、その後の発言を聞くと全くそうではないというのがわかりますし、いくつかの危険な認識も見受けられます。

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河野 で、そういうときに多分やり方としてはもう愛子様佳子様眞子様はじめ、皇室の女性を皇室、今もう結婚すると女性は皇室から外れるわけですけども、とにかく、女性も皇室の中に残す、そしてもう男の子がいなくなったときには、もうしょうがないから愛子様から順番に女性の皇室のお子様を天皇にしていくということを考えるというのが一つあります。それからもう一つは、旧宮家、マッカーサー、GHQが宮家全部だめ~って言って民間に戻しちゃった、それを戻すっていう議論をする人がいます。ただ、旧宮家というのはですね、旧宮家なんですけども今の天皇家からどこで分かれたかというと、1400年代なんですね。要するに戦後まで残った宮家というのはすべて1400年代に今の天皇家から男系は分かれたわけですから、宮家から元に戻すというけどもそりゃ600年前に天皇家から分かれた人たちなんです。そうすると、じゃあこの人が旧宮家だったからもう一回皇室に養子に入れてって言うけども、遡ると600年前に別れたっていうのはそりゃ男系という意味ではY染色体は繋がってるとかですね、そういう話なのかもしれませんけども、そっちが本当に良いのかという議論はこれやっぱりしていかないといけないと思います。600年間男系が続いているっている保証も確かにありません。それからY染色体というのはですね突然変異しやすい、まあ確率の問題ですよ、確率の問題だけど突然変異しやすい、回文構造っていうおんなじのがこう沢山出るっていう意味でY染色体というのは確率的に突然変異が起きやすい。そうすると、仮にもとに戻そうといった宮家の養子にしようとした方の血液を持ってきて染色体の検査、遺伝子の検査をやったら変異があってそこがずれてたらどうするんだ、繋がってねーじゃねーかっていう話になるかもしれない、ということで本当に国民が支持してくれるだろうか、要するにY染色体といういわばタンパク質が大事なのか、或いは今の天皇陛下を始め、皇室が国民から尊敬され、象徴だ~と言って受け入れられているというのは、そりゃもう天皇陛下をはじめ毎日国民のことを考え、災害が起きれば行って勇気づける或いは色んな行事に出てきて本当に色んな分野で頑張っている人を激励をするということを皇室を挙げてやってこられたそういう皇室の姿をやっぱり国民はそれを支持してるんだとすると、そりゃもうその皇室のメンバーである愛子様はじめ内親王のお子さんの方を素直に次の天皇として受け入れるということもあるんではないかと思います。だから最近なんか男系で維持されてるから~女系天皇はだめだ~というけれどもじゃあ本当に600年前に分かれた人が戻ってきてもそれは本当の万世一系と言えるの?じゃあ遺伝子調べて微妙に違いがあったらそれはどうなの?というところをやっぱり考えないといかんという風に思っています。女系だと別系列になるというけどじゃあ600年前に分かれたのは別系列じゃねぇのか?というとですね、そう思わない人もたくさんいるんだろうと思います。遺伝子の問題じゃないというけども、男系だっていうのはもう要するに繋がっているのはY染色体が繋がっていますっていうぐらいの話であって、要するに遺伝子の問題なんですよ。遺伝子以外に何があるんだと。或いは国民のために一所懸命皇室が努力をされている、その皇室を大事にするのか、600年前に分かれたという血統を大事にするのか、そういう議論だと思います。だから僕は簡単に女系はだめだ~と言うけども、そんなことを言って600年前の方を元に戻してですね、国民にしっかりと受け入れられるのかどうか、そこは議論が要るんだろうと思います。

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発言は以上ですが、「内親王のお子さんを次の天皇」という面だけ捉えると、可能性はいくつかあります。

内親王の子が男系天皇となる場合

内親王の子が男系天皇となる場合は、内親王の夫が男系男子の皇族である場合です。

この場合であれば、皇室の歴史上の皇位継承ルールからは外れることはありません。

歴史上も「内親王」である元明天皇の息子である文武天皇娘である元正天皇が君臨したことがありますが、男系男子の皇族たる岡宮天皇(諡号なので即位はしていない)の子だからこそ文武・元正天皇は男系の天皇として皇統譜に掲載される正統性があるとされているのです。

河野太郎の旧皇族(旧宮家)否定のロジックの誤り

河野太郎氏の旧皇族(旧宮家)の皇籍復帰否定のロジックの誤りは、以下の認識にあります。

  1. 国民は今の皇室・天皇の行動を尊敬
  2. 女系は別系統だというけど600年は別系統じゃないのか
  3. 旧宮家は遺伝子でしか繋がってない

こんな雑な認識で皇室を語って欲しくないです。

後に具体的に指摘する記事をUPします。

追記:河野太郎の女系天皇容認論は一般的なロジック能力の問題が露呈しただけ

以上