事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

深層NEWS飯塚恵子「共産党の思想が反映」日本学術会議法改正案と任命拒否や軍事研究デュアルユース:隠蔽されてきた事実と論点

学術会議は現実を停滞させたいだけだろう

深層NEWSで日本学術会議法改正案について議論

深層NEWS 2月16日(木)放送分 日本学術会議“改正案”国会へ・・・歴代会長は猛反対|報道・ドキュメンタリー|見逃し無料配信はTVer!人気の動画見放題

2023年2月16日、真相NEWSで元日本学術会議会長の大西隆氏と自民党衆議院議員の大野敬太郎氏が出演し、議論しました。

昨年末に内閣府が「日本学術会議の在り方についての方針」を公表し、「政府等と問題意識や時間軸等を共有」し、「時宜を得た」「質の高い」科学的助言を行う機能等を強化、活動や運営の徹底した透明化・ガバナンス機能の迅速かつ徹底的な強化 するよう、早期に関連法案の国会提出するとされました。

それを受けて、日本学術会議法改正案が国会提出される予定となってなっており、読売新聞がその概要を報道しました。

日本学術会議、人選透明化へ諮問委員会設置…法改正案が判明 : 読売新聞

この番組の前半部分は、菅政権時の「任命拒否」について、後半部分は「軍事研究」や「デュアルユース」の話題について、学術会議というアカデミア組織の在り方に関する言及も含めて論じる内容となっています。

本稿は、学術会議問題として膨大な報道が為されてきた中で、隠蔽されてきた事実と論点についてそれを際立たせるために書きます。

「学術会議の独立性が脅かされる」という謬論

菅政権による6名の任命拒否以来、「学術会議の独立性が脅かされる」という論が擁護側から執拗に展開され、さも当然の前提であるかのように語られていました。

今般の法改正において「選考諮問委員会」という第三者委員会の設置が検討されている点についてもこの観点から学術会議側から批判が展開されていますが、そもそも「学術会議の独立性」とは何なのか?という所から認識が歪められています。

「推薦に基づいて任命」の文言解釈

学術会議は職務について独立性が保障されていますが、人事についてまで当然に内閣府の関与を受けないということではないということは条文の文言解釈からも伺えます。

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特に「推薦に基づいて」と書かれている他の法令においてどういう解釈が無されているのかということは、無視されています。

「〜の推薦に基づいて……が任命する」の裁判例その2|Nathan(ねーさん)|note

そして、【他の独立性が認められている組織】はどうなってるのか?

この点も無視されています。

「内閣からの独立性」が明記されている会計検査院

内閣からの独立性」の度合いが極めて強い国家組織として会計検査院が挙げられます

会計検査院法

第一条 会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する
第二条 会計検査院は、三人の検査官を以て構成する検査官会議と事務総局を以てこれを組織する。
第三条 会計検査院の長は、検査官のうちから互選した者について、内閣においてこれを命ずる。
第二節 検査官
第四条 検査官は、両議院の同意を経て、内閣がこれを任命する。
② 検査官の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会が閉会中であるため又は衆議院の解散のために両議院の同意を経ることができないときは、内閣は、前項の規定にかかわらず、両議院の同意を経ないで、検査官を任命することができる。
③ 前項の場合においては、任命の後最初に召集される国会において、両議院の承認を求めなければならない。両議院の承認が得られなかつたときは、その検査官は、当然退官する。
④ 検査官の任免は、天皇がこれを認証する。
⑤ 検査官の給与は、別に法律で定める。

会計検査院⇒「内閣に対し独立の地位を有する」と明記

日本学術会議⇒「独立して、左の職務を行う」

全然違うでしょう。

深層NEWSでは大野議員がこの点に関して

  • 第三者委員会は学術会議が指名することとなっていること
  • 社会全体が外からの目を入れる方向になっている、例えば会社法2019年改正で社外取締役の設置を義務化したことなどに触れて決しておかしくないこと
  • 時間軸を共有、などというのは前提であって、研究の経過や結果のことではない

といったことを論じていました。

また、「会計検査院の長は、検査官のうちから互選した者について、内閣においてこれを命ずる」とあるのに対して、日本学術会議の委員は「推薦に基づいて」に過ぎない。

会計検査院の検査官は「両議院の同意を経て、内閣がこれを任命する」とあり、国会同意人事。内閣はそれを受けて任命するという建付け。

これとの対比でも、学術会議は必ずしも推薦の通りに任命すべき法的拘束力があるとは言えません。

なお、会計検査院の一定の職員は各省庁からの出向ですが、憲法第九十条に基づき、「国会及び裁判所に属さず、他省庁とは異なり、内閣から独立した憲法上の機関」であると言えます。

形式的任命権説とは何だったのか?

形式的任命権説は、一時期の政権が採っていた論であると言われていますが、そういう密約があったと証言する者が居ます。これが本当なら、解釈論上当然に導かれるものではないから密約として話を合わせていたということになります。

また、【解釈が変わったわけではないが運用が変わった例】としては、いわゆる敵基地攻撃能力と呼ばれていた「反撃能力」について、解釈上は保有が許されるが政政策判断で保有することとしてこなかった、という立場が、保有する必要がある、と変更されたということがありましたが、それに近いものでしょう。

実際は2018年の安倍内閣において既に推薦を拒否していた事例があり、絶対的な規範としては捉えられていなかったということが伺えます。

平成16年時点の附帯決議を無視するマスメディア

また、昔の所轄組織における解釈論がメディアで独り歩きしたり、平成16年の日本学術会議法改正時の附帯決議で「多様な人材を確保するよう努めること」とされていたことが無視されています。

菅総理が「人選に偏りがある」と発言したのにはこうした背景がありました。

「任命拒否は想定せず」平成16年 政府内部文書のからくり|Nathan(ねーさん)|note

菅総理「学術会議は人選に偏りがある」元会長「東大17%、関東50%!」⇒偏りを暴露www - 事実を整える

深層NEWSで大西氏は「東京とそれ以外では半々くらいになった」と言っていましたが、大学の数を考えたらそれ自体が偏りです。

飯塚恵子「特定の思想、特に共産党の思想が反映」

番組内では飯塚恵子氏から、特定の思想に偏った者が選ばれているのでは?という点にも触れられていました。

具体的には「共産党の思想が反映されているのではないか?」「学術会議の任命拒否問題で最も敏感に反応したのはしんぶん赤旗だった。」などと言及していました。

「分野の偏り」についても大西氏が触れて改善努力をしてきた風に語っていましたが、実態としては法学者が多く、しかもその中で「民科」のメンバーが多いという現実がありました。

「学問の自由が侵害された」という謬論

ほか、「学問の自由が侵害された」という謬論も大々的に展開されました。

学術会議の委員であることで研究資格が得られたり、そうでないと国家がある研究について助成金を出さないだとか、そういう関係は一切ありません。

世には学術会議側の論者が書籍を出版して、学術会議を大学と同視して学問の自由の問題だと強弁する論稿も見つかりますが、到底無理があります。

むしろ、【学術会議が学問の自由を侵害する状況を作り出していた】という重大な事実が隠蔽されています。というか、それを糊塗するために「政権が学問の自由を侵害」と言っているだけです。

自衛官の大学(院)入学拒否を非難しなかった学術会議

学術会議は、国立大学を含む大学(院)が自衛官の入学拒否をしていた時代に、それを非難してきませんでした。「学問の自由」は沿革的に大学における研究・発表・教授の自由だと考えられていたためでしょうが、大学入学はそのための入口であり、入学拒否はその道を閉ざすものです。

昭和51年防衛白書「自衛隊員の大学院受験の辞退要求や願書返送が」|Nathan(ねーさん)|note

北海道大学における自衛官入学拒否について|Nathan(ねーさん)|note

京都大学が自衛官の大学院入学拒否の方針をとった経緯と結果について|Nathan(ねーさん)|note

大学や民間企業の軍事研究やデュアルユースに圧力をかける学術会議

日本学術会議がデュアルユース技術研究の規制を諦め容認へ:軍事的安全保障研究規制も破棄せよ

学術会議が種々の声明を出すことによって、大学や民間企業の軍事研究やデュアルユース研究に有形無形の圧力が生まれていました。

深層NEWSで大西氏は「各大学でどこまでやるのか判断せよというのが学術会議の立場」と説明をし、大野議員もそれを共有しつつも「凄い萎縮効果が働いた。大学によっては可能性があるものすべてダメだというガバナンスを敷いた所もあった。これは過剰反応」と指摘し、「今後政府から大学に対して「こういう研究をしろ」と言うことはあり得ない」と言及していました。

にもかかわらず「戦前回帰だ!」などという言説が振りまかれている。

「GHQによる教職追放・公職追放によってそういう学者が多く残っていた」、ということでは説明しきれないでしょう。

まとめ:政権や国民との対話を無視し続けて来た日本学術会議

左は軍事的安全保障研究に関する声明。

右はロシアによるウクライナへの侵攻について。

熱量の差が出てますよね。

ロシアのウクライナ侵略戦争は、国際法の観点からいくつもの違反を指摘できます。

にもかかわらず、学術会議からそうした言及はありません。

政府や国民との対話ではなく、現状を固定化し、現実を先に進ませないように妨害してきたのが学術会議の現実でしょう。

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