皇位継承問題に関連して、女性天皇と女系天皇の違いや旧皇族の復帰に対する世論調査を産経新聞とFNNが合同で実施しました。
その結果がこれまでのメディアの調査からは見えなかった点を浮き彫りにしました。
- 産經FNN世論調査:女性天皇と女系天皇の違い分かってない
- 旧皇族・旧宮家の皇籍復帰も賛成が上回る
- 過去のマスメディアの世論調査
- 世論調査の対象・方法
- まとめ:男系継承が例外なき伝統である意味を理解しているか?
産經FNN世論調査:女性天皇と女系天皇の違い分かってない
【産経・FNN合同世論調査】女性天皇と女系天皇の違い、「理解せず」過半数(1/2ページ) - 産経ニュース(魚拓)
皇室伝統の一大転換となる女系天皇について、「賛成」との回答が64・2%に達した。ただ、女性天皇と女系天皇の違いに関しては「理解していない」との回答が過半数で、問題の所在はまだ国民に十分周知されていない。
驚くべきことに、女性天皇と女系天皇の違いを理解していない者が過半数いました。
理解度を問うた世論調査は私が知る限りでこの調査が初めてではないでしょうか。
両者の違いや、その意味については以下でまとめてあります。
女系天皇と女性天皇の違い:世論調査の回答者は意味を理解しているのか
旧皇族・旧宮家の皇籍復帰も賛成が上回る
【産経・FNN合同世論調査】女性天皇と女系天皇の違い、「理解せず」過半数(2/2ページ) - 産経ニュース(魚拓)
調査を支持政党別に見ると、女系天皇に「賛成」とする回答は立憲民主が71・1%で、自民も62・3%と高い。女性宮家創設への賛成者は自民67・8%、立憲58・2%とむしろ自民支持者の方が10ポイント近く高い。
また、設問によってこれらとは矛盾するような結果も表れている。男系男子の皇族を増やすため、戦後に皇籍離脱した旧宮家の復帰を認めてもよいかとの質問に対しては、「認めてもよい」(42・3%)が「認めない方がよい」(39・6%)を上回った。
旧宮家をはじめとする男系男子の血統を持つ人々の皇籍復帰や養子縁組案については従来、「長年民間で暮らしていることから国民の理解は得られない」との指摘が有識者や政府、マスコミらから出ていた。ところが、国民意識は必ずしもそうだとはいえない。
おそらく「これらとは矛盾するような結果」という意味が分からない人も居るかも。
原則として男系男子による皇位継承が126代例外なく行われてきたわけです。
しかし、悠仁親王殿下以降の皇位継承権者が誕生しない可能性があります。
そこで、皇統を途切れさせないための方策としていくつかの方法が示されました。
その中で最も有効かつ重要なものが旧皇族(旧宮家)の皇籍復帰+αです。
ですので、旧皇族の皇籍復帰を認めないということは、ほぼ女系天皇を容認しているとみなされてもおかしくはない、ということになります。
もちろん、厳密に言えば悠仁殿下の子孫に男系男子がお生まれになれば旧皇族が皇籍復帰をしなくても大丈夫なのですが、そういう事を無視しているのではありません。
過去のマスメディアの世論調査
主に時事通信によるものが多いです。
平成31年4月の時事通信による調査
男系男子に限られている現在の皇位継承資格を女系・女性皇族にも広げるべきか尋ねたところ、「広げるべきだ」が69.8%だった。「広げるべきではない」は11.2%、「どちらとも言えない・分からない」は19.0%だった。
ー中略ー
皇族数の減少対策となる女性宮家創設の賛否に関しても、「賛成」69.7%、「反対」10.3%、「どちらとも言えない・分からない」20.0%となった。
見つかったのはこの記事だけですが、調査方法等が書かれていません。
平成29年の共同通信世論調査
女性宮家創設に61%賛成 68%が待機児童解消優先 内閣支持47% 共同通信世論調査 - 産経ニュース
皇族減少対策として、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる女性宮家の創設について「するべきだ」との賛成意見が61.3%に上り、「必要はない」の26.0%を上回った。
こちらは女性宮家に関するものです。
調査方法がどうだったのかは定かではありません。
平成29年の産経・FNN合同調査
【産経・FNN合同世論調査】主な質問と回答(6月)(2/3ページ) - 産経ニュース
【問】女性宮家の創設に賛成か
賛成71.8 反対19.2 他9.0
シンプルな設問です。
平成17年皇室典範にかんする有識者会議報告書
皇室典範に関する有識者会議の参考資料に、時事通信の世論調査結果があります。
この平成17年の有識者会議の性質についてはこちらで論じています。
これは表題からフェイクで、「女性天皇に関する調査」と言いながら、「女系天皇」に関する調査でもあったというとんでもない実態の調査です。
しかも、歴史的事実に明確に反する内容があります。
「(女性天皇の)その子どもが皇位を継承した例はありません」
これは持統・元明・元正天皇のことを完全に無視しており、我が国の歴史を軽視している者がアンケートを実施していたということが分かります。
元明天皇は、天武天皇と持統天皇の子・草壁皇子の正妃であり、文武天皇と元正天皇の母でした。彼女らは男性天皇の子でもありました。つまり、男系の系統であったからこそ、即位可能でした。
なお、持統天皇も元明天皇も即位後は子を産んでおらず、元正天皇は生涯独身でした。
世論調査の対象・方法
【産経・FNN合同世論調査】女系天皇と女性宮家に「賛成」64% - 産経ニュース
合同世論調査は今回から固定電話に加え、携帯電話を対象に加えた。調査対象は1000、固定・携帯の比率は4対6とした。
令和元年5月13日報道の産経新聞FNN合同調査は、携帯電話も含む調査でした。
平成17年の時事通信は面接方式でした。
なお、RDD調査などにおいて、固定電話に出るのは高齢者が多いという傾向があるので、携帯電話や年齢補正をかけないと世代による偏りが出てしまうということは有名な話です。
まとめ:男系継承が例外なき伝統である意味を理解しているか?
産経新聞とFNNによる「理解度」を問うた世論調査によって、過去の調査結果が正しい国民の意思を反映したものではないこと、ないしは調査における暗黙の誘導が存在していたことが示唆されました。
マスメディアや女系天皇・女性宮家推進派が「国民の総意」を持ち出して正当化していたことの妥当性が崩れたということになります。
もっとも、「国民の総意」が皇位継承の範囲を決めるという誤解そのものが拡散されており、世論調査の結果そのものには一喜一憂する必要はないでしょう。
日本国憲法第一条と皇位継承:天皇の存在は「日本国民の総意に基づく」の誤解と女系天皇・女性天皇
以上