事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

ドイツHornbach(ホルンバッハ)の炎上CMと人種差別・ヘイトの実例?

f:id:Nathannate:20190404234229j:plain

ドイツのDIY事業者Hornbach(ホルンバッハ)の炎上CMについて、ドイツ本社がCMを撤回しないことを表明しました。Cookies op AD.nl | AD.nl

ホルンバッハの釈明はこちら⇒Unsere Haltung | HORNBACH

ホルンバッハが人種差別であると認めないとダメだと言う人が居ますが、果たしてそれで問題の解決になるのでしょうか?

ドイツHornbach(ホルンバッハ)の炎上CM

調べれば出てきますし、TVでも取り上げられたのでもう見た人も多いでしょう。

あれは酷いCMですね。

ええ、気持ち悪いですね。

そこはほとんどの人が共通して持っている感覚なんじゃないでしょうか?

現地の女性が受けた実害

このように、あのCMによって「実害」が発生してるのが事実です。 

したがって、抗議の声を挙げることそのものは、正当性のある行為です。

さて、このCMは、見た者に対して「CMで表されたような事柄が事実である」と思わせるものでしょうか?CMを見た者が、「〇〇人はドイツ人のおっさんの下着の匂いを嗅いで興奮する」と本気で信じるでしょうか?

CMを利用して侮蔑する輩たち

輩たちはCMを「フィクションと知りつつ利用してる」のが実態ではないでしょうか。

ホルンバッハのCMを免罪符として(CMの冗談だよという言い訳・逃げ道を用意しながら)アジア人女性へのからかいをするという構図があったんでしょう。

それは中には差別心から来るものもあるだろうし、そういうのは抜きに、ある種の人間の本性(悪ふざけ・ウザ絡みをしたい)から来てる場合もあるでしょう。

その切り分けは非常に難しい。

ただ、いずれにしても、ホルンバッハのCMによって実害が発生している。

この厳然たる事実があるということを、ホルンバッハは認識するべきでしょう。

しかし、そのような事態が生じることは、CMそのものの評価とは別個の事柄です。

推理小説を見た者が描写されてる犯行手口を真似てもその小説は犯罪ではありません。

批判者の多くはCMは差別を「意図」してるという事よりは、(その可能性は排除してないが)、内容が結果的に差別的になっていることを指摘しているようですが、あくまでもCMの中身の問題としています。

だから、ホルンバッハやCM評価団体、ドイツ国内のアンケートにおいて「当該CMは人種差別ではない」という見解が採られることとは、本質的に噛み合っていません。

「人種差別」なのか?

それでも、このCMは「人種差別」なのだろうか?

人種差別とはどういう意味なのだろうか?

外務省 人種差別撤廃条約Q&A

Q1 この条約の対象となる人種差別とは何ですか。

A1 この条約の対象とする人種差別については、この条約の第1条1において、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」と定義されています。

ドイツ法のことはわからないのですが、少なくとも国連の人種差別撤廃条約における人種差別とは上記の意味です。

「権利や自由」を「認識・享有・行使」することを「妨げ・害する」「目的・効果」

あのCMは、そういう目的・効果があるのでしょうか?

批判者は、なんとなく「人種差別だと思った」と言ってないでしょうか?

そこに今回の署名運動の問題点があります。

「人種差別・ヘイト」のインフレ

魚拓:http://archive.is/cPmZi

上のツイートで「ヘイト」と言われてるのがこちらの記事です。
ドイツHornbach(ホルンバッハ)のCMがアジア人女性への差別だと韓国人が署名運動のセンスの無さ

彼からは何も具体的な指摘がありませんでした。

怖くないですか?

ある日突然、単なる批評が「お前の言動はヘイトだ」と認定されるんですよ。

既に、日本国内では『ヘイトのインフレ』が進行しているのです。

私がこの問題でホルンバッハの肩を持つかのような記事を書いたのは、そうした点を踏まえず「差別問題」として騒いでると、それは(民間からの)「表現規制」という形で私たちに襲い掛かってくる危険性があり、その方がより重大な脅威だと感じたからです。

その他のHornbachと他企業のCM

これらは「ドイツ人のおっさん」に対する差別・ヘイトではないのだろうか?

これは白人男性を差別してるんじゃないでしょうか?

「いや、これはにおい鑑定人という権威ある立場において職務を遂行してるだけだから差別じゃない」

『でも、現実に女性の脇を直接嗅ぐ職務なんて無いでしょ。ありえない!これは手の込んだ差別的表現だ!』

…否、もちろんそんなことはありません。そうでしょう?

チェンジオルグのキャンペーンのゴールは人種差別認定を前提にしている

f:id:Nathannate:20190404220649j:plain

https://www.change.org/p/wolfgang-rupf-act-up-against-german-racist-company-hornbach-ag?recruiter=945859576&utm_source=share_petition&utm_medium=copylink&utm_campaign=share_petition

このキャンペーンは、ゴールが「ホルンバッハがセクシストでありレイシストであるということを認めること」を前提にしています。

人種差別の定義も示さず、「とにかくアジア人女性をバカにしてるから差別だヘイトだ」と喚き散らしている主張に対して、「ハイ、そうです」と言いますかね?

"Racist"であるという認定を受けた場合の社会的な非難を知らないハズが無いでしょう。そのような烙印を安易に他者に押すような行為は、厳に慎むべきでしょう。

人種差別だという指摘を発端にすること自体は否定しませんが、ゴールをそこに設定することに何の意味があるのでしょうか?一企業を攻撃することに終始してしまっていないでしょうか?

人種差別ではないにしろ、当該CMはアジア人女性に対する嫌がらせを惹起するものなので甚だ不適切だ、対応して欲しい」というような主張にしなければ、ホルンバッハの態度は変わらないでしょう。

舐められる?確かに穏当な方法であり、相手に恐怖を抱かせることは無いでしょう。

でも、テロや嫌がらせ、強引な人種差別認定によって相手を黙らせたところで、表面的には何もなくなったとしても、その内部では鬱屈した感情が渦巻くことになるでしょうね。

それは本来の形ではないでしょう。

侮蔑や揶揄等の不適切な表現を飛び越え差別問題にする弊害

有名なドルチェ&ガッバーナのCM炎上・謝罪事件ですが、これはCMの内容に加えて「中国は無知で汚濁した臭いマフィアだ」「これからすべての国際的インタビューで中国はクソの国だと説明していくさ」とステファノ・ガッバーナがSNSで返信していたことが問題視されていました。

これも人種差別だと言われていましたが、最終的に人種差別だという認定がどこかでされたということは聞きません。

少なくともCMは箸を使う文化圏を揶揄した、或いは侮辱したような内容であるとは言えるでしょう。ただ、それは人種差別なんでしょうか?

揶揄や侮辱は、人種差別を構成する要素ではありますが、それが直ちに人種差別に当たると解するのは非常に危険です。外国人に対して批評をしたらそのことを取り上げて「差別だ」と言われかねません。

まさに既述の通り、私がSNSで「実害を被った」ようなことが起きるわけです。

この件が「人種差別だと言われているが故」に関わろうとしない者が、それなりに存在しているのです。

別の視点からの分析

 

 

 

ここに挙げた方々は、みな「ホルンバッハのCMは酷いし、抗議されても仕方がない」という認識です。

ただ、安易な「人種差別・ヘイト」認定は避けています。

このような深謀遠慮すら、否定されてしまうのでしょうか?

なお、上記の方は今回の事案は人種差別だとお考えのようです。その分析は一見に値すると思います。

まとめ:差別と不適切表現の境界線を破壊するのか

理想は、ホルンバッハのようなCMがあっても、それを利用してアジア人女性に対して不快な扱いをする者も現れず「アナーキーな企業がまぁたおバカなCM作ったよね」と言ってみんなで笑い飛ばせるような社会であることだと思います。

しかし、ドイツはそうではなく、冗談を悪用した差別・差別まがいの行為が実際に発生するような、どうしようもない社会である、という現実があります。 

本件はCMの中身の問題もありますが、いろんな方の見解を見てみると、ドイツ社会におけるある特性がそうさせている面もあるという指摘も見つかります。

何でもかんでも「人種差別」の問題として扱うことは、そういった点を見落とすことにもつながりかねず、本当の解決からは遠ざかってしまうおそれがあると思います。

この問題は、更にいろんな捻じれが表出しています。後日触れるかもしれません。

以上

憲法審査会はなぜ開かれないのか:野党第一党の役割と維新の会

憲法審査会による憲法改正の実質審査が開始されません。

どこに原因があるのでしょうか?

憲法審査会の開催要件や野党第一党の役割が重要です。

憲法審査会(の幹事懇談会)を欠席する党

憲法審査会の開催日程等を決めるために、一部の議員(幹事)らによる懇談会が設けられています。しかし、懇談会の開催を立憲民主党などの野党側は拒否しているのです。

衆院は委員数50、参院は45の過半数で開催は可能

 

衆議院憲法審査会規程 参議院憲法審査会規程

委員は、各会派の所属議員数の比率により、これを各会派に割り当て選任する。

衆議院は、現時点で自民党議員が28名、公明党3名、維新1名、立憲民主党8名、国民民主党4名、共産党2名、その他4名です。

参議院は、現時点で自民党議員が24名、公明党5名、立憲民主党5名、共産党3名、旧民主党5名、維新希望3名です。

つまり、現時点で理論上は自民党議員単独でも憲法審査会は開催できるのです。

ただ、与党公明党や野党(特に野党第一党である立憲民主党)との調整が絡みます。

野党第一党と国会対策委員長

現在の国会運営は「国対政治」とも言われます。

衆参両院において国会対策委員会(国対)が設けられており、これは与党の国会対策委員長と野党側の国会対策委員長とで、国会の議事開催日程や審議事項について協議して決定する機能があります。
参考:大塚たかしの仕事 | 衆議院議員 大塚たかし

野党側の国対委員長は野党第一党、つまり議席数が最も多い会派の中から選ばれるのが通例です。

このことから分かるように、野党第一党には国会運営についての政治的なパワーが与えられているのです。

国会対策委員会は、建前としては十分かつ有益な審議を行うために設けられているものですが、現実には野党第一党が反対をしていることで、いろんな審議事項が審議できなかったり、時期が遅くなったりすることも発生しています。

もちろん、国会対策委員会は法的な裏付けがあるわけではありませんから(議院運営委員会とは異なる)、反対を無視して憲法審査会を開いて実質審査をすることは可能です。

ただ、民主政の建前上むやみにそのような形での開催をすることは避けられています。
あとは政治的なかけひき、取引に利用されている面もあると思いますが

「審議が不十分だ」などと言われることがありますが、実は反対側がそもそも審議拒否をしているという場合があります(自民にも野党時代にはそういう類のことはあったが、その割合の問題)。

憲法審査会が開かれても

憲法審査会がまったく開かれていないということはありません。

ただ、中身を見れば「幹事の補欠選任」「会長代理の指名」「請願の審査」「憲法に関する意見交換」など、憲法関連条文の吟味とはほとんど無関係な内容しか行われていない場合が多々あります。

参考:共産党から憲法審査会に組織的な請願が行われていた件

野党第一党と国政選挙:自公が増えてもダメ

憲法改正の審査を充実させるためには自民党や公明党議員がいくら増えても無駄です。

現状ではたった55議席の立憲民主党によって、憲法改正の審議が止められています。

それを押しきっても良いでしょうが、野党第一党に憲法改正に向けて理解のある政党がつかなければ、健全な国会運営になっていかないのではないでしょうか?
だいたい、自民党内にも改憲に後ろ向きの議員がいますし

野党が反対をしても憲法審査会は開催できますが、諸々の配慮によって実質審査が行われないということは過去に何回もありました。

17日に衆院憲法審査会 今国会初も野党反対で実質審議なし - 産経ニュース

日本維新の会の役割

日曜討論 後半国会の対応 与野党が議論 | NHKニュース

日本維新の会の馬場幹事長は「与党には、安定政権であればこそ、国の骨格の部分を議論してもらいたい。国の根幹である憲法改正議論が、最近の国会では全く進んでいない。憲法審査会は積極的に与党の決断で開いてもらいたい」と述べました。

3割、国会役立っていない 若者調査、関心の低さも(共同通信) - Yahoo!ニュース

国会が役に立っていないのは、野党第一党(衆議院の立憲民主党)の反対によって必要な法案審理ができなかったりしているから、という側面は無いのでしょうか?

自民党が反対によるバッシングをものともせず、憲法改正の実質審査を始めることは理論上は可能ですが、現実には行っていませんし、それで良いのでしょうか?

理想はやはり、再度の選挙によって憲法改正の議論を積極的に行う政党が野党第一党になることです。現在行われている特定政党へのバッシングは、こうした点を理解している憲法改正反対者が意図的にやっているのではないかとすら思います。

野党第一党の国会運営におけるプレゼンスの大きさ、その役割と弊害については、もっと広く知られるべきだと思います。

以上

令和の選定過程の政府説明は実態と乖離しているのか?

f:id:Nathannate:20190403123448p:plain

新元号令和の選定過程の政府説明が実態と異なっているのではないか?

こういう報道がありますので、どう理解すればよいか調べた結果をまとめます。

「政府説明、実態と乖離」の時事通信の報道

政府説明、実態と乖離=「令和」の選定過程(時事通信) - Yahoo!ニュース魚拓

政府説明、実態と乖離=「令和」の選定過程:時事ドットコム魚拓はこちら

時事通信の記事が初出で、それが全国の地方紙に載っているのが分かります。

政府による元号選定の手続の流れの説明

新元号の選定について | 首相官邸ホームページ

内閣総理大臣は、高い識見を有する方を選び、これらの方に次の元号とするのにふさわしい候補名(以下「候補名」という。)の考案を委嘱する。(3月14日に委嘱

4月1日の手続として、内閣官房長官が各界の有識者の参集を得て、元号に関する懇談会を開催し、新元号の原案につき意見を求め、その結果を内閣総理大臣に報告することとなっていました。

「政府説明と乖離」とは何か

政府は、はるか以前に有識者に元号候補の考案を非公式に依頼。100に迫る候補を官房副長官補室の金庫で代々保管し、考案者が亡くなるたびに新しい候補を補充してきた。これらを精査し、原案を六つに絞り込んだのは4月1日ではなく先週だった。

 さらに、首相は2月以前に元号候補を見せられ、意中の元号案を事前に固めていたのではないかとの見方が政府内では強い。令和に異論はなかったとの説明に反し、野党出身の郡司彰参院副議長が、意見聴取の場で「季語の入った万葉集(を典拠とする案)はどうなのか」と疑問を呈したことも分かっている。

  1. 3月14日に委属したとする新元号の候補名の考案は、それよりも「はるか以前に」内々に行われていた
  2. 原案を6つに絞ったのは4月1日ではなく先週だった
  3. 令和に異論はなかったという説明があったが、元民進党・現無所属の郡司彰参院副議長が疑問を呈していた

時事通信の記事の中で、「政府説明と乖離」とあるのはこの3つです。
「首相は2月以前に元号候補を見せられ、意中の元号案を事前に固めていたのではないかとの見方が政府内では強い」という部分は憶測が混じっているのでここでは検討対象としません。

ひとまずは、この記事が事実である前提で検討していきます。

「はるか以前」に「官房副長官補」室で「代々」保管

「官房副長官補」室で「代々」保管とあります。

今上天皇陛下が譲位のお気持ちを表明されたのは平成28年(2016年)8月8日です。

それ以降に3名いる官房副長官補が代わったのは、安全保障担当官房副長官補の中島明彦から前田哲への交代しかありません。

これを「代々」とは言わないでしょう。

よって、「はるか以前」は天皇陛下の「お気持ち」表明より前の話になります。

内政担当官房副長官補か

官房副長官補は安全保障担当の他に内政担当外政担当がありますが、このうち改元を扱うのはふつうに考えて内政担当でしょう。

すると、現職以前は民主党政権時代の方も含まれます。

民主党政権時代と言っても、官房副長官補はキャリア官僚が担ってますから、政権交代による影響があったのかはよく分かりません。

「はるか以前」に元号の候補を考えていたことは手続に反して悪いのか?

時事通信の報道が正しいとすると平時から候補名を吟味してきたという話になります。

これは、「手続違反」と評価すべきことなのでしょうか?

元号の選定は、かつては天皇が行っていました。

そして、本来は新元号は天皇崩御の際に決められるものでした。

しかし、現代では新天皇や皇族が元号選定の手続から外れました。

そうである以上、元号について高い識見を持つ者が吟味する期間を確保できず、短時間で決定せざるを得ないという弊害を回避しようとするのは自然だと思われるのです。

その手続は内閣総理大臣が委属したものではないですから、正式な手続に乗っかっているものではありません。

ただ、最終的には現実には正式な手続きに則って元号選定が行われたのは事実なので、そこに問題があるということにはならないはずです。

たとえば、法律の立法過程では原案を国会に提出するのが法的手続ですが、その前には党内で議論しています。それを「非公式だ」といって非難するのはお門違いでしょう。

政府の説明は、あくまでも正式手続に乗っかった後の事について述べています。

昭和から平成への場合

元号選定の手続については昭和54年に閣議決定されていました。

ただ、内閣総理大臣による考案の委属は、かなり後になってからです。

昭和61年10月28日の国会内閣委員会

○政府委員(的場順三君) 御承知のとおり、新元号の選定は大変重要な事項でございます。遺漏なきを、万全を期する必要がございますので、政府としては、昭和五十四年十月の閣議報告で「元号選定手続について」というのを定めておりますが、それに従いまして適時適切に対処すべく現在研究をしているところでございます。
○野田哲君 今のお答えでは全く抽象的なんですが、当時の法案を審議をした三原総務長官の当委員会での答弁などを見ると、新元号の選定のための選定委員会の人選、こういうような問題も議論になっているわけでありますけれども、選定委員会というようなものを設けるのか設けないかは別にいたしまして、学識経験者等に意見を聞くとか、あるいは元号の候補みたいなものを挙げてもらうとか、そういう有識者との相談などはなさっているわけですか。
○政府委員(的場順三君) 元号法には、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」ということに定められておりまして、この法案につきましてのタイミング等は非常に慎重を期すべき事柄であろうと思っております。御指摘の、いろんな考案者の先生方の名前を考えたり、あるいは委員の委嘱の手続をしているのかということでございますが、現在まだ考案者に委嘱するような手続は行っておりません。ただ、そういう委嘱の時期につきましても、諸般の状況を考慮し、遺憾なきを、万全を期しているところでございます。

この間に内々に候補名を検討していたのかは定かではありません。

昭和の時代、内閣総理大臣からの委属はいつからか

【独自】“秘中の秘”元号の選定過程…「平成」考えた人は誰?30年の謎に新資料(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース 

昭和天皇が、亡くなる2年前開腹手術を行った頃の事。首相執務室で、当時の竹下首相と小渕官房長官は3枚の紙を考案者は伏せた状態で見せられたという。
竹下首相は
「うまくやってくれ」
事務方に、一言こう話したという。
その後、1988年9月19日、昭和天皇が大量に吐血。この頃、小渕は
「これが世に出たら大変な事になる」
周囲にこう語り、2つの資料を官邸の金庫にひそかに保管させたという。

昭和62年(1987年)9月22日に昭和天皇が開腹手術を受けたあと以降に、元号の選定手続きが加速したということが伺えます。この時期に、内閣総理大臣からの委属が行われたのでしょうか?

いずれにしても、今回の選定手続きが現行法体系後のものとして異常であるとは言えない気がします。

なお、元号選定手続の公表については、30年非公開としていますが、平成については5年間延長がなされました。

原案を6つに絞った時期と異論について

ここは政府の説明と時事通信の報道と矛盾しない場合として、「考案者から上がってきた候補が元から6つだった」というものが考えられます。

なお、元民進党・現無所属の郡司彰参院副議長が「令和」に疑問を呈していたということについては本当にそうなのかもしれません。そこは、政府側の発表と「実態と乖離」がある可能性があると思います。

ただ、それは「元号に反対した者が槍玉に挙げられるのを避けるため」という見方もできますし、疑問を呈していた者が一人しかおらずそこまで喧々諤々に議論されたということがなかったので、捨象されて当然な程度だったということなのかもしれません。

まとめ:時事通信の報道通りでも問題ないのでは

結局のところ、実際が時事通信の報道通りだったとしても、何ら責められるべき点は無いのではないでしょうか。

問題は、どうして内々にしておかれるべき情報がこうもメディアにリークされているのかということではないでしょうか?

以上

新元号の原案や考案者名を漏洩させたのは誰か?

f:id:Nathannate:20190403003817j:plain

官邸が新元号の原案や考案者名は公開しない方針であったにもかかわらず、新元号発表の翌日にはマスメディアにリークされています。

漏洩させたのは誰でしょうか?

新元号の原案や考案者名「関係者の話などから判明」

元号の原案や考案者についての各社の報道を並べます。

NHKの記事

新元号の原案 政府6案示す | NHKニュース

新元号 6原案中4つは 「英弘」「広至」「万和」「万保」 | NHKニュース

新元号 6案すべて判明 「令和」考案は中西進氏か | NHKニュース

NHKの記事は、誰から聞いたか書いてなかったり、「関係者の話で分かりました」「関係者の話などから」という表現でした。

「関係者」という言葉が気になります。

毎日新聞の記事

 

「英弘」「久化」「広至」「万和」「万保」 新元号原案の全6案判明 - 毎日新聞

なお、毎日新聞は6案の名称については「政府関係者」と「政府」がついてますが、それ以外の事項(考案者名など)は「関係者」という表現になっています。

産経新聞の記事

元号原案「英弘」「久化」、広至、万和、万保も 六つ全て判明 - 産経ニュース

こちらも「関係者」が明らかにしたと書いてます。

朝日新聞の記事

新元号、政府提示6案に英弘・広至など 典拠に古事記も [令和]:朝日新聞デジタル

朝日新聞の記事だけ異様で、「複数の政府関係者」が「朝日新聞の取材に答えた」としています。

まるで朝日がスクープしたと言いたげのようですが、配信時間を見ると別にそんなことはなさそうです。

日経新聞の記事

「令和」考案者は中西進氏 国書・漢籍、3案ずつ (写真=共同) :日本経済新聞

日経新聞も「関係者」です。

東京新聞の記事

東京新聞:新元号 原案全て判明 「英弘」「久化」「広至」「万和」「万保」:政治(TOKYO Web)

東京新聞も「関係者」です。

なお、読売は新元号の原案についての記事がWEB上では見つかりませんでした。

 

「政府関係者」や「政府筋」ではないのか?

普段、報道で目にするのは「政府関係者」や「政府筋」といった表現が多いです。

しかし、今回の報道では「政府」が抜けている報道が多いのが気になります。

「政府」とは、一般的には行政府の側の人間を指す言葉であり、典型的には内閣を構成する閣僚や中央官庁の職員を指します。

ただ、政府 - Wikipediaを見ても分かるように、広義の意味においては、国家統治に関わる立法・司法・行政すべての機関および機構の総称を指す場合もあるようです。

朝日新聞(と毎日新聞)だけが「政府関係者」という表現を使っているのは他紙と意味合いが違うのかもしれません。

よって、関係者ないし政府関係者と言っても、それは内閣の閣僚のみを指すと断定するのはかなり危険であると言えます。

漏洩したのは誰か?新元号の選定に関わる人物たち

そうすると、新元号の選定に関わった人物は誰か?という話になってきます。

新元号選定手続きの運び

こちらの記事でも紹介しましたが、昭和54年10月23日閣議報告によると

  1. 候補名の考案
  2. 候補名の整理
  3. 原案の選定
  4. 新元号の決定

このような流れがありました。

候補名の考案者

官邸は特定個人と元号との結びつきを避けるため非公開としています。

しかし、こちらは現時点で何名かの方が考案者ではないかと報道されています。

新元号「天が決める」=考案者?の中西進氏:時事ドットコム

ただ、考案者ではないかと言われてる中西進氏は「元号は中西進という世俗の人間が決めるようなものではなく、天の声で決まるもの。考案者なんているはずがない」と述べています。

懇談会の有識者

新元号の選定について | 首相官邸ホームページ

上田良一  日本放送協会会長
大久保好男 一般社団法人日本民間放送連盟会長
鎌田薫   日本私立大学団体連合会会長
榊原定征  一般社団法人日本経済団体連合会名誉会長
白石興二郎 一般社団法人日本新聞協会会長
寺田逸郎  前最高裁判所長官
林真理子  作家
宮崎緑   千葉商科大学国際教養学部長
山中伸弥  京都大学iPS細胞研究所所長

マスコミ関係者3名、学術関係者1名、司法関係者1名、民間有識者3名

このような人員構成だったということがわかります。

内閣

内閣総理大臣、内閣官房長官、内閣法制局長官、全閣僚=大臣が、手続において関与しています。

ただ、当然この役職の人間には複数の秘書官らがいるので、そのような者たちの中に情報が入っているという可能性は否定できないでしょう。

衆参両議院の議長及び副議長

内閣だけでなく立法府の人間も新元号の原案について意見をすることとなってました。

現時点での衆参両議院の議長及び副議長の構成員は以下です。

  • 衆議院議長:大島理森(自民党)
  • 衆議院副議長:赤松広隆(立憲民主党)
  • 参議院議長:伊達忠一(自民党)
  • 参議院副議長:郡司彰(※民主党⇒民進党⇒無所属)

「野党の国会議員」も新元号の原案について意見を述べる機会があったという事です。

新元号情報漏れ対策で赤松副議長が官房長官に苦言 - 毎日新聞

「携帯電話を預かる」とした文書に赤松副議長が抗議したということもありました。

しかし、今現在こうして情報が漏えいしていることを考えると、このような措置を考えたのは当然だろうと思いますね(結局は食事会という事実上の軟禁)。

メディアにリークしたのは誰か?

「政府関係者」という用語の理解がかなり幅広い可能性があり、多くのメディアは「関係者」という非限定の言葉を用いているため、「内閣」の人間が漏洩したと即断することはできません。

それにしても、メディアは原案の候補は何があったのか?や、候補名の考案者は誰か?については異様な執念をもって詮索するのに、「誰がリークしたのか?」については触れないのは、一体なんなんでしょうか?

以上

Twitter検索でユーザー名に令和を含むアカウントのツイートの除外方法

f:id:Nathannate:20190402225957j:plain

「令和」で検索すると「〇〇@令和」のようなユーザー名のアカウントのツイートがたくさん出てきます。

「令和」で検索するときに、ツイートの内容は「令和」とは関係なくとも同時に引っかかってくるので、検索結果から除外したい場合があります。

(縁起物だと思って利用されてる方には申し訳ないのですが…)

そのようなアカウントを結果に表示させない方法を紹介します。

Twitter検索から令和を名前に含むユーザーを除外する方法

1検索ワード+2半角スペース+3OR+4半角スペース+5@存在しないアカウント名

ちょっと意味不明かと思いますが、これでOKです。

f:id:Nathannate:20190129195002j:plain

これは「大迫はんぱない」をユーザ名に含むアカウントのツイートを除外した例です。

f:id:Nathannate:20190129195021j:plain

表示されなくなりました。

令和の場合は"令和 OR @yxpbrtghdir"を検索窓に入れればOKです。
※「""」は不要です。これを入れると何も検索結果に出てこないハズです。
※何度も言いますが@の後の文字列はテキトーです。これに限りません。

同様に、reiwaとかにも使えますね。

注意点

注意点は、3番目の"OR"は大文字です。小文字の"or"では機能しません。

5番目の存在しないアカウント名はアカウント名として使える英数字でないとダメ。

つまり、既に存在するアカウント名や、アカウント名として使えない文字列を含んでいるとダメだということです。

存在しないアカウント名はテキトーでOKです。短いと実在するアカウントが引っかかってしまうので、10桁くらい入力すればほとんど大丈夫だと思います。

何で存在しないアカウント名を上記のように入力すると検索結果に出てこないのか?は調べてもよくわかりませんでしたが、知らなくてもまったく問題ありません。

他の便利な検索方法:引用リツイートや特定ワード除外

他にも検索方法をまとめています。

必要があればどうぞ。

以上

「令和の真の意味:原典・元ネタは国書の万葉集ではなく文選」という人へ

f:id:Nathannate:20190402164727j:plain

「令和」は国書である万葉集の梅の花、三十二首の序文から引用されました。

ただ、実は更に遡ると漢籍(中国の古典)の文選に同様の表現を見る事ができます。

さて、『令和の真の意味が文選に書いてある』のでしょうか?

令和の真の意味が漢籍の文選に書かれている?

「令和」はよく考えられた元号である。〜考案者の深慮に感嘆する。〜 | たまき雄一郎ブログ

もし「文選」も典拠だとしたら、実は、漢籍に基づくとする伝統は維持されており、その意味でも、極めてよく練られた新元号だと言えます

誰が発案者か知りませんが、漢字文化圏を俯瞰するスケール感があり、感心する他ありません。

両者を並べてみると、その違いと同時に共通点がよく分かります。 

【文選】530年頃(6世紀)成立

→仲春令月時和気清

【万葉集】780年頃(8世紀)成立

→初春令月気淑風和

8字のうち5字が共通で、違いは以下の3点。

【文選】→【万葉集】

仲春→初春

(春3月の真ん中の月→正月(陰暦2月))

時和→風和

(「時が和らぎ」→「風が和らぎ」)

気清→気淑

(「気は清し」→「気は淑(うるわ)しく」)

大伴旅人は、当時の知識人の常識として「文選」をよく学んでいたんだと思います。ここに漢字文化圏のつながりの深さと奥深さを感じずにはいられません。

衆議院議員の玉木雄一郎氏のブログでは万葉集と漢籍との「違い」をも触れています。

たしかに万葉集の一節は文選を参考にしたのかもしれませんが、梅の花の詩についての文脈ですから、おのずと込められた意味は異なってくるでしょう。

そして、元号選定の方法の伝統からの大幅な乖離を避ける意味合いがあったのではないか、という指摘はその通りではないかと思います。

同様の指摘はロバートキャンベル氏もしています。

原典が国書か漢籍かはどうでもいい

ロバート・キャンベルさん「国書か漢籍か、超えた元号」 [令和]:朝日新聞デジタル魚拓はこちら

典拠となった序文は、詩文集「文選(もんぜん)」にある後漢の張衡(ちょうこう)の「帰田賦(きでんのふ)」を「カバー」した可能性があるとし、「後漢の時代の人々に思いを重ね、目の前にある景色を描いたのではないか」と指摘する。
ー中略ー
 そのうえで「国書か漢籍かということはどうでもよく、国を超えて共有される言葉の力、イメージを喚起する元号だ。元号が孤立しているものではなく、北東アジア文化圏で共有された情操の世界とつながる言葉だ」と評価する。

万葉集を通じて中国の古典について造詣を深めることができれば、それは素晴らしいことだと思います。

それは「オリジナルはどこか?」ということではなく、「共通している価値観は何か?」というものを探るために行うのが吉であるということだと思います。

万葉集の令和は元ネタと同じ意味ではない

万葉集が中国の古典を参考にしている部分があるということは確かです。

ただ、そこに込められた意味は、多少は異なった者が付与されているでしょう。

平成31年4月1日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成31年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、「令和」に決定いたしました。

 『「帰田賦」の中での意味はこうだ、だから元号の令和もそういう意味が含まれているに違いない』という言説は、まぁ想像を逞しくしているなぁということは言えると思います。

参考:張衡の「帰田賦」の一節が"典拠"なら『令和とは、腐敗した安倍政権が倒れ、自民党政権が倒れることを祈ってつけられた和暦』!?/『辞官したのは順帝の時代であって安帝ではない。ここまでこじつけるのは行き過ぎ』というツッコミも - Togetter

「梅の花」は皇太子殿下にふさわしい?

雪後の春 | いせや本店

平成5年6月に皇太子・浩宮徳仁親王がご結婚されたことから、国では各都道府県に一ヶ所ずつ「皇太子殿下ご成婚記念公園」を造ることになり、沼津御用邸記念公園の西付属邸が選ばれて、平成6年3月に整備が終了しました。この皇太子殿下ご成婚記念公園の中心に「梅園」が造られました。梅園としたのは、大正天皇が梅の花を好まれ、御製の漢詩「歳朝<元旦のこと>皇子に示す」が、梅の花にちなんだものであったことによります。

皇太子殿下と梅の関係について調べたら、こういうのが見つかりました。

まぁ、梅の花というのはいろんな方に親しまれてますし、皇室行事の中でも度々登場しますし、万葉集の中でも梅の花を詠んだものは多いですから、偶然に過ぎないのだろうとは思います。 

ただ、新元号の原案について協議した閣議は「梅の間」で行われたと安倍総理がTV出演時に言っていたように、偶然ですが何かの力を感じてしまいますね。

「令和の典拠は万葉集」で間違いはない

「万葉集は中国の古典の影響を受けている」

これは正しいです。中国メディアによってもこの点は報道されています

ただ、彼らでさえも、「令和の意味は中国古典の通りである」とは言ってません。

また、同じ事を言っている部分があっても、それは普遍的な価値を表現しているものであり全体が同じ意味であると言うことにはならないハズです。「令和」を考案した方や選定に関わった方が、そういった側面を認識していなかったとは思えません。

それは「依存」ではなく、「本歌取り」されたもので、日本風に「昇華」されたものであると言っても間違いないのではないでしょうか。

以上