事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「菅義偉官房長官が女性宮家を推進している」という主張について

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菅義偉官房長官が女性宮家・女系天皇を推進しているという主張があります。

菅官房長官の発言を振り返っていきましょう。

水間政憲のブログとyoutube動画

●緊急拡散宜しく《菅官房長官が「女性宮家」推進を明言、保守派国民は総力を結集して阻止しなくては日本崩壊です》 - 【水間条項ー国益最前線ジャーナリスト水間政憲のブログです。】

■一連の反日法案「移民法」(特定技能第2号:更新可、家族残留可)や
「日本分断法」(アイヌ新法)、種子法、水道法等の
国家解体に直結する法案を推進していた菅官房長官が、
究極の国家解体に直結する「女性宮家」法案の実現を
「新天皇の即位後速やかに議論」(19/03/18)と、予算委員会で明言しました。

菅官房長官は、女性宮家などについて
「新天皇の即位後、速やかに議論を始める」意向を表明し
「皇族数の減少等については、皇族方のご年齢からしても
先延ばしすることはできない重要な課題である」と認識を示して
「(新天皇が)ご即位された後、というふうに考えています」と、
即位後即座にすることを明言しました。しかし、今上陛下のお姉さまの照宮成子内親王と東久邇盛厚王と御結婚され三名の男子が誕生されており、それぞれ皇太子殿下より天皇陛下の血が濃いことは、国民にはいまだ認知されてません。また、その三方には男子のお孫さんが三名いらっしゃいます。それらの家族から皇族復帰いただければ、皇位継承問題は解決するのです。皇統は一天皇家族の継承によって維持されてきた訳ではありません。速やかにGHQによって皇籍を奪われた皇族の中から男系男子のいらっしゃる方に戻って戴ければ、皇位継承問題は一気に解決するのです。

この「女性宮家」は、2千数百年の我が国の歴史の崩壊を意味する
「国家解体法」そのものであり、菅官房長官が我が国を解体しようとしている事を
国民は認識する必要があります。

菅官房長官は、日本語をまともに喋れない滑舌の悪さは、国民周知のことですが、
そのような菅官房長官が「美智子皇后陛下」の意向であっても
国民は皇統を破壊することなど認めておりません。

  1. 女性宮家は「国家解体法」である
  2. その議論を菅官房長官が推進しようとしている
  3. 2019年3月18日の予算委員会で菅官房長官は発言した

どうも初出は水間政憲氏のブログとYoutube動画のようです。

女性宮家 推進 菅 - Twitter Search

「女性宮家 推進 菅」で検索しても、このような評価をするのは3月18日以降です。

同様の主張は動画でも行っていることが分かります。

女性宮家推進がなぜダメなのか?

女性宮家創設の問題点と小室圭:男系男子による皇位継承のために

上記の記事でもまとめましたが、旧皇族の皇籍復帰や養子縁組など、安定的な皇位継承の方法はいくらでもあるのに、歴史上例のない女性宮家創設は皇統を破壊することに繋がりかねないので、問題視されているのです。

旧皇族に皇位継承をするに相応しい男系男子が居るということは【皇室制度に関する有識者ヒアリング平成24年(2012年)4月10日】において百地章教授が示しています。

水間氏も2017年にひと目でわかる「戦前の昭和天皇と皇室」の真実【電子書籍】[ 水間政憲 ]を出版して指摘しています。

「菅義偉官房長官が女性宮家推進」?の国会参議院予算委員会

平成31年年3月18日 第198回国会参議院予算委員会(第十一回)
参議院インターネット審議中継 ※議事録はUPされていません。

片山:天皇陛下の退位特例法の成立にあたっては、国会の附帯決議で「特例法の施行後速やかに安定的な皇位継承策の検討を求める」ことがつけられました。特例法の施行日はいつかというとですね、天皇陛下が退位される4月30日になります。そうすると検討はいつから始めるのか?ことしのうちなのか?それとも秋篠宮さまの立皇嗣の礼が終わる1年後まで待ってからなのか。どのようにお考えになっているのか教えて頂けますでしょうか。

菅:安定的な皇位の継承を維持することは国家の基本的かつに関わる極めて重要な問題であり、しかし、この男子継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなど踏まえながら慎重かつ丁寧に検討を行う必要があるというふうに思っております。また女性皇族の婚姻等における皇族数の減少等については、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重大な課題であると認識をいたしております。この課題への対応等については様々な考え方、意見があり、国民のコンセンサスを得るには十分な分析・検討、と慎重な手続が必要だというふうに思います。ただ、いずれにしろ今委員からご指摘ありましたように衆参両委員会で可決された附帯決議の趣旨を尊重してしっかりと対応していきたいと思っております。

これを見ると、菅官房長官の発言中には「女性宮家創設に向けて推進する」などのような文言はありませんね。

ところで、「国会の附帯決議」とは何でしょうか?

附帯決議とは、法的拘束力はないが、政府はそれを尊重しなければならないとする事実上の法規範となる、条文とは別個の立法機関の決定です。

附帯決議は政治的な妥協の産物として玉虫色の内容になっていることが多いです。

天皇の退位等に関する皇室典範特例法の附帯決議

天皇の退位等に関する皇室典範特例法 法律第六十三号(平二九・六・一六)】とは、天皇の代替わりについて規定した特別法です。

この法律が成立するにあたって、衆参両議院において以下の附帯決議がなされました。

天皇の退位等に関する皇室典範特例法案:参議院

衆議院附帯決議(平成二九年六月一日)参議院附帯決議(平成二九年六月七日)
一 政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること。

確かに「女性宮家」という単語が見えます。 

「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」

この一文の理解は結構やっかいです。政治的な駆け引きのあとが見られます。

「安定的な皇位継承」と「女性宮家の創設等」の分離

まず、「安定的な皇位継承を確保するための課題」と「女性宮家の創設等」とが、別建てになっているのか、そういう意識はなく並列に表記しているだけなのか、という問題があります。

女性宮家を創設しても、それだけでは男系男子による皇統の維持はできません。

ですから、皇位継承の話と皇族減少の話を切り分けて論じるべきだという意見が国会質疑においても議員側の主張として見られました。

そうではなく、皇位継承の問題としても女性宮家創設の話を扱う、という意見の者も、世の中には居ます。

次に、後者の『女性宮家の創設「」』となっている部分。

法律の規定に読み慣れている者なら分かりますが、例示列挙です。

つまり、「女性宮家」は単に、ありうる選択肢の一つであって、それ以外の方法を検討することは、まったく妨げられていないということになります。こちらは明確に理解できます。

さらには、附帯決議があるために、菅官房長官の個人的な意思とは無関係に、政府として検討はしていかなければならないという事でもあるのです。

皇室典範特例法の附帯決議の趣旨とは

以上のような内容の附帯決議なので、菅官房長官が「衆参両委員会で可決された附帯決議の趣旨を尊重して」と言ったのは、何らの手段を限定したものではなかったと言えます。

そもそも3月18日の片山大介議員の質問も「安定的な皇位継承策の検討を求める」についてのみ言及していますから、専ら女性宮家の創設「のみ」を菅官房長官が推進することを目指している、と理解することは、この答弁からは無理があろうかと思います。 

附帯決議が決定された日の衆参の議事録や6月1日の議院運営委員会を見ても、女性宮家創設だけを検討すべきであるという議論にはなっていません。

論理的には、皇位継承の問題は皇族の減少の問題とリンクしています。

ですから、安定的な皇位継承のための施策を検討する中で、皇族の減少の問題は解決できるのであって、「女性皇族の減少」 というような問題設定を敢えてする意義は無いと言えます。

にもかかわらず、菅官房長官が「女性皇族の婚姻等による皇族数の減少等に係る問題」というように、「付帯決議の中で女性宮家と皇位の安定(継承)は分かれて書かれている」として、女性宮家と皇位の安定継承の議論は別物との認識のもとに何度も答弁しているのは、私も不満です。

ただ、これは民主党野田政権時代の平成 24年 10 月5日に報告された【皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理】において、女性宮家の問題は「緊急度が高い」ために安定的な皇位継承の問題とは切り離されていたことを踏襲しているという見方もでき、これだけで菅官房長官の個人的意思と見るのは難しいような気がします。

その後の菅官房長官の発言

2019年3月18日:皇位の安定継承策「即位後、時間を待たずに」 官房長官: 日本経済新聞

2019年5月1日:官房長官 女性宮家創設など「慎重に検討」 | NHKニュース

「女性宮家の創設など」という文言で報じられており、専ら「女性宮家のみ」を推進するかのようなニュアンスは読み取れません。

まとめ:水間氏の思惑は…

水間氏が別の取材によって、菅官房長官の見解を確認しているというのならまだしも、彼は3月18日の答弁のみを挙げて「菅さんが女性宮家推進」と言っているのですから、違和感を覚えます。

ただ、安定的な皇位継承の問題と皇族数の減少の問題と分けて考える必要はないのであって、その限りで、両者を分けて考えているように見える菅官房長官の発言には不満です。

水間氏が菅さんを「女性宮家推進」と言っているのは、菅さんが皇位継承の問題と皇族数の減少への対処の問題を切り離して語っていることが理由であるとすれば、それは一理ある指摘だと思います。

(ただ、それは3月18日以前から言っていたのであって、なぜそのタイミングで言い出したのかは本当に謎でしかないわけではありますが…)

以上 

女性宮家創設の問題点と小室圭:男系男子による皇位継承のために

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JACAR Ref.A15070950800:公文類聚・第十三編・明治二十二年・第六巻

女性宮家とは何でしょうか?それは何が問題なのでしょうか?

基本的な事項を整理していきます。

女性宮家とは?どういう意味か

女性宮家」は歴史上存在したことのない架空の状態を指す名称です。

敢えて言えば、夫の居る女性皇族が当主である、皇室に属する家系のことです。

天皇・皇族以外の者と婚姻をした皇族女子は、古来は皇族の身分を保ちましたが、現行法では皇籍を離脱することとされました(皇室典範第12条 ) 。

理由は、皇位継承資格を男系男子に限ったため(男系であれば女帝は認められていた)

女性宮家は、皇族女子が天皇・皇族以外の者と婚姻をしたとしても、皇室に留まることとする制度であると言えます。

なぜ女性宮家の創設が提案されたのか?

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皇室の構成図 - 宮内庁

現在の皇室の構成は上図のようになっています。

しかし、現行制度のまま数十年後になると、皇室は以下のようになります。

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女性皇族が既婚になったと仮定した場合の現実的な構成です。

非常に人数が限られてきてしまうというのが分かるでしょう。

現行皇室典範では、民間人と結婚した女性皇族は、皇族ではなくなるからです。

悠仁親王殿下と安定的な皇位継承

すると、このままでは悠仁親王殿下と同世代の皇族が居なくなるのが分かります。

また、その次の世代の御子にとっては、悠仁殿下と母親と兄弟姉妹以外に皇族が居ない、という状況が待ち受けています。これでは成育環境としてもよくありませんし、同じ皇族として相談できる相手が居ないという状況に陥らせることになります。

実務的な意味においても深刻で、悠仁親王殿下が御即位される頃になると、皇族としての公務を行う人が居なくなり、皇室の存在感が薄れていくということになりかねません。
※追記:皇族としてやらなければならない公務が決まっているということは無い。皇族が何らかの活動をすればそれが公務になっているというだけの話。天皇の代理は皇太子や皇嗣が行うが、こちらは必須。

ですから、女性皇族が婚姻後も皇室にとどまることが出来る制度として女性宮家という方法が提唱されたのです。

ただ、女性宮家の当主たる皇族女子やその子孫に対して皇位継承権を付与するということは直ちには連動しません。それは別の話です。

男系女子への皇位継承

ですが、皇統に属する皇族(男系)も、どんどん少なくなっていってしまいますので、安定的な皇位継承についても対策を練らなければなりません。

その方法の一つとして「男系女子に皇位継承権を与えること」が挙げられています。

女性皇族であっても、男系に属する者であれば、皇室の伝統に反しないからです(現行法体系上は不可能だが)

では、女性宮家に皇位継承権が付与されるとどうなるでしょうか?

これが、非常にいかがわしい展開をはらむものになっているのです。

女性宮家と女系天皇の違い、関係

女性宮家を作って皇位継承権が与えられると、民間男性との間の子供にも皇位継承権が与えられることになりかねません。

すると、神武天皇以来、男系男子によって維持してきた皇統が破壊されます。

皇統」とは「父方の尊属(祖先)を辿ればその全てが神武天皇を祖先に持つ者」によって皇位継承が行われてきたという事実そのもの、或いはそうした背景を持つ皇族、と言えます。

そうではない天皇を「女系天皇」、そのような皇位継承を「女系継承」と呼びます。

女系継承についてサザエさんでわかりやすく図示したもの

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「サザエさん」における磯野家の視点で表すとこの通りになります。

青枠が磯野藻屑源素太皆(いそのもくずみなもとのすたみな)に連なる男系です。

赤枠で囲われたキャラが女系です。男性であっても女系になることがわかります。

女性宮家は、この図で言えば「なぎえ」や「サザエ」が該当します。

その子供の父親を辿ってもスタミナに辿り着けません。

このようにして、安定的な男系男子による皇位継承のためには、単に女性宮家を創設するだけでは延命策にしかならず、まったく根本的な解決にはならないのです。

女系天皇はなぜ悪いのか:反対すべき理由・根拠

男系男子ではない者への皇位継承(女系継承)がなぜ悪いのか?の理由・根拠については女系天皇を避けるべき理由で詳細に述べていますが大きく分けて3つあります。

  1. 皇統そのものであるのが男系男子による皇位継承であり、歴史上途絶えたことがないものを途絶えさせてしまう(不可逆性)
  2. 「女系継承」なるもので続いてきた何らかの系統は、全世界を見ても存在しない
  3. 女系天皇が誕生すると喜ぶ存在が暗躍していること

女性宮家の創設が直ちに女系天皇を誕生させることにはなりませんが、理論上はその可能性を開いてしまうという事態になります。

女性宮家創設は小室圭が皇族になることになりかねない

皇室典範

第十五条 皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。

現行法体系上は、民間人男性が皇族になることはありません。

しかし、女性宮家を創設して皇族女子が婚姻後も皇族として公務を行うとすると、配偶者の夫の扱いが問題になります。夫だけ蚊帳の外に置くというのでしょうか?

というところから、徐々に「容認しても良いだろう」という空気になってしまい、最終的に民間人男性が皇族になるということに繋がってしまいます。小室圭が皇族になることになりかねないのです。

ですから、そうなる前にその可能性ごと潰しておきましょうというのがこれまでの制度であり、先人の叡智であったと言えると思います。 

 

まとめ:皇室典範特例法の附帯決議に基づく検討へ

女性宮家はなぜ提唱され、どういう問題があるのかを簡単に書きました。

しかし、天皇の譲位と新天皇の即位に関して定めた天皇の退位等に関する皇室典範特例法の附帯決議においては、以下の附帯決議が付与されています。

衆議院附帯決議(平成二九年六月一日)参議院附帯決議(平成二九年六月七日)
一 政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること。

女性宮家の創設「等」について、令和元年5月1日以降に検討を行うということについて決議されています。

安定的な皇位継承に関する議論は、これからが本番になるということです。

それに備えて、関係者は皇室の伝統にかんして正確な理解を身に着けなければなりませんし、国民としてもそうした者の意見を支持しなければなりません。

旧皇族の皇籍復帰や婿養子等の方策は採れないのか?伝統との整合性はどう取れば良いのか?については以下で論じています。

参考:皇室 カテゴリーの記事一覧 

以上

消費税増税法の成立経緯と麻生太郎内閣:附則104条と民主党政権時の三党合意

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oldtakasuさんによる写真ACからの写真

消費増税法の成立経緯はどうなっていたでしょうか?

所得税や法人税についても消費増税法では関連していますが、ここでは一般の消費税率が8%、10%に上がったことに焦点を絞り、それ以外の法制については捨象します。

いわゆる消費税増税法(消費増税法)の成立経緯概観

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11月30日に作成された事務局説明用の資料において、消費増税法が作られた経緯、三党合意でどう法案が作成され・修正されたのかがまとまっています。

こうしてみると、事の発端は民主党ではなく、自民党政権(麻生政権)だったことがわかります。

いわゆる「三党合意」は、この後になされたものです。

平成21年:社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 附則104条

いわゆる「消費増税法」と呼ばれているものは、【社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 法律第六十八号(平二四・八・二二)】です。

その法律が成立する前に、自公政権(麻生内閣)時代の「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム(平成20年12月24日閣議決定)」を受けて平成21年に【所得税法等の一部を改正する法律 法律第十三号(平二一・三・三一)】が成立しています。

その法律の附則104条において、将来的に消費増税をすることが盛り込まれたのが、現在の消費増税の動きのすべての発端です。

附則104条と麻生太郎

所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)(抄)

(税制の抜本的な改革に係る措置)
第104条 政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとするこの場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
2 前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予測せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。
3 第1項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。

ー省略ー
消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。

麻生太郎オフィシャルサイト

いわゆる附則104条を麻生政権において成立させたというのは本人が述べています。

このことはいろんな方が既に指摘している通りです。 

附則104条はその後の社会保障・税一体改革大綱(平成24年2月17日閣議決定)でも、社会保障制度改革国民会議(平成25年8月6日)の報告書でも引かれていて、いわゆる消費増税法が成立した原因であるというのは間違いありません。

民主党野田内閣と消費増税法案制定

附則104条には「平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」とあるように、期限が決められています。つまり平成24年3月末までに法整備しろということが書いてます。

麻生政権は平成21年9月16日までであり、その後は民主党政権になりました。

消費増税法が衆議院に提出されたのは平成24年3月30日(第180回国会における財務省関連法律 : 財務省)ですから、野田総理自身の見解はともかく、民主党が性急に消費増税をしようとしたという事実は無い、ということになります。

小泉政権時代から与謝野馨らが増税方針であり竹中平蔵が反対していたというのは有名な話ですが、メディアではほとんど報道されないのは本当に謎です。

安倍総理叩きが行われるのに、消費増税関係の者はほとんど叩かれません。

たまに「麻生叩き」が発生してもくだらない発言の揚げ足取りで終わりです。

さて、消費増税法が作成・成立するにあたって行われたのが三党合意です。

民主党政権時の三党合意とは

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三党合意とは消費税に焦点をあてるならば、消費増税法、つまり【社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 法律第六十八号(平二四・八・二二)】を作成することと、衆議院提出後に議論をして条文修正をすることを合意したことを指します。

消費税関係の大きなスケジュールと三党合意の位置づけは以下です。 

  1. 平成24年3月30日 法案提出 第180回国会における財務省関連法律 : 財務省
  2. 平成24年6月8日~15 日 民主・自民・公明の3党で実務者協議
  3. 平成24年6月15日 税関係協議結果(合意文書)
  4. 平成24年6月21日 三党合意の確認書(上図) 
  5. 平成24年6月26日 衆議院修正案
  6. 平成24年7月13日 参議院付託
  7. 成立日:平成24年8月10日 成立法律
  8. 公布日:平成24年8月22日
  9. 施行日(増税日):平成26年4月1日(別段の定めがあるものを除く) 

三党合意と谷垣総裁

石原伸晃が当時の自民党幹事長だったために三党合意で名前が出ることが多いですが、当時は谷垣禎一が自民党総裁であり、増税方針だったということは忘れてはなりません。

民主党増税の協力者、谷垣禎一総裁
谷垣氏、「消費税10%必要」 - ライブドアニュース

しかも、谷垣さんは東日本大震災を理由に増税するということを言っており、多方面から非難されていました。

被災者を苦しめる自民党谷垣総裁の増税 | 上念司 Facebook

【iRONNA発】大地震を利用する増税派の悪質な手口を忘れるな 田中秀臣・上武大学ビジネス情報学部教授(1/6ページ) - 産経ニュース

谷垣氏の増税希望方針は、安倍政権以降も変わっていません。

谷垣氏「安心して消費税をいただけるように」 :日本経済新聞

民主党との政治駆け引きでやむを得ず合意せざるを得なかったのか?

むしろ谷垣さんの方から民主党に対して三党合意の履行を求めているのが分かります。

テキスト:谷垣禎一総裁 定例記者会見 | 総裁記者会見 | 記者会見 | ニュース | 自由民主党

まとめ:消費増税については「民主党ガー」は通用しない

  1. 現在の消費増税路線は麻生政権時代の所得税法等の一部を改正する法律附則104条が発端
  2. 民主党政権時の自公民三党合意は民主党主導というわけではなかった
  3. 麻生さんは三党合意以前から消費増税路線
  4. 麻生さん・谷垣さんは安倍政権以降も増税方針

消費増税については「民主党ガー」は通用しません。

以上

【ライブ配信リンク】天皇陛下の御退位・皇太子殿下の御即位に伴う式典を見る方法

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天皇陛下の譲位・皇太子殿下の即位の式典をネットで見れる場所のリンクを貼ります。

※追記:10月22日の即位礼正殿の儀の時間帯やネット配信の場所はこちら即位の礼、即位礼正殿の儀の時間帯とネット配信の視聴方法

天皇陛下の御退位・皇太子殿下の御即位に伴う式典のライブ配信をネットで見る方法

首相官邸のYoutubeチャンネルで天皇陛下の御退位・皇太子殿下の御即位に伴う式典のライブ配信を見ることができます。

新元号発表の際にはTwitter,インスタグラム、フェイスブックでもライブ配信をしていたようですが、今回は今のところ、Youtubeチャンネルのみでの配信のようです。

なお、譲位・即位の日のみならず、これに関連した儀式等が今後も行われます。

首相官邸HPの以下のページにまとまっています。

天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式等 | 首相官邸ホームページ

民放の特別番組の配信

TBS NEWS

儀式そのものではなく、関連する内容の特別番組もネット配信しているところがあります。とりあえずTBSのリンクを置いておきます。

スケジュール:退位礼正殿の儀、剣璽等承継の儀、即位後朝見の儀

平成31年4月30日及び5月1日に行われる御退位及び御即位関連式典について | 首相官邸ホームページ

4月30日(火・休) 17:00~(10分程度)
退位礼正殿の儀
 天皇陛下の御退位を広く国民に明らかにするとともに、天皇陛下が御退位前に最後に国民の代表に会われる儀式

5月1日(水・祝) 10:30~(10分程度)
剣璽等承継の儀
 御即位に伴い剣璽等を承継される儀式

11:10~(10分程度)
即位後朝見の儀
 御即位後初めて国民の代表に会われる儀式

儀式は日を跨いで3つ、それぞれ10分程度行われるとのことです。

報道では「譲位」と言ってほしい:皇室典範特例法との関係

天皇の代替わりの儀式の名称について、「譲位」と「退位」が使われています。

天皇陛下は何度も「譲位」と仰せになられていますが、報道は「退位」です。

呼称がブレてるのは『皇統の継承の正統性』の問題と『現行法体系との齟齬』の問題との調整があるからです。

前者からは譲位しかあり得ませんが、後者は憲法と皇室典範の縛りがあります。

なので【法的名称は退位だが事実としての儀式名は譲位であるべき】と思います。

この件でモヤモヤしている方もいらっしゃるかと思いますので以下にまとめました。

以上

悠仁親王殿下の中学校に刃物で50代男長谷川薫容疑者逮捕:建造物侵入と脅迫罪の成立について

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秋篠宮悠仁親王殿下が通学されているお茶の水女子大付属中において、授業で教室が開いていた間に、悠仁親王殿下の机に刃物が置かれていた事件の容疑者が逮捕されました。

悠仁親王殿下の中学校に刃物で50代男長谷川薫容疑者逮捕

悠仁さま中学校に刃物事件で50代男逮捕 建造物侵入の疑い | NHKニュース 

東京・文京区の中学校で秋篠宮ご夫妻の長男の悠仁さまの机に刃物2本が置かれていた事件で、警視庁が事件に関わった疑いがある56歳の男を神奈川県平塚市内のホテルで見つけ、建造物侵入の疑いで逮捕しました。警視庁は事件の詳しいいきさつを調べることにしています。

逮捕されたのは、住所、職業ともに不詳の長谷川薫容疑者(56)です。

また、他の報道では京都在住であるという情報もあります。

建造物侵入と脅迫罪の成立について:害悪の告知

男は建造物侵入罪の容疑で逮捕されていますが、脅迫罪は成立するのでしょうか?

秋篠宮悠仁親王殿下の机に刃物:お茶の水女子大付属中で 

こちらの記事でも書きましたが、「害悪の告知」は黙示的であってもよいとされていますから、はっきりとしたメッセージでなくとも、その内容が読み取れれば成立します。

害悪の告知が脅迫にあたるかは、相手方の属性や公知の客観的状勢に照らして普通一般人の誰れもが畏怖を感ずるものである必要があります(最判昭和29年6月8日刑集8巻6号846頁参照)。

判例上は「村八分の決議をして対象者が知った」ことや、『「出火お見舞い申し上げます。火の元にご用心」と書いたハガキを特定人宛てに投函して特定人が受領した』ことが脅迫罪とされています。

京都の50代男を逮捕 悠仁さまの中学に侵入 容疑認める - 産経ニュース

刃の部分がピンク色に塗られた果物ナイフのような2本の刃物が、アルミ製の棒に粘着テープで固定された状態で、悠仁さまの机と隣の机にまたがるように置かれているのを教員が見つけた。

「中学校において、特定人が不知の間に、刃物の刃部分をピンク色に塗った状態で特定人の机に置く行為は、当該特定人の身体を刃物によって傷害する旨を黙示的に告知している」というような評価になって、犯人の行為は「害悪の告知」の実質を備えているような気がします。

しかし、それだけでは脅迫罪が成立するとは言えません。

悠仁さまへの脅迫罪が既遂になった=結果が発生したか?

脅迫罪は被害者が告知の内容を知らなければ既遂になりません。

脅迫罪には未遂罪がありませんから、被害者不知のままであれば罪は不成立です。

たとえば脅迫文を封書で送りつけても、相手方は名宛人不明だから中身を見ないで破いて捨てた、というような場合には脅迫罪は成立しません。

さて、本件では刃物は「教員が見つけた」とあります。

悠仁さまが見つけたわけではありません

大審院判例大正8年5月26日(刑録25・694)では、脅迫状を人の発見しやすい掲示場屋根の棟竹の端に掛けておき、これを持ち帰った第三者を通して相手方がこれを閲読したときは脅迫罪が成立するとしました。

状況としては似ていますが、悠仁殿下が直接刃物を見たかは不明です。

事件の存在を「メディアの報道によって知った」という場合には、成立しないような気がします。

「学校において教員から事件の事実を伝えられた」という場合にも、どうなるかはよくわかりません。

悠仁殿下が教員等から事件の事実を伝えられた上で、直接刃物を見た、というような場合であれば成立する可能性はあると思いますが、この辺りは情報が出てこないと思われますので起訴段階にならないと分からないでしょう。

まとめ:ナイフ男は起訴して実刑判決にしてほしい

とにかく、早いうちに捕まって良かったです(身代わりでなければ)。

背後関係が無いかどうかも、しっかりと洗ってほしいです。

建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金ですが、宣告刑は年数はともかく執行猶予などつけずに懲役刑の実刑にしてほしいと思います。

以上

水間政憲が青山繁晴をパクリ非難:旧皇族の東久邇宮家の男系男子という事実について

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皇室典範に関する有識者会議 報 告 書

青山繁晴氏が旧皇族(旧皇族の子孫)に男系男子が少なくとも5名いらっしゃるという発言をしたことについて、水間政憲氏が「パクリ」であると指摘しています。

講演会で宮家の名前を言おうとしたことを「商売保守」のように言う人も居ます。

旧皇族に関する各所の発信を整理します。

なお、この問題について情報を整理した先駆者は以下

青山繁晴さんのパクり騒動と「代襲相続人」探しの話 「悠仁親王殿下と同世代に5名の男子がいる」 | 以下略ちゃんの逆襲 ツイッターGOGO

DHC虎ノ門ニュース:青山繁晴が「旧皇族に男系男子5名」

この発言をしたのは大手メディアが名前を書かない【DHC虎ノ門ニュース】というネット番組の4月1日月曜日の放送においてです。当該番組はアーカイブが消されているので、それを元に書き起こしをしている所の記述を引用します。

青山繁晴さんのパクり騒動と「代襲相続人」探しの話 「悠仁親王殿下と同世代に5名の男子がいる」 | 以下略ちゃんの逆襲 ツイッターGOGO

特に総理が財政金融委員会や予算委員会で、まるで「女性宮家」を作るかのようなことをおっしゃったという重大事態なので、本当は水面下で何が起きているかという話は、すいませんが独立講演会でないと言えないんで。

あとね、オフレコだけじゃあれなんで、ここでみんなの前ではっきり言っておきますが、皇位継承が不安定だから「女性宮家」うんぬんと言っている人が多いでしょ、政治家の中でもいますよね、従者の中にもいるわけですけど。実際はですね、悠仁親王殿下と同年配の男子の方が廃絶された11宮家の中にいらっしゃいます。これ僕は自分で調べてたんですけど、もう一度、手段は言えませんが、ぜったい間違いのない方法で、調べ尽くしました。そうすると、はっきり何人てわかってますけど、全部は言えないけれど、少なくとも5人以上いらっしゃる。若い、とても若い皇位継承資格を本来お持ちの男子が
ー中略ー

独立講演会では、どの宮家にいらっしゃるか僕の責任で申し上げます

  1. 悠仁親王殿下と同年配の男子の方が旧宮家に少なくとも5名居る
  2. 青山繁晴氏が独自に調査した
  3. 宮家の名前は虎ノ門ニュースでは言えないが、独立講演会では言うつもりである

この発言に対して「パクリ」であり「ビジネス保守」と言ったのが水間政憲氏です。

水間政憲の「青山繁晴パクリ非難」

◎緊急拡散希望《パクりの青山繁晴氏よ虎ノ門ニュースで謝罪訂正せよ》
2019年04月12日 01:22 h ttp://mizumajyoukou.blog57.fc2.com/blog-entry-3047.html

水間氏によるパクリ非難の初出は上記ですが経緯が分かる記事を以下引用します。
※水間氏のブログでは「(転載フリー:条件全文掲載)」とありますが、必然性の無い箇所の転載は無駄ですし逆に法的リスクがあるため一部引用します。

●超拡散宜しく《青山繁晴参議院議員のパクりは、日本の国益を毀損する海外の「パクり」を増長させることを認識せよ》
2019年04月20日 14:18 h ttp://mizumajyoukou.blog57.fc2.com/blog-entry-3052.html

◆3月19日、大塚耕平参議院議員
ソ連時代の「北海道占領計画書」を提供するため面談、
そのとき『ひと目でわかる「戦前の昭和天皇と皇室」の真実』に記載した
皇室の家系図、とくに東久邇家の家系図を重点的にブリーフィング

3月20日に大塚耕平参議院議員が財政金融委員会で
「東久邇家に照宮さまの御子様が三代に亘って男子がいる」ことを
問い質したことから、一気に世論が過熱したことは、皆様方もご承知の通りです。

◆3月28日、チャンネル桜“Front Japan 桜”に出演して東久邇家の家系図を詳細に解説。
https://youtu.be/xxDU5XnzzSc?t=3542

◆4月1日、青山繁晴氏が虎ノ門ニュースで、
唐突に「悠仁親王と同世代に5名の男子」の存在を告知し、
詳細は独立講演会(5000円)で明らかにしますと金儲けの宣伝

水間氏が大塚耕平議員に旧皇族の男系男子の存在についてレクチャーをして、それを元に質疑をしていたということですね。

旧皇族である東久邇宮家の男系男子については2017年3月17日に発行された「ひと目でわかる「戦前の昭和天皇と皇室」の真実 水間政憲」において書かれており、5名というのも一致しているというのです。

他のブログ記事や水間氏の動画を合わせ読むと、どうも、この書籍発行前に東久邇宮家に男系男子がいらっしゃることについて詳しく言及した者はいないので初出は自分であり、青山氏はパクった挙句、大塚耕平議員の国会質疑で公知のものとなったハズであるのに、それを自分の講演会で金儲けのために利用している、という非難をしているようです。

※「一気に世論が過熱した」とありますが、少なくともツイッター上で「東久邇 男子」「旧皇族 男系」で検索してもメディアの記事はまったくヒットしませんし、新聞で報じているものを見たことがありません。

大塚耕平参議院議員による国会質疑:東久邇宮家に男子が健在

第198回国会 参議院財政金融委員会第5号平成31年3月20日

○大塚耕平君 宮内庁にお伺いします。成子内親王と東久邇宮盛厚様の系譜に男子が随分いらっしゃるということは、認識として正しいでしょうか。
○政府参考人(野村善史君) 昭和二十二年に皇籍離脱をされた方々の段階については承知をしておりますけれども、その子孫の方々につきましては具体的には承知をしておりません。
○大塚耕平君 それでは、調べて一度回答してください。私の存じ上げている限りでも、内親王と東久邇宮様の系譜にもう三代にわたって男子が今も御健在であると、かなりの人数であるというふうに理解をしております。

ー中略ー

○大塚耕平君 宮内庁に最後にもう一回聞きます。成子内親王と東久邇宮盛厚様が御結婚されて、東久邇宮様は皇籍離脱をされた宮家でありますので、その系統に男性がもしいらっしゃるとすれば、かなり血統的には天皇家に近いという理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(野村善史君) 血統的に近いということは、その親等をどのように数えてみるかということによろうかと思いますので、その数え方次第によるというふうに考えます。
○大塚耕平君 終わります。

まず、国会質疑という場であるからといって、議員が質問の前提としている事実が真実であるという担保がなされているわけではありません

宮内庁の政府参考人は「承知をしておりません」と言っているので、この質疑だけでは「東久邇宮家に男系男子が居る」ということが明らかになったとは言えないのです。

単に、大塚議員がそのような認識でいる、ということに留まります。

当たり前ですよね。たとえば週刊誌のデマ記事を元に質疑すれば、それが事実になるなら、とんでもないことになりますからね。 

ですから、大塚議員の国会質疑によって「東久邇宮家に男系男子が居る」ということが広く一般に知れ渡ったと評価するのはできないということになります。

すると、「大塚議員が国会質疑して公になったのに虎ノ門ニュースで宮家の名前を言わずに講演会でだけ言うのは金儲けだ」ということにはならないわけです。たとえ東久邇宮の名前を言うにしてもです。

単なる「事実」には著作権は無い

著作権法(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
ー省略ー
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

事実の伝達に過ぎない雑報や時事の報道は著作権に該当しないという法律があります。

また最判平成13年6月28日 平成11(受)922(江差追分事件)の判決文はこうあります。

最判平成13年6月28日 平成11(受)922

【要旨2】既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。

翻案権侵害についての判例ですが、 「事実や表現それ自体でない部分」は、たとえ既存の著作物に依拠して創作されても、著作権法違反ではないという判断が為されています。

さらに、月刊パテント2013年11月号著作権法の守備範囲:高部眞規子判事の説明では、「歴史上の事実それ自体は著作権の保護対象にはならない=著作物にはならない」ということが第一に説明されています。

ただ、歴史上の事実の記述であっても、記述全体の中でのその事実の位置づけや構成等によっては、そのような記述全体が著作権の保護対象になり得るとしています。

さて、「東久邇宮家に男系男子が居ること」に著作権はあるでしょうか。

無いです。

それは事実であり、表現されたものではないからです。

単なる「事実」について、他人が既に語っていたらその他人の許可を取らなければならない、というのはおかしな話です。そんなことを言ってしまえば、誰も発言できなくなるでしょう。

旧皇族の男系男子を別途取材していた可能性

こう言うと「著作権侵害を問題視しているんじゃなく、先行者に敬意を払わない態度が問題だ」という指摘があると思います。

さて、本当に水間氏は「先行者」なんでしょうか?

実は2009年4月15日の関西テレビ「スーパーニュースアンカー」において、青山繁晴氏は以下の説明をしています。

ぼやきくっくり | 「アンカー」皇室のふたつの重大危機 雅子妃ご病気と男系継承

今、皇籍を離れてる、皇族でなくなってしまってる元皇族の方々に、20人以上の、ま、26人という話もありますけど、20人以上の男子の方がいらっしゃって、まだ20代の方もいらっしゃいます

もちろん、今年の4月1日の時点では「悠仁親王殿下と同年代の男子」と言っていることから、情報としては一致しません。ただ、青山氏が水間氏とは無関係に情報収集していたからこそ2009年の時点で上記のような指摘が出来ていると言えるでしょう。

「旧皇族の男子に26方」というのは2005年の11月24日に公表された皇室典範に関する有識者会議 報告書(この報告書の通りの方針が採られているわけではない)に記載されている皇籍離脱当時の男子の数と一致していますが、時の経過のためそれを指して言っているとは思われません。

竹田恒泰・西尾幹二らも東久邇宮家を知っていた可能性

また、2012年12月13日に発行された女系天皇問題と脱原発/西尾幹二/竹田恒泰においては竹田恒泰氏が旧皇族(旧皇族の子孫)に男系男子が居るかどうかという文脈で以下の発言をしています。

女系天皇問題と脱原発 37-38ページ

西尾 少し具体的に伺います。名前まで挙げる必要はないですが。竹田さんがコミットされている方々、あるいはその外縁を含めて、意識と自覚の前に、そういう適格者、つまり資格を持つ人が何人ぐらいいるんですか。そしてその中で、意識と自覚を持っている人が何人ぐらいいますか。

竹田 まず未婚の男子は、私が確認している範囲で九人います。これは成人と未成年者、全部含めた数です。あと結婚したばかりの夫婦が何組もあります。旧皇族を活用する場合に対象となるのは、別に独身者に限りません。

これらの中に東久邇宮家が含まれていたかどうかは不明です。

ただ、年齢も把握しているということは、どの宮家に居るのか?ということも把握していたことを意味します。それを敢えて言わなかっただけでしょう。

書籍で東久邇宮家の名前を明示したのが水間氏が最初だからといって、別個の取材で同じ事実に辿り着いたという場合はパクリではないでしょう。

現段階で、青山氏が水間氏を「パクった」と言えるだけの証拠はあるんでしょうか?

あり得るとすれば「水間氏が青山氏にレクチャーをしていた」ということや、取材を受けた者からの情報でしょうが、どうなんでしょうね?

まとめ:なぜ宮家の名前を言わなかったのか?

西尾幹二氏が「女系天皇問題と脱原発」において竹田氏に「名前は言わなくてもいい」と言ったのは、配慮でしょう。

つまり、現段階で宮家の名前が知れ渡ることになると、マスメディアや週刊誌によるプライバシーの侵害が起こりかねないという懸念があったということは容易に想像できます。

ですから、今まで「どの宮家に男系男子が居るのか?」という事を保守系論壇が黙っていたのは、私は賢明なことだと思います。

しかし、現時点では状況が変わり、「女性宮家」が創設されてしまうか否かの分水嶺に我々日本人は立っています。
(実は方法次第では女性宮家があっても男系継承は保てるが)

そのような中でどの宮家に男系男子が居るのかということを開陳するという判断はあり得ると思います。

ただ、「たとえそうであっても宮家の名称をいちいち言うことは迷惑がかかる」という批判も、同様に一理ある指摘だと思います。

以上