事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

大阪市スマホ・ゲーム利用条例化の真偽:総合教育会議での松井市長の発言

大阪市:スマホ・ゲーム条例化

大阪市でスマホ・ゲーム利用が条例化されるのでは?という報道がありました。

これは総合教育会議での発言だったため、その議事録公開が望まれていましたが、動画公開がされました。

大阪市総合教育会議が公開

動画は2つあります。

 

その2の動画の6分くらいに関連する発言があります。

松井市長の発言は29分くらいから、36分くらいまで関連した話が続きます。

スマホ・ゲーム利用条例化の真偽:松井市長はなんと言ったか

松井市長 こういう機会なんでね。中学校の校長先生、小学校の校長先生から不登校の問題の原因の1つ、これ大きな原因なのかなということで、スマホ・ゲーム、これがもういつのまにやら朝までやってるということが確実に不登校の原因の大きな要素というのが現場の校長先生からそういうのが出てきて、それが原因だと分かっているのなら、どうするんやろなということなんですよね。最近はこら大阪以外ではスマホ使う時間を制限しようかなんていうルールを定めようというのもあるけど、そこのところで現場としてルールとして定めていく方が指導しやすいのかどうかとか、ちょっと現場の声を教えてもらいたいと思うんですけど。

(委員発言)ーーースマホゲームを使用するきっかけ等ーーー

(委員発言)ーーースマホゲーム対策に関する内容ーーー

松井市長 効果は出てるわけですか?(委員 効果は出ている…)検証しましょうよ、それやってるんなら。効果がきちっと出てるということであればちょっとね、教育委員会でちょっと中身検討してもらって、とにかく本当ね、朝方までやってるのは良くないなと、こらやっぱり…(委員:そうですね、脳に影響があると言われていますからね)それは何とかこう条例なりなんなりねぇ、そういうことでちょっとやっぱり夜何時までとかね、ちょっと何て言うかな儀礼的なものになるかもしれないけどね、そういうルールを作ったよーっていうのが大事なのかもしれないですね

まとめ:「条例」を先に出したのは松井市長だが

総合教育会議の場においては、条例化の検討をにおわせる発言は松井市長から出てきた話であり、出席委員から提案したものではありませんでした。出席委員は独自のルールを作って実施した結果を話していました。

したがって、15日の教育総合会議を受けて報道した産経新聞の記事には、誇張は無いなと感じます。少なくとも「フェイクニュース」とは言えません。

しかし、この話を持ち出したのは従前から校長先生からスマホゲームについての問題が指摘されていたと話していましたし、翌日の1月16日の定例記者会見では事実検証を指示した上での話であるということで、慎重な言い回しをしていました。

以上

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例修正案が悪化している件

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の素案が修正されたものが検討されたようですが、むしろ悪化しているという指摘が相次いでいます。

香川県議会のゲーム依存症対策検討委員会は非公開なので、コンテンツ文化研究会様が入手した条例素案の修正案を見ていきます。

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例修正案の新旧対照表

香川県ネットゲーム依存症対策条例第一修正素案

コンテンツ文化研究会 / Institute of Contents Culture

第6回検討委員会(2020年1月20日開催)対照表.pdf - Google ドライブ

学習除外規定は設けられずむしろ悪化している…

最初の素案の時から指摘されていた通り、学習用途での利用の場合に除外する規定が無いため、条例の文言上はこの場合も1日1時間等の制限に該当することになります。

報道では学習用途は除くとされるようだとしていますが、要するに自分たちの匙加減で運用をいくらでも変えることができるということになり、だったら条例化する必要があるの?という本末転倒な話になると思います。

しかも前文の「進次郎構文」もそのままです。

細かい点としては前回の記事「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例素案が危険すぎる 」で指摘した「協力するものとする」などの表現が「努力する」などの表現に緩和されていることが挙げられ、この点は改善と言えますが、これは最低限の話に過ぎません。

オンラインゲームの定義が酷い

条例素案修正2条3項ではオンラインゲームの定義として

インターネットなどの通信ネットワークを介して行われるコンピューターゲーム

などという強烈な文言が放たれました。

しかも条例素案上「オンラインゲーム」という用語は2か所でしか使われていませんので、無理やりねじ込んだ感があります。

いわゆる自機の結果をランキング登録できるに過ぎないものも含むのか、ゲーム進行を共有するものに限るのか、この定義では判然としません。

保護者にさらなる努力義務が課せられる…

条例素案修正18条3項には

保護者は子どもがネット・ゲーム依存症に陥る危険性があると感じた場合には、速やかに、学校等及びネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し、子どもがネット・ゲーム依存症にならないように努めなければならない。

という新たな努力規定が設けられました。

悪化してますね。

業者の仕事を増やすためのものという印象しかありません。

ゲームは1日1時間の根拠はいまだ不明

条例に書くことではありませんが、未だに「ゲームは1日1時間」の根拠が不明です。

「ゲームと覚醒剤は同じ」大山一郎香川県議 - 井出草平の研究ノートによると、香川県議会議長の大山一郎議員が「ゲームは覚せい剤と同じ量のドーパミンが出る」などと発言したことについて、Koepp et al.(1998)の論文を紹介していますが、ゲームに特異なことではなく、運動などの場合にも分泌されるということを示しています。

また、高橋名人も「1日1時間」に根拠がないと言ったとか言わないとか。

私が調べた限りでも、ワインスタインらのインターネットベースのゲームについての論文では

  • インターネットゲーム障害の人口比は0.3から1%と推計
  • インターネットゲームの依存性はギャンブルよりもはるかに中毒性が低い

などとされていましたし

パーキンソン病患者を支援するためのニンテンドーWii™対Xbox Kinect™という論文では「ニンテンドーWii™を使用している人だけが、シングルおよびデュアルタスク歩行テストでパフォーマンスを大幅に改善し、不安レベルを減らし、記憶力、注意力、および可逆性を改善しました」という研究が為されているように、ゲームの負の側面だけではなく正の側面をきちんと認識していることを条文上にも反映させるべきだと思います。

以上

「20代パスポート新規発行率6.9%」の真偽を振り返る

日本の20代の旅券取得率

「日本の若者は海外に出ない」というパスポート取得率に関する論旨に対して「20代パスポート新規発行率6.9%はおかしいのでは」「保有率で見るとそうではない」などの指摘が2020年1月にネット上(主にツイッター)で話題になりました。

結論から言うと、この騒動は

1:「新規取得率」は保有率ではない

2:「新規」とあるが「更新」「発給切替」も含まれる

この2つの勘違いから生まれているものです。

実際に外務省や総務省にデータの確認をしたので、検証可能な程度にデータへのリンク等をまとめます。

「日本の若者は海外に出ない」の元ネタ:新潮社フォーサイトの磯山友幸の記事をハフポストが再拡散

日本の若者が気付けない自らの「貧困」。海外に出ない、その裏事情 | ハフポスト

元記事「海外に出ない」日本の若者が気付けない自らの「貧困」:磯山友幸 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト

20代のパスポートの新規取得率は、1995年に9.5%だったものが、2003年には5%に落ち込み、その後、6%前後で推移。2017年には若干上昇したものの、6.9%だ。取得率で見れば、明らかに低迷している

2020年初頭における「日本の若者は海外に出ない」をめぐる顛末は以下の通り

  1. 2020年1月10日の新潮社フォーサイトの磯山友幸の記事が元ネタ、yahooでも読める
  2. そこで20代のパスポートの「新規取得率」という表現で、1995年と比べて2017年は低くなっていると指摘
  3. 1月15日にハフポストが再拡散
  4. インフルエンサーが取得率6.9%という数字のみを「低い」と問題視
  5. 「保有率」で考えれば問題ではないという指摘(ツイート)が登場
  6. 「10代で取得する数が増えたから20代の取得率が低下するのは当然」という指摘(個人ブログ)が登場、インフルエンサーが拡散

インフルエンサーとは以下のツイートなどです

「保有率」で考えれば問題ではないという指摘はたとえば以下のツイートです。 

保有率の「根拠」とされている数値は留学情報サイトの「推計」です:日本のパスポート保有率は24%!! 20代の保有率は?保有率最下位の都道府県は...? - 失敗しないワーキングホリデー情報サイト | ワーホリ準備ならフィリピン英語留学のサウスピーク

また、「10代で取得する率が増えたから20代の取得率が低下するのは当然」という論は次のブログの主張です:日本の20代パスポートの新規発行率6.9%の謎を解いたら馬鹿みたいだった - More Access! More Fun

「パスポート取得率は6.9%」の根拠

日本の若者は海外に出ない、パスポートの新規発行数6.9%

観光庁:若者のアウトバウンド推進実行会議

「1995年に9.5%、2017年に6.9%」というのは観光庁の資料にあります。

磯山氏の記事中では「観光庁がまとめた、2019年1月の「若者のアウトバウンド推進実行会議」の資料」とあるので見てみます。

この資料は【2020年までに日本の若者(20-29歳)の海外旅行者の数を350万人にする】という目標が「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議:平成28年3月30日」で定められていたためにその実績を見るために作られたようです。

出典は外務省の旅券統計総務省の人口統計となっており計算すると一致します。

観光庁の資料では「新規取得率」という表現になっていますが、元データの出典である外務省の旅券統計では「発行率」(役所が発行した数がどれくらいの割合か)となっています。つまりこれは「保有率」(個人が持っている数がどれくらいの割合か)とは異なる数値だということです。

※総務省の人口統計は人口推計(平成30年10月確定値,平成31年3月概算値)を利用
観光庁の計算について

元記事の主張の比較対象を間違えるな

新潮社フォーサイトの元記事の主張は要するに

1995年の20代の取得率と2017年の20代の取得率との比較】です。

決して「全年代に占める20代のパスポート取得率」の話ではないのです。

また、6.9%という数値自体も、同じ統計内で比較が完結しているので、別の統計や推計における数値と異なっていること自体をもって論難できるものではありません。

さらに「若者」と元記事のタイトルにはあるが、「10代」は捨象されているのです。

元記事の比較対象と、ツイートが問題視している対象にズレが生じているのです。

最初にこれを意識してください。

「新規取得率」には更新・発給切替も含まれる

観光庁の資料には「新規取得率」という言葉が使われています。

しかし、出典元である外務省に聞いたら

「更新」「発給切替」も含まれる数値である

ということでした。

決して「その人の生涯で初めて取得した数」ではないのです。

そもそも外務省の旅行統計には「新規」とは全く書かれていません。

パスポートは期限が5年と10年のものがありますので、10代で取得しても20代で更新等をしなければ意味がありません。

「10代取得率が増えたから20代取得率低下は当然」ではない

したがって、「10代でパスポートを取得する率が増えたから20代の取得率が低下するのは当然」という指摘は、別の論拠が無い限り基本的に的外れということになります。

保有率と異なるのは当たり前

『パスポートの取得率でなく保有率で見れば「若者は海外に行かない」とは言えない』

この言説は、全年代の中での20代の立ち位置を論じる場合に意味があります。
「昔の若者よりも今の若者は海外に行かなくなった」とは論旨が異なる、つまり比較対象が異なる。

「取得率」は単年度の数値です。

したがって、20~29歳のいずれかで取得する機会があるのですから、考え方としては、その取得率が10年続くと仮定すれば、取得率を10倍した数が保有率に近くなると言えます(実際にはその数値よりも少ないハズ)。

ただ、年代別の保有率を出している統計は存在しないので、推計するしかないのですが、さらに1995年のものと比較するのは困難なため、ここでは断定しません。

先述の留学情報サイトもそのような認識で推計しており、それ自体は何ら問題ないでしょう。

6.9%という数字自体を問題視するインフルエンサーに対して保有率を指摘しているツイートも、それ自体は正しいです。同時に、そもそもインフルエンサーが元記事の主張と異なる問題意識(誤解に基づく)であるため、第三者が元記事の主張に対する反論をするのであれば保有率の指摘とは別の論拠を示す必要があります。

小括:比較対象を把握していない指摘が多い

「10代取得率が増えたから20代取得率低下は当然」と言っている個人ブログでは、なぜか2012年の出国者数と2017年の出国者数を比較して「増えているから若者が海外に出ていないというのは間違いだ」と指摘している部分もあります。

しかし、新潮社フォーサイトの磯山氏の元記事は平成7年との比較をしているのであり、「近年増えている」という指摘にはなり得ても、元記事に対する反論にはなっていません。

当該記事は比較対象がズレているにも関わらず、はてなブログやツイッターで立場のある人によって大量に拡散されています。

「若者」は海外に行かなくなったのか?

では、「若者」=10代+20代は海外に行かなくなったのか?

まずは外務省の旅券統計からヒントを探ります。

平成7年パスポート取得数

平成7年と平成30年の20代では、平成30年の方が比率が低いため、元記事の「20代の取得率が低い」「だから若者が海外に出ていかない」を肯定する結果のように見えます。

※この表中の「比率」は「構成比」、つまり全年代に占める%であって、その年代の人口あたりの%ではありません。表中の%を全て足すと100%になります。

平成30年パスポート取得率

では、10代+20代を合わせた旅券の発行率を比較するとどうか。

すると、平成7年の場合には人口4,725万5,000人に対して旅券発行数248万2,200なので取得率は5.25%なのに対し、平成30年は人口3,387万4,000人に対して旅券発行数は180万1,379なので取得率は5.31%となります。

元記事の比較は20代の数値ですが、記事タイトルや論旨は「若者が」という趣旨なので、10代+20代の数値の合計で見ると、平成7年と平成30年の数値は変わっていない、という見方もできると言えます。

10年パスポートが昔は無かった

ただし、20代に限定したパスポート発行数の問題意識があるのであれば、この見方は意味を成しません。(再度指摘するが、更新や切替発給も発行数に含まれる以上、10代取得率が20代取得率に大きく影響したとは考えにくい)

そこで次に考えられるのは、【1997年から10年パスポートが登場したため、そこから5年後からは「更新頻度が減った」と考えられ、1995年(平成7年)と比較することは不適切】という指摘があり得ると思います。

そうすると、10年パスポートが登場してから5年後からの数字としては2017年の6.9%と言う数値は最大の数値なので、これをもって「若者は海外に出ていかなくなった」と言うことはできないと指摘することは可能でしょう。

20代の出国者数は増えたのか減ったのか?

ところが、旅券統計にも書かれているように、旅券取得の数と実際に海外渡航した数は一致しないため、本当に「若者が海外に出ていかないのか?」の真偽を確かめるには更なる調査が必要です。

これに対するクリティカルな検証は出国数・海外旅行者数を見るのが効果的です。

しかし年代別の統計がダイレクトに示されてる統計は見つけられませんでした。

そこで、日本人の海外旅行:20代の出国率、90年代水準に回復 | nippon.comで示されているグラフがとても示唆に富むので紹介します。

当該グラフでは各種統計から『96年の20代の出国率は24.6%であったが…中略…17年には出国者数304万5000人、出国率25.5%となった。』と推計しており、出国率は20世紀末のものと比べても増えているということが示唆されています。

したがって、この計算が正しければ、新潮社フォーサイトの磯山氏の元記事における「若者が海外に出ていかない」という主張は根拠に欠ける、という事が言えるでしょう。

まとめ:日本の20代パスポートの新規発行率6.9%の真偽は誤解の積み重なり

  1. 新潮社フォーサイトの磯山氏の元記事は「昔の20代と今の20代の比較」であって、全世代の中での若者の比較ではない
  2. 上記の論旨は「若者は海外に行かない」
  3. パスポート発行率で考えると、10代と20代を合わせた発行率は変わっていないという見方ができる
  4. 10年期限のパスポートが発行してその影響が出る時期と比べると、「今の若者は昔の若者に比べて海外に出ていかなくなった」と言うことはできない
  5. 出国者数の推計が正しければ、「若者が海外に出ていかない」という主張は根拠に欠けると言える

まとめると「日本の20代パスポートの新規発行率6.9%の謎」は、元記事の論旨の理解の仕方と統計の見方のズレ、そして観光庁の『「新規」取得率』という表記の不適切さが引き起こした騒動であると言えるでしょう。

以上:はてなブックマークをして頂けると助かります。

東京新聞佐藤圭の福島差別ツイートを水戸支局が肯定:中の人は佐藤記者

東京新聞水戸支局



ツイートは個人の意見と断りを入れている東京新聞記者の佐藤圭が福島差別ツイートをし、それに対して東京新聞水戸支局のアカウントが「いいね」をつけていましたが、中の人は佐藤圭でした。

東京新聞記者の福島差別ツイート

 魚拓

 魚拓

東京新聞記者による福島差別ツイート。

ここで挙げたのはほんの一部です。

佐藤圭記者「投稿内容は個人の意見」

佐藤圭「ツイートは個人の意見」水戸支局の中の人

魚拓

佐藤圭記者は、ツイッターアカウントのプロフィール欄に「投稿内容は個人の意見」と記述しています。

東京新聞水戸支局は佐藤圭が運用「中の人は私」

魚拓

東京新聞水戸支局の公式アカウントを開設した際のツイート。

「とりあえず「中の人」は私」と発言しています。

東京新聞水戸支局が福島差別ツイートにいいね

 

東京新聞水戸支局いいねの魚拓

要するに佐藤圭は、表向きは個人の意見という風に装っていながら、陰では東京新聞水戸支局のアカウントを使ってその言説を拡散しているということです。

これはとんでもない公私混同だと思います。

東京新聞は、このようなアカウントの使い方を許して良いのでしょうか?

以上

外国人の入社・募集・採用の拒否は違法なのか?

外国人の入社拒否は適法か

外国人の入社・募集・採用の拒否は違法なのでしょうか?

結論から言うと、すべてが違法になることはなく、むしろ法的原則は適法でしょう。

求人者・雇用主たる事業主に対する外国人労働者に関する厚労省の啓発

外国人の雇用拒否・募集拒否・採用拒否

厚労省啓発パンフレット

「求人の募集の際に、外国人のみを対象とすることや、外国人が応募できないという求人を出すことはできません。」

このような強い表現ですが、このパンフレットが根拠であるとしているのは厚労省の「指針」です。これを見ると実態は異なります。

外国人労働者の雇用対策についての厚生労働省の指針

外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」という告示があります。

厚労省の外国人労働者の雇用に関するQ&Aなどは、この指針に基づいています。

しかし、実は指針の中身を見ていくと、上記の厚労省の説明とは齟齬があります。

以下のページに改正内容も含めて掲載されています。

外国人雇用対策 Employment Policy for Foreign Workers |厚生労働省

外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針
(平成十九年告示第二百七十六号)

入社拒否、採用拒否の禁止は職業紹介事業者に求人申し込みした場合に限定

外国人の雇用拒否・募集拒否・採用拒否

外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針

厚労省の「指針」の『第四の一の1「募集」』の項の『ロ 「職業紹介事業者等の利用」』を見てみると、職業紹介事業者等が職業紹介を行うにあたっての国籍を理由とした差別的取り扱いは職業安定法上禁止されているとされています。

職業安定法(均等待遇)
第三条 何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。但し、労働組合法の規定によつて、雇用主と労働組合との間に締結された労働協約に別段の定のある場合は、この限りでない。

事業主については「十分留意すること」という表現にとどまっています。

これは当然で、職業紹介者に国籍の有無で区別はつけるなと言ってるのに、職業紹介業者を利用している採用企業が、隠れた基準として国籍の有無を設けているという事があったなら、それは公平ではないからです。

しかし、自らが雇い入れを行う場合に関する規定ではないのです。

これは、この指針の根拠法令を見ると更に明確になります。

雇用対策法7条の事項は募集段階ではなく雇用者の規定

指針 第一 趣旨
この指針は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第七条に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、事業主が講ずべき必要な措置について定めたものである。

「指針」の1条には、この指針は、いわゆる「雇用対策法」の第7条の事項について定めたものであると宣言されています。

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(雇用対策法)

第七条 事業主は、外国人(日本の国籍を有しない者をいい、厚生労働省令で定める者を除く。以下同じ。)が我が国の雇用慣行に関する知識及び求職活動に必要な雇用に関する情報を十分に有していないこと等にかんがみ、その雇用する外国人がその有する能力を有効に発揮できるよう、職業に適応することを容易にするための措置の実施その他の雇用管理の改善に努めるとともに、その雇用する外国人が解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他の厚生労働省令で定める理由により離職する場合において、当該外国人が再就職を希望するときは、求人の開拓その他当該外国人の再就職の援助に関し必要な措置を講ずるように努めなければならない。

雇用対策法7条では、「その雇用する外国人が」と書かれている通り、既に外国人を雇用している場合における待遇について書いてあるのです。

よって、「募集段階」においては明示的に規定していないのです。

指針が「十分留意すること」という表現にとどまっているのも、国籍を理由にする雇い入れの拒否を違法とするための法令上の根拠が無いからです。

それは当然です。

私人たる事業者・会社には、憲法上の権利として結社の自由や経済活動の自由、財産権が保障されているからです。

憲法22条の経済活動の自由等に基づく契約締結の自由

憲法22条の経済活動の自由等に基づき、採用を拒否した事例があります。

募集段階と雇い入れた後の段階は別

三菱樹脂事件最高裁判決

 (三) ところで、憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、二二条、二九条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。

面接時に秘匿していた思想信条が試用期間にバレて入社拒否したことが問題になった事案ですが「募集段階」と「雇い入れた後の段階」とを分けて論述を展開しています。

「いかなる者を雇い入れるかについては契約締結の自由により原則自由に決定できる」

憲法22条の経済活動の自由や憲法29条の財産権に基づき、このように解されているのです。また、何らかの法律等によっておよそ一般に「外国人の就労を拒否してはならない」とされていることはありません。

企業における雇用関係の本質論

三菱樹脂事件最高裁判決

また、企業者において、その雇傭する労働者が当該企業の中でその円滑な運営の妨げとなるような行動、態度に出るおそれのある者でないかどうかに大きな関心を抱き、そのために採否決定に先立つてその者の性向、思想等の調査を行なうことは、企業における雇傭関係が、単なる物理的労働力の提供の関係を超えて、一種の継続的な人間関係として相互信頼を要請するところが少なくなく、わが国におけるようにいわゆる終身雇傭制が行なわれている社会では一層そうであることにかんがみるときは、企業活動としての合理性を欠くものということはできない。

サービス提供の場合とは異なり、企業においてある人間を入社させるか否かは、相互信頼を基本とする継続的な人間関係を構築するか否かの話であると言う雇用関係の本質論が重要です。

そこに国家権力が介入して強制的に現実を変更したとして、果たしてその企業・団体は存続するでしょうか?それは紛争解決になるのでしょうか?

採用に当たって外国人であっても日本人と異ならない扱いをするべきだという強い必要性が無い限り、国籍を理由にした入社拒否はできるのが原則であるということになるハズです。

憲法21条の結社の自由による募集拒否

また、国籍を理由にした募集の拒否ができるというのは、憲法21条1項の結社の自由によっても裏付けされていると言えます。

特別永住外国人の入会拒否が適法になった事例

たとえば、株主会員制を採っているゴルフクラブにおいて特別永住外国人の入会拒否をした事案である東京地裁平成13年5月31日判決平成7年(ワ)19336号、は、憲法21条の結社の自由を根拠の一つとして外国人の入会拒否をしていることは違法ではないとしました(三菱樹脂事件最高裁判例も引用)。

同じく株主会員制の事案である平成8年(ワ)6833号や東京高裁平成14年1月23日判決平成13年(ネ)3550号は三菱事件最高裁判例のみ引用して私的自治から論じている。

株主会員制:ゴルフ場の経営を目的とする会社の株主となることでその事業に出資をさせ、会社の経営に参加させるのと併せてゴルフクラブを組織した上で株主を同時に会員としてプレーさせる形態

そこではゴルフクラブの娯楽サービスを提供する機能よりも、株主会員制という団体の性質の側面を重視しています。

東京地裁平成13年5月31日判決平成7年(ワ)19336号、平成8年(ワ)6833号

ゴルフは趣味的に行われるスポーツの一種であって、これを楽しむ機会が失われたとしても直ちに衣食住のような生活の基盤が損なわれたり、健康で文化的といえる最低限度の生活が困難となったりするような性質のものではない。

中略

原告は、被告クラブにおける外国人に対する入会制限を違法とする理由として、ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律によってゴルフ会員権募集等に公的規制がされてることをあげているが、同法は誰をゴルフクラブの会員として入会させるかについてのゴルフクラブの判断を規制するものではない

ゴルフクラブの「公的規制」においても、入会者の待遇において差別をするなという意味であって、誰を入会させるかについての規制ではないということで、三菱樹脂事件の判示と同じく、入会前の段階と入会後の段階とで扱いを異にしています。

国籍の違いによる差異は前提

上掲の裁判例においては国籍の違いによる種々の差異についても考察されています。

東京地裁平成13年5月31日判決平成7年(ワ)19336号、平成8年(ワ)6833号

主権国家が併存している現在の国際社会においては、「国民」と「外国人=国民でない者」とを国籍によって区別することを所与の前提の一つとしながら、国家の安全と国民生活の安定を図りつつ、主権を持った各国が他国と交際し、友好関係を維持・発展させるという国家間の外交や、国民相互の人的な国際交流、国際経済活動などを辻て国家と国際社会の発展を期している。各国は、自国民に対し対人主権を有するとともに、他国に対しては自国民について外交的保護権を国際法上認められており、個別の条約による自国民の扱いについて特別な合意をする場合もある。その他、国籍は国際法上及び国内法上、種々の法律関係(権利・義務の享有・負担)の基準となるものである。したがって、ある自然人と別の自然人の帰属する国家が異なる場合、全面的に同一の法秩序に服し、同一の法主体・法客体になるものではなく、国籍を異にする自然人同士がときに利害の複雑に絡み合った、相対立する立場を有する場合もあり得ることは否定できない。個人の私的生活の場面でみても、人は国籍によって帰属する国の歴史・政治・経済・文化・社会・宗教・民族等に関する理解や考え方、利害状況等と全く無縁であるとはいえず、実際的にみても、生活様式、行動様式、風俗習慣、思考方法などに関し、外国人は、しばしば日本人と異なる個性が認められることも否定できないところである。このような個性や差異は…中略…いわゆる在日韓国人であるからといって、それ故に当然に当てはまらないというものではない。

国籍が違えば全面的に同一の法秩序に服し、同一の法主体・法客体になるものではない」という指摘は鋭い視点でしょう。

たとえばチャイナは「国防動員法」という法律があり、有事の際には国民はこの法律に従う義務があり、海外居住者にも適用されるとされています。この場合に共産党中央政府からの命令で何をするよう言われるか。場合によってはわが国の法秩序と相反する事態になりかねませんから、チャイニーズがそのような法客体であるという事情から何らかの別異取り扱いをすることが直ちに違法になると考えるのはおかしいでしょう。

特別永住外国人の入会拒否が違法になった事例

注意点ですが、株主会員制ではないゴルフクラブにおいては、外国人の入会拒否が違法になった事例があります。

東京地裁平成7年3月23日判決平成4年(ワ)21675号

しかし、他方、今日ゴルフが特定の愛好家の間でのみ嗜まれる特殊な遊技であることを離れ、多くの国民が愛好する一般的なレジャーの一つとなっていることを背景として、会員権が市場に流通し、会員募集等にも公的規制がなされていることなどからみれば、ゴルフクラブは、一定の社会性をもった団体であることもまた否定できない。

このように「ゴルフクラブの社会性」を観念して、入会については完全な自由裁量ではないとした上で、当該事案においては入会拒否を違法としました。

私は、ゴルフクラブに「社会性」があり、完全な自由裁量ではないということはその通りだとは思いますが、そこから直ちに入会拒否が違法になるとするのは根拠が弱過ぎると思います。

しかも「会員募集等にも公的規制がなされている」という部分は東京地裁平成13年判決では「誰を入会させるかについて」のものではないとされたのですから、当該公的規制の対象が、平成13年と平成7年とで異なっていたり、その後規制が変更されたりしたのでなければ、平成7年の東京地裁判決では判断に誤りがあったということになると言えるでしょう。

まとめ:外国人の入社・募集・採用の拒否は原則適法だが、違法となる場合も

まとめると、外国人の入社・募集・採用の拒否は原則適法だが、違法となる場合もあると言えるでしょう。

厚労省が決して「違法である」という書きぶりをしていないのも、そのような背景があり、しかし表立って「OK」と言うことは憚られるからだと思います。

以上

「ネットカフェ難民の数は増えている」は嘘なのか

ネカフェ難民が増えている

「ネットカフェ難民の数は増えている」

このように断定している所がほとんどですが、根拠としているデータをまともに読んでいるならばまず出てこない態度です。

「ネットカフェ難民の数は増えている」の根拠・ソース:住居喪失不安定就労者等の実態調査

「ネットカフェ難民の数は増えている」と言われている根拠は、厚生労働省が2007年に調査した結果と2018年に東京都が調査した結果のうち、東京都におけるネットカフェ難民=ネットカフェ等を利用している住居喪失者の数を比較しています。

住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査報告書 平成19年8月 厚生労働省職業安定局

住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査報告書平成30年1月 東京都福祉保健局生活福祉部生活支援課

よく言われるのが「2007年は2000人、2018年は4000人」であり、「経済状況の悪化によって増えた」「街中に居ることができなくなったホームレスがネカフェに流れてきた」と言われることがあります。

数字自体はその通りです。
厳密に比べるなら1800人⇒4000人だが

しかし、これって本当でしょうか?

 

東京都のネカフェ難民調査結果「厚労省調査との比較は行っていない」

東京都のネカフェ難民調査

平成30年1月 東京都福祉保健局生活福祉部生活支援課

東京都の調査報告書は「実施時期や規模、対象店舗等の与条件が異なる」とあります。

結論から言うと、厚労省調査と東京都調査には以下のような違いがあります。

  1. 厚労省調査結果における東京都の「ネカフェ難民」の数は23区内のみ
  2. 調査期間が厚労省は夏、東京都は冬
  3. 「オールナイト利用者」の推計の仕方が異なる

この時点で、まともな感覚なら単純比較することはあり得ません。

厚労省調査は全国の店舗を対象にしていますが、東京都だけは23区内しか数字が出ていないことから、23区内しか調査していないことがわかります。この点は東京都の担当も指摘していました。

調査期間が厚労省は夏、東京都は冬

厚労省調査は「6月下旬から7月中旬」とあり、東京都調査は「12月~1月」です。

東京都に認識を伺ったところ「一般に夏の方が外で過ごすことが多く、冬は寒さをしのぐために屋内に居ることが多いと言える」と話していました。その通りだと思います。

その結果、厚労省調査では数が少なく、東京都調査では数が多くなったという可能性があります。

「ネットカフェ難民」の調査・推計方法

ネットカフェ難民」の数を把握するために、ネットカフェ等を利用している者であって、オールナイトで利用している者の数を算出し、さらに住居喪失者の率を探り、推計するという手法が取られています。

つまり、調査上「オールナイト利用者」が計算のベースになっているのです。

オールナイト利用者」とは、【平日(月~木曜日)1日において最低5時間以上利用し、各店舗のオールナイト料金の対象となるような者の数であり、単に深夜に利用して数時間滞在してすぐに出て行く者を除く、年間を通じた平均的な数】を指すと調査資料に書かれています。

オールナイト利用者であるからといって、それだけでは経済状況等の悪化に起因した行動であるということにはなりません。経済状況等とは別個に、単純に利用客が増加した可能性もある数値です。

「オールナイト利用者」は、2007年が8,500人、2018年が15,300人

東京都の「オールナイト利用者」の数は2007年が8,500人、2018年が15,300人でした。

「住居喪失不安定就労者等」の数値は、ここから算出されているものであり、前提となるオールナイト利用者の数が少なければ少なく出るのは当たり前です。

 なぜこのような差が生まれたのでしょうか?

「インターネットカフェ・漫画喫茶等」の対象

東京都のネカフェ難民の統計

平成30年1月 東京都福祉保健局生活福祉部生活支援課

上記は東京都の調査結果です。

「インターネットカフェ・漫画喫茶」のほかに「ネットルーム」「ビデオルーム」「カプセルホテル・サウナ」が別項目になっているのが分かります。

厚生労働省のネットカフェ難民統計

平成19年8月 厚生労働省職業安定局

対して上記は厚労省の調査結果。

カプセルホテル・サウナなどが含まれているのかが分かりません。

この点について東京都・厚労省の該当部署に確認をしたのですが、いずれも

厚労省のデータにおいてカプセルホテル等を含めた値になっているのかどうかは分からない

と言われました。

カプセルホテル・ビデオルーム・ネットルームが含まれてない?

厚労省調査ではカプセルホテル・ビデオルーム・ネットルームが含まれてない可能性。

なぜこの点が重要なのか。

そもそも集計対象から漏れていた場合、オールナイト利用者数が少なくなるのは当然。

含むとしても「回答平均値」が大幅に異なるものを一緒に計算していたことに。

それが東京都調査と厚労省調査で数が大幅に違う原因の一つと考えられるからです。

※回答平均値:調査は「全店舗」対象だが、回答した店舗が全店舗ではないため、推計により全店舗でのオールナイト利用者を算出する必要があり、1店舗あたりのオールナイト利用者の平均値を、立地条件を加味して算出し、それを全国推計に利用している。

2007年厚労省調査はインターネットカフェ・漫画喫茶のみか?

インターネットカフェ・漫画喫茶のオールナイト利用者

平成19年8月 厚生労働省職業安定局

ヒントは「大規模駅周辺店舗」。

これは「1日の乗降客が30万人以上」の駅から1km圏内に立地する店舗です。

立地により客数が相当変わると考えられるため厚労省調査でのみ導入された概念です。

JR東日本:各駅の乗車人員(2007年度)では、これに該当する駅は東京・池袋・渋谷・品川・新宿・横浜の6つのみです(2006年も同様)。

すると、乗車人員数で割合を計算すると、厚労省調査の大規模周辺店舗346店のうち、横浜を除外した298店舗が東京都の店舗と推計できます。

東京都調査ではそういった絞り込みの無いインターネットカフェ・漫画喫茶が315(しかも23区以外も含む)であり、ビデオルーム・ネットルーム・カプセルホテル・サウナの合計は187店舗です。

そのため、もしも厚労省調査の店舗数にカプセルホテル・サウナ等が含まれていたなら、店舗数が全体で多少増えていたと仮定しても、2007年時点の大規模駅周辺店舗の数は400を超えていたハズではないか?ということが考えられます。

したがって、厚労省調査では「カプセルホテル・サウナ」「ネットルーム」「ビデオルーム」が含まれていない可能性が高いと言えるでしょう。

2007年厚労省調査では都会の店舗であるほど実態より推計値が低くなる?

さらに、「その他駅周辺」と「郊外」の回答平均値の計算方法も問題です。

上記のJRの数値では、関東の駅が上位のほとんどを占めます

すると、厚労省は全国調査をした回答平均値を出しているのですから、乗降客数が多い駅の近くの店舗では利用客が多いという前提に立つと、関東の、特に東京都の店舗の数値は実際よりも低く出ることが考えられます。

現に2007年のインターネットカフェ・漫画喫茶の回答平均値は25.4人、2018年は26.8人であり、これが約300店舗とすると420人もの差が出てくることになります。

もちろん、「田舎の店舗は敷地が広いので1店舗で多くの客が来る、東京都は敷地が狭いので1店舗のキャパが少ないため客数は抑えられる」という実態、単純に全体の利用者が増えたことが要因の可能性もあります。

オールナイト利用者全体に占める「住居喪失者」割合は増えている可能性

もっとも、オールナイト利用者に占める住居喪失者は、2007年厚労省調査の大規模駅周辺店舗で10.3%、2018年東京都調査で25.8%となっており、住居喪失者がネットカフェ等を利用している数が増えている可能性を仄めかす結果です。

しかし、これも季節の影響なのか、全体の数として増えているのかの切り分けは不可能なので、現時点では参考程度にしかなりません。

まとめ:ネカフェ難民の東京都調査の数が多いのは調査・推計方法に起因する可能性

まとめると次のように言えます。

  1. 「ネットカフェ難民」は「ネットカフェ等利用者」且つ「オールナイト利用者」且つ「住居喪失者」で計算
  2. オールナイト利用者の数は2007年が8,500人、2018年が15,300人
  3. 2007年の調査ではオールナイト利用者算出にあたってカプセルホテル・ビデオルーム・ネットルームが含まれてない可能性が高い
  4. その他、2007年の調査結果は23区外を含まず、計算上都会の店舗での数が低く出る性質・夏の調査だったため2018年と比較して店舗利用者が少なかった可能性などがある

あくまでも現時点の話ですが、厚労省調査よりも東京都調査の数が多くなったのは調査・推計方法の違いに起因する可能性が示唆されるということです。

よって、実態としてネカフェ難民が増えているかは不明としか言いようがありません。

ただし、「ホームレス統計」に現れない住居喪失者の実態把握を試みる観点として「ネットカフェ難民が増えているのでは」や「「昼間に働いている者はカウントされない」という問題意識そのものは大切なので、継続的な調査が望まれるところです。

以上