事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

新型コロナウイルスの陰性証明書の取得方法

陰性証明書の取得方法とは

新型コロナウイルスの陰性証明書の取得方法は無いのか?と検索したあなた。

そんなものはありません。

陰性証明書を要求されたという人へ

陰性証明書を要求されたという人も居ると思います。

たとえばミャンマー政府ベトナム政府など。ベトナムは「権限ある機関が発行する新型コロナウイルス感染症が陽性でないことを証明する証明書を持ち,かつ,この証明書についてベトナムによる承認を得なければ,ベトナムに入国できない」としています。

日本の場合、PCR検査を無症状の者にするとすればそれは主に検疫の場合であり、他は特殊なケースでなければ検査をしていません。

現地の外交官ですら陰性証明のための検査をしているのかどうか。

一般人は個別に大使館に相談して何らかの可能性を探るしかないと思います。

入国を断るための方便なんじゃないかと思います。

日本の企業などでも陰性証明書を求めるところが一部あるようですが、それはもう科学を無視したアホな企業なので無視して良いでしょう。

新型コロナウイルスで「陰性証明」ができない理由

新型コロナウイルスの検査として現在日本で行われているのは核酸増幅検査=PCR検査ですが、陰性証明ができない科学的な理由をざっくりとまとめると以下のようにになります。

  1. 検査時点での陽性・陰性の判断であり、それ以後の感染可能性を否定できない
  2. 鼻腔や咽頭に綿棒を当てて検体を採取するが、それが上手くいかなくて陰性になる可能性がある
  3. 検査方法それ自体の精度の問題がある(感度と特異度)
  4. たとえ感染していても発症前(潜伏期間)は検出されるウイルス量が少ないため、検査で検出できずに陰性になる可能性が高い

これらに加えて、そもそも現在は陰性証明をするために検査をするリソースを割くことはしていない(一定の基準をクリアしないと検査しない)ため、現実的にも無理です。

日本の検査方針がそのようなものであるのは、上記の個別の検査の事情の外、事前確率(検査する集団のうちどれくらい本当に感染している人が居るのかという確率)が低いために偽陽性・偽陰性が大量に出てしまい社会的に悪影響を及ぼすからです。

この点は以下でまとめています。

新型コロナウイルスのPCR検査基準について

以下でまとめていますが、新型コロナウイルスについて無症状の者がPCR検査を受けるのはほぼ検疫の場合でしかなく、濃厚接触者でも原則として無症状の者は検査対象外です。

インフルエンザの陰性証明書、治癒証明書について

インフルエンザQ&A|厚生労働省

Q.18: インフルエンザにり患した従業員が復帰する際に、職場には治癒証明書や陰性証明書を提出させる必要がありますか?
 診断や治癒の判断は、診察に当たった医師が身体症状や検査結果等を総合して医学的知見に基づいて行うものです。インフルエンザの陰性を証明することが一般的に困難であることや、患者の治療にあたる医療機関に過剰な負担をかける可能性があることから、職場が従業員に対して、治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることは望ましくありません。

インフルエンザですら厚労省は陰性を証明することは一般的に困難、と言っています。

陰性証明書の提出を求めるのは「望ましくない」という表現ですが、これは行政の側が民間に対してそうした行為を禁止する法的な権限が無いからに過ぎません。

ほか、民間の医療機関や地方自治体からも陰性証明書の扱いは否定的です。

インフルエンザの治癒証明書・陰性証明書の取り扱いについて|当院からのお知らせ|洛和会音羽病院(京都市山科区)-救急指定病院

山形県健康福祉部保健薬務課 インフルエンザの治癒証明や感染していないことの証明(陰性証明)等を医療機関に求めさせることはお控えください! 

新型コロナウイルスの陰性証明書の取得方法は無い

ということで、新型コロナウイルスの陰性証明書の取得方法は無いと言ってしまってよいでしょう。ここで述べたことは論理的に抗体反応検査もほぼ同じです。PCRの保険適用検査も検査基準は行政検査と同じです。 

渡航先の国が陰性証明を要求しているような場合に、個別に何かしらの方法を大使館等と一緒に考えることもあるかもしれませんが、そうでない場合に陰性を証明するために労力を使うのは科学的ではないです。

まぁもしかしたら「陰性証明書発行できます」と言ってくる所があるかもしれませんが、海外の一部の国が求めているのは「権限ある機関が発行する」証明書なので無理です。

追記:「陰性証明書」という名称でなければ、医師の診断書を工夫して書いてもらうくらいでしょうか?現場では苦労しながら対応している所もあるんだろうと思いますので、そういう所が変な目で見られる事が無いようにしたいと思います。

以上

青山繁晴議員と護る会「減税勢力」を結成、3月30日午前に記者会見へ

青山繁晴議員と護る会が別会派と「減税勢力」を結成し、3月30日午前に記者会見するようです。

青山繁晴議員と護る会「減税勢力」を結成、3月30日に記者会見へ

「減税勢力」を結成し、週明け3月30日月曜の午前10時に記者会見へ|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road魚拓はこちら

5%への消費減税を掲げる「護る会」 ( 日本の尊厳と国益を護る会 / JDI ) と、消費税0%を掲げる「議員連盟 日本の未来を考える勉強会が連帯し、それぞれの主張を尊重したまま「減税勢力」をつくり、来週月曜の朝10時に国会内で記者会見を開くことに決しました。

青山繁晴議員と護る会「減税勢力」を結成、3月30日午前10時に記者会見する予定のようです。

二つの会を単純に合計すると113人以上となるようです(重複議員が複数いる)。

ただ、注意が必要です。

議員連盟日本の未来を考える勉強会とは

【議員連盟】日本の未来を考える勉強会

議員連盟「日本の未来を考える勉強会」とは、衆議院議員 の安藤裕が会長を務める自民党会派です。

彼の財政・金融政策の考え方はMMTの理論をベースにしており、懐疑的な見方が多いです。

安藤裕は財務省側、消費税0%は実現不能なのでやる気無し

安藤裕は財務省側で、消費税0%は実現不能なのでやる気無しという見方をしている人は多数います。

まぁ、こういう人間と相性がいい人間ですから。

MMT論者の安藤裕議員には要注意

安藤裕議員はMMT論者であり、日本国民が債権者である政府債務があっても財政破綻はしない(消費増税の道筋をつけた張本人である麻生太郎財務大臣の持論と同じ)という論である時点で到底信用できません。

なぜなら、それが真なら今から5000兆円の国債を発行することを提案すればいいのに、言っていないからです。

以上

「新型コロナウイルス検査キットに独島と名付けよう」韓国青瓦台の請願サイトで

韓国新型コロナウイルス検査キットに独島と名付ける請願

韓国で新型コロナウイルス検査キットに「独島」と名付ける請願が行われています。

韓国青瓦台の請願で「検査キットに独島と名付けよう」

수출용 코로나19 진단키트 이름을 독도로 해주세요

韓国青瓦台の請願で「検査キットに独島と名付けよう」という請願がありました。

これは3月25日に開始されて4月24日に締め切られます。

その背景として、トランプ大統領が韓国産の診断キットをサポートを要請したことから、輸出する検査キットに独島と名付けようという魂胆のようです。

署名は27日時点で25万筆集まっており、韓国政府からの返答要件を満たしています。

ソウル女子大学の学生が発起人

“코로나19 진단키트 이름 독도어때?” 서울여대생의 기발한 국민청원[인터뷰] - 국민일보

この記事では、ソウル女子大学の学生が発起人である旨が書かれています。

「検査キットの名前とデザインを独島にし、独島についての情報が盛り込まれたQRコードを書き込もう」などと言っていますね。

韓国では「放射能による東京五輪ボイコット」の署名も

韓国では過去には「放射能による東京五輪ボイコット」の署名もありました。

とんでもない連中だと思います。

以上

安倍昭恵夫人の藤井リナ・手越祐也との桜の木の写真は花見ではないのか?:私有地のレストラン

安倍昭恵の藤井リナ・手越祐也との「花見」はレストラン

安倍昭恵夫人が東京都が自粛要請している中で「花見」をしていたのではないかという週刊誌の記事があり、それをネタにした議員が質疑して安倍総理が答弁しました。

その内容について考え方を整理します。

安倍昭恵夫人の藤井リナ・手越祐也との桜の木の写真

安倍昭恵夫人の藤井リナ・手越祐也との桜の木の写真がクローズアップされたのはNEWSポストセブンの記事でした。

「3月下旬の都内某所」「私的な“桜を見る会”を楽しんでいた」「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、小池百合子・東京都知事が花見の宴会などの自粛を要請する中、この写真を世論はどう受け止めるだろうか。」という内容でした。

杉尾秀哉議員の質疑に対する安倍総理の答弁

参議院インターネット審議中継

3月27日の参議院予算委員会で、杉尾秀哉議員がこの話を取り上げました。

安倍総理の答弁は以下のようでした。

  1. 写真は私的なレストランの敷地内におけるもの
  2. 東京都が自粛要請したような場所ではない

これについて考えていきます。報道は以下。

昭恵氏が花見?「公園ではなく…」 野党追及に首相反論(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

安倍昭恵氏写真「レストラン敷地内の桜の下で」「自粛要請に当たらない」 首相反論の詳報 - 毎日新聞

東京都の花見自粛の要請

東京都の小池都知事は特定の場所における花見の自粛を要請しました。

建設局所管施設でのお花見についてのお願い(第120報)|東京都

都立海上公園でのお花見についてのお願い(第123報)|東京都

これだけだと具体的な場所における宴会形式の花見の自粛を要請したように見えます。

ただ、3月27日には、花を愛でるだけの、宴会形式ではない花見も自粛させようとし、都が管理している場所の桜通りを封鎖するなどしていました。

小池都知事による花見自粛要請の趣旨

小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月27日)|東京都

  1. 換気の悪い密閉空間
  2. 多くの人の集まる密集する場所
  3. 近距離での密接した会話

これらの要素が存在する場所に行くことを自粛させるのが小池都知事の自粛要請の趣旨であり、「花見を禁止」したのはこれらのうち2・3番の要素があるからです。

ということは、単に花を愛でるだけであっても、都内ですから大人数がカメラを持ってやってきてそこに留まるわけです。

中には複数人で来る人も居るでしょう。

そういう集団が多数集まったら、長時間そのような環境に晒されるわけですから、立食形式の宴会とあまり変わりません。

安倍昭恵夫人が私有地のレストランで「花見」したのか?

さて、安倍昭恵夫人は私有地のレストランで「花見」をしたと言えるのでしょうか?

安倍総理の答弁だと「都が自粛要請しているような場所ではない」とだけ言っていますが、どうも「公共空間ではない」という用語があるせいで、形式的な観点から回避しているように聞こえます。

そのため、以下のような指摘が出てきます。

 「本当に写真撮影だけだったのか。。?」

それは質疑者である杉尾秀哉議員に言いなさい。

なぜ杉尾秀哉議員は突っ込まなかったのか?

参議院インターネット審議中継

安倍総理の答弁を聞いた杉尾秀哉議員は、具体的な状況について安倍総理に問い質しませんでした。

「写真を撮っただけですか?」「公共の場ではないですが、桜の木の下で宴会のような事をしていたんですか?」

こうした質問がまったくありませんでした。

それを聞けばハッキリとしたのに何も言わなかったのは、彼が無能でなければ実態を知っていて突っ込むと自分の方にボロが出ると思ったからでは

まとめ

  1. 東京都の花見自粛要請の本質は「多くの人の集まる密集する場所」「近距離での密接した会話」の要素がある場所に多数人が一定時間留まるのを防ぐため
  2. 安倍総理の答弁は写真を撮る際に近づいただけなのかがいまいちハッキリとしない
  3. 杉尾秀哉議員は「桜の木の下での写真」が、写真を撮る際に近づいただけなのか、どこで食事をしていたのかなど突っ込むべきだったのに、それをしていないのは不可思議

私有地のレストランということは、その時点で「不特定多数の人間が集まる」状況ではないわけです。ただ、写真では複数人で集まっているので、集まっていた時間がどれくらいなのかは重要です。

単に屋外の桜の木を背景に写真を撮るためだけに集合したというだけで非難されるのであれば、スーパーで買い物をしレジに並ぶ行為すら危険ということになります。

そんな評価はおかしいでしょう?

いずれにしても国会でこのような話を、しかも週刊誌をソースに聞く議員が居ることにゲンナリします。

以上

新型コロナウイルスのPCR検査の基準の誤解:検疫と積極的疫学調査と行政検査

新型コロナウイルスのPCR検査の基準と検疫、行政検査、積極的疫学調査

新型コロナウイルスのPCR検査の基準にかんして誤解が広まっているので、行政検査と保険適用検査と積極的疫学調査と検疫とについて整理します。

新型コロナウイルスの「検査」

新型コロナウイルスの検査は複数あります。

代表的なものとしてPCR検査=核酸増幅検査と抗体反応検査があります。

ここでは日本で行われているPCR検査について論じます。

 

新型コロナウイルスのPCR検査が行われる場面

行政が考えている新型コロナウイルスのPCR検査が行われる場面は以下の通りです。

  1. 行政検査
  2. 保険適用検査
  3. 積極的疫学調査
  4. 検疫

世間一般のPCR検査の基準は行政検査を指す

「37.5℃以上、4日間症状が続く」などの相談基準(検査基準ではない)が設定され、保健所に設置されている帰国者・接触者外来を通して行われるのは「行政検査」です。

※相談基準や検査基準は変遷があり、当初は「流行地域渡航歴」や「接触歴」の要件があったが、現在はその要件が無くとも可能になっている。参考:事 務 連 絡令 和 2 年 2 月 2 7 日厚生労働省 参考資料の別添

現在は「新型コロナウイルス感染症以外の一般的な呼吸器感染症の病原体検査で陽性となった者であって、その治療への反応が乏しく症状が増悪した場合に、新型コロナウ
イルス感染症が疑われる」、「医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症を疑う」場合にも検査の対象になっています。

行政検査は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」=感染症法の12条1項・14条2項に基づいて行われているものです(新型コロナは指定感染症として12条1項が政令により準用されている)。

この基準が多くのメディアで報道され周知されているので、行政が行う他の検査の基準との違いを「一貫性が無い」などと評している人が居ます。

 

保険適用検査の基準も行政検査がベース

新型コロナウイルスの保険適用検査は3月6日から開始されました。

参考:新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて

今般、PCR 検査に保険適用されるが、現在のところ、医師の判断により診
療の一環として行われ、帰国者・接触者外来を設置している医療機関等において実施する保険適用される検査については、前述の行政検査と同様の観点を有することから、同検査を実施する医療機関に対して、都道府県等から行政検査を委託しているものと取り扱い、当該検査費用の負担を本人に求めないこととする。

保険適用検査については行政検査を委託している扱いだということなので、基準は行政検査と同じと言ってよいでしょう(実態がどうなのかは確かめていませんが、行政検査の基準と異なるということは聞かない)。

新型コロナウイルスの疑似症サーベイランスと行政検査

感染症法

第十四条 都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、開設者の同意を得て、五類感染症のうち厚生労働省令で定めるもの又は二類感染症、三類感染症、四類感染症若しくは五類感染症の疑似症のうち厚生労働省令で定めるものの発生の状況の届出を担当させる病院又は診療所を指定する。

感染症法施行令(平成31年2月14日改正)

第六条

2 法第十四条第一項に規定する厚生労働省令で定める疑似症は、発熱、呼吸器症状、発しん、消化器症状又は神経症状その他感染症を疑わせるような症状のうち、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断したものとし、同項に規定する疑似症の
発生の状況の届出を担当させる指定届出機関の指定は、集中治療その他これに準ずるものを提供することができる病院又は診療所のうち疑似症に係る指定届出機関として適当と認めるものについて行うものとする。

新型コロナウイルスに関連した肺炎患者の発生に係る注意喚起について令和2年1月 17 日 別添4 疑似症サーベイランスの運用ガイダンス(第三版)

(新型コロナに限らない)「疑似症サーベイランス」の枠組みが感染症法14条1項に基づいて行われています。法文上、行政検査は「患者と無症状病原体保有者」を対象としているのに対してこちらは「疑似症」の動向を調査するものです。

新型コロナウイルスは1月31日まではこの枠組みに基づき動向調査されていました。

しかし、新型コロナウイルスが指定感染症に指定されたことを受けて、2月 1 日からは「その届出基準に従い新型コロナウイルス感染症症例を探知することになる」とされました。

現在は14条1項に基づくものではないが、同じ基準を採用しているということです。

参考:令 和 2 年 2 月 4 日感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第 12 条第1項及び第 14 条第2項に基づく届出の基準等について(一部改正)※この基準は3月27日現在も生きています。

※行政検査の規定は患者と無症状病原体保有者が対象であり、疑似症患者は記述されていない。しかし、新型コロナは指定感染症として1月31日の政令の3条感染症法8条1項と、8条3項(こちらは2月13日の政令の改正で)が準用されているため、「疑似症患者」を「患者」として扱うことになる

COVID-19の積極的疫学調査によるPCR検査

積極的疫学調査の基準

COVID-19の積極的疫学調査によるPCR検査は感染症法15条に基づくものです。

令 和 2 年 3 月 1 2 日積極的疫学調査実施要領について(周知)

新型コロナウイルス陽性者数(チャーター便帰国者を除く)とPCR検査実施人数(都道府県別)【1/15~3/6】魚拓

調査としての健康観察や検体採取

積極的疫学調査では、患者らに対して基本情報・臨床情報・推定感染源・接触者等を聞き取り、濃厚接触者については健康観察し、原則として発熱等がある場合には検査を実施=検体を採取することになっています。

「患者(確定例)」および「濃厚接触者」が対象ですが、「疑似症患者」が確定例となる蓋然性が高い場合には、確定例となることを想定して積極的疫学調査の対象とし、疫学調査を開始することも許容されるとあります。

原則的に無症状者には検査は行いませんが完全に可能性を排除しているわけではありません。

濃厚接触者の定義等についてはこちら

濃厚接触者への「クラスター対策」は積極的疫学調査の枠組み

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 3 月 19 日

クラスター対策」として行われている濃厚接触者へのPCR検査があります。

これは積極的疫学調査の枠組みで行われていることが読み取れます。

濃厚接触者の検査については「集団単位での感染拡大を封じ込める対応であることから、体温が 37.5 度以上あるかどうかにこだわらず、検査の必要性については、医師の判断を優先する」とあります。

積極的疫学調査の枠組みの基準で検査が行われている者に対して、行政検査と同じように考える者がいた結果起きた批判(だれかれ構わず検査するのは意味が無い、といったもの)が名古屋市のドライブスルーPCR検査に対するものでした。

検疫としてのPCR検査

令和2年3 月 18 日 新型コロナウイルス感染症への検疫対応に際しての質問票の取り扱いについて(流行地域の追加)

令 和 2 年 3 月 22 日新型コロナウイルス感染症の流行地域からの入国者の取扱いについて

検疫としての検査は検疫法13条に基づくものであり、行政検査や積極的疫学調査とも根拠法令が異なります。

クルーズ船のダイヤモンドプリンセス号の乗員乗客に対して行われていたのがこの検疫としての検査です。

ここでは過去14日以内に流行地域(入国制限対象地域)の滞在歴がある者に対して「赤い紙」を配布し、その者については「検査を行う」としています(現在の日本の状況からはPCR検査を実施するということになるハズ)。

この場合には症状が無い人もすべてが(現時点ではPCR)検査の対象としています。

参考:新型コロナウイルスに関するQ&A(水際対策の抜本的強化)|厚生労働省 

まとめ

  1. 「37.5℃、4日間の症状」などの基準があるのは行政検査
  2. ただし、現在では行政検査ですら医師が総合的に判断して検査の必要性を判断できる通知が出ている
  3. 積極的疫学調査の濃厚接触者への検査基準は行政検査とは関係ないが、原則的に無症状者には検査をしない。ただし、その可能性を完全に排除していない。
  4. 積極的疫学調査の濃厚接触者に対してはクラスター対策の観点から、37.5℃などの基準にかかわらず検査の必要性が判断される
  5. 検疫としての検査は14日以内に流行地域の渡航歴がある者に対しては、無症状者であってもPCR検査を実施している

武漢からのチャーター便の帰国者やクルーズ船のダイヤモンドプリンセス号の乗員乗客に対する検査基準と、帰国者・接触者センターに相談・検査する基準が異なっているのは、ここで紹介したような違いがあるからです。

厚労省がこのような区分けをしていること自体に異議を唱える者が居ますが、その当否については専門家の判断に任せるほかは無いと思います。

ただ、なにやら「偉い人だから検査したのだ」などという言説が広まっていることがありますが、それは検査基準の違いを知らない可能性が高いと思いますので、そういう人にはここで整理した内容を教えていただきたいと思います。

※この記事は3月27日時点の情報をベースに記述しており、今後、方針変更などがあり基準も変わる可能性があります。

以上

マイクロ飛沫とエアロゾル・空気感染の違いと主要感染経路

NHKスペシャル「パンデミックとの闘い」で【マイクロ飛沫】というワードが出てきたのでエアロゾルや空気感染との関係を整理します。

「主要感染経路」という考え方

「言葉の定義は~」という説明が先に来る文章はたくさんあると思うので、ここで説明する事柄が実務上どのような場面で機能するのかを先に示します。

マイクロ飛沫とエアロゾル

https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/132101/files/2016072900306/taiseikinn3.pdf

飛沫を介した感染が起こるか否か?

飛沫核やエアロゾルを介した感染が起こるか否か?

これを0と100で切り分けることは困難だということは想像できます。

結核が空気感染(飛沫核感染)と言われているのは「主要感染経路」が空気感染であると考えられ(分類され)ているからであって、当然、接触することや飛沫による感染をすることはあります。

逆にインフルエンザウイルスについて、極まれにエアロゾルや飛沫核による感染がありうるとしても、それは主要感染経路として空気感染するとは言えず、「飛沫感染する」という説明をするべきと解されています。

主要感染経路毎に対処方法の目安が定められているのは、接触感染・飛沫感染・空気感染とで注意すべき事柄がかなり異なってくるからです。「極稀にでも空気感染するのであれば空気感染であるとして扱え」としてしまうと、リソースの無駄になってしまいます。

参考:https://www.inazawa-hospital.jp/media/keirobetuyobou.pdf

以下はこうした事を念頭において理解すると良いんじゃないかと思います。つまり、感染症対策が先に来ており、ウイルスの振る舞い方を捉えるのが先決であり、物質の定義から主要感染経路の分類を決めているのでは無いということです。

飛沫・マイクロ飛沫・飛沫核の定義

マイクロ飛沫」という言葉は医学的な用語ではなく、固まった定義もありません。

ただ、NHKスペシャルの中ではくしゃみや会話の際に人の口から発せられる10マイクロメートル以下(0.01ミリ)の粒子とナレーションで紹介されていました。

さて、この説明ですが、従来の「飛沫」と何が違うのでしょうか?

飛沫と飛沫核

マイクロ飛沫と飛沫と飛沫核

http://www.showa-u.ac.jp/sch/pharm/frdi8b0000001sb0-att/a1437547184715.pdf

飛沫と飛沫核を説明した図では、飛沫="droplets"水分を含む・5マイクロメートルより大きい(「以上」という説明も多い)とされています。この数字は日本国内のいろんなところで使われているので、日本においてはこれが通説と言って良いでしょう。

対して「飛沫核」″droplet nuclei”は水分を含まない・直径5マイクロメートルより小さい粒子であり、空気感染の原因である、と説明されます。

この説明は日本国内のみならず、世界的な共通理解だと言えるでしょう。

参考:Respiratory droplets - Natural Ventilation for Infection Control in Health-Care Settings - NCBI Bookshelf

なぜ5マイクロメートルが基準なのか

なぜ5マイクロメートルで区切っているのかは確定できませんでしたが、気になる論文として「結核の感染(I) 青木 正和」に「飛沫核感染説」=空気感染説が生まれた背景について興味深い説明があります。

2. Wellsの 微小粒子(結 核 菌1~3個)に よる感染 の証 明
Harvard大 学 のWells WFは1930年 代 の前 半か ら実験的吸入 感染装 置 の制作 に取 り組 み,1940年 後 半 に ようや く完成 した。家兎 を使 っての実験 を繰 り返 した結 果,Wellsは 吸入感染 で は粒子 の大 きさが重 要で ある ことを証 明 し,飛 沫核 感染 説の骨格 を作 り上 げたのである。
Wellsら の実験 の結 論 は次 の ようにま とめ られ よう。5μ を超 え る大きい粒 子 は気 管,気 管支 上皮 な どの繊毛運動 と咳で外 に出 され るが,1~5μ の粒 子 は気 道 に付着せず,肺 の末梢 に到達す る。②家兎の吸入感染 は1~3個 の菌 を含 む1~5μ の粒 子で起 こ り,大 きな菌塊 では感染 しない。③咳をした時 に出 る飛沫 は肉眼で見 えるものか ら小 さい もの まで さまざまであ るが,外 に出 ると水 分 はほとん ど瞬 間的に蒸発 し菌は凝 集する。

どうやら結核の飛沫核感染説で導き出された数値がそのまま一般的な「飛沫と飛沫核の違い」の説明に繋がっているような気がします。

Loudonらは,咳 や会 話 の時 に飛散 す る飛 沫の数 を大 きさ別 に報告 してい る。特別の測定器 を作 り,健 康者3人 に15回 咳 を させ飛 沫数 を数 え,各 人 この実験 を2回行 った。 この結果 による と,飛 沫の大 きさ別 に累積百分率 を対数正規確率紙 にプロ ッ トす る と直線 を示 したの
で,咳 の飛 沫の大 きさの幾何 平均 は26ミ ク ロンであ るが5ミ クロ ン以下 の小 さい飛沫 が多 く49.6%を 占め,1回の咳 で平均465個(50~1,642個)認 め られた とい う。また,1か ら100ま で大声 で数 えた時の飛沫 も調べ ているが,平 均1,764個,大 きさの幾何 平均 は81ミ クロ ンだった とい う。1回 の咳の飛 沫 は30秒 大声 で喋 った 時の飛沫数 と同 じだった という。

しかも5ミクロン=マイクロメートル以下の飛沫数が全体の数の約半数だったという報告もあります。「飛沫の定義」と我々が見ている説明は、物質の連続した位相を捉えるにおいて一応設けられた区切りの基準であって、厳密な定義ではない、と捉えた方が良いと思います。

普通の飛沫とマイクロ飛沫の違い

NHKの番組ナレーションでも指摘されているように、くしゃみの際に肉眼で見ることのできるものは直径1ミリメートル(1000マイクロメートル)程度のものが主流です。

微生物学者のY Tambe氏によるとマイクロ飛沫="microdroplet" は5~500マイクロメートル程度の直径であるとされています。 

とはいえ、固まった定義はありませんので、「飛沫のうち、空中に長い間漂うような小さいサイズのもの」というざっくりとした把握をするとよいと思います。

飛沫とマイクロ飛沫"microdroplet"の動き

マイクロ飛沫とエアロゾルと飛沫核の違い

NHK(京都工芸繊維大学の山川勝史准教授研究室)

飛沫の落下速度は(無風状態で)30~80cm/秒

飛沫核の落下速度は0.06~1.5cm/秒

などと説明されることがあり、検索するとこういった説明が多く見つかります。

参考:飛沫の飛ぶ距離は? 対面調理時の衛生面への影響は?|Web医事新報|日本医事新報社

上記説明に言う「飛沫」は、大きい飛沫を念頭に置いているようです。

NHKの放送では、マイクロ飛沫は京都工芸繊維大学の山川勝史准教授の研究室によるシミュレーション上では空中を20分も漂うとされています。

大きさが10マイクロメートル以下(先に示した論文の記述にもあるように、一般的な「飛沫」の説明は5マイクロメートル以上だが、決してそれに限らないだろう)なので、まあそうなるでしょう。

この放送では20分以上はどのような動きになるのかわかりませんでしたが、この説明だと平均的な時間を示しているのだと理解するのが無難かなと思います。

なお、先に示した論文「結核の感染(I) 青木 正和」では既に以下の指摘があります。

咳 をした時の空気 の速さは300m/秒 にもなるので直径10μ あるいはそれ以下 の飛 沫も多 く飛散する といわれている

飛沫の落下速度に関する一般的な説明が妥当しない場合があるというのは、既にこの界隈では当然のものとして認識されていたはずです。

空気感染=飛沫核感染とエアロゾル、飛沫感染は何が違うのか

空気感染=飛沫核感染であるか、飛沫感染であるかの違いは、感染を引き起こす場合が空気感染の場合の方が広範に渡るものであると言えます。

たとえば物理的に別である空間であっても、それらを繋いでいる場合(空調が典型的)に感染が起こるのが空気感染(と分類されているもの)であり、飛沫感染(と分類されているもの)だとこのような感染は普通は起こりません(起こったとしても特殊な状況)。

物理的に同じ空間であっても伝送距離が空気感染とエアロゾル、飛沫感染とでは相当異なるとされています。

新型コロナウイルスに関して言えば、部屋の空調が繋がっていたダイヤモンドプリンセス号の感染状況や、クラスター感染の3条件(密集、換気の悪い密閉された空間、対面での会話)が揃うと途端に多くの感染伝播が起こるという新型コロナウイルスの疫学調査結果からは、空気感染と分類すべきものではないとされていると言えます。

飛沫とマイクロ飛沫とエアロゾルの違い

実は日本ではエアロゾルを介した感染を空気感染に分類している記述と別の分類に分けている記述とで分かれています。それをまとめているのが以下。 

そして、「エアロゾル伝播」という用語の定義、用いられ方を世界的に見てみると、「10マイクロメートル以下」など様々な伝えられ方がされているのが現状ですが、決してエアロゾル感染」という用語が主要感染経路として確立しているわけではないというのは断定できます。

以下の論文で用語法が「混迷」していることが伝えられています。

 一応のエアロゾルの理解(定義?)

それでも、一応のエアロゾルの理解を示す必要があります。

Tambe氏が作成した図がまとまっていますが、以下のように言えます。

  1. エアロゾルは口から発せられたか否かにかかわらず、空気中に存在する微小な物質(飛沫もマイクロ飛沫もエアロゾルも飛沫核も物質それ自体としては含まれることに
  2. 感染症の分野の話では、特に水分を含むもの(医療機器などを使用することで初めて発生する微小なもの)を指すことが多い
  3. 飛沫は口から発せられた、水分を含む液滴(マイクロ飛沫もここ)
  4. 飛沫核は口から発せられた、水分を含む液滴の水分が蒸発したもの

飛沫の発生源が我々人の口から飛ばされたものであるのに対して、エアロゾルはそういった限定の無いものを指す、ということは断言できます。気象学においてもエアロゾルという用語がありますからね。

どの分野の話題において使われているのか、によって指し示す内容が異なるため、混乱が生じているということです。

新型コロナウイルス=COVID19とエアロゾル

medRxivにUPされていた論文が3月18日にNEJMにも掲載され話題になりました。

この論文はドラム内にネブライザーでエアロゾル化した新型コロナウイルスを含む液滴を入れたところ、ウイルスが空中に3時間存在していたという結果を報告し、新型コロナウイルスについてエアロゾルを介した感染の可能性を示唆することとなりました。

しかし、「エアロゾル化した」と言ってもどれくらいの大きさなのか、それは人の口から発せられる飛沫由来のものと言えるのかという問題と、ウイルスが居ることと感染力がある事とは別であるという問題があります。

したがって、これをそのまま日常生活において当てはまることと捉えて良いかというとかなり疑問です。

ただ、クラスター対策のために3条件を避けるように、と言われていることがこの論文に示された結果によって科学的にも正しいことが示唆されたとは言えると思います。

まとめ

  1. マイクロ飛沫は飛沫の一種であり、昔から認識されていた
  2. 物質そのものに着眼した場合、マイクロ飛沫はエアロゾルに含まれる
  3. 物質そのものに着眼した場合、空気感染の原因である飛沫核はエアロゾルに含まれる
  4. 飛沫・マイクロ飛沫・飛沫核とエアロゾルとは、人の口が発生源であるか、そういう限定が無いものであるかの違い
  5. 飛沫と飛沫核の区分けの基準として5マイクロメートルがあるが、これは一応のものであって厳密な定義として捉えない方が理解しやすい
  6. 空気感染か飛沫感染かの分類は主要感染経路の把握をして対策を講じる際に重要。
  7. 新型コロナウイルスは空気感染するとは言えない(せいぜい「極まれにそういう状況になり得る」と言った方が機能的)

 

要するに医学分野の中の感染症分野においても用語の説明に違いがある言葉たちなので、混乱が生じていると言えます。

これは医療において連続的な位相があり得る物質について厳密な定義をすることにさしたる意義はなく、感染症をどう扱うかの問題が優先されてきた結果なんだろうと個人的には思っており、「そういう扱われ方がされている」と把握することで良しとするべきなのかもしれません。

以上