事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

トリエンナーレ検証委、上山信一「抗議電話は威力業務妨害」⇒4年前「スポンサーへの電話抗議をしましょう」⇒削除

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トリエンナーレ検証委員会の副座長の上山信一氏が、市民の抗議電話を「威力業務妨害」と言っていましたが、過去には抗議電話を煽っていた事実が判明しました。

そして、そのツイートは現在は削除されています。

トリエンナーレ検証委、上山信一「抗議電話は威力業務妨害」

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上山信一氏は「電凸」というものについて、「同じことを繰り返す」「侮蔑表現が多い」などという評価を加えた上で「犯罪」と言っています。

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上山氏はまともな抗議電話と電凸は区別しているようです。なので、電凸イコール犯罪という認識の下で発言していました。

しかし、これは「電凸」の一般的な用法とは異なる言葉の使い方です。

元々はインターネットスラングで、「抗議電話の音声をネット上にUPして相手の対応を晒す行為」くらいの意味です。そこに犯罪性があるという意味合いはありません。

定まった定義は存在していないのですが、勝手に言葉の意味を改変して良いものではないでしょう。

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このように、「電凸は犯罪」と言い続けてきた上山氏が、愛知県が公開した音声についても同様に「電凸」であると言っています

脅迫罪であるとも言っています。

https://twitter.com/ShinichiUeyama/status/1177615059897352192魚拓

愛知県の音声の一部はまったく犯罪ではない

上記記事でも指摘しましたが、音声5,6はそれだけでは確実に何等の犯罪も構成しません。単なる抗議電話ないし県民としての意見表明です。 他に長時間電話を切らなかったなどの事情が無い限りは。

そういう事実が示されていない現状では、これを「電凸=犯罪」と言って晒す行為は公的機関の人間として非常に不適切でしょう。

4年前「スポンサーへの電話抗議をしましょう」⇒削除

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元ツイ⇒https://twitter.com/ShinichiUeyama/status/589723030256951296

魚拓はこちら ツイログ

2015年4月19日には、上山信一氏は

「毎日放送「ちちんぷいぷい」の偏向報道に抗議されたい方は以下からメールや電話で抗議しましょう。次回の番組も偏向が目に余る場合は大々的なスポンサーボイコット(不買)運動やスポンサーへの直接電話抗議作戦も考えるべきです。」

などとツイートしていました。

ツイログからキャプチャーしたこの記事冒頭の画像から分かるように、このツイートは現在のアイコンになってからも存在していたことが分かります。

つまり、最近になってから都合が悪いと思って隠蔽するために削除された可能性が高いです。

どうも「威力業務妨害」が含まれるツイートがのきなみ削除されているようです。

通常の抗議電話なら消す必要はないのでは?

再掲

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このように、「まともな抗議電話は問題がない」と上山氏は言っています。

であれば、なぜ4年前のスポンサーへの抗議電話を呼び掛けるツイートを削除したのでしょうか?

自分の発言に一貫性が無いということを自覚していたのでしょうか?

まとめ:言葉の意味を改変し発言に責任を持たない委員

このように、上山信一氏は世の中で流通している言葉の意味を自己流に勝手に解釈して使用しており、なおかつ、ツイートを大量削除するという行為をしています。

発言に責任を持っていない者であることが明らかになりました。

こんな人間がトリエンナーレ検証委員会の副座長をやっており、「電凸体験コーナー」などとふざけたことを愛知県の公権力を用いて行うことを主導しているのですから、本当に恐ろしい限りです。

以上

市民「ライダイハン・大村知事の写真を燃やした展示」大村知事「誹謗中傷はご遠慮いただいております」

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大村知事が「ライダイハンを展示したい」という市民のツイートに対して「誹謗中傷はご遠慮いただいています」と返信しました。

市民「ライダイハンを展示したい」大村知事「誹謗中傷はご遠慮いただいております」

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本当にこんなことを言っています。

大村知事は「ライダイハンの展示は(誰に対するものか不明だが)誹謗中傷である」

と考えているということがこのツイートだけを見れば読み取れてしまいます。

韓国の利益の代弁者であるという推定が働きますね。

大村秀章「自分の写真が燃えるのは誹謗中傷・天皇はOK」

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一つのツイートに2つのリプライが付けられている事が分かります。

この一連の流れを見ると、どうも「誹謗中傷はご遠慮」のツイートは大村知事の写真を燃やす作品の展示についてのツイートに対してリプライしたかったように見えます。

「一般論として解説をしっかりと付ければありだと思います」のツイートの方が時間が先に来てるということからも、そういう可能性が高いと言えるでしょう。

しかし、「やはり誹謗中傷だと考えを改めた」という可能性も残ります。

先に「一般論としてはあり」と言っていたからと言って、なぜ「後から考えを変えて誹謗中傷と言った」という可能性を完全に排除できるのか?

何人ものアカウントが大村知事に対して、このツイートについて見解を求めるリプライをしているのに、まったく無反応だという事実もあります。

「誹謗中傷はご遠慮」のツイートから遡った場合には「一般論として~」のツイートは見えませんから、大村知事の発信方法では仮に考えを改めたのではないにしても、自ら誤解を招く発信をしているということです。

しかも、「自分の写真が燃やされるのは誹謗中傷」というのは、昭和天皇の肖像を含む版画が燃やされることを容認している態度と整合性があるとは到底言えません。

「天皇の写真が燃やされるのはOKで、自分の写真はダメ」という考えの持ち主だということです。

一般的な人ではなく大村秀章知事という特徴の人の発信

大村知事は、マズいと思ったらツイートを削除する人ですし、愛知県HPでも第一回検証委員会の告知ページが削除されましたし、「電凸音声」とされたものを公開したページも削除されました。この姿勢は一貫していると思います。

そういう人がライダイハンツイートに対する「誹謗中傷」のリプを2日以上経ってから訂正しないという事実があるせいで、本当にそういう考えであるという可能性がどうしても残ってしまいます。

ブロックするから訂正もできない大村知事

大村知事はこのアカウントをブロックしたようです。

そのため、仮に間違ってリプライをしたとして、そのことに気付くことができないのでしょう。それによる第三者からの評価は大村知事が甘受すべきことです。

大村知事は過去には自分のツイート(コスプレ画像を紹介したもの)のスクショを添付したツイートを「誹謗中傷」と言っていたように、支離滅裂な態度を取り続けてきた自業自得でしかありません。

まとめ:「切り取り・切り貼り」というアクロバティック擁護

なお、大村知事がライダイハン展示のツイートに対して「誹謗中傷~」というリプライをしたことを指摘したことについて「切り取り・切り貼り」という謎の擁護をする者が居ますが、無理やり過ぎて話になりません。

「ライダイハンのツイート」に対して「誹謗中傷~」とリプライをしたのは厳然たる事実であり、仮にミスであれば公職者であれば発信によって誤解を生じさせること自体が不適切な行為です。

そして、大村知事は天皇の肖像が燃えるのはOKなのに、自分の写真が燃えるのは誹謗中傷だという見解の持ち主であるということが今回明らかになったのであり、それは動かしようのない事実です。

以上

※追記:かなり経ってから大村知事のツイートで「誹謗中傷はお断り」に関してはライダイハンに対するものではない旨が説明されました。ならばなぜツイートは削除しないのか疑問ですが。

大村知事、反対意見を伝える電話を「威力業務妨害の電凸攻撃」もはや正常な判断ができていない

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愛知県のHPで、トリエンナーレ事務局(愛知県職員が対応)に対して作品展示への反対意見を述べる電話の音声を公開したことに関して、大村知事は「電凸攻撃、威力業務妨害」と言い放ちました。

大村知事、反対意見を伝える電話を「威力業務妨害の電凸攻撃」

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具体的な音声は以下の記事や愛知県のHPから聞いてみればよいですが、音声1~7のうち、音声5,6は罵声などもなく単に作品展示についての反対意見を述べただけに過ぎません。

それ以外の音声では罵倒語を使ったものもあって違法の可能性は出てきますが、それでも罵倒語を用いたことが直ちに威力業務妨害になるとは限りません。

県民の財産を利用して作品展示がなされているわけであり、基本的には県民の意見を伝えるのは当然にして許されることです。

愛知県のHPやYouTubeページには何らの説明もなく、不必要に長時間の電話で相手を拘束したといった事実の記載が無いので、2~4分の電話内容でしか我々は判断できません。

威力業務妨害なら警察への被害届は出したのか?

大村知事が言うように、音声1~7がすべて威力業務妨害に当たると考えているならば、警察に対して被害届を出しているはずです。

しかし、そんなことをしているのでしょうか?

音声5,6のような明らかに違法ではない電話についても被害届をだしていたとすれば、それこそまともな判断能力が無いということを暴露していることになります。

太下義之「電凸は検閲・ソフトテロ」という超理論

検証委員会委員の太下義之氏は「電凸は検閲・ソフトテロ」と超理論を呻いています。

もう「検閲」の「拡大解釈」や「概念操作」どころの話では無くて「言葉の創造」のレベルになってますね。

こんな無意味なポエムを聞かされる検証委員会って存在意義はあるのでしょうか?

この検証委員会の委員の選定過程はどうなってるのでしょうか?

ネットで実名を特定、「炎上」「電凸」 米国でも日本と同じことが起きていた : J-CASTニュース

動画の2時間45分くらいで太下氏「電凸は先進国は日本だけだと思う」

ごく簡単な事実を調べずに検証委の場でテキトーな事を述べる人が委員をやってるということですね。

上山信一「半分冗談だけど電凸体験コーナーを設けよう」

検証委員会副座長の上山信一氏は「電凸」を単なる「抗議電話」「意見」というものではなく、「不当なもの」という意味合いで用いています。そのため、音声5,6も不当なものであると評価しているのでしょう。

そして、「電凸体験コーナー」などとおちゃらけたことを言っています。

3回目の検証委員会の終盤でも「半分冗談なようですが…」と言いながら「電凸をHPで公開したらどうか」と言っていました。

これ、津田大介の「天皇が燃えるんだよあひゃひゃ」と何が違うのでしょう?

おんなじレベルのものを公的な場で発言して実行したという意味でもっと悪質です。

まとめ:もはや正常な判断ができていない検証委員会

検証委員会の委員の多数がまともな判断力を有していないということが分かりました。

「検閲」「表現の自由」についても曽我部教授が「基本的に契約関係であり憲法上の表現の自由がストレートに問題になるわけではない」「自分の気に入らないものに対して検閲というレッテル張りをする局面もみられた」と指摘しているのに、一向に「検閲」という語の使用をあらためることをしません。

曽我部教授一人でなんとかなる話ではないですね。

こんな組織がまともに芸術祭運営について検討できるとは到底思えないので、やはり補助金の不交付決定は正しいでしょう。

以上

朝日新聞官邸クラブが正体を現す「日本人に対するヘイトスピーチは日本の法律では違法ではない」

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朝日新聞官邸クラブのツイッターアカウントが正体を現しています。

事実誤認に基づく発信なのでしっかりと事実を理解しましょう。

朝日新聞官邸クラブ「日本人に対するヘイトスピーチは日本の法律では違法ではない」

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まず「日本人に対するヘイトスピーチは日本の法律では違法ではない」の部分。

これは事実誤認です

ヘイト規制法は「本邦外出身者」への不当な差別的言動を禁止

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律

通称「ヘイト規制法・ヘイト禁止法」と呼ばれる法律ですが、「不当な差別的言動」の中にはいわゆる「ヘイトスピーチ」に相当する事象も含まれて居ます。

そして、ここでは「本邦外出身者」を保護対象として定義しています。

(定義)
第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。

このように「日本国籍を有しているのではないこと」というような要件はありません。

  1. 「本邦の域外の出身者又はその子孫」に対して
  2. 「本邦の域外の出身であることを理由」として

ですから、例えば「にしゃんた」氏や「大坂なおみ」選手に対して(いずれも現時点で日本国籍者)、その出自を理由とした排斥言動を行えば、ヘイト規制法上の違法行為になります。

なお、定義規定のうち「専ら」という部分は「差別意識を助長・誘発の目的」にかかっており、「出身」にはかかっていません。

ヘイト規制法・ヘイト禁止法は在日韓国・朝鮮人が念頭

第190回国会 参議院 法務委員会 第8号 平成28年4月19日

○西田昌司君 まず、いわゆるこのヘイトスピーチですけれども、現在も問題となっているヘイトスピーチ自身は、いわゆる人種差別一般のように人種や人の肌とかいうのではなくて、特定の民族、まさに在日韓国・朝鮮人の方がターゲットになっているわけですよね。ですから、そういう立法事実を踏まえて、この法律に対して対象者が不必要に拡大しないように、立法事実としてそういう方々が中心となってヘイトスピーチを受けているということで、本邦外出身者ということを対象として限定しているわけでございます。

法案発議者の1人である西田昌司議員の説明では在日韓国・朝鮮人を主な対象としているということが答弁されました。

もちろん、そのような者でなければ本法の対象ではないということではありません。

あくまで「本邦外出身者」や「適法に居住している」という限定要件を加えた理由=立法事実として説明されているに過ぎません。

たとえば元在日韓国・朝鮮人で現在日本国籍を取得している方が、その出自を理由に排斥言動を受ければ当然に本法の対象になります。ならなければおかしいです。

ただ、罰則が無いというだけです。

基本的に国・地方公共団体に対して努力義務を課しているだけの理念法なので。

日本人であることを理由とした排斥≒純日本人は対象外のおそれ

ところが、残念なことに以下のような例は、本法では捕捉されない可能性が高いです。

『元在日韓国・朝鮮人が「チョッ〇リは韓国人街から出ていけ」と言われた』

「出自という属性を理由に排斥を受ける」という状況は同じなのに、「日本人であること」を理由とした排斥は本法では保護対象とはならないのか?

いわゆる「純日本人」が保護の対象外ではないか?

これがヘイト規制法の成立時からおかしいと言われてきたことです。

実際に訴訟になったことが無いのでわかりませんが、規定の文言上は外れていると理解せざるを得ないでしょう。

ただ、「附帯決議」には「本邦外出身者に対する不当な差別的言動以外のものであれば許されるというのは誤った理解である」という文言もあるので、それが純日本人に作用するのかは分かりません⇒本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案:参議院

大阪市のヘイト規制条例は純日本人も対象と明言

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大阪市:「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の運用について (…>人権>ヘイトスピーチ)

勘違いされていますが、大阪市のヘイトスピーチ規制条例は、ヘイト規制法とは異なり、日本人へのヘイトスピーチも対象となると明言しています。

しかも、ヘイト規制法とは異なり、「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団」が保護対象であるという文言になっており、ヘイト規制法上の「本邦外出身者」とは異なる規定ぶりですから、純日本人も対象になるということは明らかでしょう。

まとめ

朝日新聞関係者がこのような理解なのは、「日本人」が気に食わないから法律の文言をきちんと読み込んでないからでしょうか?実に朝日新聞らしいと思い、そのくぉりてぃは日本一だと思います。

以上

愛知県、「電凸」の音声をYouTubeで公開してしまう

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愛知県のHPでトリエンナーレ事務局にかけられた電話音声が公開されました。

ちょっと信じがたい行いです。

追記:やはり不適切だったのか削除されました。

愛知県、「電凸」の音声をYouTubeにUPしてしまう

あいちトリエンナーレ2019に寄せられたご意見等 - 愛知県魚拓

YouTubeページのリンクが貼ってあります。

「電凸」の定義なんて存在しないのですが、一般的には「不満がある場所に専ら文句を言いうために電話をする」というものでしょうか?

トリエンナーレ検証委員会で「電凸も公開したらいい」

トリエンナーレ検証委員会の中で、「電凸も公開したらいい」と言う意見が出ていました。個人名が出ないように配慮はされています。

しかし、公開された音声って、果たして「電凸」なのでしょうか?

暴言の無い意見の表明に過ぎない電話が含まれている

音声5と音声6を貼ります。

これらの音声の中では「暴言」はなく、単に意見を伝えているだけに過ぎません。

改めて愛知県のHPを見ると「あいちトリエンナーレ2019に寄せられたご意見等」というタイトルになっており、必ずしも「不満がある場所に専ら文句を言うために電話をする」という意味の「電凸」と言われるようなものではないようです。

それとも、音声5,6も「電凸」だと言うのでしょうか?

単なる意見の伝達も「電凸」なのか

トリエンナーレ検証委員会で「電凸も公開したらいい」と言っている中で、何らの説明もなく音声だけをUPしているということは、全てが「電凸」であり、何か「通常の意見表明とは異なる不適切なもの」、という先入観を閲覧者に与えているでしょう。

単なる意見の伝達の紹介をする趣旨であれば、第三回検証委員会においてアンケート結果を載せているのですから、不必要なものです

こういう事を公的機関がするとは情けないです。

特に音声5は、応対者の対応が相手の意見を否定する文言を多用しており、民間企業のオペレーターとしては基準を満たしていないとされるでしょう。おそらく職員にも了解を取っているのでしょうが、こんな対応を聞かせて損をするのは職員の方です。

むしろ、この動画を公開したことで「愛知県側が事業の体制を整えていなかった」という事実が再認識されるだけでしょう。

これで被害者ぶることが出来ると思ったのでしょうか?

民間の目はそんなに甘くないですよ。

追記:なんと、大村知事は「威力業務妨害」とまで言っていました。

以上

大村知事、国地方係争処理委員会ではなく訴えの提起の構え:愛知県自民党公明党が試される

文化庁がトリエンナーレの事業者たる愛知県への補助金を不交付決定したことを受けた大村知事の行動が注目されます。

大村知事の方針の変遷と、その実現可能性について検討します。

26日午前は国地方係争処理委員会への申出を予定

芸術祭への補助金不交付の方針 大村知事 係争処理委で確認も | NHKニュース

文化庁が愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」に交付する予定だった補助金を交付しない方針を固めたことについて、愛知県の大村知事は国と地方の争いを調停する「国地方係争処理委員会」を通じて文化庁の方針に合理的な理由があるのかなどを確認する考えを示しました。

地方自治法250条の13で国と自治体の争いについて国地方係争処理委員会への審査の申出が規定されています。

地方自治法

(国の関与に関する審査の申出)
第二百五十条の十三 普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるもの(次に掲げるものを除く。)に不服があるときは、委員会に対し、当該国の関与を行つた国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる。

この手続に則った場合の流れは以下になります。

不服などがあれば訴訟提起になります。

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http://www.soumu.go.jp/main_content/000451044.pdf

26日夕方、大村知事がいきなり裁判をすることを表明

“トリエンナーレ”文化庁が補助金不交付…大村愛知県知事「承服できない」国を相手取り提訴へ - FNN.jpプライムオンライン

大村知事は「抽象的な事由で一方的に不交付決定されることは承服できない」とした上で、憲法21条の表現の自由を侵害するとして、国を相手取り提訴する方針を明らかにしました。

大村愛知県知事:

「正直言って寝耳に水で驚いた、ということでありまして。我々としては速やかに今回の決定については、正していかなければいけないという風に思いますので、法的措置を講じたい、裁判で争いたい」

国地方係争処理委員会を通さずにいきなり裁判を起こすようです。

ただ、この場合は手続上のハードルがあります。

愛知県議会の議決に基づく訴えの提起

国地方係争処理委員会の審査を経ずに訴えの提起をするには、議会の議決を通さなければなりません。自治体の訴えの提起は基本的に議会の権能です。 

地方自治法

第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
省略
十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(省略)、和解(省略)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。

では、大村知事の意向の通りに訴え提起の議決をすることは可能でしょうか?

政治的な実現可能性の話になります。

愛知県議会は大村知事が所属する自民党が過半数を有していますが、この辺りの人員配置を見ると、政治的なハードルはかなり高いと思います。

すると、大村知事としては「裏ルート」を使う可能性があります。

普通地方公共団体の長の専決処分は裁量権の逸脱?

普通地方公共団体の長の専決処分で訴えの提起ができる場合があります。

第百七十九条 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。
(ただし書以下省略)

第百八十条 普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。
○2 前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない。

しかし、179条の専決処分は議会が成立しない場合の特例であり、現在は愛知県議会が開いていますから、これは使えません。

基本的に議会の権限、簡易な事項の解釈

次に、180条に基づく専決処分は解釈の余地がありますが法制執務支援システムのページで判例が紹介されています。

紹介されている判例の事案は東京都議会で行った議決に関するもので、訴えの提起と同じく、議会の議決事項とされている和解につき、昭和39年になされた議決では、応訴事件において、裁判上の和解をする際には、金額の上限の定めが有りませんでした。そのため、東京都では、知事の専決処分により、85億円の和解金を支払う和解を成立させたところ、違法な支出であるとして、住民訴訟が提起されたというものです。

東京高等裁判所平成13年8月27日判決(判例時報1764号56頁)抜粋

どのような訴訟上の和解が法180条1項にいう軽易な事項に該当するか否かの判断は、第一次的には当該普通地方公共団体自身の意思、すなわち、住民の代表者で構成される議会の判断にゆだねられているものというべきである。

しかし、法180条1項が、特に軽易な事項に限って長の専決処分にゆだねることができる旨を規定していることからすると、およそ訴訟上の和解のすべてを無制限に知事の専決処分とすることは法の許容するところではないというべきであり、このような議決がされた場合には、議会にゆだねられた裁量権の範囲を逸脱するものとして、違法との評価を受けるものというべきである。

都が提起する訴訟事件が除外されているとはいえ、およそ都が応訴した訴訟事件に係る和解のすべてを知事の専決処分とすることは、あまりに広範囲の和解を知事の専決処分をにゆだねるものといわざるを得ない。応訴事件に係る和解のすべてが軽易な事項であるとすることは、「和解」を原則として議会の議決事件とした法96条1項12号及び議会の権限のうち特に「軽易な事項」に限って長の専決処分にゆだねることができる旨を規定している法180条1項の趣旨に反するものであって、本件議決は、都議会にゆだねられた上記裁量権の範囲を逸脱するものというべきである。

ただし、この事案では、議決は違法・無効ではあるが、当該議決が一義的に明白に違法であると言うことはできないとして都知事個人の損害賠償責任を否定しています。

地方自治法180条の簡易な事項に関する各自治体の条例

訴えの提起、和解、調停及び損害賠償額の決定に関する区長の専決処分について(東京都豊島区)

区営住宅その他の区が管理する住宅の明渡し並びに滞納使用料等及び損害金の支払に係る訴えの提起、和解又は調停で、目的の価額が、千百万円以下のもの

訴えの提起等及び和解に関する知事の専決処分について(東京都)

 都が提起する訴えであって、その訴訟の目的の価額が三千万円以下のもの

検索エンジンで「専決処分 訴えの提起」などで調べてみると分かりますが、実際に各自治体で専決処分として提起された事案を見ると、目的の価額が1000万円以下のものばかりです(それ以上のものは見つけられず)。

東京都という巨大自治体ですら、自治体側から提訴する場合には3000万円以下という条例がわざわざ設定されているのです。

よって、愛知県が7800万円を問題にする本件の文化庁の補助金不交付決定処分について、県知事の専決処分をすることは「簡易な事項」を超えるものとして裁量権の範囲を逸脱するおそれがあります。

※文化庁の補助金不交付決定処分に対する訴訟が「簡易な事項」となるのかは7800万円という額がダイレクトに参照されるものなのか、厳密に検討していません。

過去の事例が積み重なっている現在、無理にこれをやれば「大村秀章個人に訴え提起にかかった費用の損害賠償請求」が住民訴訟で為される可能性があるのではないでしょうか。

追記:愛知県の例規集の「専決事項」において訴えの提起ができる対象が限定されていました。本件で専決処分をすることは不可能です。

まとめ:大村秀章個人の法的・政治的責任が問われる

大村知事が「憲法21条の検閲になる」などと意味不明な憲法の理解に基づいて事業の統制ができなかったことに加え専決処分を無理に行えば7800万円+αの法的責任が大村秀章個人にかかる可能性があります。

また、政治的には訴えの提起ができない場合、又はできても敗訴した場合には7800万円の補正予算措置を講じなければならないため、県知事の政治責任が問われることになります。

以上