事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

余命三年時事日記読者の懲戒請求者が今度は弁護士に訴訟提起

ブログの煽動によって弁護士に対して大量に不当な懲戒請求が為された事案。

既に懲戒請求者が弁護士から民事訴訟を起こされて敗訴している件も出ているところ、訴訟提起自体が不法行為であるとする民事訴訟が提起されたようです。

弁護士に対する大量懲戒請求

「余命大量懲戒請求」事案で初の判決:金竜介弁護士に33万円

弁護士に対する大量懲戒請求訴訟の結果:嶋崎量弁護士の場合

弁護士に対する大量懲戒請求訴訟の結果:佐々木亮・北周士弁護士の場合

大量懲戒請求事案については全国複数の弁護士が懲戒請求者に対して不当懲戒請求であるとして提訴しており、請求認容判決が出ています。 

これらは懲戒請求者の一部に過ぎませんのでこれからもどんどん判決が出るでしょう。

結局請求額と和解額は高過ぎだったのか?

佐々木・北弁護士は一人当たり5万円(2人相手で10万円)の和解金額、請求金額は33万円でした。他の弁護士は一人あたり10万円の和解金額を設定していた方も居ました。

請求書1枚に対する反論にはそんなに損害が観念できないのではないか?と言われており、そのためにこの金額が高すぎるのではないか?と言われていました。

結論としては請求認容額が30万円(嶋崎弁護士などは弁護士費用3万円も認められた)だったため、妥当ということになります。

私も、将来の濫訴的懲戒請求の抑止のためには、このくらいの金額になるのは仕方がないのかなと思います。

その他、細かい論点については以下でまとめています。

弁護士への「大量」不当懲戒請求:余命信者と佐々木・北弁護士の和解の論点

【余命大量不当懲戒請求】その他の問題点と疑問点

弁護士会のガバナンス

今回の事案は、半ば弁護士会の仕組みの不備のせいで発生したと言うほかありません。

単位弁護士会によっては異なる対応をしたところもあるようですが、一連の事案における弁護士会、特に東京弁護士会の本件の対応は残念としか言えません。

「懲戒請求書と題する書面」に過ぎない怪文書を流れ作業的に弁護士に送付して懲戒請求の手続に乗せたのは、端から見ても異常です。弁護士自治を標ぼうするならスクリーニングくらいかけるべきでしょう。

弁護士法58条1項には「その事由の説明を添えて」という要件があるのですから(現在の運用では要件とは考えていないと言えるが)、それをみたしていないような書面についてまで懲戒請求書として扱うべき必然性は無いはずです。

弁護士に対する懲戒請求権は個人の利益保護のためのものではなく公益的見地から特に認められていることからみても、「懲戒請求である」旨が書いてある書面を懲戒請求の手続に乗せる前にチェックがあっても何ら不思議ではないでしょう。

別の視点から、今回の懲戒請求は川村真文弁護士の言うように「主張自体失当」の類のものです。このような場合には返戻するなどの運用が敷かれるべきではないでしょうか。

懲戒請求をするには手数料を取るという弁護士会の規約改訂をするにしても、こういった具体的な運用改善も必要でしょう。

井上太郎と青林堂の責任

青林堂事務局が運営している井上太郎氏のブログにおいて、懲戒請求者に対する訴訟についての準備書面と題する文書を、700円の購読料を支払うことで閲覧できるページに掲載していました。

たしかに準備書面のみを700円で販売していたわけではないですし、特に懲戒請求者だけに送付したという事情はないので非弁行為ではないのでしょうが、何とも言えませんね。

青林堂は懲戒請求を煽動したブログの名を冠した書籍の出版社でもあります。 

当該ブログは一端閉鎖したあと復活したようですが、偽物か否か判別する気も無いのでここで紹介することはしません。読んだところで時間の無駄です。

青林堂にかんする労働訴訟で佐々木弁護士が相手方代理人だったことがあります。

佐々木弁護士がもっとも多い3パターン・3300通もの懲戒請求書の送付を受けたのは、そういう背景があるのでしょう。

以上