事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

前川喜平:右傾化を深く憂慮する一市民の鍵垢時代のツイート

天下り斡旋の違法行為で懲戒処分を受けた後に退職した元文部科学事務次官の前川喜平

彼のツイッターアカウントと呼ばれていたものは「鍵垢」化していましたが、今日、オープンになり実名表記になりました。

鍵垢時代のツイートをまとめます。

右傾化を深く憂慮する一市民@brahmsloverが前川喜平である根拠

(3ページ目)安保法制反対デモに参加した事務次官 前川喜平が語る「安倍政権下の“苦痛な仕事”」 | 文春オンライン

――一市民という言葉が出ましたが、ツイッターに「右傾化を深く憂慮する一市民」という名前の@brahmslover(ブラームス・ラバー)というアカウントがあるんです。前川さんはクラシック音楽でブラームスがお好きと伺いましたが、これは前川さんのアカウントではないかという噂もあるんです。

前川 ああ、それ私ですよ(笑)

この記事が捏造でなければ、本人の発言なので信用するほかないでしょう。

今のところ、@brahmsloverというネームは変更されていない上、2012年の登録なので、なりすましがアカウントを作成したという可能性はゼロです。

少なくとも2018年3月下旬には鍵垢になっていたので、それ以降のツイートがどうなっていたのか確認していきます。

「千年後には「日本人」は絶滅する」

http://archive.is/f7NqX

このツイートの後には多文化多民族共生社会をつくらなければならない、ということもツイートしており、おそろしい思想だなと思います。

血統主義ではなく出生地主義にせよ、という意味なのでしょうか?

あまりにもぶっ飛んでいて考えを理解することは不可能です。

「大坂なおみには国民栄誉賞はあげるな」というヘイト

http://archive.is/FlGrq

これはヘイトですね。

大坂なおみさんが国民栄誉賞が欲しいと思っていたらどうするんでしょうか?

天皇制廃止を主張

http://archive.is/RhVT8

わざわざ昔のツイートを再掲してまで伝えたいことだったんでしょうね。

でも、今現在であっても、天皇制廃止を主張しても何ら違法ではないですよ?

「不利益」を被らない社会って、言論には責任が伴うわけで、それに対する反論や冷めた扱いなどの不利益は甘受するべきだというのが自由社会なわけで、意味不明です。

元号使用に対する憎悪

http://archive.is/SV23x

多文化共生とか言ってたのに西暦使用の強制をするつもりでしょうか?

その他

http://archive.is/HHX34

柴山文科相が教育勅語について「たとえば国際協調を重んじると言った部分を現代的にアレンジした形で、教育していこうという動きがあり検討に値する」という旨の発言に対するものでしょう。

その発言はまったく問題ないことにつき以下。

柴山昌彦文科相の教育勅語「国際協調」は間違いではない

http://archive.is/YFvQq

国家戦略特区などで既得権益を破壊された恨みつらみが出てますね。

まとめ 

なぜ、このタイミングで実名化したんでしょうか?

実名で鍵なしの方がフォロワーを集めやすく、言論を拡散しやすいのでしょうが、それをする目的・動機は何なんでしょうか?

以上

アメリカ国防総省のインド太平洋戦略報告書で台湾が「国」表記:メディアが報じない理由

インド太平洋戦略報告書、台湾、国

米国防総省のインド太平洋戦略報告書で台湾が「国」表記されたと言われています。

この点について気になったことをまとめます。

米国防総省の報告書に関するメディアの報道

米国防総省、台湾を国家と表記 : 東亜日報

米国防総省が最近発表した「インド太平洋戦略報告書」で、台湾を協力すべき対象「国家(country)」と表記した。これは、米国がこれまで認めてきた「一つの中国(one China)」政策から旋回して台湾を事実上、独立国家と認定することであり、中国が最も敏感に考える外交政策の最優先順位に触れ、中国への圧力を最大限引き上げようという狙いがうかがえる。

日本語媒体では東亜日報ロイターが「国」表記を報じています。

サウスチャイナモーニングポストでも「国」と表記したことを好意的に論じています。

台湾と関係強化へ 米国防省、2019年インド太平洋戦略報告を発表 - ロイター

米国防総省は6月1日、「2019年インド太平洋戦略報告書」を発表した。このなかで、米国は台湾について、地域のパートナーシップを強化する4つの「民主主義の国家の一つ」として取り上げた。

30ページの報告書のなかで、「インド太平洋地域の民主主義の社会がある地域に、シンガポール、台湾、ニュージーランド、モンゴルは信頼でき、有能で、米国の自然なパートナーである」「自由で開かれた国際秩序を維持するために積極的に行動を起こしている」と書いた。 

Taiwan put on US defence department list of ‘countries’ in latest move likely to goad China | South China Morning Post

Analysts said the use of “countries” is the latest salvo by the Trump administration as the US and China face off over trade, security, education, visas, technology and competing visions of “civilisation”. Past references to Taiwan as a nation have tended to involve misstatements by US officials rather than wording in a well-edited report, they added.

ただ、ロイターの方は、かっこつきで「民主主義国家の一つ」という表現をしており、東亜日報らのような評価は下していません。

日本のメディアで「国」表記について殊更に取り上げて報じているものはありません。

では、元ネタである報告書を見てみましょう。

アメリカ国防総省のインド太平洋戦略報告書"Indo-Pacific Strategy Report"

Indo-Pacific-Strategy-Report-taiwan

"All Four Countries"

報告書の30頁にはこのような表現があります。

これが「国」と訳されて伝わっているところです。

まぁ、間違いではないんでしょうけれども、この表記が特別なニュースかというと、ちょっとよくわかりません。

なぜなら、前々から台湾を含むものとして"Country"と表記したものがあるからです。

前々から台湾を"Country"と表記していたアメリカ政府

f:id:Nathannate:20190609105245j:plain

https://www.federalregister.gov/documents/2010/06/11/2010-14123/defense-federal-acquisition-regulation-supplement-new-designated-country-taiwan-dfars-case-2009-d010

他:Federal Register :: Federal Acquisition Regulation; FAR Case 2009-014, New Designated Country-Taiwan

2010年の時点で台湾を"Country"と表記しているものが見つかります。

CIAの以下のページでも"Country name"という項目があります。

East Asia/Southeast Asia :: Taiwan — The World Factbook - Central Intelligence Agency

もともと"Country"と表記することにシンボリックな意味はないのかもしれません。

そしてアメリカ以外でも台湾を"Country"と表記するものは前からありました。

WTOの「政府調達に関する協定」(Agreement on Government Procurement:略称GPA)

政府調達に関する協定 - Wikipedia

WTO政府調達協定 | 外務省

WTO | legal texts - Revised Agreement on Government Procurement

WTOの「政府調達に関する協定」の英語原文を見ると、名宛人は"Country"になっているのが分かります。批准している"Country"として台湾も含まれています。

私は外交上の英語表現の作法について知りませんが、おそらくは"Country"は国際的な場面においては「国と地域」を包括する用法としても用いられているのではないかと推測します。

"Statehood"、"Nation"と"Country"と"Region"、"Area"

そもそも"Country"の原義を見ると「国家」以外に「地方」「地域」もあります。

日本の外務省の英語版ページやアメリカ国務省(外務省に相当)のページを見ると、日本は"Countries & Regions"、アメリカは"Countries & Areas"となっており、「地域」についても表記にブレがあります。

"Statehood"や"Nation"と表記していたならニュースだったのではないでしょうか。

 

インド太平洋戦略報告書に触れながら「騒いでない」もの

米国が本気を見せた! アジアの新たな安保体制の構築へ (2ページ目)

米のインド太平洋戦略が始動 | NEXT MEDIA "Japan In-depth"

宮家邦彦氏の記事では、インド太平洋戦略報告書に触れながらも、以下論じています。

そもそも、この「新たなインド太平洋戦略を発表した」とする報道には一部事実誤認がある。シャナハン長官代行が言及したのはあくまで既存のFOIP戦略であって、「新たな戦略を発表した」わけでは必ずしもない

こうした誤解が生じた理由は簡単だ。シャナハン演説と同時に、米国防総省が初めて「インド太平洋戦略に関する報告書」を公表したからである。同報告書は英文で55ページ、かなりの分量で従来のFOIPの経緯や現状を分析し、「修正主義勢力たる中国」、「復活した悪意ある勢力ロシア」、「ならず者国家北朝鮮」について記述している。要するにシャナハン演説は、同報告書の内容を念頭に、昨年よりさらに詳しくFOIP戦略を説明しただけなのだ。

ここでは、昨年のマティス演説と比べ、シャナハン長官代行が今回新たに言及した重要部分のみをご紹介したい。ポイントは3つある。

第1は、シャナハン長官代行がFOIP戦略の主たる対象が中国であることを前提に、具体的国名にこそ言及しなかったものの、厳しく批判したことだ。

第2は、昨年と比べ、FOIP戦略の内容がより具体化していることだ。

第3に、最も重要な点に触れよう。同長官代行は演説の中で、FOIP戦略において「共通目標を支援する協力的な地域安全保障ネットワークの構築を進めて」おり、「関係各国は主権をしっかりと確保し、独立した決断を行うための能力獲得に投資してほしい」と呼びかけている。

台湾を「国」表記にしたことそのものについては、まったく触れていません。

まとめ:シャナハン国防長官代行演説と報告書の中身が大事

台湾をどう表記したか、ということよりも、シャナハン国防長官代行が演説において念頭においていた報告書の中で、アメリカが台湾との関係を強化し、実質的にアメリカの"One China policy"を変更する方向に進んでいるという動きこそが本質ではないでしょうか。

日本どころか各国のメディアが"Country"と表記したことについて騒ぎ立てていないのは、そういうことなのかもしれません。

以上

戦後の帝国議会での男系・女系天皇・女帝の論議

f:id:Nathannate:20190608145849j:plain

戦後の帝国議会で「世襲」「女帝」「女系」についてどのように議論されていたのか。

帝国議会議事録から抽出していきます。

帝国議会における「世襲」に女系は含まれるかの議論

帝国議会会議録検索システムを利用して「世襲」や「男系or女系」で検索しました。

抽出した内容はこれに関するものであって、昭和21年10月22日の臨時法制調査会以降のものに限定しています。

日付が飛んでるものがありますが、中身がない日の質疑・答弁は無視しています。

重要な点を太字にしています。議事録のあとに解説を入れることもあります。

読み方としては、「委員」と書かれた人間は政府側の者ではなく、単に疑問に思った議員が政府側に質問をしているという内容であって、 政府の見解ではありません。

「大臣」と書かれている者の発言が「答弁」であり、当時の政府見解です。

法解釈が絡む問題であるために、また、不確定な内容を含むために、現時点において100%この通りの理解が正しいと言い切ることはできませんが、現行憲法や皇室典範の制定当時の、制定者の意思として最重要視されるべき内容です。 

なお、憲法上の「世襲」や「万世一系」の解釈として言っているのか、それとも皇室典範における皇位継承権の範囲の話として言っているのか(いずれにおいても女帝も含むか、更には女系も含むかが問題になる)は注意すべきです。

皇室典範の皇位継承権は、憲法上の「世襲」の範囲内において認められるからです。

この点については以下の記事で一応の考え方を出していますが、今回は議事録を網羅的に掲載して改めて検討する意味もあります。

憲法2条「皇位は世襲のもの」と大日本帝国憲法の「万世一系」の定義・意味とは

91回 衆議院 本会議 4号 昭和21年11月30日

○國務大臣(金森徳次郎君) 早川君から、今囘提出いたしました所の皇室典範の第一條に、皇位の繼承の範圍を定めまして、男系の男子としてありますることが、封建性の遺風を傳えておるのではないかという意味の御質疑でありました、皇位繼承者の範圍をいかなる限度をもつて定めまするかは、實に重大なることであります、そこでさきに臨時法制審議會にこれの審議を求めまして、よく御研究を願い、且ついろいろの方面から研究をいたしましたが、要するにこれは國民の確信ということの現はれておる歴史に根柢をおくことが一番主たる點にあるべきで、日本のこの皇位繼承の範圍におきまして、傳統的に男系をもつて繼承者といたしますることは、何らの例外なく確立しておる所でありますが故に、その原理によることが正しいと考えました、また最後に承繼せらるる方が女子であらせられてもいいのではないかという疑問が起りますが、これは歴史の上に若干の事例があります、しかし多くはそれは攝政のごとき意味が多いのでありまして、一種の變態であつて、ほんとうの繼承と申し上ぐるには不適當なように思はれますし、この面におきましては、なお篤と研究を要すべき多くの問題がありますが故に、この際は男子をもつて範圍といたしました、殘る問題につきましては、なお今後十分なる研究を盡くしたいと考えておる次第であります。

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臨時法制審議会の審議を踏まえた答弁であるという事が分かります。

これは皇室典範における皇位継承権の範囲について語っていますね。

91回 衆議院 本会議 6号 昭和21年12月05日

○國務大臣(金森徳次郎君) 吉田君の御質疑に對しましてお答えいたしますが、第一に女帝を認めざる理由如何、これを認めざることは、新憲法の精神と何らか適合しない點があるのでないかという御趣旨でありました。申し上げますまでもなく、わが國の過去の歴史におきましては、女帝がおわしましたこと十代でありまして、人數にして八人の御方があつたわけであります。その點から顧みますると、女性の天皇を戴くことも理由あるがごとくに考へらるる筋はございますけれども、それらの十代の女性の天皇の御位にお即きになりました諸種の事情を考えてみますると、多くは特殊な場合、たとえば男の方がお即きになるべき順序でありながら、そのしばらくの間を充たすためといふことが大部分であつたのでありまして、いろいろの學問上の研究を聞いてみますると、大體本格的な筋合ではない、一時の便宜に應ずるものであるというふうに言われております。そこでこれを今囘の憲法改正の場合に當てはめて考えてみますると、一面から申しますれば、兩性の平等という見地からこれを認めますることは、決して理由なしとは考えられないのではありますけれども、大體が男系ということを根本にいたしておりますために、女性の天皇が御位にお即きになりますと、それから先の男系の子孫ということを考えることが困難でありまするが故に、その點でいわば皇位をお繼ぎになる方が行詰りになるというような懸念も直觀的に――理窟ではありませんが、直觀的にさような考えも出て來る餘地があるわけであります。他の一面から申しますと、女帝を認めまするにつきましても、それは順序の關係におきまして、男性の方が順序の中におわしまさぬ場合に、恐らく考えらるると思いまして、しかしてさような場合は、およそ見透しまする所、容易に起り得ないことのように考えますので、これらの諸點を考え合わせますると、今日の現状におきまして、直ちに女性の天皇の制度をはつきりと認めますことには、なお相當研究の餘地を殘しておるものと存じます。そこで現段階におきましては、現行の皇室典範の成立についての研究の結果を一應受け繼ぎまして、これらに關する特別なる規定を設けていないわけでありまして、なお今後の研究によりまして、十分論究を進めて參りたいものと考えております。

○國務大臣(金森徳次郎君)及川君の御質疑に對してお答えをいたします。
ー中略ー
第二に、女性の天皇を認めざることについての御質疑でありましたが、これはだいたいは先ほど申し上げました所と同じたことになるわけであります。天皇が女性であることをこの典範が認めなかつたことは、配偶者がおありになるとか、或は御權能の關係とか、そういうような著想から來ておるわけではございません。だいたい日本の基本の考え方が、男系によるということにつきまして、過去において例外がなかつたのであります。男系によるということが何故に正しきや否やということの論議は、相當にむずかしいことであると存じまするし、今後とも深き研究を要するものと思いまするが、現在においては、男系ということを、動かすべからざる一つの日本の皇位繼承の原理として考えております。その原理を重じて行きますると、どうしても先にちよつと仰せになりましたけれども、男系の御子孫という所を逐うて行きまして、結局女性の天皇を考えますると、その後において系統の行き途がない、皇位繼承の範圍がそこにおいて盡くるということになります。しかもそれを他のどういう順位の男性の方と比べて優劣をつけるかというような問題になりますると、かなり困難なる問題が起るのでありまして、この點は今後なお十分の研究を重ねて、さうして誤りなき、的確なを結論を得る方がいいと思うのでありまして、今日なおその時期が至つていないわけでございます。

91 衆議院 皇室典範案委員会 2号 昭和21年12月07日

○金森國務大臣  省略

第一章の皇位繼承という規定の中には、どういう所に著想して規定されたのかと申しますと、だいたいの考え方は現在の制度と同樣であるわけであります、と申しますのは、萬世一系の方が皇位を御繼承になるという基本の原理、恐らく人間が時々の思いつきで定めるというものではなくて、おのずからなる一定の筋道を辿つておるものでありまするが故に、今囘の改正であるからとて、特別に變つた規定が生まれて來る理窟はございません、世の中の進歩に連れまして補正はいたしますけれども、根源の考へ方は踏襲するということは、自然の道行きであらうと存じてをります、がただここに、特に第一章の中に現われて來ます大きな改正の點は、皇位繼承の資格者は今後は嫡男系、嫡出に限定するということになつて來るのであります、と申しますのは、このごろも御議論がありましたが、皇位そのものの永續性ということを念頭に置きますると、つまり重點をそこに置きますると、必ずしも嫡出者、嫡男系ということに限る必要はないのでありまして、むしろ皇位の繼承の範圍が豐かにあり得るというためには、古い傳統に從いまして、嫡出者以外にもその範圍を認めることは、一應の理由はあるわけであります、しかし人間の間におきましても、道徳的判斷というものが漸次變遷して參りました現在の段階におきましては、嫡出者と然らざる者との間に相當大きな變化を加えるということは、これは當然のことでありまして、一方においては皇位の永久性ということを考えつつ、一方においては世の中における道義的な判斷を尊重し、この折衷點からかような制度が今囘取り入れられたわけであります

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「根源の考へ方は踏襲する」というような表現は何度も出てきます。

仮に「世襲」には女系も含まれるという意味であるとすると、単に血縁関係による継承という意味でしかなくなると思われ、わざわざ「根源の考え方」と言っているのはどういう意味なのか、わからなくなるのではないでしょうか。

また、「嫡男系嫡出」という制限が新たに設けられたことについて触れています。

これは要するに【側室と養子を認めない】という意味です。

ただし、それも当時の時点における判断であって、これを永劫に変更してはいけないということは毛頭考えられていなかったということです。

91回 衆議院 皇室典範案委員会 3号 昭和21年12月09日

○金森國務大臣 この皇室典範が、女性の皇族の地位につきまして、男性の皇族の場合と幾分異なる規定をしておることは事實でございます、今御指摘になりましたような問題も、自然その一つの現われとして出ておるわけであります、これは非常にわからない問題を澤山含んでおりまするが故に、きわめて明白に私からお答え申し上げることは、力量の許さない所でありますけれども、これは私ばかりでなく、實際に説明のしにくい點を含んでおるのであります、問題の骨子は、結局日本の皇位繼承につきまして女帝を排除した理由如何ということに根源があるわけでありまして、男系であるといふことにつきましては、過去百二十數代の間におきまして、一つの例外もなく男系を尊重されております、外國の例、たとえばイギリスの君主の地位の繼承等につきましては、必ずしも男系を基本としていないようでありまして、かくのごとく國によつて考え方が違うといふことを、ほんとうに正確に説明いたしまして、何人にも一點の疑惑なからしむるということは、實は今後の學問上の職責であらうと考えておりまするけれども、なかなかこの問題は困難なる事柄であります、結局われわれの現段階の判斷といたしましては、從來多年行われておつた所の制度は、一應それを正しきものとして認めて、實際の實行をきめて行くよりほかにしようがない、こういうことになるわけであります、この憲法に基づきまして典範は男系主義を認めたわけであります、既にこの男系主義を認めますと、その影響がいろいろな部分に現われて來ることはやむを得ぬのでありまして、たとえば女帝を認めるという問題になりましても、理論的に女帝を認めます根抵は十分あり得るものと考えておりますけれども、しかしやはりこれを考えて來ます時にその順序の問題とか、或は、さきにも申しましたけれども、女帝の所に行くとそれから先の男系の子孫といふものは考えられません、そこで皇位の行詰まりといふ論爭を起しまして、萬世一系の皇位の繼承をきめます時、どうしてもそこに不自然な所がある、ここから先はもはや皇位の續く所がないということを、明らかに法の上に豫見いたしますことは、甚だ好ましくないのでありまして、いろいろ考えまして、そういう種類の問題は今後一括して、もう小し學問的に及び歴史的にはつきり考えて行きたいという考えをもつております

91回 衆議院 皇室典範案委員会 4号 昭和21年12月11日

○金森國務大臣 世間には女子の繼承權を認むべしという論があると同時に、認めてはよくないという議論も聽いております、そこで認めるはよくないという議論の骨子となりまするものを、いろいろ考えて見ますると、今仰せになりましたやうな、婦人の一般的眼から見たる能力が、國の象徴たる地位と顧みて適當ではない、こういう見解が一つあります、それはもしも軍國主義のような國でありまするならば、婦人が國の現行憲法のように統治權の總攬者であられるということになすますると、ここに思わしくない事情も出て來ると思いますけれども、事情は變りましたからして、さような議論に重きをおく必要はないと考えております、それから婦人の体力を本にして國の元首たるにふさわしくない、こういう議論も出て來まするけれども、これも同じように認むるに乏しき議論であるように思われます、さらに考えまして、今仰せになりましたやうに、婦人には配遇者がある、その配偶者があるということが、この現行制度でいへば國の元首たるにふさわしくない、こういう論點も從來よく言われておりました、しかし人間の本質ということに根抵を置いておりまするこの憲法の眼をもつて見ますれば、さような論據をもつて女帝を認めないという理窟は、甚だ影の薄い議論になると思います、多分この點は御意見と同じであらうと思います、そういうふうにいろいろ考えて來ますると、女性の天皇が適當でないという論據は漸次減少して來るということを認めなければなりません、それではなぜ女性の天皇をこの皇室典範が認めないのか、こういう論が直ちに起つて來るのでありまして、私ども研究の道程におきましては、女性の天皇を認むべきであらうということを、まず一應の假説的な題目といたしまして、そうして研究を進めて行つたのでありまするが、ここに根本的に問題となりますのは、日本の皇室が常に男系の原理を認めておつて、未だかつて男系たることに一つの例外をも置かなかつたということであります、何故に男系にのみ繼承權を認めて、女性には繼承權を認めなかつたかということを、まずはつきり考えて見なければならぬと思います、このいろいろな社會的事項を研究しておりまする學問を少しばかり覗いて見ますると、古代におきましては、女帝に重きを置くという思想もあつたと思います、それが日本の古代のことは幾分茫漠としてわかりませんけれども、歴史のわれわれに正確に教えて呉れる範圍内におきましては、常に男系を尊重しておつたという所に、相當注意をしなければならぬと思うのであります、これに對しまする學問的な見解は、今日必ずしもはつきりしていないのでありまして、これを眞に掘り下げて、明らかなる點までもつて行かなければならぬと思いまするけれども、これはなかなか一朝一夕にはできかねることと存じまするが故に、まずこの邊の所は、今日の段階におきましては、かくあるもの、從つてかくあるべきものとして扱つて諸般の制度を考えて行く外にしようがないと思うわけであります、そうなりますと、既に男系を尊重するということになりますれば、その自然の結果といたしまして、男系の女子が御位におつきになるということは、そののちにおきまして皇位を繼承せられる所の系統が起つて來ないということを示しておるものであります
 最後に女子が帝位におつきになりますれば、その配偶者との間にお生れになつた方は、これは男系でありませんで、繼承權がそこに及ばないということになるのでありまして、この點がさらに大きないろいろな問題の疑惑となるのでありまして、日本の古來の制度におきまして、御承知のごとく十代の女子の天皇があらせらるるのでありまするけれども、なんとなく特別なる扱いであつて、それが偶然的なるものではないのであります、八人にして十代のその女帝が、どういうわけでおなりになつたということを考えて見ますると、だいたいこれを三つの種類に分けることができるのでありまして、その一つはこれはまあ歴史の批判にはなりまするけれども、皇室の外戚がその虚に權勢を張ろうとする原因に基づいているというふうに、歴史家によつて認められております、それは御二方であります、そういう事蹟があるわけであります、それからまた他の場合は、男子たる御後繼ぎの方の成長を待つために、一時的に位をお充たしになる、いわば攝位というような氣持をもつてできていると考えらるるのであります、さらに第三の場合は、これとやや異つた特別な事情によるものでありまして、たとえば持統天皇の場合について考えて見ますると、持統天皇は天智天皇の皇女であらせられ、そうして天武天皇の皇后であつたのでありまするが、この天武天皇の崩御ののちに、若干の經過のもとに皇位におつきになつたのでありまするが、その事情はどうも天武天皇の諸皇子があらせられ、おのおの異つたる母からお生れになつておりまして、その各皇子の間に恐らくは激しい紛糾が起るであろうという特殊なことを豫見せられて、さうして皇后たる方が御位におつきになつた、これはまあ歴史の見る所でありまするから、個人的のそういう歴史家の意見も加わつているとは思いまするけれども、だいたいそんなような意味でありまして、どれを見て行きましても、ほんとうに當然の意味において繼承せられたる形跡がないのであります、そう考えて行きますると、たしか皇室典範義解でありましたか、註釋が加えてありまするように、これは一時の權宜であつて祖宗の常憲にあらず、常の規則ではない、こう示されている所に理由があるように思いました、これは多分男系ということと組み合わされ、そののちには御系統が生じて行かないという所に何か關係があるものではないかと思つております、つまりこれだけの疑惑を起しまして、なお深く掘り下げて女帝を認むるがよいか惡いかという議論に移るわけでありまするが、それから先なかなか困難なる問題が伏在しておりまして、一つの考え方――假に女帝を認むるといたしましても、今のように後繼ぎが自然の系統において起つて來ないのでありまするから、そういうことを考えますると、女帝の繼承の順位をどこに置くか、男子と同じような普通の順位に混ぜて女帝を考えるのがよいか、それとも一つの血統のしまいの所で、やむを得ず女帝をお認めするという考えがいいか、それとも皇位繼承者の範圍の全部を見渡して、その最後の所に女帝をお置きするがいいか、こういう順位の問題が起つて、なかなかこれはわれわれ微力であると言えば言えるのでありますが、いろいろな角度から適當にきめまするということは容易ではないと思います、なおまた他の面から考えて見ますると、もしも男子に優先的なる地位を認むる、つまり皇統が連續して起ることを豫見いたしますれば、どうしても男子に優先的なる繼承順位を認めなければなりませんが、そういたしますれば男子盡きて初めて女帝に及ぶわけであります、となりますると、そういう場面を豫想するということは、今日の情勢ではなかなかありそうもないのでありまして、竹の園生は相當の男子を包含してあるのでありまするが故に、今この際女子を考えますることは一種の抽象的なる理論討究に終るような氣持がございまして、すぐにこの制度をはつきりきめなくてもいいという考えが起つてきます、さらに女子の天皇を認めますると、もしこれが最後に來ると、それから先は皇位繼承がどうなるのだろうか、もう皇族の方がなくなつてしまう、一般の考えによります皇位繼承者というものが容易に發見できないようなことになりまして、そういうおかしい制度をわれわれは考えるわけに行きません、そこまで考えるような場合には、もつと根本的に諸般の制度を頭の中において、間違いのないように考えなければなりません、そんなふうに考えて來ますと、要するに女帝につきましては、過去の男系ということを尊重する根本の原理を探求して、それからまた歴史の上に現われましたのが、恐らく變態とのみ言われ得るような場合のみであるということを考えまして、さらに皇位繼承の順位を考える時に、相當困難なる問題が湧き起つて來るのでありますし、また女帝を認めますることによつて、皇族の範圍などにつきましても非常に考えなければならぬ幾多の場面が附屬して起つて來ます、それらをこの貴重なる制度の中に認めまするためには、よほど根本的なる研究をしなければなりません、今日五月三日までにぜひとも完備いたしまする立場から言うと、これは將來の問題に殘して、萬遺漏なき制度を立てることが、われわれの行くべき道であろう、こういうふうに考えまして、つまり結果におきましてはこれが規定の表面に現われなかつた、こういう次第でありまして、決して疎かに考えておるわけではありませんので、さように御諒解願いたいのであります

○金森國務大臣 女性天皇のことにつきましては、今日既にいろいろ申し上げましたが、お説の通り女性の天皇を不可なりといたしておりました所のいくつかの原因は、現在はなくなつた、こう考えてよかろうと思います、武力といふことが主眼でなくなりました時代におきましては、武力ということを中心にして考えておりました女性天皇の阻却事由というものは、はつきり取り除かれておるというふうに思つております
 また今仰せになりましたように、女性の皇位繼承ということを取り去りますれば、お跡繼ぎの範圍が狭くなつて、時に困る場面が起るということも考え方として意義あるものと思つております、そういふことにつきまして、私が反對する考えをもつておるわけではございません、ただ今日も申しました、一般の系統の考え方は、やはり男系ということに一番根源の來るものと思います、既に男系ということが確定不動の原則のごとく今取り扱われておることを前提といたしまする時、女性天皇を考えますると、至る所に疑問を起して來るのでありまして、今日差迫つた必要が眼前に想像でき難き時代におきましては、しつかり研究をして、しかるべき制度を立てる方が正しい行き道であらうというので、正直に申しますれば、研究不十分ということが御疑惑の的になつておる次第と考えます

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5月3日のデッドラインがあり、その中で間違いのない解釈をしなければなならない。

当時の状況が垣間見える重要な答弁だと思います。

91回 衆議院 皇室典範案委員会 5号 昭和21年12月12日

○酒井委員 皇位繼承につきまして、女帝のことがたびたび問題になりましたが、金森國務大臣の御答辯を推察しますと、女帝の順位は、かりに設けるとすれば、皇族男子が盡きた場合という所へ著目されておるように受取つたのでありまするが、私どもやはり女帝を認めたいと思つておるものでありまするが、その女帝を認める場合に、その順位をどこへもつて行くかということにつきまして、結局皇位繼承の順位は直系主義であるということが原則中のまたこれが原則になつておる、そうして皇胤を重んずるという建前から、近親主義であるということも、一つの重大なる原則だと思います、そういう觀點から參りますると、女帝を認むるとすれば、その順位の地位は、この典範案第二條の五と六の間の所へもつて來るのが、前の原則から睨み合せて最も適當のような氣がするのであります、もし女帝をこの五と六の間へもつて參りますると、金森國務大臣が憂えられる、女帝の次ぎに系統が斷たれるという恐れをなくすることができるのであります、と申しますのは、内親王樣が五と六の間の御順位において皇位を繼がれた場合、ほかの男子の皇族があるわけであります、こういう場合には、男子の皇族と結婚していただくという建前をとれば、女帝の次ぎにもやはり皇胤は相續いて行く、そうして古來の大原則でありまする所の、いわゆる男系を守るという點についても支障がなく行くわけであります、女帝を男子の皇族が一人もなくなつた場合に考えるのは、これは考えないのにひとしいと、われわれは思うものであります、男子の皇族が一人もなくなつた場合には、恐らくこの典範も改正されて、その場合には當然問題なしにやはり皇室の御胤である――皇胤である所の内親王、或は女王の方が皇位に即かるるというようなことは當然豫測されるのでありますから、女帝を認めるとすれば、皇族男子が盡きてから、その後にもつて來て認めるということは、私は意義がないと考えます、そういう立場から、男女同權の今日、しかも天皇の大權なるものは大幅に變更せられまして、女であるが故に困難であるという大權上の支障はないはずだと思いまするから直系を重んずる上から、近親を重んずる上から、男女平等の民主主義の建前の上から、ぜひ女帝を私どもは認めたい、しかも女帝を認める順位は五と六の間にもつて來る、勿論傍系の女の方が立たれる場合には、男子の皇位繼承の順位に從つてそれぞれ五の次ぎにはいつて來るのは當然であると思います、かかる意味において金森國務相のお考え、さらに構想を練られる御用意ありや否やということを伺いたいと思います

○金森國務大臣 お尋ねの點は、昨日各種の角度から私どもの考えておる所を述べたのでありまするが、申し上げるまでもなく、男系ということを尊重いたしまする限り、できるだけその精神に合うようにほかのことも調節して行くものと思いまして、この見地に立つて考えますと、いやしくも皇族の中に男の方がおいでになるならば、その方にまず繼承權が行くと考えまして、女帝のことは、問題といたしましてはその次ぎに考えるのが男系主義をとつておる原則から見て妥當であらうというのが、私どもの研究の道程におきましての第一の結論であります、所が今仰せになりましたような各系統の直系を下つていつた一つの系統だけで、男系が盡きた時には、女子の方が皇位におつきになると考えまする意見も、今お示しになりましたように、直系主義とか、近親主義とかをとりますると、確かに一つ殘つて來る論點であるわけであります、けれどもさらに考えますると、男性と女性を平等にいたしまする見地を徹底いたしまするならば、さような順序を考えるのではなくて、むしろ全然同じ立場において、今日の男子の繼承の順序と同格にすることが、やはり一つの論としては立ち得るものでありまして、かように三つの考え方が起つて來ました時に、その善惡をきめますることは、これこそ本當に日本のもつておる根本の原理を探究してきめなければなりません、それを考えまする根本には、結局男系ということを尊重する根源の理由というものにつきまして、相當深く掘り下げませんければ、確實にして安全なる結論はできないのでありまして、私どもはその點をも一つの重要なる點として、問題を今後の研究に殘しておるわけであります、極くものを簡便に考えますると、そういうことはこの方がよいのだという結論は割合できるのでありますけれども、それに必要な要素がいくつかある時に、どれをまずとつて行くかということをきめかねますることは、普通の日常の直ぐに處理しなければならぬ問題でありますれば、これは割合簡單に、勇氣を奮つて解決いたしますけれども、三千年の歴史が生み出しておりまするこの根本の思想を、ほんとうに深く掘り下げて行くという問題でありまするが故に、もう少し歳月をかしていただきませんと、つまり各方面の識者の意見等をも探究し、十分掘り下げませんと、妥當なる結論ができないわけであります、そこでこの間も申し上げましたように、今まだそういう情勢に特に差し迫られておる實際上の理由はないと思いますから、從つてその點はもつと深く研究をしたい、こう申したわけでありまして、仰せになりましたような點は、もとより今後の研究の一つの大きな論點としてとり上ぐべきものと思つております

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皇位継承権の範囲について新たな制度下において女帝を認めることが禁止されているのか否かについては判断を保留させてくれ、と言っています。

91回 貴族院 本会議 6号 昭和21年12月16日

○佐々木惣一君 省略

皇室典範案とありまするが、是はもつと詳しく言へば皇室典範の改正案ではないのでありませうか、此の事をはつきりと御尋ね申上げて置きたい
ー中略ー
女子に皇位繼承の資格を認めないのは如何なる理由に因るのであるか、此の點を御尋ね申したいのであります

○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 省略

それから第三の點は女子に皇位繼承の御資格を認めない、理由に付ての御尋でありましたが、此の點は極めて重要な問題でありまして、幾多考慮を要する面倒な問題も含んで居ります、頗る愼重なる考慮を要する問題でありまして、事實問題と致しましては、差當り男系の男子たる皇胤が斷絶すると云ふ虞がないのであります、從つて此の際從來の原則を改めて、女子の方に皇位繼承の御資格を認めることを規定することは、尠くとも其の時機ではないと考へたのであります、

○金森國務大臣 省略

それから次に女子に皇位繼承の資格を認めざる理由如何と云ふ點に付きましての本筋は、幣原國務大臣から説明されたる通りであります、佐々木博士が仰せになりましたやうに、女子に皇位繼承を認めないと云ふことは、女子の本質に皇位繼承と結び付けて適當でない理由があるとは、實は今日は考へて居りませぬ、男子たるも、女子たるも、共に皇位繼承の資格を考へます上に於て、其の部分だけに就て見ますれば、恐らくは根本的な差別はないのではないかとも一應は考へて居ります、併し其の外の關係に於きまして、それに伴ふ關係に於きまして、尚資格を認めにくい理由があるかと云ふやうな點に付て、佐々木博士から御示になりましたのでありますが、例へば配偶者があるからと云ふやうなことも主たる點として考へることは不適當ではなからうかと云ふやうな風にも存じて居るのでありますが、一番根本の論點と致しましては、皇位繼承はどう云ふ方がなさるべきであるかと云ふ根本の考へ方の問題でありまして、固より皇位繼承に付きましては、是は法律で定まることではありまするけれども、其の根本の原理は萬世一系の世襲と云ふことに原理があらうと存じます、而も萬世一系の世襲と云ふことはどう云ふことかと言へば、若し是が具體的にがつちり定つて居りまするものならば、今日皇室典範を制定する趣旨も實は沒却されます、併し是が中が非常に重大なるものでありまするならば、萬世一系と云ふ趣旨が沒却せらるるのでありまして、私共は過去の歴史と國民の信念とを綜合致しまして、萬世一系と云ふ根本の原理を確實に把握しつつ、之に對して諸般の面から來る所の角度から適切なる若干の改正は爲し得るものと、斯う云ふ風に考へまして、本格的にはもう容易に動かぬものである、併し派生的なものに付きましては十分研究をして妥當なる結論を導かなければならないのであります、處が、其の見地に立ちまして、女子に皇位繼承の資格を認むるかどうかと云ふことになりますと、實は幾多の疑惑が起つて來るのでありまして、男系でなければならぬと云ふことはもう日本國民の確信とも言ふべきものであらうと存じます、又歴史は一つの例外をも之に設けて居りませぬ、此の點を守ると致しますると、何故に男系を尊重し女系は此の繼承の範圍に置かないかと云ふことの問題が現れて參りまして、此の問題を的確に結論を作つて行きますると、自然現實の女子たる方が皇位繼承を爲さるることが適當かどうかと云ふ論點に多くの研究問題を提供することになる譯でありまして、例へば其の見地から女子の御繼承を認めますると、それから先に男系の皇統が流れ出すべき餘地が止りまするので、其處に一つの論點が考へられます、さう致しますると、御系統の最後の順位を考へたならば宜いではないかと云ふことになりますると、其の順位の問題になりますると、最後の所に持つて行かないで、近親主義の原理を尊重致しますると、もう少し前の方にあつても宜いではなからうか、斯う云ふやうな疑惑が起り、其の繼承の順位を男女平等に置くべきものであるか、それとも或系統の末端に於て之を認むるべきものであるか、或は又全體の皇位繼承者の範圍の最後の所に置くべきものであるかと云ふやうな疑問も起つて來まするし、其の外一々申上げ兼ねまするけれども、可なり多くの問題を提供するものでありまするし、更に此の根本に於きまして、歴史に遡つて女子の皇位繼承がありました事實を精密に調べて見ますると、まあ普通には十代おありになると言はれて居ります、併し特殊なる歴史家は其の外にも二代位はあられるのであると斯う申して居ります、多少の議論が民間にはあるやうに存じます、さうしてそれ等の其の事情を能く究めて見ますると、恐らくは今日迄の歴史に於きまして、はつきりされて居なかつたやうな色々の角度が現れて參りまして、要するに一切の角度から之に誤りなき法規を設ける爲には、尚今後相當の研究を經なければならぬのでありまするし、前に幣原國務大臣から申しましたやうに、今日之を解決すべき現實の必要もないのでありまするから、問題全部を綿密なる今後の研究に殘したい、斯う云ふ趣旨から出て居る譯であります

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これは直接的には皇室典範の内容をどう決定するのかという議論ではありますが、憲法上の「世襲」の解釈の扱いにも関係する部分です。

金森大臣は「万世一系の世襲」という新旧憲法上の文言(の一部を組み合わせたもの)を持ち出して説明しており、説明の内容は皇室典範に限ったものではありません。

確かに「世襲」から「女系を排除していない」と表現することは出来ます。

しかし、そのことの意味は「女系を含んでいることを前提としている」のではなく、女系を含んだ概念として捉えてよいか否かを確定するのを躊躇したため、将来の議論にまかせるという意味において存置したに過ぎないのだろうと思われます。

「世襲」には男系男子と限定はされていないが、その趣旨は「女系が含まれるから」ではなく、現時点で確定するべきことではないため流動的な状態として残しておいたものと思われます。 

91回 貴族院 皇室典範案特別委員会 3号 昭和21年12月18日

○國務大臣(金森徳次郎君) 憲法の中の世襲と云ふ文字は、成る程萬世一系と云ふことを表す文字とは違つて居りまするけれども、斯樣な文字の中に含めました意味は、萬世一系と云ふ考であつた譯であります、從つて皇室典範を設けます場合に、更に之を繰返しますると云ふことは寧ろ必要のないことであり、國民の間に染込んで居る萬世一系の思想、此の憲法其のものの上に簡略なる文字に依つて表はされて居ると解する方が適切だと云ふ風に考へて居ります、尚萬世一系とか云ふやうな、例へた言葉を用ひますることは萬世に限らないのでありまして、何萬世、又それより大きい數になり得る譯のものでありまするから、斯樣な比喩的な文字を以て言ひ表しますることは、何となく新しき憲法の率直なる文字を用ひまする行き路にそぐはない、斯う云ふやうに考へましたので、今仰せになりましたやうな方面の考慮は之を避けたのであります

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大日本国憲法の「万世一系と」 日本国憲法の「世襲」の違いについて論じている所ですが、前者が比喩的な表現であって法規範として相応しくないために実務的な用語にしただけ、というニュアンスでしょう。

その根本において変わるところはありません。

まとめ:女性天皇・女系天皇の判断は留保されていた

議事録を通覧してみると、金森大臣は女性天皇や女系天皇について、当時の時点において憲法が認めているか否かについては留保をしていると言えます。

それは言葉の表現としては「女系を排除していない」ということになりますが、それは憲法上、確定的に「女系が含まれている」ということを意味するものではないのではないでしょうか。

時間制限がある中で研究不足の実態が明らかになったので、「現時点で答えを示すことはできないから、あいまいなまま触れないでおく」という扱いであったと言えないでしょうか?

質問者は「女系」は認めるのか?という問いかけをしているものも複数ありましたが、上記に挙げた政府側の答弁の中で「女系」と言う用語を用いたのは昭和21年12月16日の本会議のみであり、非常に慎重に言及しているということが分かります。

なお、これ以降の帝国議会では「世襲」の解釈について実質的な内容を含むやりとりが行われているものは見つかりませんでした。

ここで示した答弁と併せて以下の記事を見ると、示唆するものは大きいと思います。

憲法2条「皇位は世襲のもの」と大日本帝国憲法の「万世一系」の定義・意味とは

以上

憲法2条「皇位は世襲のもの」と大日本帝国憲法の「万世一系」の定義・意味とは

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皇位継承問題において憲法2条の「皇位は世襲のもの」の定義が問題視されることが在り得ます。

女系天皇や女性宮家、直系優先主義に変更しようとする者がこの概念を捏造しているおそれがあるため、基本的な理解を整理します。

憲法2条「皇位は世襲のもの」の定義・意味とは

憲法2条の「皇位は世襲のもの」とは【歴史上、天皇が一定の血縁関係にあるものにより継承されてきたこと】を指します。

皇族以外の者が突然やってきて跡取りとなって継ぐことを排除するということとの対比において、皇統が親子や兄弟姉妹の血縁関係によって構成される皇族の中から継承されていくことを意味します。

学説上で簡単に説明されたものとして「専ら血統に基づいて一定の血縁関係にあるものが何らかの地位に就くこと」というものがあります。*1

「皇位は世襲」は今上天皇を指すか、歴代の天皇を指すか

ここでいう「皇位」は当然ながら歴代の天皇についての説明です。

具体的な当代の天皇=今上天皇を指すものではありません。

皇室法概論ー皇室制度の法理と運用ー 39頁

天皇という存在を歴史的にとらえ、天皇が君主としての側面を有し、かつ象徴的存在であったことを勘案し、憲法は天皇が有する「象徴」としての面を天皇の中心的在り方と考え、同第一条により天皇を確認的に象徴であると定めたと解し、また、同第二条は、歴史的に皇位が世襲により継承されてきたことを背景に、天皇の地位は世襲により継承するものであると確認的に定めたと解する

連綿と続いてきたものの総体を表すものであって、「点」としての存在を指すものではありません。よって、たとえば「世襲」についての次項のような認識は間違いです。

津村啓介議員の「世襲」=今上天皇との親等

魚拓:http://archive.is/TncEh

これは憲法2条の「皇位は世襲」の対象を今上天皇であると曲解した上で、更に「世襲」を「親等」の意味であるとして扱っています。

こんな珍説を唱えるマトモな人間はいませんし、ましてや「世襲」と「親等」の日常用語としての意味ともズレがある用法ですから、トンデモ論の類です。 

「世襲」は男系に限られ女系は含まれないか

現行憲法=日本国憲法に関する議論を見ていきましょう。

臨時法制調査会の議論

皇室法概論ー皇室制度の法理と運用ー 332頁

一方、女性天皇を認めるべきでないとする見解は、歴史・伝統を論拠としており、昭和二十一年一〇月二十二日の臨時法制調査会第三回総会において第一部会長代理(関屋貞三郎委員)は、「併しながら我が国肇国以来の万世一系と申しますのは男系に依るものでありまして、此のことは歴史上に於きましても客観的事実でありまして女帝〔「女系」の誤りか…引用者注〕は唯皇位世襲の観念の中には含まれて居ないと云うことも申し得ることと思はれるのであります、斯様な次第で女帝〔「女系」の誤りか…引用者注〕に依る皇位継承は認め難いと云ふことが部会の結論でありました。。…改正憲法の所謂男女同権の原則と云ふものは…日本国の象徴たる地位と云ふ特殊性に依る特例は当然予想し得られるものと解し得るのでありまして、皇統を継承するものは男系の男子に限ると云ふ従来の原則を堅持することの結論に達して居る次第であります」(芦部外『全集1・典範』九一頁)と報告している

まず、上記の内、『「女系」の誤りか』という部分については芦部本の誤りでしょう。

高尾亮一が憲法調査会に委属されてまとめた「皇室典範の制定経過」 でも同じ発言が収録されていますが、その部分は「女系」になっていることと、文脈からもこれは女系と判断されるからです。

その上で、当時の臨時法制調査会では「世襲」には「女系」は含まれておらず、男系男子のみが「世襲」を意味すると解するという答弁があったということです。

では、それとは別機関である帝国議会ではどうだったか?

帝国議会検索システムで辿ることが可能ですので見ていきましょう。

帝国議会での金森徳次郎大臣の答弁「法律問題として自由に考えてよろしい」

第90回帝国議会 衆議院 帝国憲法改正案委員会 8号 昭和21年07月08日

○酒井委員 現行憲法では、皇位の繼承は世襲であると云ふ條件と、皇男子孫が之を繼承すると云ふ状態になつて居り、さうして恐らく此の世襲であると云ふことだけは次に出來るであらう所の皇室典範の一つの條件となることと思ひまするが、皇男子孫と云ふものを草案では特に省いたと云ふ理由が何かございますか

○金森國務大臣 此の憲法の他の條文にもありまするやうに、男女の性から來る諸般の變化は、根本的な支障がない限りは其の差別を置かないと云ふことが、物の本體と思ふ譯であります、そこで皇位の繼承に付きましても、皇位と云ふことの根本の性質と組合せて、如何に此の問題を扱ふかと云ふことは、新しい問題として之を研究しなければならぬと思つて居ります、さう云ふ研究をも含みつつ、此の第二條には其の制限が除かれて居りまするが故に、憲法の建前としては、皇男子、即ち男女の區別に付きましての問題は、法律問題として自由に考へて宜いと云ふ立場に置かれる譯であります、實際どうなるかと云ふことは是からの問題であります、其の意味に於て文字のないことは理由がある譯であります

「男女の区別」 は法律問題(皇室典範で定める)であると言っています。

つまり、憲法上、「世襲」による継承には男女が含まれていると言っています。

別の答弁もあるので見ていきます。

男系男子という限定はないという答弁

第90回帝国議会 貴族院 帝国憲法改正案特別委員会 9号 昭和21年09月10日

○佐々木惣一君 それで第二の問題と致しまして皇位繼承の資格と云ふことに付て御尋ね申上げたいのです、是は私は皇位繼承と云ふことをちよつとどう云ふ意味、是は今の法典がありますから、まあそれは宜いです、止めて置かう、其の中の一點として皇位繼承の資格と云ふものに付きましては、今囘の憲法草案には實質的に何の規定もないのですね、「皇室典範の定めるところにより」とはありますのです、固よりそれはあるけれども、併しながら世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより」とあるのですが、そこで先づ世襲のものであると云ふことは一體どんなものでせう、どう云ふ意味なんでせうか、所謂今日の現行憲法に於ける萬世一系と云ふのと違ふのでありませうか、違はないのであるか、是は細かなやうなことですが大事なことですからどうか…

○國務大臣(金森徳次郎君) 本質的には現行の憲法と異なる所はないと考へて居りまます、唯現行憲法は萬世一系と云ふが如き多少比喩的な文言を使つて居りまして、現實的なる言葉ではありませぬ、それを現實世界の素朴なる言葉に表はすと云ふことが主眼となつて居ります

○佐々木惣一君 比喩的と仰しやるのは私には分らぬのですけれども、萬世一系と云ふのは此の帝國憲法で始めて出來た言葉ではなくして、それ以前から使つてある、それには實質が入つて居る、即ちどの系統、どの家の方と云ふ、所謂皇祖皇宗、祖宗の皇統に屬すると云ふことは、萬世一系と云ふ文字に入つて居る、單に世襲と云ふことではない、萬世一系と云ふのはどの系統に屬するかと云ふやうなことと無關係で、唯世襲とあるのでありませうかと云ふことを御尋したのであります、世襲と言つても祖宗の皇統に讓る所の其の世襲と云ふ意味であるか、萬世一系と云ふのはちやんと實質が入つて居る、帝國憲法に於て始めて出來た文字では實際はありませぬ、それは重きを置くものから言へば非常に重大な所です、それはまあそれで宜いと致しまして、それからもう一つの點は「世襲のものであつて、」「皇室典範の定めるところにより」と申しまするが、それならば世襲のものであると云ふこと、是は議論にも何にもなりませぬ、さうだと仰しやればさうである、男系の男子と云ふのは男子でなくとも宜いかと云ふことです皇室典範さへ決まれば問題でも何でもありませぬ

○國務大臣(金森徳次郎君) 男系の男子と云ふことは第二條には限定してありませぬ、其の趣旨は根本に於て異なるものありとは考へませぬけれども、併し時代々々の研究に應じて或は部分的に異なり得る場面があつても宜いと申しますか、さう云ふ餘地があり得ると云ふ譯で斯樣な言葉になつて居ります

○佐々木惣一君 要するに其の時時の事情に應じて皇室典範で總て定めさせる、斯う云ふ意味でありますか

○國務大臣(金森徳次郎君) 左樣でございます 

○佐々木惣一君 其の點に付きましては私は意見を言ふのぢやありませぬ、ぢやさう解釋致しまして、唯此の憲法にももう少し實質的のものが入つて宜いぢやないかと思ひますけれども、例へば男子と云ふやうなもの以外に女子と云ふものを認めるか認めぬかと云ふやうなことは、是はどうも或は大臣の仰しやるやうに其の時々の事情に依つて皇室典範で決めても宜いと云ふこと、實は私自身も其の意見ですが、併し男系か女系かと云ふこと位は、是は皇室典範で自由に定め得ると云ふことは餘り廣いかと思ひますけれども、それは御趣旨は分りましたからそれで宜しうございますが、そこで三點になりますけれども、皇室典範の性質と云ふことをちよつと御尋ね致したいと思ひます、それで御存じのやうに國務大臣の從來の御説明ですつかり分つて居りますから、私は非常に有難いのです、皇室典範は皇室の私法でなく、國家の國法だと云ふことがはつきり憲法でも御説明でも出て居ります、此の問題に付ては私自身も皇室の私法的のものでなく、國家の國法だと云ふことから或有力な學者のひどい反駁を受けて居る位でありますから…、併し此の點に付ては私ははつきりした金森さんの御説明に滿足をして居るのです、處がそれはそれで宜いのでありますが、御尋ね致したいのは、皇室典範と云ふのは矢張りさう云ふ特別の形式なのでありますか、唯普通の法律と同じやうなものであるか、それならば別に「皇室典範の定めるところにより」と云ふやうに憲法に規定しないでも、別に法律を拵へて、皇位繼承等に關して法律第何號なり、或は其の法律の名稱を皇室典範法と、斯う云ふ風に決めても宜いと思ひますが、兎に角皇室典範は議會の議決に依るのだけれども、皇室典範と云ふ、何かさう云ふ特殊の法があるかの如く思はれるのは、此の憲法の規定ではさうではないのでせうね 

金森大臣は「男系男子に限定していない」としながら「その趣旨は根本において異なるところは無い」と言っています。

これは「男系女子」は認めたと言えるでしょうが、果たして「女系」を認めたと言えるのでしょうか?

質問者の佐々木惣一は「併し(しかし)、男系か女系かと云ふこと位は、是は皇室典範で自由に定め得ると云ふことは餘り廣い(余り広い)」と言っており、懸念を示しているのが分かります。

ただ、「趣旨は分かったので」といってそれ以上問い詰めることをしなかったことから、佐々木としては「女系は除かれた」と理解したのかもしれません。

 

さて、上記の帝国議会の議論は昭和21年の9月までの議論であり、先に挙げた臨時法制調査会は同年の10月でしたので、時系列としては「女系は皇位継承の観念に含まれて居ない」と明言した臨時法制調査会の方が後です。

その後の帝国議会の答弁で政府の認識を見てみましょう。

その後の帝国議会の答弁

91回 貴族院 本会議 6号昭和21年12月16日

(国務大臣)金森徳次郎 

固より皇位繼承に付きましては、是は法律で定まることではありまするけれども、其の根本の原理は萬世一系の世襲と云ふことに原理があらうと存じます、而も萬世一系の世襲と云ふことはどう云ふことかと言へば、若し是が具體的にがつちり定つて居りまするものならば、今日皇室典範を制定する趣旨も實は沒却されます、併し是が中が非常に重大なるものでありまするならば、萬世一系と云ふ趣旨が沒却せらるるのでありまして、私共は過去の歴史と國民の信念とを綜合致しまして、萬世一系と云ふ根本の原理を確實に把握しつつ、之に對して諸般の面から來る所の角度から適切なる若干の改正は爲し得るものと、斯う云ふ風に考へまして、本格的にはもう容易に動かぬものである、併し派生的なものに付きましては十分研究をして妥當なる結論を導かなければならないのであります、處が、其の見地に立ちまして、女子に皇位繼承の資格を認むるかどうかと云ふことになりますと、實は幾多の疑惑が起つて來るのでありまして、男系でなければならぬと云ふことはもう日本國民の確信とも言ふべきものであらうと存じます、又歴史は一つの例外をも之に設けて居りませぬ、此の點を守ると致しますると、何故に男系を尊重し女系は此の繼承の範圍に置かないかと云ふことの問題が現れて參りまして、此の問題を的確に結論を作つて行きますると、自然現實の女子たる方が皇位繼承を爲さるることが適當かどうかと云ふ論點に多くの研究問題を提供することになる譯でありまして、例へば其の見地から女子の御繼承を認めますると、それから先に男系の皇統が流れ出すべき餘地が止りまするので、其處に一つの論點が考へられます

これは直接的には皇室典範についての議論ではありますが、直前には「万世一系の世襲」と言う文言も出てきており、憲法上の議論も含めて論じていると理解できます。

金森大臣の答弁はこの後も縷々続くのですが、女帝を認めてもその先で男系が途絶えること、順位をどう決定するのかが問題になり、歴史上の女性天皇の研究が進んでいないこと、現時点で女性天皇を認める必要性はない、という旨を言っています。

憲法上の「世襲」の中身を具体的に確定しなかったのは「女系が含まれるから」ではなく、重大な問題であるために十分な検討が必要なところ、現時点では研究不足であるために(女系も排除はしないものの)、その内容を確定するべきではないというニュアンスが読み取れます。今後の議論によっては流動的であると言っているようです。

「女系が含まれている」の意味内容

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このように、一連の金森大臣の答弁によれば、女帝を認めるかどうかは「世襲」の解釈論としては有り得るが、女系は対象外であると考えていた可能性が高いと言えます。

答弁では「女系」が解釈論として検討されているかのようですが、それは女帝を認めた後の世継問題として必然的に議論対象になるためであって、念頭にあるのは「男系でなければならないが、男系の女帝は許されるべきか」という問題意識であったと言えそうです。 

つまり、「女系が含まれている」ということの意味は、上図の左側のように確固として存在しているのではなく、右側のように未確定、判断保留であるという意味である可能性があるのです。

これ以降の「世襲」の解釈に関連する答弁はこちらにまとめています

※追記:明治の旧皇室典範制定際する議論で、原案に対する修正案が議決された際、原案を考案した井上毅と修正案の提案者の見解や審議過程においても「皇統には女系は含まない」という認識で一致していたことからは、新憲法の議論においても女系は含んでいないと解すべきということになります。既述の認識は、新憲法の議論だけ見た場合のものでした。

大日本帝国憲法「万世一系」と「皇位は世襲のもの」の違い

なぜ「万世一系」から「皇位は世襲のもの」に表現が変わったのか。

その両者に意味の違いはあるのか。

既に金森大臣の答弁で表れていましたが、「本質的には現行の憲法と異なる所はないと考へて居りまます、唯現行憲法は萬世一系と云ふが如き多少比喩的な文言を使つて居りまして、現實的なる言葉ではありませぬ、それを現實世界の素朴なる言葉に表はすと云ふことが主眼」と説明されています。

また、それ以降の国会において少し踏み込んだ説明がありました。

87 参議院 内閣委員会 7号 昭和54年05月08日

○野田哲君 
 明治憲法では、まず第一番目に、天皇について「万世一系ノ天皇」こういう表現があったわけですが、現在の憲法ではそういう表現はなくなっておりますが、この「万世一系」というのは、これはどういう意味ですか。旧憲法にあらわされていた万世一系というのはこれはどういうことですか。
○政府委員(真田秀夫君) お答えを申し上げますが、旧憲法第一条は、ただいま御指摘のように「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」と書いてあったわけなんですが、この言わんとするところは、皇位の世襲はこれは永遠に行われるべきものであるという思想をここへ端的に出したんだろうと思います。ちなみにいわゆる明治憲法の起草者である伊藤博文の憲法義解というのがございますね。この憲法義解の第一条のところを読んでみますと、「恭て按ずるに、神祖開国以来、時に盛衰ありと雖、世に治乱ありと雖、皇統一系宝祚の隆は天地と興に窮なし。本条首めに立国の大義を掲げ、我が日本帝国は一系の皇統と相依て終始し、古今永遠に亙り、一ありて二なく、常ありて変なきことを示し、以て君民の関係を万世に昭かにす。」こういうふうに説明してございます。これによって御推察願いたいと思います。
○野田哲君 永遠に続くという意味合いだということですが、じゃそれまで、明治までもそういう形で、一系という形で続いてきたと、こういう意味ですか。
○政府委員(真田秀夫君) 御質問の趣旨は、わが国の建国以来明治までと、こういう御趣旨でございましょうか。
○野田哲君 そうです。
○政府委員(真田秀夫君) 恐らく旧憲法の起草者はそういう思想を持っておったんだろうと思います。
○野田哲君 一系というのは、どういう続き方を一系と言うんですか。
○政府委員(山本悟君) まあ、一系という言葉、なかなかむずかしい内容もあろうかと存ずるわけでございますが、きわめて端的に申し上げまして、世襲により代々続いていくと、これは血統によって続いていくと、こういうような関係にありますことが一系ということによってあらわされているというように存じます。

要するに「言い換え」に過ぎず、明治憲法と現行憲法とで中身が変わったということではないというのが改めて示されています。

まとめ

  1. 歴史上、天皇が一定の血縁関係にあるものにより継承されてきたことが「世襲」の意味
  2. 決して今上天皇を起点として親等を意味するものではない
  3. 憲法2条の「世襲」には男系男子という限定は無いが、それは女帝の可能性を認める趣旨であり、女系は認められていない可能性が高い
  4. 大日本帝国憲法の「万世一系」と現行憲法の「世襲」には本質的違いは無く、言い換えただけ

皇室の議論においては、基本的な定義を捏造し、誤魔化す者が女系天皇や女性宮家を提唱し、或いは悠仁親王殿下よりも愛子内親王殿下の皇位継承順位を上位にしようと画策している者がいます。

明確な議論が無いため「そういう考えもあるのか」と思いがちですが、これまでの議論を踏まえて考えるべき物事を独自の理論で覆そうとする者の術中に嵌らないように気を付けるべきでしょう。 

以上

*1:佐藤功「憲法(上)」

自民党の宇都隆史「官邸の制止にもかかわらず非公式会談」岩屋防衛相に怒り:韓国レーダー照射問題

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自民党の宇都隆史議員が岩屋防衛相に対して、首相官邸が制止したにもかかわらず韓国側と非公式会談をしたことについて「怒りを覚える」という言葉を使って非難しているという報道があります。

彼の出演している動画等では、報道に見られるよりも具体的な主張をしているので、中身を確認していきます。

宇都隆史議員が自民党部会で岩屋防衛相を追及した内容

宇都隆史議員のフェイスブックで具体的に書かれています。

自民党「国防部会・安全保障調査会」において、先日のシャングリラ会合の結果報告が行われた。
注目の議題は、「日韓防衛相会談」の非公式懇談である。
私から、怒りを抑えながら強烈な批判をしつつ、以下の内容を詰問しました。
①防衛省の「非公式」の定義を示せ。
②非公式会合に至った経緯
③政府内の調整すり合わせ(特に官邸・外務省)キチンとしてから行ったのか。
④どのような事前準備をして臨んだのか。(写真・握手・笑顔・ぶら下がりは想定内か?)
防衛省からの回答は、全てうやむやで、何を言ってるかわからない最低のものでした。
よって、参議院の外交防衛委員会において、徹底的に追及することを布告しておきました。
また、委員会後に、皆さんにもご紹介したいと思います。

報道で出ていた「選挙に影響する」と発言したのも宇都議員ですね。

以下の動画で「大きな声を挙げさせて頂いたのは私だけです」と言ってますからね。

【宇都隆史】岩屋防衛大臣の暴走、“非公式”日韓防衛相会談の素人仕事[桜R1/6/6]

岩屋防衛大臣は官邸の制止を無視して非公式会談?

自民・宇都氏「怒りに身が震える」 岩屋防衛相を批判

首相官邸が制止したにも関わらず岩屋氏が熱望して非公式会談が行われたとして「パフォーマンス的に頑張っているように見せたい。どこの大臣だ」と語気を強めた。

非公式会談が行われた経緯については宇都議員がチャンネル桜の動画でより詳しく述べています。

【宇都隆史】岩屋防衛大臣の暴走、“非公式”日韓防衛相会談の素人仕事[桜R1/6/6] - YouTube

私がいろんなところから情報を確認して聞いたところによると、まず官邸サイドは絶対に会っちゃいかんと、今会うタイミングじゃないと、やめろと再三にわたって官邸サイドから言われた
ー中略ー
今会うタイミングじゃないという話だったのに、どうしてもやりたいと、大臣の熱烈な希望によって、ではもう最低非公式だという話に、どうやらなったようなんであります。

はい。

政府・官邸側は最初は制止してましたが、最終的には「非公式ならやむを得ない」という判断がなされていたようですね。

決して「官邸の意向に反した」のでは無かった訳です。

ここは誤解を招きそうですね。

官邸側がやめろと言っていたということは、非公式会談を行うこと自体に否定的な議員もいることから可能性はあるものだと思いますが。

岩屋大臣が韓国の「指針」の撤回要請

哨戒機問題後初の韓日国防相会談…日本は謝罪の代わりに不満だけ話す(1) | Joongang Ilbo | 中央日報

哨戒機問題後初の韓日国防相会談…日本は謝罪の代わりに不満だけ話す(2) | Joongang Ilbo | 中央日報

岩屋防衛相はこの日の会談後に記者らと会い、「レーダー照射事案に対する日本の立場は昨年1月の最終の立場そのまま。真実はひとつしかない」と話した。当時日本は「危険な飛行はなく、むしろ哨戒機が威嚇を受けた」と主張した。岩屋防衛相はこの日の会談後に記者らと会い、「レーダー照射事案に対する日本の立場は昨年1月の最終の立場そのまま。真実はひとつしかない」と話した。当時日本は「危険な飛行はなく、むしろ哨戒機が威嚇を受けた」と主張した。
  さらに日本はこの日の会談で韓国の新指針に言及し、事実上撤回を要請することもした。これは韓国軍当局が哨戒機問題後に偶発的な衝突を防止するために作った対応マニュアルを意味する。日本は「韓国が新指針を立てて海軍艦艇から3カイリ以内に入ってきた軍用機には射撃統制レーダーを利用した照射を警告することにした」と主張している。岩屋防衛相は「該当指針も会談議題とした」と話した。結果的に謝罪や遺憾表明どころか両国がそれぞれ言うべきことを言ったという意味だ。

韓国軍の「新指針」とは、「海軍艦艇から3カイリ以内に入ってきた軍用機には射撃統制レーダーを利用した照射を警告」することを内容とするものです。

これは常識からは在り得ないものなのですが、防衛省としてもこの指針について一度言及しておくべきだと考えたのでしょう。

日本のメディアはなぜかこの点を報道しません。

日米韓防衛相会談

防衛省・自衛隊:日米韓防衛相会談

3か国の閣僚は、その他の地域安全保障問題についても議論し、法の支配に基づく秩序の重要性について同意した。3か国の閣僚は、航行及び上空飛行の自由が確保されなければならず、全ての紛争は、国際法の原則に従って、平和的手段により解決されるべきであることを再確認した。加えて、3か国の閣僚は、地域における各国間の防衛に関係する信頼醸成が重要であるとの認識を共有するとともに、それらの努力を制度化するために協力を強化することにコミットした。

非公式会談を行った後に「紛争は国際法の原則に従って」ということを韓国を交えた中で 言及したことの意味は大きいでしょう。

「レーダー照射問題も国際法に則って考えろよ」

このように釘を刺したという意味があるでしょう。

しかも、アメリカもいますからね。

国際法の原則に照らすということは、自衛隊の哨戒機の飛行経路や高度などの飛行態様もまったく危険ではなかったということで、韓国側はこのコミットメントとの整合性を取らざるを得ない立場に追い込まれたとも言えるのではないでしょうか?

レーダー照射の防衛省資料:自衛隊機は国際民間航空条約の適用対象?

国際民間航空条約第二付属書へのリンクと航空機・艦船の安全について

まとめ

  1. 非公式会談は官邸の意向に反してはいない
  2. 岩屋大臣は韓国側の新たな主張に反論していた
  3. 日米韓防衛相会談では「国際法に則れ」という釘を刺していた

岩屋大臣が笑顔で握手していることをどう捉えるか?

「自衛隊員が危険に晒されたのにヘラヘラしやがって」と思うのか

「韓国側に真綿締めしてて暗黒微笑ですねぇ」と思うのか

たしかに身体の角度などを見ると不用意だったと思いますし、甚だ誤解を与える不注意な態度だと思います。

いずれにしても、岩屋大臣に対してまったく批判が無いよりも、ある程度の批判はあった方がいいと私は思いますので、この事案の評価は冷静に見極めるべきだと思いますね。

岩屋防衛大臣は罷免するべきか:韓国レーダー照射事件再発防止・「棚上げ」への対応

自民党部会で韓国側との非公式会談について岩屋防衛相批判:その行動の妥当性について

以上

丸山ほだか議員の糾弾決議案全文・譴責決議案と辞職勧告決議案も:なぜか毎日は有料記事

丸山ほだか議員の糾弾決議案が全会一致で可決されました。

これまで提出された各種決議案の全文リンクを紹介し、議員辞職を求めることについての考えを披歴します。

丸山ほだか議員の糾弾決議案・譴責決議案・辞職勧告決議案

第198回国会 議案の一覧

こちらの最下部に以下の決議案が全て掲載されています。

議員丸山穂高君の議員辞職勧告に関する決議案
議員丸山穂高君譴責決議案
議員丸山穂高君糾弾決議案

丸山ほだか議員の糾弾決議案の全文掲載

議員丸山穂高君糾弾決議案(第一九八回国会、決議第四号)

 議員丸山穂高君は、「令和元年度第一回北方四島交流訪問事業」に参加した際、憲法の平和主義に反する発言をはじめ、議員としてあるまじき数々の暴言を繰り返し、事前の注意にも拘わらず、過剰に飲酒し泥酔の上、禁じられた外出を試みて、本件北方四島交流事業の円滑な実施を妨げる威力業務妨害とも言うべき行為を行い、我が国の国益を大きく損ない、本院の権威と品位を著しく失墜させたと言わざるを得ず、院として国会議員としての資格はないと断ぜざるを得ない。
 よって本院は、ここに丸山君を糾弾し、ただちに、自ら進退について判断するよう促すものである。
  右決議する。

     理 由
 去る五月三十日の議院運営委員会理事会における政府関係者の説明によれば、議員丸山穂高君は、四島在住ロシア人と日本国民との相互理解の増進を図り、もって領土問題の解決を含む平和条約締結問題の解決に寄与することを目的とする「令和元年度第一回北方四島交流訪問事業」、いわゆるビザなし交流事業に参加し、国後島を訪問した際、事前に事業の趣旨や注意事項について十分に知らされていたにも拘わらず、五月十一日に、ホームビジット先のロシア人島民宅で過剰に飲酒し、宿舎である「友好の家」に戻った際、禁じられている外出を強く希望し、そのために、政府同行者に議員が外出しないよう監視させる業務を強いる結果になったほか、食堂内で、コップで机をたたき、大声を張り上げ、団長に対する報道関係者の取材を妨害し、団長に対して、「戦争でこの島を取り返すことに賛成か」、「戦争しないとどうしようもなくないか」などと信じ難い暴言を吐いた。その後も、他の団員ともみ合いになり、自室に戻った後、再び出て騒いで、職員が戻るように促す、ということを翌日午前一時まで続け、その際、「私は会期中は不逮捕特権で逮捕されない」と述べたり、およそ品位のかけらもない卑猥な言葉を発したりするなどの多大な迷惑行為を行い、翌日には団員たちから、最も重要なロシア人島民の方々との交流会への参加の自粛を求められ、参加しなかったとのことである。丸山君の行動は、一歩間違えば日本とロシアの重大な外交問題に発展しかねない問題行動であり、これまで関係者が営々と築き上げてきた北方領土問題の解決に向けた努力を一瞬にして無に帰せしめかねないものであり、国民の悲願である北方領土返還に向けた交渉に多大な影響を及ぼし、我が国の国益を大きく損なうものと言わざるを得ない。また、かかる常軌を逸した言動は、本件北方四島交流事業の円滑な実施を妨げる威力業務妨害とも言うべきものであり、その卑猥な言動に至っては、議員としてというよりも人間としての品位を疑わせるものである。
 本件事業は、内閣府交付金に基づく補助金を受けた北方四島交流北海道推進委員会の費用負担により実施されているものであり、本院から公式に派遣したものではないにせよ、丸山君は、沖縄及び北方問題特別委員会の委員であるが故に、優先的に参加することができたものであり、他の団員からは、本院を代表して参加したものと受け止められており、また、その後の報道により、我が国憲法の基本的原則である平和主義の認識を欠き、およそ品位のかけらもない議員の存在を国内外に知らしめ、衝撃を与えた事実は否めず、本院の権威と品位を著しく貶める結果となったと言わざるを得ず、院として国会議員としての資格はないと断ぜざるを得ない。
 よって本院は、ここに丸山君を糾弾し、ただちに、自ら進退について判断するよう促すものである。
 以上が、本決議案を提出する理由である。

毎日新聞はなぜか有料記事に

「議員としてというよりも人間としての品位を疑わせる」丸山議員糾弾決議案全文 - 毎日新聞魚拓はこちら

毎日新聞は衆議院が公開していてネットで無料で閲覧できるものを、なぜか有料記事内のコンテンツでしか見れないようにしています。本当に姑息ですね。

その辺はBuzz Feed Japanなどはリンクも貼って紹介しており、好感が持てます。

丸山穂高参議院議員は議員辞職をするべきか

丸山ほだか議員の問題は酒のせいではない:ロシアに謝罪の維新批判発言

丸山ほだか議員の「戦争発言」は憲法尊重擁護義務違反なのか

この問題は個人が個人の立場として辞職すべきか否かを論じる分には自由です。

ただ、国会として辞職を促すのであれば、明確な根拠を示すべきだと思っていました。
(憲法99条「違反」という理屈は論外)

たとえば丸山議員の今回のケースは何ら罪に問われたものではありませんが、事実を見ていくと記者の取材を遮っており、業務妨害として不法行為となる可能性を否定できない態様になっていると思います。

また、各種報道では卑猥な言動など、非常識な行為があったとされています。

構成要件には該当していないと思われますが、行為の実質としては軽犯罪法で禁止されているものと、いったいどれほど異なるのかという気がします。

軽犯罪法

五 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた

十四 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者

三十一 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者

この点、糾弾決議案では譴責決議案等に比べて、以下の指摘がありました。

また、かかる常軌を逸した言動は、本件北方四島交流事業の円滑な実施を妨げる威力業務妨害とも言うべきものであり

国会が議員辞職を求める根拠・基準を設定するべきか

ただ、なぜ議員辞職に値するのかというのは基準がないため曖昧になっています。

橋下氏は基準がない中での辞職要請は反対であるという立場ですが、では、基準を設けるべきなのか?ということは考えなければならないと思います。

一定の基準を設けた上で、「衆議院の品位を著しく貶めた者」というような裁量の余地のある基準を設けるのか、そのような裁量の余地のない基準を設定するのか。

いずれも弊害があると思われます。

「院外」の行動?先例に照らしてどうか

「院外」での行為だから関係ないという人も居ますが、懲罰事犯ではあるものの、先例があります⇒target="_blank"懲罰事犯 - Wikipedia

過去にはアントニオ猪木議員が「議院運営委員会に許可なく、無断で朝鮮民主主義人民共和国に渡航・訪問したため」という理由で30日間の登院停止処分を受けています。

院内での言動か否かは決定的な事情ではないと言えるでしょう。

特に今回の丸山氏の立場は「内閣府交付金に基づく補助金を受けた北方四島交流北海道推進委員会の費用負担により実施されているものであり、本院から公式に派遣したものではないにせよ、丸山君は、沖縄及び北方問題特別委員会の委員であるが故に、優先的に参加することができたもの」ですから、否定する理由としては弱いでしょう。

まとめ

丸山議員自身は糾弾決議が可決してもこの通りです。

私は丸山議員が辞職するのはロシア側に変なメッセージを与えると思うので反対です。

ただ、彼自身が「言論の自由」や「不逮捕特権」を取材時の発言や弁明書で振りかざしているのはまったくもって不適切であり、仮に次回の選挙で彼の出馬した小選挙区に私が居り、他に維新の候補者が居る場合には、決して彼には投票はしません。

以上